631 / 732
ロマンサ北方国
原因
「黒い石はございませんでしたか?」
「黒い石?」
「黒い石は無かった……。あ、でも、黒っぽい染みならあったけど」
「黒っぽい染みですか?見せていただけます?」
その『黒っぽい染み』はベッドを挟んだ入口とは反対側にあった。
「これですか」
黒っぽいというよりは黒い染みよね。絨毯が濃青だから目立ちにくいけれど、広範囲に広がった黒いインクを溢したような染みは、ベッドの下に続いている。
「皆様、ご気分が悪かったり、体調に変化はございませんか?」
「特にはありませんが」
「正直に仰ってくださいませね。とても大切な事ですから」
私はこの部屋に入ってからずっと浄化し続けている。だから私が来る前に何か身体に変化がなかったかを知りたい。
「……あの、アタシ、この部屋に入って少ししたらダルくなってきたんだけど、そんな事で良いの?」
「おいっ、言葉遣いっ」
「構いませんでしてよ」
微笑んで言うと、女性はホッとしたように笑顔を見せた。
「このベッド、動かせませんでしょうか?」
「お安いご用ですよ」
リーダー格らしい男性が請け負ってくれた。お安いご用といっても、土台が木製の重そうなベッドなんだけれど本当に大丈夫なのかしら?
4人でベッドの4隅を持ち上げて、「よいしょ」と持ち上げてしまった。スゴい。
ベッドを取り除いた床には、スライムのような真っ黒なゲル状の……うーん。なんと言えば良いのかしら?
「何これ?お掃除しなきゃ」
先程「ダルくなった」と答えてくれた女性が手を伸ばす。
「触らないでください!!」
触れる直前に止める。とてつもなく嫌な感じがする。ディザスターラメンティを初めて見た時のような、不安感と憎悪を掻き立てられるような感じが強い。
「なんなの?仕事の邪魔しないでくれる?光の聖女サマかなにか知らないけれど、こっちは仕事なの!!」
女性の言葉が刺々しくなる。
「おいっ、お前は控えていろっ」
少し離れていたリーダー格の男性が言う。
「だって……」
「その方を入口付近まで避難させてください」
「避難?」
「皆様もです。離れてっ」
私が言っても迫力は無いだろうけれど、なるべく強い口調で言う。今も浄化は最大の強度でかけ続けている。
どうすれば良い?どうすれば被害を抑えられる?
まずは黒いゲル状の物を結界で包む。
「すみません、どなたか護衛の誰かを呼んで来て……」
「聖女様?」
魔力がぐんぐんと減っていく。首から下げたペルクナスの心臓から流れ込んでくる温かい魔力が不意に途切れた。同時に結界が揺らぐ。
「コルディアの聖女様っ」
飛び込んできたのはシェーンとリディー。
「……シェーン……、リディー……。部屋の外へ……、全員を……」
力が入らない。頭痛がする。魔力切れが近い事を体調が知らせてくれている。
「コルディアの聖女様っ、しっかりなさってください」
シェーンが私を抱えて部屋から出した。ここで魔力切れは起こせない。せめて伝える事を言ってからでないと。でも誰に伝えれば良い?どうすれば良い?ペルクナスの心臓からは、もうあの温かい感じはしない。
「コルディアの聖女、何があった!!」
炎の聖人様が走ってきた。
「炎の聖人様、皇女様のお部屋に……」
「コルディアの聖女?どうした?何があったのだ」
「皇女様のお部屋に、ディザスターラメンティのような感じの、いえ、もっと強い憎悪を掻き立てられるような感じのするゲル状の物が」
「は?」
「今は中に入らないでくださいませ。シェーン、リディー。魔力回復ポーションはあるかしら?」
「ございますが」
リタが腰のウェストバッグから、ポーションを取り出す。受け取って飲み干した。少し頭痛が治まってくる。
「ご気分はいかがですか?」
先程の女性に話しかける。
「あのっ、さっきはごめんなさい。なんだか止まらなくって」
「アレはそういう性質の物だと思います。良かったです。言葉だけで済んで。触れていたらもっと攻撃的になっていたでしょうし」
「もっと攻撃的に?」
「力任せに暴力を振るったり、魔法を使ったりです」
「コルディアの聖女、何か手は?」
話を黙って聞いていた炎の聖人様が、私に聞いた。
「ございますが、今すぐは……。申し訳ございません」
「とにかくこの部屋には立ち入りを禁じよう。手配をしてくれ」
炎の聖人様に付いてきていた使用人に、炎の聖人様が命じた。
誰かが知らせたらしく、両陛下と皇妃様方が駆けつけてきて、一気に騒々しくなった。ここは皇女様の別館よね?騒がしくしてしまっていないかしら?
「コルディアの聖女様、ご無理はなさっておられませんか?」
「コルディアの聖女、大丈夫か?」
「お部屋で休みましょうね?」
「何かしてほしい事は?無い?」
皇帝陛下を押し退けて、皇后陛下と皇妃様方が口々に聞いてくれる。
「大丈夫ですわ。ご心配くださり、ありがとうございます」
そうは言っても休む為に、滞在する予定の部屋に連行されるんだけど。この頃にはエドゥアルドとマティアスとオリアナが皇女様の別館の入口に集合していた。
「コルディアの聖女様、ご無理をなさいましたな?」
「エドゥアルド、怒ってる?」
「怒ってなどいませんよ。少々呆れているだけです」
「無理はしていなかった……のだけれど」
今からするわね。言わないけれど。
「何をなさるのかは聞きませんが、本当に無理をしていると感じたら、オリアナとリディーには力ずくでも休ませるようにと厳命していますからね?分かっておられますね?」
「ごめんなさい。それは守れないかもしれないわ」
「コルディアの聖女様……」
「一刻を争う事態だと思うの。のんきに休んではいられないの」
「分かりました。それでは私とシェーンに、聖女様のお部屋に立ち入る許可をください」
「許可を?」
「えぇ」
つまりは見張っているという事かしらね?エドゥアルドかシェーン、またはオリアナかリディーがこれ以上は無理だと判断したら、シェーンの香で眠らされちゃうのかしら。
「許可をしなければ私のする事を、あなたが許可しないのと言うのかしら?私の自由意思をあなたが決めるの?」
「コルディアの聖女様、その言い方はあまりにも……」
「そういう事でしょう?エドゥアルドは私に無理をさせまいとしている。それはとてもありがたいと思うわ。私は時に周りが見えなくなるから。でも今は、そんな事を言っていられないの」
「聖女様……私はそのような事は……」
エドゥアルドが呻くように言う。
「私の事を考えてくれての、エドゥアルドの言葉という事は分かっているわ。でも今は本当に時間が無いの」
「……分かりました。ですが私も入室させていただきます」
「うふふ。シェーンもかしら?」
「当然です」
当然なのね。
結局マティアスも付いてきて、私の部屋はいっぱいになった。それを見てマティアスが退室していく。
「コルディアの聖女様、まさかアレですか?」
「そのまさかよ。たぶん一番効果的だわ」
シェーンは私が、ブレシングアクアを作れると知っている。でも今の限界量は知らない。他のみんなはたぶん私がブレシングアクアを作れると知らない。
シェーンから耳打ちを受けて、エドゥアルドが渋い顔をしながら魔力回復ポーションを3本取り出した。シェーンの手にあるのは、同じく魔力回復ポーションが2本と黒く丸い小さな丸薬のような物。それと香炉のような陶器。
お香って火が必要よね?どうするのかしら。
「シェーン、それは?」
「魔道具の1種ですね。これで熱を発生させ香を燻らせます」
「そうだったのね」
「黒い石?」
「黒い石は無かった……。あ、でも、黒っぽい染みならあったけど」
「黒っぽい染みですか?見せていただけます?」
その『黒っぽい染み』はベッドを挟んだ入口とは反対側にあった。
「これですか」
黒っぽいというよりは黒い染みよね。絨毯が濃青だから目立ちにくいけれど、広範囲に広がった黒いインクを溢したような染みは、ベッドの下に続いている。
「皆様、ご気分が悪かったり、体調に変化はございませんか?」
「特にはありませんが」
「正直に仰ってくださいませね。とても大切な事ですから」
私はこの部屋に入ってからずっと浄化し続けている。だから私が来る前に何か身体に変化がなかったかを知りたい。
「……あの、アタシ、この部屋に入って少ししたらダルくなってきたんだけど、そんな事で良いの?」
「おいっ、言葉遣いっ」
「構いませんでしてよ」
微笑んで言うと、女性はホッとしたように笑顔を見せた。
「このベッド、動かせませんでしょうか?」
「お安いご用ですよ」
リーダー格らしい男性が請け負ってくれた。お安いご用といっても、土台が木製の重そうなベッドなんだけれど本当に大丈夫なのかしら?
4人でベッドの4隅を持ち上げて、「よいしょ」と持ち上げてしまった。スゴい。
ベッドを取り除いた床には、スライムのような真っ黒なゲル状の……うーん。なんと言えば良いのかしら?
「何これ?お掃除しなきゃ」
先程「ダルくなった」と答えてくれた女性が手を伸ばす。
「触らないでください!!」
触れる直前に止める。とてつもなく嫌な感じがする。ディザスターラメンティを初めて見た時のような、不安感と憎悪を掻き立てられるような感じが強い。
「なんなの?仕事の邪魔しないでくれる?光の聖女サマかなにか知らないけれど、こっちは仕事なの!!」
女性の言葉が刺々しくなる。
「おいっ、お前は控えていろっ」
少し離れていたリーダー格の男性が言う。
「だって……」
「その方を入口付近まで避難させてください」
「避難?」
「皆様もです。離れてっ」
私が言っても迫力は無いだろうけれど、なるべく強い口調で言う。今も浄化は最大の強度でかけ続けている。
どうすれば良い?どうすれば被害を抑えられる?
まずは黒いゲル状の物を結界で包む。
「すみません、どなたか護衛の誰かを呼んで来て……」
「聖女様?」
魔力がぐんぐんと減っていく。首から下げたペルクナスの心臓から流れ込んでくる温かい魔力が不意に途切れた。同時に結界が揺らぐ。
「コルディアの聖女様っ」
飛び込んできたのはシェーンとリディー。
「……シェーン……、リディー……。部屋の外へ……、全員を……」
力が入らない。頭痛がする。魔力切れが近い事を体調が知らせてくれている。
「コルディアの聖女様っ、しっかりなさってください」
シェーンが私を抱えて部屋から出した。ここで魔力切れは起こせない。せめて伝える事を言ってからでないと。でも誰に伝えれば良い?どうすれば良い?ペルクナスの心臓からは、もうあの温かい感じはしない。
「コルディアの聖女、何があった!!」
炎の聖人様が走ってきた。
「炎の聖人様、皇女様のお部屋に……」
「コルディアの聖女?どうした?何があったのだ」
「皇女様のお部屋に、ディザスターラメンティのような感じの、いえ、もっと強い憎悪を掻き立てられるような感じのするゲル状の物が」
「は?」
「今は中に入らないでくださいませ。シェーン、リディー。魔力回復ポーションはあるかしら?」
「ございますが」
リタが腰のウェストバッグから、ポーションを取り出す。受け取って飲み干した。少し頭痛が治まってくる。
「ご気分はいかがですか?」
先程の女性に話しかける。
「あのっ、さっきはごめんなさい。なんだか止まらなくって」
「アレはそういう性質の物だと思います。良かったです。言葉だけで済んで。触れていたらもっと攻撃的になっていたでしょうし」
「もっと攻撃的に?」
「力任せに暴力を振るったり、魔法を使ったりです」
「コルディアの聖女、何か手は?」
話を黙って聞いていた炎の聖人様が、私に聞いた。
「ございますが、今すぐは……。申し訳ございません」
「とにかくこの部屋には立ち入りを禁じよう。手配をしてくれ」
炎の聖人様に付いてきていた使用人に、炎の聖人様が命じた。
誰かが知らせたらしく、両陛下と皇妃様方が駆けつけてきて、一気に騒々しくなった。ここは皇女様の別館よね?騒がしくしてしまっていないかしら?
「コルディアの聖女様、ご無理はなさっておられませんか?」
「コルディアの聖女、大丈夫か?」
「お部屋で休みましょうね?」
「何かしてほしい事は?無い?」
皇帝陛下を押し退けて、皇后陛下と皇妃様方が口々に聞いてくれる。
「大丈夫ですわ。ご心配くださり、ありがとうございます」
そうは言っても休む為に、滞在する予定の部屋に連行されるんだけど。この頃にはエドゥアルドとマティアスとオリアナが皇女様の別館の入口に集合していた。
「コルディアの聖女様、ご無理をなさいましたな?」
「エドゥアルド、怒ってる?」
「怒ってなどいませんよ。少々呆れているだけです」
「無理はしていなかった……のだけれど」
今からするわね。言わないけれど。
「何をなさるのかは聞きませんが、本当に無理をしていると感じたら、オリアナとリディーには力ずくでも休ませるようにと厳命していますからね?分かっておられますね?」
「ごめんなさい。それは守れないかもしれないわ」
「コルディアの聖女様……」
「一刻を争う事態だと思うの。のんきに休んではいられないの」
「分かりました。それでは私とシェーンに、聖女様のお部屋に立ち入る許可をください」
「許可を?」
「えぇ」
つまりは見張っているという事かしらね?エドゥアルドかシェーン、またはオリアナかリディーがこれ以上は無理だと判断したら、シェーンの香で眠らされちゃうのかしら。
「許可をしなければ私のする事を、あなたが許可しないのと言うのかしら?私の自由意思をあなたが決めるの?」
「コルディアの聖女様、その言い方はあまりにも……」
「そういう事でしょう?エドゥアルドは私に無理をさせまいとしている。それはとてもありがたいと思うわ。私は時に周りが見えなくなるから。でも今は、そんな事を言っていられないの」
「聖女様……私はそのような事は……」
エドゥアルドが呻くように言う。
「私の事を考えてくれての、エドゥアルドの言葉という事は分かっているわ。でも今は本当に時間が無いの」
「……分かりました。ですが私も入室させていただきます」
「うふふ。シェーンもかしら?」
「当然です」
当然なのね。
結局マティアスも付いてきて、私の部屋はいっぱいになった。それを見てマティアスが退室していく。
「コルディアの聖女様、まさかアレですか?」
「そのまさかよ。たぶん一番効果的だわ」
シェーンは私が、ブレシングアクアを作れると知っている。でも今の限界量は知らない。他のみんなはたぶん私がブレシングアクアを作れると知らない。
シェーンから耳打ちを受けて、エドゥアルドが渋い顔をしながら魔力回復ポーションを3本取り出した。シェーンの手にあるのは、同じく魔力回復ポーションが2本と黒く丸い小さな丸薬のような物。それと香炉のような陶器。
お香って火が必要よね?どうするのかしら。
「シェーン、それは?」
「魔道具の1種ですね。これで熱を発生させ香を燻らせます」
「そうだったのね」
あなたにおすすめの小説
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」
そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。
代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。
世間は笑った。けれど、私は知っている。
――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、
ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚!
鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!