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学院中等部 8学年生
お泊まり会 ④
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お泊まり会3日目。夜半過ぎから降りだした雪が、2cm位積もっていて、昨日お泊まりした狼達は庭に喜び勇んで飛び出していった。今も降っているんだけど、お構い無しだ。私達もヌクヌクに着込んで、朝食後に庭に出る。
「さっむーい」
「狼達は元気ねぇ」
「何をしてるんだい?ララ嬢」
「雪だるまよ。雪が積もったら雪だるまを作るの。当たり前じゃない」
「ララさん、その当たり前、私達には当たり前じゃないわ」
「えっ?そうなの?」
2cm程の積雪だし、小さな雪玉を作るのも一苦労だけど、最初は呆れたように見ていたレオナルドさんがララさんと一緒に作り出して、いつのまにかみんなが雪玉作りを始めた。作って転がしておくと、狼達が踏み潰しに来るけど。最初は恐縮していた調教師のお兄さんはラッセル様が「大丈夫だから」と言うとハラハラした顔で見守り始めた。
踏み潰されないように雪玉作りを早くしていくと、なぜか始まるララさんとセシルさん対レオナルドさんの、雪合戦。レオナルドさんは大きいからってハンデ戦みたい。
「お嬢様」
「浴室の用意だけお願い。あれじゃ終わる頃には汗だくだわ」
「かしこまりました」
フランが別邸の使用人に指示を出す。
「キャスリーンちゃんもやりましょうよ」
雪うさぎを作っていると、楽しそうなララさんが声をかけてくれた。
「私、投擲には自信が無いのですが」
雪玉を作って投げると、4m位先にポトッと落ちた。
「キャスリーンちゃん?」
「全力ですよ?」
「えっ?短くない?」
「フェルナー嬢はお嬢様だから」
「体力はあるのですけれど」
「お嬢様よね?」
「光魔法って、案外体力を使うんですよ。患者の元に走っていったりもしますし」
「それは光魔法だからじゃないわね」
「それにドレスって案外重いんです」
「えっ?そうなの?」
「そうなんですよ。上はともかく、スカート部分はフワッとさせるのに布を何枚も重ねますから、だいたい5㎏位だと思います」
「あぁ、そういう……」
何を想像したのか、レオナルドさんとジョーダンさんが、顔を赤らめた。
「ジョーダン、何を想像したんだい?レオナルド君も」
「いや、別に」
「なんでもないっ」
昼食後に今度は室内で静かに過ごす。セシルさんはお菓子作りをはじめて、リーサさんとララさんはそれを手伝っている。私はジョーダンさんの魔道具作りを見学していた。レオナルドさんも一緒だ。
「キャスリーン、そろそろ話して欲しいんだが?」
「例の話ですわよね?」
「何の話だい?」
「私の実家のお話ですわ」
「実家?」
「私が養女というのはご存じですわよね?」
「聞いたな」
「その、私が生まれた家の話ですわ」
「あぁ、そういう事。レオナルド君は何が知りたいんだね?」
魔道具の魔方陣を刻む手を止めずに、ジョーダンさんが言う。
「気にならないのかよ」
「ならないね。フェルナー嬢はフェルナー嬢で、それ以外の何者でもない。過去がどうであれ、我々が知っているのは目の前にいる彼女だ。それ以外の何を知りたいんだね?」
「ドライな考え方だな」
「仕事柄だね。過去は大切だけど、それに囚われていたら未来を見通せないからね」
「過去に囚われると未来を見通せない、か」
「ラッセル室長の教えだよ。ゴーヴィリスの税収部には、ラッセル室長の言葉がいたる所に残っているんだよ」
「へぇぇ」
「で?何を知りたいんだい?フェルナー嬢が待ってるよ?」
「……聞きたいのは実家の事をどう思ってるかだ。恨んでいたりしないのか?」
「恨みですか?ございませんわね。感じていたのは恐怖です。今はほとんどございませんけれど」
「恐怖?」
「命の危機でしたからね。後から思い返すとよく教会を目指したって、あの時の自分を褒めてあげたいですわ」
「あぁ、そうだな。キャスリーンは自分から出たんじゃないもんな」
「私の実家の事を聞きたかったのは、レオナルドさんと私を重ね合わせたからですの?」
「まぁな。同じ転生者でも、家を出たのは3人。ララは一応円満に出ているが、俺達は違うだろう?だから聞いてみたかった」
「家を出た経緯は全員違いますものね。レオナルドさんはお戻りになられたのですわよね?」
「戻ってねぇ。技能だけ叩き込まれただけだ。家に戻る気はねぇよ」
「あら」
「あの腹黒に家に戻されたけどな。継ぐ気はねぇって顔を合わせりゃケンカしてる」
腹黒ってサミュエル先生よね?顔を合わせたらって、ご家族の事かしら。
「ケンカ?」
「家業を継げって煩せぇんだよ」
「ん?レオナルド君は……」
「ウチは特殊でな。家は長子相続だが、家業は一族中もっとも実力がある者が候補としてあげられて、さらに特別な訓練を課されるんだ。候補は俺と従兄の2人だったんだが、ここに来てその従兄がな」
レオナルドさんが渋い顔をした。何かあったらしい。
「何があったんだい?」
「依頼人に惚れて、駆け落ちした」
あらら。
「もうひとり有能株が居たんだが、ソイツは主家の許可を得て国を出やがった」
「残ったのがレオナルド君だけと」
「家業を継ぐって、何をされますの?」
「訓練を見んだよ。後は特殊技能の伝承」
「「特殊技能?」」
「声を揃えんな。詳しい事は言えねぇけどな」
「色々あるんだね。もうひとりの有能株って?」
「あー、キャスリーン絡みだ」
「シェーン様?」
「まぁな。あの無表情と執着のなささえなけりゃ、家業の長を継いでたのはアイツだったらしい。戻ってから教えられたが」
「……今さらだけど、その話は僕達が聞いても良かったのかい?」
「良くねぇよ。まぁ、おっさん達は転生者だし、その辺は前世の常識ってもんがあるだろ?一応信用してんだぜ」
「それは光栄だね」
少し苦笑いしながらジョーダンさんが言う。
「執着がないのもダメなんだ?」
「執着は生かす力にもなるからな。○○の為に生きて帰るって思えたりな」
「あぁ、そういう事か。ん?今、レオナルド君がフェルナー嬢に執着してるのは?」
「執着というか、放っておけないんだよ。儚くて消えてしまいそうなのに、実は生を諦めない所とか。たまに自分はどうなっても良いって見える所とか、コロコロ変わって惹き付けられる。だから放っておけない」
「なるほど。分かる気はするね」
「んで?何を作ってるんだ?おっさん」
「おっさんと言うな。これは飛行装置の部品だ」
「飛行装置?」
「ニホンのアニメで有っただろう?1人乗りの白い飛行装置。滑空が主な用途の白い機体の女の子が乗ってた」
「あぁ、あれ。えっ?作れんの?」
「魔法頼りだけどね。計算通りにいけば、上手く飛べると思う」
「飛んでみてぇ」
「試運転してみるかい?組み立てが順調にいけば、来夏には出来る予定だよ」
「予定が合わせらんねぇ。ラッセルのおっさんの護衛もいつまでって期限が無ぇし」
「ラッセル室長は自由人だからね。あの自由さに何回振り回されたか。有能だから文句も言えないんだが」
「分かるわぁ」
レオナルドさんとジョーダンさんが話してるのを見ていると、ポイっと口に何かが入れられた。
「何を話してたの?」
「セシルさん」
モゴモゴと飲み込んで、セシルさんを見たら、もうひとつ口に入れられた。
「はい、キャスリーンさん、ミルクティーよ」
「ありがふぉうふぉざいまふ」
リーサさんの差し出してくれたミルクティーで、口の中を洗い流して振り向くと、もうひとつを摘まんだセシルさんがそこに居た。
「今はご遠慮くださいませね?」
「あら、残念」
セシルさんが残念そうに手を引っ込めかけたら、レオナルドさんがその手を掴んで自分の口に持っていった。
「さっむーい」
「狼達は元気ねぇ」
「何をしてるんだい?ララ嬢」
「雪だるまよ。雪が積もったら雪だるまを作るの。当たり前じゃない」
「ララさん、その当たり前、私達には当たり前じゃないわ」
「えっ?そうなの?」
2cm程の積雪だし、小さな雪玉を作るのも一苦労だけど、最初は呆れたように見ていたレオナルドさんがララさんと一緒に作り出して、いつのまにかみんなが雪玉作りを始めた。作って転がしておくと、狼達が踏み潰しに来るけど。最初は恐縮していた調教師のお兄さんはラッセル様が「大丈夫だから」と言うとハラハラした顔で見守り始めた。
踏み潰されないように雪玉作りを早くしていくと、なぜか始まるララさんとセシルさん対レオナルドさんの、雪合戦。レオナルドさんは大きいからってハンデ戦みたい。
「お嬢様」
「浴室の用意だけお願い。あれじゃ終わる頃には汗だくだわ」
「かしこまりました」
フランが別邸の使用人に指示を出す。
「キャスリーンちゃんもやりましょうよ」
雪うさぎを作っていると、楽しそうなララさんが声をかけてくれた。
「私、投擲には自信が無いのですが」
雪玉を作って投げると、4m位先にポトッと落ちた。
「キャスリーンちゃん?」
「全力ですよ?」
「えっ?短くない?」
「フェルナー嬢はお嬢様だから」
「体力はあるのですけれど」
「お嬢様よね?」
「光魔法って、案外体力を使うんですよ。患者の元に走っていったりもしますし」
「それは光魔法だからじゃないわね」
「それにドレスって案外重いんです」
「えっ?そうなの?」
「そうなんですよ。上はともかく、スカート部分はフワッとさせるのに布を何枚も重ねますから、だいたい5㎏位だと思います」
「あぁ、そういう……」
何を想像したのか、レオナルドさんとジョーダンさんが、顔を赤らめた。
「ジョーダン、何を想像したんだい?レオナルド君も」
「いや、別に」
「なんでもないっ」
昼食後に今度は室内で静かに過ごす。セシルさんはお菓子作りをはじめて、リーサさんとララさんはそれを手伝っている。私はジョーダンさんの魔道具作りを見学していた。レオナルドさんも一緒だ。
「キャスリーン、そろそろ話して欲しいんだが?」
「例の話ですわよね?」
「何の話だい?」
「私の実家のお話ですわ」
「実家?」
「私が養女というのはご存じですわよね?」
「聞いたな」
「その、私が生まれた家の話ですわ」
「あぁ、そういう事。レオナルド君は何が知りたいんだね?」
魔道具の魔方陣を刻む手を止めずに、ジョーダンさんが言う。
「気にならないのかよ」
「ならないね。フェルナー嬢はフェルナー嬢で、それ以外の何者でもない。過去がどうであれ、我々が知っているのは目の前にいる彼女だ。それ以外の何を知りたいんだね?」
「ドライな考え方だな」
「仕事柄だね。過去は大切だけど、それに囚われていたら未来を見通せないからね」
「過去に囚われると未来を見通せない、か」
「ラッセル室長の教えだよ。ゴーヴィリスの税収部には、ラッセル室長の言葉がいたる所に残っているんだよ」
「へぇぇ」
「で?何を知りたいんだい?フェルナー嬢が待ってるよ?」
「……聞きたいのは実家の事をどう思ってるかだ。恨んでいたりしないのか?」
「恨みですか?ございませんわね。感じていたのは恐怖です。今はほとんどございませんけれど」
「恐怖?」
「命の危機でしたからね。後から思い返すとよく教会を目指したって、あの時の自分を褒めてあげたいですわ」
「あぁ、そうだな。キャスリーンは自分から出たんじゃないもんな」
「私の実家の事を聞きたかったのは、レオナルドさんと私を重ね合わせたからですの?」
「まぁな。同じ転生者でも、家を出たのは3人。ララは一応円満に出ているが、俺達は違うだろう?だから聞いてみたかった」
「家を出た経緯は全員違いますものね。レオナルドさんはお戻りになられたのですわよね?」
「戻ってねぇ。技能だけ叩き込まれただけだ。家に戻る気はねぇよ」
「あら」
「あの腹黒に家に戻されたけどな。継ぐ気はねぇって顔を合わせりゃケンカしてる」
腹黒ってサミュエル先生よね?顔を合わせたらって、ご家族の事かしら。
「ケンカ?」
「家業を継げって煩せぇんだよ」
「ん?レオナルド君は……」
「ウチは特殊でな。家は長子相続だが、家業は一族中もっとも実力がある者が候補としてあげられて、さらに特別な訓練を課されるんだ。候補は俺と従兄の2人だったんだが、ここに来てその従兄がな」
レオナルドさんが渋い顔をした。何かあったらしい。
「何があったんだい?」
「依頼人に惚れて、駆け落ちした」
あらら。
「もうひとり有能株が居たんだが、ソイツは主家の許可を得て国を出やがった」
「残ったのがレオナルド君だけと」
「家業を継ぐって、何をされますの?」
「訓練を見んだよ。後は特殊技能の伝承」
「「特殊技能?」」
「声を揃えんな。詳しい事は言えねぇけどな」
「色々あるんだね。もうひとりの有能株って?」
「あー、キャスリーン絡みだ」
「シェーン様?」
「まぁな。あの無表情と執着のなささえなけりゃ、家業の長を継いでたのはアイツだったらしい。戻ってから教えられたが」
「……今さらだけど、その話は僕達が聞いても良かったのかい?」
「良くねぇよ。まぁ、おっさん達は転生者だし、その辺は前世の常識ってもんがあるだろ?一応信用してんだぜ」
「それは光栄だね」
少し苦笑いしながらジョーダンさんが言う。
「執着がないのもダメなんだ?」
「執着は生かす力にもなるからな。○○の為に生きて帰るって思えたりな」
「あぁ、そういう事か。ん?今、レオナルド君がフェルナー嬢に執着してるのは?」
「執着というか、放っておけないんだよ。儚くて消えてしまいそうなのに、実は生を諦めない所とか。たまに自分はどうなっても良いって見える所とか、コロコロ変わって惹き付けられる。だから放っておけない」
「なるほど。分かる気はするね」
「んで?何を作ってるんだ?おっさん」
「おっさんと言うな。これは飛行装置の部品だ」
「飛行装置?」
「ニホンのアニメで有っただろう?1人乗りの白い飛行装置。滑空が主な用途の白い機体の女の子が乗ってた」
「あぁ、あれ。えっ?作れんの?」
「魔法頼りだけどね。計算通りにいけば、上手く飛べると思う」
「飛んでみてぇ」
「試運転してみるかい?組み立てが順調にいけば、来夏には出来る予定だよ」
「予定が合わせらんねぇ。ラッセルのおっさんの護衛もいつまでって期限が無ぇし」
「ラッセル室長は自由人だからね。あの自由さに何回振り回されたか。有能だから文句も言えないんだが」
「分かるわぁ」
レオナルドさんとジョーダンさんが話してるのを見ていると、ポイっと口に何かが入れられた。
「何を話してたの?」
「セシルさん」
モゴモゴと飲み込んで、セシルさんを見たら、もうひとつ口に入れられた。
「はい、キャスリーンさん、ミルクティーよ」
「ありがふぉうふぉざいまふ」
リーサさんの差し出してくれたミルクティーで、口の中を洗い流して振り向くと、もうひとつを摘まんだセシルさんがそこに居た。
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