3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 3学年生

5人目の転生者

 翌日、ホリディ家の馬車で5人目の転生者の元に向かう。アガーテも一緒に馬車に乗っていて、私の隣で寝そべっている。私の足にアゴを乗せて気持ち良さそうだ。ラッセル様は護衛と共に馬に乗っている。馬車は落ち着かないらしく、ホリディ侯爵領に着くまでも乗馬だった。

「懐かれましたわねぇ」

「そうですわね。特に何もしてないんですけど」

 オルブライト様の所の犬にはここまでじゃなかった。というか初対面だったから警戒されてたと思う。唸られたりはしなかったけど、寄ってこなかったもの。

 馬車は領都を離れてどんどん森の中に入っていく。街道程じゃないけど、山道が整備されていて、馬車が通れる。

「もう少し行きましたら、徒歩ですわ」

「分かりました」

 山道沿いの待避所に馬車を止めて、護衛と一緒に山道を進む。マーシャ様は何度も通っているそうで、迷いがない。これから行くのは クワォリー野生鳥獣肉の受け渡しに使っている小屋だそうだ。

「狭い所ですけど、レオナルド様はここで十分だと仰って」

「レオナルド様?」

「これから会いに行く方ですわ。レオナルド・ダ・ヴィンチ様と仰いますの」

 噴き出しそうになった。レオナルド・ダ・ヴィンチを名乗ってるの?その方。え?本名じゃないよね?

「どうなさいましたの?」

「失礼いたしました。お名前が前世の有名な方と同じでしたので」

「そうでしたのね」

 目的の小屋に着いた。

「これは立派な山小屋だねぇ」

「ログハウスですね?」

「まぁ、丸太組工法だからね。間違いじゃない」

「こんな所にどうやって建てたんでしょう?」

「数人の協力者が居れば建てられるよ」

「そうなんですか?重機とか」

「要らない要らない。昔はそんなの無かったでしょ?」

「あ、そっか」

 ラッセル様にこれから会う方のお名前を伝えたら、大笑いしていた。

「本名?」

「分かりません」

「だよね。イタリア人かな?」

「そうだと思います。ダ・ヴィンチを名乗っていますし」

 先にログハウスに入っていたマーシャ様が私達を呼んだ。マーシャ様の後ろに髭もじゃのむくつけき大男が立っている。革のベストに革のズボンを穿いている。身長は2メートルを越えていると思う。

「キャスリーン様、ラッセル様、ご紹介いたしますわ。こちらの方がレオナルド・ダ・ヴィンチ様です。レオナルド様、こちらの方がキャスリーン・フェルナー様、男性の方がカミーユ・ラッセル様ですわ」

「レオナルド・ダ・ヴィンチと名乗っている。よろしく」

 よろしくとは言っているけど、仲良くしたいとは思ってないよね。眼光鋭く睨み付けているような感じだし。あぁ、ダメダメ。先入観は捨てなきゃ。

「それではわたくしは離れておりますわね」

「申し訳ございません。案内、ありがとうございました」

 マーシャ様が行ってしまうと、レオナルド様の眼光が緩んだ。あれ?

 ログハウス内に招き入れられた。

「僕が1番の年寄りだね。まぁ、自己紹介しようか。カミーユ・ラッセルだ。地球での名前はジェレミー・ブルギニョンだった。フランス人だったんだよ」

「キャスリーン・フェルナーです。地球では来栖 恵里菜くるす えりな、エリナ・クルスでした。日本人でした」

「カイル・レヴィだ。今はレオナルド・ダ・ヴィンチと名乗っている。地球ではルイージ・ジャコメッティだった」

「イタリア人かな?レオナルド・ダ・ヴィンチは有名だからね」

「そうなんだ。記憶が戻ったらカイル・レヴィという名前がしっくり来なくてな。勝手に名乗ってみた」

「良いんじゃないかな?僕達は失礼ながら噴き出したけど」

「そっちはどうなんだ?」

「僕はねぇ、急にクロワッサンが食べたくなったんだよ。で、職場で『クロワッサンが食べたい』って叫んだんだ」

「ハッ、ハハッ!!フランス人らしい。そっちは?」

わたくしは生まれた時から記憶が甦っていたみたいです。だから疎まれてて、3歳で殺されかけて捨てられました。フェルナー家に保護されて、今はキャスリーン・フェルナーを名乗っています」

「今は?」

 レオナルド様が絶句してから、言葉を絞り出した。

「はい」

「以前は?」

 言いたくないなぁ。

「殺されかけて捨てられたって事だから、言いたくないんじゃないかな?今はキャスリーン・フェルナーだよ。それで許してやってもらえないかな?」

「あぁ、失礼した。レヴィ家を出てこんな暮らしをしてるから、マナーも何も忘れちまって」

「お気になさらず。こちらこそ申し訳ございません」

「フェルナーって聞いた事があるな。確か宰相の名前じゃなかったか?」

義父ちちは宰相の地位を賜っております」

「そうか。良い家に拾われたな」

「はい。家族には感謝しております」

「レオナルド君はここで猟師をしていると聞いたけど?」

「小さい頃から剣や弓を習わされていたからな。それを活かすには猟師が一番だと思った」

「小さい頃からねぇ」

 ラッセル様は何かが引っ掛かったようだ。私には分からなかったけど。

「僕は隣国の人間だから分からないけど、色々と大変そうだね」

「あんた、隣国の人間なのか。どうしてこっちへ?」

「友人がスタヴィリス国に居るんだよ。同じ転生者でね。今回は来られなかったけど、元はドイツ人でね。今はフェルナー領で酪農をやってる」

「へぇ、酪農」

「仕事を辞めて自由気ままだからね。1年の1/3はスタヴィリス国に居るよ。冬は隣国の方が暖かいから」

「冬は厳しいな、確かに。お嬢さんには転生者の友達は居ないのか?」

「いますよ。本当はその方と来るはずだったんです。救民院のお仕事が忙しくて、休みが取れなくて断念いたしました」

「それでこんなジジィと来たんだよ。フェルナー嬢も学院を卒業したら、教会所属になるんだよね?」

「はい」

「決まってんのか?」

わたくしは光魔法使いですから。1人でも多くの命を救いたいんです」

「オレみたいなのは罰当たりだからな」

「何故ですか?わたくしもお肉は食べます。お肉を育ててくださる方も必要ですし、レオナルド様のように害獣駆除をしてくださる方も必要です」

「害獣ねぇ。あいつらは放っておけば増えて畑を荒らすからな。そんな事は考えてなかったが」

「そうでしょうか。わたくしにはよく分かりませんが、やみくもに獲っているわけではないのでしょう?」

「まぁな。オレだって考えちゃいるさ」

「さっき剣や弓を習っていたって言っていたけど、狩りにも剣や弓を使うのかい?」

「罠が多いけどな。森の中だと剣や槍で、鳥なんかは弓で仕留めている」

「鳥を弓でって難しいんじゃ?わたくし、当たる気がしませんわ」

「慣れだよ、お嬢さん」

 ヒラヒラと私に向かってレオナルド様が手を振る。その腕に目立つ大きな傷跡が見えた。

「その傷跡はどうなされたのですか?」

「ん?あぁ、これはイノシシにやられた。仕留めたと思ったんだが最後の力を振り絞ったんだろうな。牙でザックリ刺された」

「痛くはございませんの?」

「今はな。たまに天気が悪いと疼く時があるが。骨までいってたからな」

「骨折を?」

「お嬢さんにゃ、こんな話は酷だな」

「大丈夫です。前世は看護師でしたから」

「前世はそうでも今は違うんだろう?」

「それでも教会に所属し、医者になるという夢が出来ましたので」

「フェルナー嬢は医者になるんだ。スゴいね」

「スゴくはございません。わたくしの自己満足も入っていますから」

「良いんじゃねぇか?自己満足でも。人の役に立つんだろう?さっき言っていたじゃねぇか。1人でも多くの命を救いたいって。立派だと思うぜ」

「ありがとうございます」









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