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学院初等部 3学年生
5人目の転生者に会いに
「フェルナー嬢はよくご存じですのね」
「私は前世の記憶持ちですから。専門的な事ですので、お役には立てませんが」
「キャスリーン様は医療関係に強いんです」
リリス様が言ってくれた。このテーブルに着いている5人の間ではずいぶん打ち解けたんだけど、自分から発言する事は少なかったのに。
「そうでしたの」
「前世の記憶を持っていると大変だとお聞きしましたわ。文化も何もかも違うって」
「マーシャ様の仰る方って、ホリディ領の猟師様でしたわよね?」
「お知り合いなんですか?」
「家にクワォリーを届けてくださいますの。良い方なのですけれど、お言葉遣いが……」
猟師さんなら仕方がないんじゃないかな。
「お会い出来ませんか?」
ホリディ様がギョッとした目で私を見た。
「お会いになりたいのですか?」
「お話を伺いたいのです」
「フェルナー嬢、おやめになられた方がよろしいわ。あのお言葉には慣れていないと恐怖を覚えると思いますもの」
「その辺りは大丈夫だと思います」
救急救命室勤務の時、鍛えられましたから。主に順番争いで。
「お話はしてみますが、期待しないでくださいね」
「はい」
「それとお1人でお会いになりますの?」
「もうお一方の転生者の方をお誘いしてみようと思います」
「女性?」
「はい。その方に断られたら、もう1人の知り合いの男性にお声をおかけします」
「まぁ、男性とお2人きりで?」
「それは理想ですけれど、やはり常識が疑われると思いますので、その時はローレンス様にお頼みしようかと」
「それならよろしいのですけれど」
茶話会が終わった。話し合った課題の答えは、コポック子爵が公爵夫人に返答してくれると申し出てくれた。
「緊張しました」
「最後の方は、ずいぶん打ち解けてらっしゃいましたわね」
「キャスリーン様がいらしてくださったからですわ。私1人でしたら逃げ出しておりました」
「私もリリス様が居てくださって、心強かったですわ」
実際にリリス様が居なかったら、紅茶に手を付ける事は出来なかったと思う。知らない方ばかりだったし、誰が淹れたか分からない飲み物だったし。
「終わったようだね」
「サミュエル先生。緊張しました」
「コッソリ見てたけど、よくやれてたよ。あのテーブルにはキャシーちゃんの事は話してあったし」
「お気遣いいただきありがとうございます」
「本当は迷ったんだよね」
ん?
「今の状態のキャシーちゃんを連れ出して良いのかどうか。でも母上もコポック子爵達も連れ出した方が良いって言い張ってね。出歩く事も気分転換になるって」
「コポック子爵様にもお気遣いいただいていたのですね」
紅茶を飲む時も注意してくださっていたし、今考えたら注意深く観察されていた気がする。
ブランジット公爵家をおいとまして、リリス様とフェルナー侯爵家に帰る。リリス様は侯爵家で少し休んでから、フェルナー家がシーケリア子爵家に送る事になっている。
「キャスリーン様、本当にお会いになられたいのですか?猟師といっても山賊のごとき風体だというではないですか」
「まだ仰られますの?リリス様。お会いしたいですわ。どのような方かはお会いしないと分かりませんもの」
わざと粗野を装っているという事も考えられるし、猟師をしていて毎日お風呂にも入れないだろうから、身綺麗にしたら実は……、なんて事も考えられる。まぁ、本当にお会い出来るかはまだ分からないけど。それにローレンス様を説得しないといけない。
茶話会から10日程経って、マーシャ・ホリディ様から封書が届いた。曰く、例の猟師さんと話が出来て、あちらも会いたいと言っているらしい。ただし王都には出ていけないから、出来れば出向いてほしいとの事。
「それはそうだろうね。平民だと移動するのも一苦労だろうし」
事情を話すと、意外にもローレンス様の許可はアッサリと降りた。護衛は連れていくように言われたけど。
ララ様にはお仕事の関係で断られてしまった。仕方なくオルブライト様とラッセル様に連絡した。結果、ラッセル様もお会いしたいと返事をくださって、一緒にホリディ領に行く事になった。
連絡をした3日後にフェルナー侯爵家に到着したラッセル様は、ローレンス様と気が合ったらしく、難しそうな話をしていた。お義父様も時々加わっていたから、領地経営に関する事かもしれない。
ホリディ領までは馬車で3日かかる。だから今回はフランも一緒だ。護衛も入れて全部で6人での移動になる。
この日の為に光魔法での結界術を特訓して、水魔法の水弾や氷弾、風壁、風刃も特訓した。植物魔法も頑張ったんだけど、なぜか私が術を発動すると、必ず花が咲いちゃうの。ツタでの相手の拘束だとツルバラになってバラの花が咲いちゃうし、眠りに誘う芳香花だとラベンダーやカモミールが咲き誇って対象の人が即座に寝ちゃうし。寝起きも良いらしいけどね。
植物魔法の先生によると、極わずかだけど、そういった人が報告されているらしい。
「珍しくはないですよ、無いんですけどね……」
そう言って私の魔法属性を調べてくれた司祭様が笑っていた。司祭様も植物魔法は持っているけれど、極々普通の使い方しか出来ないらしい。
ちなみに攻撃的なものだと、ジギタリスとかトリカブトとかスズラン、ヒガンバナ、レースフラワーが咲いた。全部毒草じゃない。なんなの?これ。殺意が高すぎるんですけど。
2泊3日かけて、ホリディ領に到着した。ホリディ侯爵様にご挨拶して、マーシャ様にお礼を言ったら、案内してくださると言う。
「ご迷惑では?」
「犬の散歩もございますので」
ホリディ家では犬を飼っていて、そのお世話をマーシャ様が引き受けているらしい。
着替えをして犬を見せてもらった。大型のアフガンハウンドみたいな長毛犬がマーシャ様を見つけて走ってきて、私に飛び付いた。
「きゃあぁぁ」
押し倒されて、ベロンベロンと顔中を舐められる。
「アガーテ、やめなさい!!」
マーシャ様が必死で止めてくれた。
ひとしきり舐めて満足したのか、犬が私の上から退いてくれた。
「申し訳ございません」
「いいえ」
ホリディ家のメイドさんがタオルを渡してくれた。立ち上がって顔を拭って犬を見ると、お座りをしてシッポをブンブン振っている。
「普段はこんな事は無いのですけれど」
「少し驚きましたけど、嫌ではありませんでしたよ」
「本当に申し訳ありません。アガーテもお謝りなさい」
マーシャ様がアガーテの頭を押さえ付けたけど、ちっとも反省していないよね?この子。相変わらずシッポをブンブン振っているし、目がキラッキラしてるもの。
なんとかアガーテを引き離して、散歩に出る。散歩といってもホリディ家の裏の林なんだけど、これまた広い。侯爵家のカントリーハウスならこんなものなのかな?フェルナー侯爵家のカントリーハウスに行った事が無いから分からないけど。
林を一周して戻ってきた。時間にして約1時間位?途中で休みながらだし、従僕達が広場のような所で棒を投げたりしていたからそこまで疲れていない。ほとんど座って休んでいたし。
「明日にはご案内いたしますわ」
「ありがとうございます」
今日はホリディ家に泊めてもらう。マーシャ様は典型的な内弁慶タイプで、ホリディ家というか、ホリディ侯爵領ではお転婆娘との認識らしい。ただしホリディ侯爵領を一歩出るととたんにオドオドしてしまうんだって。王都ではとても暮らせないと、学院も特別許可を申請してホリディ家のタウンハウスから通っていたそうだ。タウンハウスと学院の往復のみで王都に何があるか全く知らないという。公爵夫人の茶話会は「公爵夫人からの招待だから」と死ぬ気で向かったんだそうだ。
「私は前世の記憶持ちですから。専門的な事ですので、お役には立てませんが」
「キャスリーン様は医療関係に強いんです」
リリス様が言ってくれた。このテーブルに着いている5人の間ではずいぶん打ち解けたんだけど、自分から発言する事は少なかったのに。
「そうでしたの」
「前世の記憶を持っていると大変だとお聞きしましたわ。文化も何もかも違うって」
「マーシャ様の仰る方って、ホリディ領の猟師様でしたわよね?」
「お知り合いなんですか?」
「家にクワォリーを届けてくださいますの。良い方なのですけれど、お言葉遣いが……」
猟師さんなら仕方がないんじゃないかな。
「お会い出来ませんか?」
ホリディ様がギョッとした目で私を見た。
「お会いになりたいのですか?」
「お話を伺いたいのです」
「フェルナー嬢、おやめになられた方がよろしいわ。あのお言葉には慣れていないと恐怖を覚えると思いますもの」
「その辺りは大丈夫だと思います」
救急救命室勤務の時、鍛えられましたから。主に順番争いで。
「お話はしてみますが、期待しないでくださいね」
「はい」
「それとお1人でお会いになりますの?」
「もうお一方の転生者の方をお誘いしてみようと思います」
「女性?」
「はい。その方に断られたら、もう1人の知り合いの男性にお声をおかけします」
「まぁ、男性とお2人きりで?」
「それは理想ですけれど、やはり常識が疑われると思いますので、その時はローレンス様にお頼みしようかと」
「それならよろしいのですけれど」
茶話会が終わった。話し合った課題の答えは、コポック子爵が公爵夫人に返答してくれると申し出てくれた。
「緊張しました」
「最後の方は、ずいぶん打ち解けてらっしゃいましたわね」
「キャスリーン様がいらしてくださったからですわ。私1人でしたら逃げ出しておりました」
「私もリリス様が居てくださって、心強かったですわ」
実際にリリス様が居なかったら、紅茶に手を付ける事は出来なかったと思う。知らない方ばかりだったし、誰が淹れたか分からない飲み物だったし。
「終わったようだね」
「サミュエル先生。緊張しました」
「コッソリ見てたけど、よくやれてたよ。あのテーブルにはキャシーちゃんの事は話してあったし」
「お気遣いいただきありがとうございます」
「本当は迷ったんだよね」
ん?
「今の状態のキャシーちゃんを連れ出して良いのかどうか。でも母上もコポック子爵達も連れ出した方が良いって言い張ってね。出歩く事も気分転換になるって」
「コポック子爵様にもお気遣いいただいていたのですね」
紅茶を飲む時も注意してくださっていたし、今考えたら注意深く観察されていた気がする。
ブランジット公爵家をおいとまして、リリス様とフェルナー侯爵家に帰る。リリス様は侯爵家で少し休んでから、フェルナー家がシーケリア子爵家に送る事になっている。
「キャスリーン様、本当にお会いになられたいのですか?猟師といっても山賊のごとき風体だというではないですか」
「まだ仰られますの?リリス様。お会いしたいですわ。どのような方かはお会いしないと分かりませんもの」
わざと粗野を装っているという事も考えられるし、猟師をしていて毎日お風呂にも入れないだろうから、身綺麗にしたら実は……、なんて事も考えられる。まぁ、本当にお会い出来るかはまだ分からないけど。それにローレンス様を説得しないといけない。
茶話会から10日程経って、マーシャ・ホリディ様から封書が届いた。曰く、例の猟師さんと話が出来て、あちらも会いたいと言っているらしい。ただし王都には出ていけないから、出来れば出向いてほしいとの事。
「それはそうだろうね。平民だと移動するのも一苦労だろうし」
事情を話すと、意外にもローレンス様の許可はアッサリと降りた。護衛は連れていくように言われたけど。
ララ様にはお仕事の関係で断られてしまった。仕方なくオルブライト様とラッセル様に連絡した。結果、ラッセル様もお会いしたいと返事をくださって、一緒にホリディ領に行く事になった。
連絡をした3日後にフェルナー侯爵家に到着したラッセル様は、ローレンス様と気が合ったらしく、難しそうな話をしていた。お義父様も時々加わっていたから、領地経営に関する事かもしれない。
ホリディ領までは馬車で3日かかる。だから今回はフランも一緒だ。護衛も入れて全部で6人での移動になる。
この日の為に光魔法での結界術を特訓して、水魔法の水弾や氷弾、風壁、風刃も特訓した。植物魔法も頑張ったんだけど、なぜか私が術を発動すると、必ず花が咲いちゃうの。ツタでの相手の拘束だとツルバラになってバラの花が咲いちゃうし、眠りに誘う芳香花だとラベンダーやカモミールが咲き誇って対象の人が即座に寝ちゃうし。寝起きも良いらしいけどね。
植物魔法の先生によると、極わずかだけど、そういった人が報告されているらしい。
「珍しくはないですよ、無いんですけどね……」
そう言って私の魔法属性を調べてくれた司祭様が笑っていた。司祭様も植物魔法は持っているけれど、極々普通の使い方しか出来ないらしい。
ちなみに攻撃的なものだと、ジギタリスとかトリカブトとかスズラン、ヒガンバナ、レースフラワーが咲いた。全部毒草じゃない。なんなの?これ。殺意が高すぎるんですけど。
2泊3日かけて、ホリディ領に到着した。ホリディ侯爵様にご挨拶して、マーシャ様にお礼を言ったら、案内してくださると言う。
「ご迷惑では?」
「犬の散歩もございますので」
ホリディ家では犬を飼っていて、そのお世話をマーシャ様が引き受けているらしい。
着替えをして犬を見せてもらった。大型のアフガンハウンドみたいな長毛犬がマーシャ様を見つけて走ってきて、私に飛び付いた。
「きゃあぁぁ」
押し倒されて、ベロンベロンと顔中を舐められる。
「アガーテ、やめなさい!!」
マーシャ様が必死で止めてくれた。
ひとしきり舐めて満足したのか、犬が私の上から退いてくれた。
「申し訳ございません」
「いいえ」
ホリディ家のメイドさんがタオルを渡してくれた。立ち上がって顔を拭って犬を見ると、お座りをしてシッポをブンブン振っている。
「普段はこんな事は無いのですけれど」
「少し驚きましたけど、嫌ではありませんでしたよ」
「本当に申し訳ありません。アガーテもお謝りなさい」
マーシャ様がアガーテの頭を押さえ付けたけど、ちっとも反省していないよね?この子。相変わらずシッポをブンブン振っているし、目がキラッキラしてるもの。
なんとかアガーテを引き離して、散歩に出る。散歩といってもホリディ家の裏の林なんだけど、これまた広い。侯爵家のカントリーハウスならこんなものなのかな?フェルナー侯爵家のカントリーハウスに行った事が無いから分からないけど。
林を一周して戻ってきた。時間にして約1時間位?途中で休みながらだし、従僕達が広場のような所で棒を投げたりしていたからそこまで疲れていない。ほとんど座って休んでいたし。
「明日にはご案内いたしますわ」
「ありがとうございます」
今日はホリディ家に泊めてもらう。マーシャ様は典型的な内弁慶タイプで、ホリディ家というか、ホリディ侯爵領ではお転婆娘との認識らしい。ただしホリディ侯爵領を一歩出るととたんにオドオドしてしまうんだって。王都ではとても暮らせないと、学院も特別許可を申請してホリディ家のタウンハウスから通っていたそうだ。タウンハウスと学院の往復のみで王都に何があるか全く知らないという。公爵夫人の茶話会は「公爵夫人からの招待だから」と死ぬ気で向かったんだそうだ。
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