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帰るべき場所
スタヴィリス国でのお披露目(貴族に向けての夜会) ~準備~
午後からお義母様が来てくれて、ローレンス様の夜会の衣装を置いていった。私のローブ・デコルテを確認して「これなら大丈夫ね。あら、花は青と白のバラなの?」と、こちらも何かを確認していった。
この世界には青のバラも存在しているのよね。前世では遺伝子組み換えで誕生させたのに。青いユリも存在している。緑色のユリも存在しているけれどなぜか黒ユリは無い。バラは黄色が珍しいらしい。絶対数が少なくて、保護対象なんだって。緑のバラはあるのだから、掛け合わせでなんとかならないかと試した人はけっこう居るらしいのだけれど、どれも失敗しているらしい。
その翌日にはサミュエル先生が来てくれた。ダニエルさんも一緒だ。
「久しぶりだね、キャシーちゃん」
「お久しぶりでございます、サミュエル先生」
「護衛も勢揃いで。おや、知っている顔も居るね」
エドゥアルドとシェーンが黙って頭を下げた。その他にも何人かが会釈している。
「ローレンス君も居るね。今回の夜会でローレンス君がキャシーちゃんの正式な婚約者と決まったと、公表される段取りになっているんだけど、それは大丈夫かな?」
え?正式に公表されるって聞いてないけれど。
「もちろんです」
「すり寄ってくるのも居るだろうし、キャシーちゃん目当てのローレンス君の取り込みも増えると思う。王宮としても最大限に警戒するし、各貴族にも通達してあるけど」
「不安は拭えないと」
ローレンス様がにこやかに言う。
「ねぇ、あれだけ警告しておいたのにね。何人かが王宮に直接申し入れに来ていたらしいよ。追い返されたみたいだけど」
「来たんですか。わざわざご苦労様ですね」
「ねぇ。あれだけ痛い目を見ておいて、まだ来るというその情熱は他に向けてほしいよね」
痛い目って何をしたの?ねぇ。
ローレンス様とサミュエル先生はにこやかに笑っているけれど、どことなく寒気がするのは気の所為でしょうか?
「キャシーちゃんは光の聖女様の正式な衣装なんだよね?」
「はい。聖国で仕立てていただいたものですね」
「光の聖女様の花は予想と外れたね。キャシーちゃんにはギプソフィラだと思っていたんだけど。ローレンス君の見立てだったし」
「聖国の、というよりは枢機卿方のご見解ですわね。『青いバラの花言葉は奇跡、神の祝福。白いバラの花言葉は純潔、純粋。だから光の聖女のイメージにぴったり』だそうですわ」
「それだったら青いバラだけで良いと思うのは、僕だけかな?純潔、純粋というのは見て分かるし」
「婚姻したら純潔ではなくなるけどね」
サミュエル先生、にこやかに言わないでください。
「キャシーはこういう話題は苦手だよね」
「はぃ……」
「真っ赤なキャシーも可愛い」
「やっぱりローレンス君が隣にいると、しっくり来るよね。私と居ても師弟関係としか見えないとよく言われたけど、ローレンス君とだと、恋人同士に見えるもんね」
「よく言われた?いつの話です?」
「救援活動に行った時だよ。ある程度の貴族達は知っていたからね。キャシーちゃんと私の関係性を聞かれて『本来の婚約者が戻るまでの仮婚約者』って答えていたんだよ。嘘は吐いてなかったし。でもね、『師弟関係としか見えない。本当に婚約者なのか』って聞かれる事もあったんだよ。相手は年回りの良い息子や甥がいる家だったから、目的は明白だよね。少々権力を使わせてもらったけど、穏便に引いてくれたよ」
「今も居ますね。僕に『義兄と呼ばせてください』って言ってくる貴族子息達。説明して分かってもらってるけど」
「たいていは『光の聖女様の夫』の座を狙う者だけど、たまに居るんだよね。キャシーちゃん自身を好きになっちゃう困ったのが。光の聖女様親衛隊が動いていたらしいよ」
「え?あれって学院生の間の事だけじゃなかったんですか?」
「なかったんだよ。それに学院に通っていたのは貴族子女でしょ?高位貴族の令息や令嬢も含まれているから、権力の使い方も分かっているし、大騒ぎにはなっていない。キャシーちゃんはみんなに好かれているね」
「その高位貴族の令息や令嬢とは?」
「聞いてどうするの?」
「どうする……って……」
「侯爵令息や令嬢も混じっているよ。たぶん今度の夜会には全員来ると思う。王妃陛下が取りまとめているし」
「はい?」
王妃様が?
「王太子妃も第二王子妃も名を連ねているね」
「何をしたんだい?キャシー」
「何をって……」
「第二王子妃の悩みを解決したんだよ。王妃陛下がたいそうお喜びでね。王家のごたついていた事が解消されたわけだから。表立っては動けないけど資金援助は出来るからって、個人資産を動かしたらしい」
王妃様の個人資産って、ちょっと怖くなってきたのですが。
「陛下は何も?」
「把握してはいないけど、王妃陛下にちょろっと資金を渡していてもおかしくはないね」
「スゴいね、キャシー。VIP待遇だ」
「規模が怖いです」
ポツリと言うと、ローレンス様に笑われた。
「聖国からはルーカスとマイケルの他に、炎の聖人様が賓客として招かれてるよ」
「炎の聖人様が?」
「招かれてるというか、ぜひ招待してほしいと言われたというか。マイケルが申し訳なさそうに言ってきた。王宮に直接来るって」
「護衛の方も同行されるのですわよね?」
「そりゃねぇ。護衛だからね。3人だっけ?」
「そうですわね。おひとかた以外はお名前を存じ上げないのですけれど」
「おひとかたって、あぁ、シュタルケ殿か。後のお2方はスターフ・ネイホフ殿とアンゲラ・ルーベンス殿だよ。シュタルケ殿とルーベンス殿は夫婦だけど……」
「夫婦?ルーベンス様って女性ですか?」
綺麗な顔をしておられたけれど、短髪で動きもキビキビしていて、男性だと思い込んでいた。
「女性だよ。婚姻後の普段の名乗りはどちらを名乗っても良いらしいよ。聖国の制度だね。スタヴィリス国も同じでしょ?フルネームはアンゲラ・ルーベンス・シュタルケとなるそうだ」
「驚きました」
「女性だからと言われたくないと、わざと分かりにくい格好をしているんだって」
「そうだったのですね」
ローレンス様、よく知っておられるわね。
「聖国で暇だったからね。聖国蔵書殿で本を読み漁ってたんだよ。制度はそこで知った」
「私も聖国蔵書殿には行きましたわ。本がたくさんな素敵空間でした」
「魔法関係の本もたくさんあったでしょ?」
「はい。光魔法の本もあって、色々な光魔法の使い方を知る事が出来ました」
「キャシーちゃん、どんな事が書いてあったんだい?」
「多人数に対する治癒魔法の発現方法とか、完全遮断結界の効率的な用い方とか、空間浄化の方法ですわね。執刀科のope場の最適な環境についても書かれておりました。クリーンルームを維持する方法なども」
「聖国はその事を公表する気は?」
「無いようです。今の光魔法使いの人数を鑑みると光魔法使いの酷使に繋がるからと。ただし、結界と浄化の複合型空間浄化の魔法陣の公表は考えているそうです。それがあればope中もしくはope後の合併症リスクを減らせると思います」
「キャシーちゃんが進言したの?」
「進言というか、こういった事が気になると教皇様にお話はいたしましたが」
「教皇ってちょっと目付きの悪い悪人顔の、あの人でしょ?」
「先生、お言葉が過ぎますわよ?ご本人も気にしているとは仰っておられましたけれど」
「そんな事まで話してたの?」
「言語の成り立ちや各国文化について、非常に有意義な時間を過ごせました」
「キャシーちゃんもあの教皇と同類だったね、そういえば」
サミュエル先生、聞こえていましてよ?
この世界には青のバラも存在しているのよね。前世では遺伝子組み換えで誕生させたのに。青いユリも存在している。緑色のユリも存在しているけれどなぜか黒ユリは無い。バラは黄色が珍しいらしい。絶対数が少なくて、保護対象なんだって。緑のバラはあるのだから、掛け合わせでなんとかならないかと試した人はけっこう居るらしいのだけれど、どれも失敗しているらしい。
その翌日にはサミュエル先生が来てくれた。ダニエルさんも一緒だ。
「久しぶりだね、キャシーちゃん」
「お久しぶりでございます、サミュエル先生」
「護衛も勢揃いで。おや、知っている顔も居るね」
エドゥアルドとシェーンが黙って頭を下げた。その他にも何人かが会釈している。
「ローレンス君も居るね。今回の夜会でローレンス君がキャシーちゃんの正式な婚約者と決まったと、公表される段取りになっているんだけど、それは大丈夫かな?」
え?正式に公表されるって聞いてないけれど。
「もちろんです」
「すり寄ってくるのも居るだろうし、キャシーちゃん目当てのローレンス君の取り込みも増えると思う。王宮としても最大限に警戒するし、各貴族にも通達してあるけど」
「不安は拭えないと」
ローレンス様がにこやかに言う。
「ねぇ、あれだけ警告しておいたのにね。何人かが王宮に直接申し入れに来ていたらしいよ。追い返されたみたいだけど」
「来たんですか。わざわざご苦労様ですね」
「ねぇ。あれだけ痛い目を見ておいて、まだ来るというその情熱は他に向けてほしいよね」
痛い目って何をしたの?ねぇ。
ローレンス様とサミュエル先生はにこやかに笑っているけれど、どことなく寒気がするのは気の所為でしょうか?
「キャシーちゃんは光の聖女様の正式な衣装なんだよね?」
「はい。聖国で仕立てていただいたものですね」
「光の聖女様の花は予想と外れたね。キャシーちゃんにはギプソフィラだと思っていたんだけど。ローレンス君の見立てだったし」
「聖国の、というよりは枢機卿方のご見解ですわね。『青いバラの花言葉は奇跡、神の祝福。白いバラの花言葉は純潔、純粋。だから光の聖女のイメージにぴったり』だそうですわ」
「それだったら青いバラだけで良いと思うのは、僕だけかな?純潔、純粋というのは見て分かるし」
「婚姻したら純潔ではなくなるけどね」
サミュエル先生、にこやかに言わないでください。
「キャシーはこういう話題は苦手だよね」
「はぃ……」
「真っ赤なキャシーも可愛い」
「やっぱりローレンス君が隣にいると、しっくり来るよね。私と居ても師弟関係としか見えないとよく言われたけど、ローレンス君とだと、恋人同士に見えるもんね」
「よく言われた?いつの話です?」
「救援活動に行った時だよ。ある程度の貴族達は知っていたからね。キャシーちゃんと私の関係性を聞かれて『本来の婚約者が戻るまでの仮婚約者』って答えていたんだよ。嘘は吐いてなかったし。でもね、『師弟関係としか見えない。本当に婚約者なのか』って聞かれる事もあったんだよ。相手は年回りの良い息子や甥がいる家だったから、目的は明白だよね。少々権力を使わせてもらったけど、穏便に引いてくれたよ」
「今も居ますね。僕に『義兄と呼ばせてください』って言ってくる貴族子息達。説明して分かってもらってるけど」
「たいていは『光の聖女様の夫』の座を狙う者だけど、たまに居るんだよね。キャシーちゃん自身を好きになっちゃう困ったのが。光の聖女様親衛隊が動いていたらしいよ」
「え?あれって学院生の間の事だけじゃなかったんですか?」
「なかったんだよ。それに学院に通っていたのは貴族子女でしょ?高位貴族の令息や令嬢も含まれているから、権力の使い方も分かっているし、大騒ぎにはなっていない。キャシーちゃんはみんなに好かれているね」
「その高位貴族の令息や令嬢とは?」
「聞いてどうするの?」
「どうする……って……」
「侯爵令息や令嬢も混じっているよ。たぶん今度の夜会には全員来ると思う。王妃陛下が取りまとめているし」
「はい?」
王妃様が?
「王太子妃も第二王子妃も名を連ねているね」
「何をしたんだい?キャシー」
「何をって……」
「第二王子妃の悩みを解決したんだよ。王妃陛下がたいそうお喜びでね。王家のごたついていた事が解消されたわけだから。表立っては動けないけど資金援助は出来るからって、個人資産を動かしたらしい」
王妃様の個人資産って、ちょっと怖くなってきたのですが。
「陛下は何も?」
「把握してはいないけど、王妃陛下にちょろっと資金を渡していてもおかしくはないね」
「スゴいね、キャシー。VIP待遇だ」
「規模が怖いです」
ポツリと言うと、ローレンス様に笑われた。
「聖国からはルーカスとマイケルの他に、炎の聖人様が賓客として招かれてるよ」
「炎の聖人様が?」
「招かれてるというか、ぜひ招待してほしいと言われたというか。マイケルが申し訳なさそうに言ってきた。王宮に直接来るって」
「護衛の方も同行されるのですわよね?」
「そりゃねぇ。護衛だからね。3人だっけ?」
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「夫婦?ルーベンス様って女性ですか?」
綺麗な顔をしておられたけれど、短髪で動きもキビキビしていて、男性だと思い込んでいた。
「女性だよ。婚姻後の普段の名乗りはどちらを名乗っても良いらしいよ。聖国の制度だね。スタヴィリス国も同じでしょ?フルネームはアンゲラ・ルーベンス・シュタルケとなるそうだ」
「驚きました」
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ローレンス様、よく知っておられるわね。
「聖国で暇だったからね。聖国蔵書殿で本を読み漁ってたんだよ。制度はそこで知った」
「私も聖国蔵書殿には行きましたわ。本がたくさんな素敵空間でした」
「魔法関係の本もたくさんあったでしょ?」
「はい。光魔法の本もあって、色々な光魔法の使い方を知る事が出来ました」
「キャシーちゃん、どんな事が書いてあったんだい?」
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「無いようです。今の光魔法使いの人数を鑑みると光魔法使いの酷使に繋がるからと。ただし、結界と浄化の複合型空間浄化の魔法陣の公表は考えているそうです。それがあればope中もしくはope後の合併症リスクを減らせると思います」
「キャシーちゃんが進言したの?」
「進言というか、こういった事が気になると教皇様にお話はいたしましたが」
「教皇ってちょっと目付きの悪い悪人顔の、あの人でしょ?」
「先生、お言葉が過ぎますわよ?ご本人も気にしているとは仰っておられましたけれど」
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