3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 3学年生

繋がり

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 ダンスの終わり際、フランシス・エンヴィーオが思い詰めたように口を開いた。

「アロガン・ソイルについて、何か聞いているかな?」

「いいえ、何も。わたくしの耳に入らないように、情報が遮断されているようです」

「アイツは……。フェルナー先輩の所で話そう」

 曲が終わって、お義兄様達の所に戻った。

「フェルナー先輩、少しいいですか?」

「かまわんが。どうした?」

「アロガン・ソイルについてです」

 お義兄様が表情を引き締めた。

ラウンジ待ち合いロビーで話そう」

 3人でラウンジ待ち合いロビーに出る。

「アロガン・ソイルですが、放校されたのち、頼ったアヴァレーツィオ様にも切り捨てられたようです。タウンハウス王都屋敷にも領地にも戻ってないようで」

「放校?」

「キャシーには話してなかったな。あの後キャシーとエンヴィーオを逆恨みしていたらしくて、反省もしてなかったから放校されたんだ」

 いったい何をしようとしたの?貴族学院を放校処分って、かなり重い処分なんだけど。

「具体的には?」

「キャシーには教えられないよ。そんな事をしたらキャシーが気に病むだろう?」

「そうですけれど」

「それで、アヴァレーツィオ様から連絡がありまして、身の回りに気を付けた方がいいと忠告を受けました」

 フランシス・エンヴィーオとアヴァレーツィオの関係って、何だろう?どんな繋がりがあるんだろう?

 考え込んでいる事を見透かされたらしく、ランベルトお義兄様にポンポンと軽く肩を叩かれた。

「考えすぎると禿げるぞ」

「禿げません。悩みすぎてストレスで禿げる事はありますけど」

「考えすぎるなって事」

「分かってます」

「フェルナー先輩とフェルナー嬢も仲が良いですよね」

「キャシーがフェルナー家に来た時、折れそうに細くてちっちゃくてさ。守ってあげなきゃって思ったんだ。兄貴は違う方向に守ってやりたいって思ったらしいけど」

「あぁ、養女でしたね。自然だから分からなくて、教えてもらっても納得出来ませんでした」

 その言葉にちょっと笑ってしまった。ランベルトお義兄様は苦笑いだ。私を妹にと最初に望んだのは、ランベルトお義兄様だったと聞いている。ローレンス様はフェルナー侯爵邸に運ばれた私に興味は無く、ランベルトお義兄様が騒いだから様子を見に来たに過ぎなかったそうだ。

「こんな事になったのも全部自分からだとは分かってます。本当に申し訳ありません」

「それはないんじゃないか?エンヴィーオもクレイヴンもゲイツも反省して、まともな道を歩いている。その道から外れたのはソイルだけだ。こうなっているのはソイルの自業自得だ」

「ありがとうございます」

 フランシス・エンヴィーオが頭を下げた。少し声が震えていたけどそこは気が付かなかった事にしておく。

 プレ社交会の会場に戻って、ミッチェル姉弟に放っておいたお詫びを言うと、何かあったんだろう?と追求された。ランベルトお義兄様が上手くごまかしてくれたけど。


 プレ社交会が終わると、卒業に向けた準備が始まる。卒業式までは普通に勉学に励む事になるんだけど、ここ最近、医師資格取得の為の特別講座の教室の前で、ガウェイン・フィンチー様とフィオナ・イースデイル様を頻繁に見かけるようになった。時にはもう一組の男女と合流して、こそこそと密談している。もう一組の男女がガラハット・フィンチー様と婚約者のキディー・ジェント様らしい。

 何度も言うけど、医師資格取得の為の特別講座の教室は人目に付きにくい。でも中からはバッチリ見えるんだよね。

 気にはなるけれど構ってられないし、どうしたものかと思っていたらある日、アルトゥール・シェアラー先生がいきなり窓を開け放った。

「そこの男女2組、そんな所で密談なぞするものじゃない。早々にそこから立ち去るかこちらの教室に入りなされ」

 招き入れちゃうの?フィンチー兄弟とその婚約者2人は顔を見合わせていたけど、結局シェアラー先生の指示に従った。

「いらっしゃい。あんな寒い所で話し合いなんてするものじゃないよ。身体が冷えてしまう。特に女性は冷やしちゃダメだよ」

 低体温だと免疫力が低下するのは事実だ。とはいっても高体温だと免疫力が上がるわけではないのだけれど。中途半端に医学が進んでいて、民間療法もある程度の医学的証明はされているこの世界では、現代的な医学とは少しだけズレがあったりするけれど、おおむね正しい知識が知られている。

 恥ずかしそうに入ってきた2組の男女を教室の隅に座らせて、リーベルト先生の授業が再開された。2組の相手はシェアラー先生がしている。シャーマニー語の授業も医療用語が混じるようになってきて難解になってきた。

「皆様、何をなさっておられますの?」

「医師資格取得の為の勉強じゃよ。この中には光魔法使いもおるが、皆、医師を目指して勉強しておるんじゃ」

「医師資格……。医師資格を取ったらどこに行きたいとかの希望は?」

「最大限考慮されるが、すでに所属が決まっている者もおる。たいていは本人の希望する所で働くのじゃろうな」

「それなら……」

「とは言っても無理強いは出来ん。自らの領を動けない者もおるからな」

「ですよね」

「医師を探しての事かな?」

「はい。我が領には気鬱きうつの病を発症する者が多いのです。後は享楽的になる者というか、人が争うのを見るのが好きだったり、なんだか殺伐としていて」

 聞くともなしに聞こえてきてしまう。シャーマニー語を用いたお喋りの時間になっても意識は、フィンチー兄弟とその婚約者2人に向いてしまう。全員同じなんだけど。リーベルト先生が苦笑していた。

 特別講座が終わった。みんなが三々五々教室を出ていく。

「あ、光の聖女様」

 婚約者2人の内のどちらかだと思う。どうやら見つかってしまったらしい。

「彼女は教会所属が決まっているからね」

 リーベルト先生の言葉に黙っちゃったけど。その隙に教室を出た。

 でも、領に気鬱の病を発症する者が多いとか、享楽的になるとか、風土病って感じだな。

 風土病とは限られた地域の気候,土壌,生物相などの自然条件と住民の風俗,習慣などがあいまって起こる病気だ。地球で言うとマラリアとかデング熱などが風土病にあたる。日本だと山梨県・佐賀県 ・福岡県などの日本住血吸虫病や、新潟県、その他日本全国で見られたツツガムシ病がある。ちなみに日本住血吸虫病は、山梨県で平成8年2月に終息宣言が出された。

「キャスリーン様、何を考えておられますの?」

「先程の4人様のお話ですわ。ある一定の地域で発症者が多いという病気があるのです。風土病というのですけれど」

「フード病?」

「その地域の風土に起因する病気ですわ。気鬱の病と享楽的な者が多いと言っておられましたでしょう?」

「気鬱の病は不安になったり、物事がおっくうになったりですわよね?享楽的とは真逆な感じがいたしますけれど」

「真逆ですわよね」

 そこが不思議なんだけど。まぁ、双極性障害もあることだし。双極性障害は気分が高まったり落ち込んだり、そう状態とうつ状態を繰り返す病気だ。実習でアルコール依存症の双極性障害になった人に話を聞いたんだけど、そう状態の時は「ここからここまで全部くれる?」って本当にやったらしくて、しかも「好きなの持っていって良いよ」って通りすがりの人に言って、気が付いたら家の中とお財布がすっからかんだったらしい。で、それを見て「何て事をしちゃったんだろう」ってうつ状態になってしまうんだって。見ず知らずの人にもやっちゃうから戻ってくる品が少なくて、ご家族がアルコール依存症治療目的で入院させたって言っていた。










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