3歳で捨てられた件

玲羅

文字の大きさ
50 / 658
学院初等部 2学年生

中途入部者

しおりを挟む
 しばらく逡巡していたフランシス・エンヴィーオが顔をあげた。

「私には何も言う資格がありません。確かにこの3人と馬鹿な事をしたし、3人の中ではリーダーのような役割でした。フェルナー嬢に迷惑をかけた時も、一緒に居てくれた。でもオレは3人のリーダーじゃない。3人が入りたいと言っている、それを肯定も否定も出来ないんです」

「なるほどね。フェルナー嬢は?」

「正直に言うと、少し怖いです。でも3人のやる気は削ぎたくありません。ポーション水剤について知りたいと言う、3人を信じたいとは思います。思いますけど……」

「キャシー、無理はしないようにね」

「大丈夫です。ありがとうございます、お義兄様」

「反対でも賛成でもない、か。どうしたものかな」

 3人は何も言わずに、私とフランシス・エンヴィーオの言葉を聞いていた。

「3人はポーション水剤のどんな事を知りたいのかな?」

 サミュエル先生が聞いた。

ポーション水剤とは何か、ポーション水剤で出来る事、後は薬草の可能性です。ボクは植物魔法しか使えません。だから植物については本能的に分かります」

「本能的に?」

「はい。どんな用途に使えるかとか、毒の有る無しとかです」

 ガタッとナレッジャー先生が立ち上がった。

「それが本能的に分かる?植物魔法ではそこまで分からないはずだが」

「小さい頃からなんとなく分かりましたけど」

 ナレッジャー先生の勢いにタジタジとなりながらも、3人の1人、アッシュ・クレイヴンが答えた。そんな事が分かるなら、薬草研究会にはうってつけだと思う。

「オレ達はそこまで分かりません。魔法も火と土だし。でも、薬草研究会が以前、薬草クッキーを配ってましたよね?あれの作り方を知りたいんです」

「知ってどうするんだい?」

「孤児院のみんなと売ろうかと」

「はい?」

「オレ達は男爵家の出です。とても貧しくて、だから孤児もいるんです。何か出来ないかって思ってて、その……」

 沈黙が落ちた。正直に言うと、目的は崇高だと思う。孤児達の事を気にかけていて、素晴らしいと思う。それが本当なら。

「結論は出せないね。3人共、戻りなさい。バージェフ、エンヴィーオ、フェルナーは残りなさい。それから、付いてきた君達もね。誰か薬草研究会のみんなを呼んでもらえるかな?」

 ナレッジャー先生の指示でみんなが出ていく。

「キャシー、無理はしないようにね。大丈夫。オレはキャシーの味方だから」

「ありがとうございます」

 軽くハグして、ランベルトお義兄様も出ていった。

「さてと、忌憚ない意見を聞かせてもらえるかな?まずはバージェフ、どうだい?」

「私の意見は言った通りです。あぁ、フェルナー嬢の意見とおおむね同じですね。やりたいという、知りたいというやる気を削ぎたくない。ただ、他のみんなの心の内は分かりません。エンヴィーオを入れる時だってあれだけ慎重になったんです」

「エンヴィーオは?」

「あの1件でアイツらは居場所を失いました。主に私の所為せいですが。そんなアイツらに居場所を作ってやりたいとは思います。でも……」

「2人共どちらとも言えないか。フェルナーはどうだい?」

「先程申し上げた通りですよ。怖いのは少し怖いです。でも3人のやる気は削ぎたくありません。それにポーション水剤について知りたいと言う、3人を信じたいと思います」

「他のみんなはどうかな?あぁ、来たみたいだね」

 みんながそぉっと入ってきた。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。みんなの意見を聞きたいんだ」

 サミュエル先生の言葉に、デイジー先輩が口を開いた。

「あちらでも話していたんです。わたくし達は基本的に反対です。でも、機会は与えても良いと思っています」

「機会?」

「体験入部的な?期間を区切って仮入部という扱いにするのですわ。ララ様からの意見ですけれど」

「1度間違ったからって、それですべてがダメって、なんだか違う気がして」

「なるほどね」

 サミュエル先生とナレッジャー先生が頷いた。

「ところでこの中に植物魔法の使い手はいるかな?」

 ガビーちゃんと2人の先輩が手をあげた。

「植物魔法で植物の事は分かる?用途とか有毒無毒とか」

「有毒無毒はなんとなく分かります」

わたくしは分かりませんけど、わたくしの師は分かると言っておられました。植物学者のリネット氏ですけど」

わたくしは大雑把になら分かります」

「大雑把?」

「体調が悪い時にはこれ、とか。それだけしか分からないから、独自に調べるようになったんです。リネット氏の植物図鑑も持ってます。すごく詳しくて、何度も読み返しました。読み返しすぎて3冊購入してもらいました」

「ガビーちゃん、落ち着いて?」

 ガビーちゃんが頬を紅潮させてうっとりと語り出したから、慌てて止めた。ガビーちゃんって植物というか、薬草や薬用樹木について語り出すと止まらないんだもの。

「失礼しました」

 私の声にハッとして恥ずかしそうに頭を下げた後、両手で頬を抑えた。やだ、可愛い。

「いやいや、グクラン嬢の知識にはいつも助かっているよ」

わたくし達は、調合処方本レシピ通りにしか作れませんもの。いつも感心しておりますのよ?」

 私は成分は分かっても、元の薬草や薬用樹木が分からない。だからお役には立てないんだけど、ガビーちゃんは目的を話すと、「○○と△△」とかささっと答えてくれる。

「さっきの3人の内の1人、アッシュ・クレイヴンは植物については、本能的に分かるんだそうだ。どんな用途に使えるかとか、有毒無毒とか」

「それは是非ともと言いたいわね。でもねぇ……」

「エンヴィーオと居て、良い方向に向かう可能性もあるけど、悪くなる可能性も捨てきれないんだよな」

 フランシス・エンヴィーオが俯いた。

「でも、エンヴィーオ君も今は真面目に取り組んでるよ。それは認めても良いんじゃない?」

「認めているよ。それでもさ、男って一緒に居るとバカをやっちゃうんだよ。1人になると我に返るんだけどさ。気が大きくなったりとか。そこまで仲が良くなくても、他がやろうって言っているのに、反対出来なかったりとか」

 同調圧力って事かなぁ?小規模だけど間違ってないと思う。

「それでもさ。認められる所は認めないと。いつまでも偏見で見るって相手にも失礼だろ?」

「だから認めてるって言ってるじゃないか」

「はいはい。落ち着こうか、2人共。今はそういう事を話していないでしょ?」

 言い合いをしていた2人が黙った。

「賛成の人……は居ないみたいだね」

「賛成でも反対でもない人がほとんどだと思いますよ。だからお試し入部をって話してたんです。その間の3人の態度とか姿勢を見て、決めれば良いんじゃないかと。意見は誰だって変わりますよね?」

「そうだね。じゃあ、3人にはお試し入部で話をするよ。バージェフ君、一緒によろしく」

 サミュエル先生がそう言ってまとめた。


 5日後、3人のお試し入部が始まった。3人共お試しでの入部という事は納得していて、教えられた事を真面目にこなしている。分からない事は自分達で相談しあい、最終的に人に聞くという方法をとっている。フランシス・エンヴィーオは1人だったから教えられた事をひたすらメモを取っていた。メモを見ても分からなければ聞いていた。

 3人もメモは取っている。それでも3人という事でどこか安心しているのか、リンゲルマン効果社会的手抜きが働いているのか、相談している回数が多い。

 武術魔法披露会の時に、誰かが3人に注意したらしい。翌日から土魔法使いのアロガン・ソイルが来なくなった。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

処理中です...