3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 4学年生

休日の過ごし方

 シェーン様が鳥さんを連れてきてくれた。合図をするとペタリと地面に伏せて乗りやすくしてくれた。今は騎乗用の座席は無い。脚と杭をロープで繋いで、ダニエル様が作ってくれた階段を登って鳥さんに座って、鳥さんの首を渡された大きな棒で掻いていく。フワフワした羽毛が気持ちいい。鳥さんがクルルと鳴いた。

「気持ちいい?」

 私が鳥さんの首を掻いている間に、ダニエル様が大きな窪みを作って、シェーン様がそこに水を溜めていた。あれ?シェーン様って水魔法も使えるの?鳥さんから降りて、シェーン様の側に行く。

「吐水の魔道具です。お屋敷や学院でも使われていますよ」

 そうだった。あまりにも普通に存在しているから、魔道具だって忘れちゃうんだよね。

わたくしも手伝いましょうか?」

「キャスリーン様はそちらでお休みください。ボロンガ鳥まで見に来てしまいましたよ」

 私の後ろから鳥さんが首を伸ばして、真っ黒な瞳で溜まっていく水を眺めていた。瞳が期待でキラキラしている気がする。

「お嬢ちゃんも水浴びするか?」

「しません」

「水浴びってのは冗談だけどさ。足だけでも浸けて影で涼んだら?」

「影でですか?」

 影だったら涼しいよね。でもいいのかな?

「そこのデッキに椅子とタライを出して、足を浸けると良い」

 ダニエル様の言葉に、シェーン様がさっさと準備をしてしまった。デッキチェアのような低い椅子まで準備されている。

 室内で靴とストッキング靴下を脱いで、デッキに出る。今日は休みだからワンピースを着ていた。

「失礼します」

 用意された椅子に座って足を持ち上げてタライの水に浸す。

「気持ちいい」

 屋根のひさしが影を落としていて、風が通って気持ちいい。鳥さんも水浴びを終えたらしく、今は水の中に座って気持ち良さそうにしていた。

 その内ウトウトしてしまったらしい。気が付いたらサミュエル先生が戻ってきていた。

「よく眠れたかな?」

「せっ、先生、お戻りになっていたのですね」

「ついさっき戻ったよ。はい。お土産」

 ポイっと口の中に黒っぽいツブツブとしたベリーが放り込まれた。甘酸っぱくて美味しい。

「ブラックベリーだよ。ジャムになっているのも買ってきたから、マリアに何か作ってもらおう」

わたくしも何か出来ませんか?」

「キャシーちゃんは今日は休む事が仕事だよ」

 休む事がって言われても、何かをしていたいんだよね。具体的には思い付かないけど。

「帰ってきたら、ダニエルとシェーンがお姫様にはべる騎士のようにキャシーちゃんを守っててさ。見ていて面白かったよ」

「面白がらないでください」

 そういえば、サンダルを履いているけど、誰が?ダニエル様やシェーン様だったら恥ずかしいんだけど。

「ダニエル様とシェーン様は、どうして戦っておられるのですか?」

「訓練というか、なんだろうね。あの2人は元々お互いをライバル視していたからね。日常茶飯事というか、良くある光景だよ」

「お怪我とか」

「怪我しても自業自得。その対処まで含めて訓練だから。あまりに酷いと私が治療するハメになるけどね」

「そういえば、マリアさんは?」

「マリアはジェラルドの所だよ。ちょっと用事を頼んだから」

 サミュエル先生が笑いながら私を見た。

「ダニエルとシェーンは「様」がついているのに、マリアは「さん」なんだね」

「マリア様って呼んだら、思いっきり嫌な顔をされたんです。様って付けないでって言われちゃって」

「それで「さん」に落ち着いたんだ」

「妥協してもらいました。呼び捨てでって言われたんですけどね」

「マリアはそう言うだろうね。キャシーちゃんって呼び捨ては抵抗あるの?」

「侯爵家の使用人には抵抗は無いです。他のお家の人だって思っちゃうのかもしれないですね」

「ダニエルにもシェーンにも呼び捨てで良いんだよ?護衛なんだし」

「……頑張ります」

 ダニエル様とシェーン様の訓練には決着が付いていた。また向かい合ってるけど、今度は何も持っていない。

「先生、またやるんですか?」

「今度は体術だね。さっきは剣術だったから。で、その次はなんでもアリだろうね」

「なんでもアリ?」

「剣、体術、いろんな武器、魔道具もアリかな?時間内に勝ちゃあ良いんだから。さっきの剣術ではシェーンが勝ったでしょ?ダニエルはこれ以上負けたくないだろうし、シェーンもキャシーちゃんに負けるところを見せたくないだろうからね。キャシーちゃん、モテモテだね」

「嬉しくはないですね。お怪我をしたらって心配になりますもの」

「キャシーちゃんは家の影達の中でも評判が良いんだよ」

「先生のお家のってブランジット公爵家のって事ですよね?わたくしはダニエル様とシェーン様とマリアさんしか知りませんけど」

「学院内に何人か居るよ。キャシーちゃんの護衛って訳じゃなくて、家から貸し出してるのが」

「人材派遣ですね」

「『テンセイシャ』によるアイディアだよ。ブランジット公爵家というか王家にも『テンセイシャ』は居たからね」

「そうなんですね」

 しばらく2人とも黙ってしまった。ダニエル様とシェーン様はさっきから投げたり投げられたり、殴ったり殴られたりしている。鳥さん達は日陰になっている所で目を閉じていた。寝ているのかな?

「サミュエル様、キャスリーン様、昼食にしませんか?」

 帰ってきていたマリアさんが、サンドウィッチを持ってきてくれた。最近は昼食を食べずに1日2食だったから、ちゃんとした昼食は久しぶりだ。

「ダニエル、シェーン。そこまでにしておきなさい。キャスリーン様の前で何をやっているの?」

 マリアさんの声に少しだけ反応した2人だったけど、訓練は終わらないらしい。

「申し訳ありません、キャスリーン様。お見苦しいものを」

「訓練なのでしょう?少し心配ではありますが見苦しくなんてないですよ」

 フェルナー侯爵家でも私兵達が訓練してたし、ランベルトお義兄様も交ざってたし、必要な事だって聞いていたから。

 私とサミュエル先生とマリアさんで、昼食を食べる。私は動いてないからお腹は空いていない。3切れ食べたけどそこで手が止まってしまった。

「キャシーちゃん、もう良いのかい?」

「動いてませんから」

「元々食が細いのに、心配になるね」

「これでも食べられるようになったんですよ?」

 マリアさんの作ってくれたミックスベリージュースは、甘酸っぱくて美味しかった。柑橘類も入っているらしくて、濃厚だけどさっぱりしている。

「美味しかったです」

「お口に合いましたか?」

「はい。ありがとうございました」

 食後は少し休んでサミュエル先生に魔力配分を教えてもらった。初日に言われてずっと気になっていたんだけど、私は目の前の患者に全力を出そうとしてしまうらしい。それが悪いとは言わないけど続けていると、魔力切れになるのが早くなるそうだ。

「キャシーちゃんは魔力量が多いし、威力が並の光魔法使いの非じゃないから、気にならなかっただろうけど、こういう場所ではね。魔力配分を考えないとやっていけないからね。ジーンあの女性もそれを危惧したんだろうし。ここ最近、キャシーちゃんは夕食後すぐに寝ちゃってたでしょ?あれは気絶してるのと同じだよ。気が付かない内に魔力切れ寸前になってたって事だね」

 魔力配分の訓練は、魔力を弱く細く長時間続ける事。これが案外難しい。光魔法じゃなくて、水魔法でやってるんだけど、もったいないからってタライに水を溜めている。ダニエル様とシェーン様の汗を流すのに使われたらしい。それでもまだまだ水は出せるから続けているんだけど、今度は鳥さん達が水を飲みだした。美味しいらしく何度も飲みにくる。

「お嬢さん、魔法の練習かい?」

 ジェラルドさんがやって来た。サミュエル先生と話があったらしい。







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