3歳で捨てられた件

玲羅

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ロマンサ北方国

解決への準備

 ブレシングアクア聖恵水用のビンを用意する。数は10本。

コルディア慈恵の聖女様、まさかそれに全部?」

「もちろんよ、シェーン。もっと大きなビンならここまでの数は必要ないのだけれど」

「お倒れになりますよ?」

「でしょうね」

「聖女様……」

「これで効果が見られなかったら、フォグの出番かしらね」

フォグですか?」

 オリアナが聞く。

「えぇ。わたくしは水魔法も使えるの。シェーンから聞いていない?」

「「聞いてないです」」

「エドゥアルドは知っていたわよね?」

「教皇様から聞かされていましたから」

「聖女様、フォグの出番と仰いますとまさか、ブレシングフォグ聖恵霧ですか?」

「えぇ」

 その言葉にエドゥアルド、オリアナ、リディーがポカンとなる。

コルディア慈恵の聖女様、まさかブレシングアクア聖恵水を作成出来るのですか?」

「作れるわね。最初に作ったのは、あれは何歳の時だったかしら?」

「5歳の頃と聞かされましたが」

 聞かされたって、サミュエル先生にかしら?

 少し話している間に、魔力は回復してきていた。全回復ではないけれど、これなら5本はブレシングアクア聖恵水を作れると思う。通常の物なら。

 私が今から作ろうとしているのは、強化版浄化のブレシングアクア聖恵水だ。強化版浄化のブレシングアクア聖恵水はいつもより魔力を使う。3本が限度だろう。

 休み休み作って、明日までに10本作れれば良いのだけれど。

 ソファーに座って、強化版浄化のブレシングアクア聖恵水の作成を始める。エドゥアルド達がハラハラしながら見ているのが分かった。

 3本目でかなりの負担がかかってきたのが分かった。2本目までとは比べ物にならないほどの頭痛と倦怠感。

コルディア慈恵の聖女様、それ以上は無理です、お止めください」

「そ、うね。これ、だけで、終わる、わ」

「聖女様っ」

「これ、だけ……」

「シェーン」

「始めています」

 眠り香の香りが漂ってきた。駄目だ。これだけは作り終えてしまわなきゃ。

、ここで止めておきましょう?」

「シェー……ン……」

 耳元で囁かれるシェーンの優しい声に、意識が保てなくなった。そのまま眠りに落ちてしまったらしい。

 次に目覚めたのは、質の良いベッドの中だった。

「起きたか、コルディア慈恵の聖女」

 炎の聖人様の声がする。

「炎の聖人様、それ以上はお近づきになられませんよう」

「面倒くせぇな」

コルディア慈恵の聖女様は貴族令嬢です。それも婚前の。決まった相手以外の異性との簡単な接触は望まれていませんし、なにより淑女レディー寝起きの顔を見るのはマナー違反では?」

「お前も面倒くせぇな、黒髪」

「シェーンです。お教えしましたよね?」

 シェーンと炎の聖人様の言い争い?の声が聞こえる。オリアナがパーテーションのベッド側に来てくれた。

コルディア慈恵の聖女様、ご気分はいかがですか?」

「ありがとう。かなりスッキリしたわ?今何時頃?」

「もうすぐ夕食のお時間です。炎の聖人様は心配だからと訪ねてきてくださって、そのままご滞在に」

 パーテーションの向こうではまだ、シェーンと炎の聖人様の声がしている。

「シェーンと言い争いに?」

「あれは炎の聖人様が、シェーンをお揶揄からかいになっているだけですよ。シェーンも分かってはいるようですが」

 身支度だけ整えてパーテーションを出る。

コルディア慈恵の聖女、無理をしたようだな」

「えぇ、炎の聖人様。今が無理をする時だと感じましたので」

「そんな時は無くても良い。と言っても聞かぬだろうしな。で?今からは?」

「魔力も回復しておりますし、続きを作成しようかと」

「続きを作成……。なぁ、コルディア慈恵の聖女。誰かに水魔法で水を出してもらって、それに光魔法を作用させる作り方では駄目なのか?」

「それでも良いのですが、わたくしが今作っているブレシングアクア聖恵水は別々だと無意味なのです」

「……何を作っているのだ?」

「全体的に効果を上げたブレシングアクア聖恵水ですわね。強化版のブレシングアクア聖恵水です」

 それも浄化と治癒の効果を付与した物。

「……」

 炎の聖人様が黙っちゃった。もしかして呆れちゃったのかしら?

「その強化版のブレシングアクア聖恵水を作成する為に倒れたと?」

「倒れてはおりませんでしてよ?その寸前で眠らされましたもの」

「そういう事は言っておらんっ!!眠らされなければ倒れていたと言う事ではないかっ」

「そうですわね。ですから……」

コルディア慈恵の聖女、いや、光の聖女、キャスリーン・フェルナー。そなたは世界にたったひとりの『光の聖女』だという自覚はあるか?」

「ございましてよ?」

「それなら……」

「世界にたったひとりだからこそ、やらねばならぬのです。お話いたしましたでしょう?わたくしの理想とする世界を。その理想の実現の為でもあるのです」

「理想の実現?ボロボロになるまで働き続ける事がか?」

「前提が間違っておりましてよ?わたくしの理想とする世界は、わたくしひとりの力では成し遂げられません。ひとりでも多くの賛同者が必要です。こういう言葉はあまり好きではございませんが、その為なら利用出来る物は利用いたします。メニー ハンド メイク ライト ワーク 多くの人手は仕事を軽くすると申しますから」

「そのという言葉は後付けだろう?」

 たしかに後付けだけれど。でも、その後付けの理由も、「私の理想を叶える為」のひとつな訳で。

「俺はな、コルディア慈恵の聖女のその理想は素晴らしいと思うし、応援したいとも思う。だがな、その為に無理はしてほしくないんだ。それに待ってくれている人も居るのだろう?その為にもコルディア慈恵の聖女には健やかに居てもらわないと」

「健やかに、ですか?」

「あぁ。なにせローレンス殿に脅されたからな」

 炎の聖人様を脅したって、何を言ったの?ローレンス様。

「『帰国したキャシーが、体調を崩していたり落ち込む事が多くなっていたら、自分はあなた方を許さない』だと。『聖国の詳細を暴露する事は避けるが、あなた方個々人についての暴露は特に規制されていないですからね』だとさ。ひさしぶりに背筋が凍る思いをした」

 ローレンス様ったら。

「一緒にいたメリッサは半泣きになっていたな」

 ローレンス様ったら……。

「申し訳ございません。ローレンス様はわたくしの事に関して暴走する事がございますの。帰国いたしましたらお詫びするように説得いたします」

「俺には良いけどな。メリッサに対しては頼みたい」

「かしこまりました」

 夕食時には、両陛下と皇妃様方、それに皇族のお子様達が席を同じくされた。晩餐会という事かしらね。

 もちろんその中に第一皇女様のアナスタシア様はいらっしゃらない。今も眠り続けておられると、皇后陛下からお話があった。

コルディア慈恵の聖女、あの子を診てやってくれないかしら。原因を探るのも大切だと思うけれど、母として娘を救いたいの」

「皇后陛下……」

コルディア慈恵の聖女が、死した者を生き返らせたという話は有名よ?その時に聖書として覚醒したと」

「死した者ではございません。毒殺されかけた者です」

「え?死んでないの?」

「一時期心肺停止状態には陥りましたが、幸いにも解毒と心肺蘇生に素早く対応出来ましたので、命を繋げる事が出来ました」

「心肺停止って、心臓も呼吸も止まったって事だよね?生き返るの?」

「心肺停止状態になってから時間が経つと無理でございます。ですが数分以内なら、後遺症無く日常生活への復帰は可能でございます」



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