3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

お泊まり会 ~検証~

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 中身の確認と使い方の説明を受けて、出した物を仕舞っていく。説明されないと使い方が分からない物もあったし、確認しておいて良かったと思う。長い背もたれの無いキャンピングチェアだと思ってたら、コットという簡易ベッドだったし。キャンプ用品は分かりません。

 ジェームスさんが来て、直接説明してくれたら良かったんだけど、お仕事みたいだし邪魔は出来ない。

 ラッセル様とセシルさんが合計金額を「50万rqリクァ位」と算出してくれた。100rqリクァが10円位だから、5万円位?この位なら、お小遣いで賄えるから、ラッセル様に預けておいた。

「キャシーちゃんはやっぱりお嬢様よねぇ」

「お小遣いは頂いておりますし、使い道もございませんから」

「学院ではそうよね。私は学費が免除だったし学院内の飲食物は一部を除いてコミコミでしょ?助かってたわ。無料で衣食住が満ち足りて、勉強まで出来るんだもの。もう少し真面目に学んでおけば良かったわ」

「えっ?学院って無料なの?」

 意思決定部屋ディスカスルームに戻りながら、セシルさんが聞く。

「平民からの特待生は、無料ですわ。特待生ではなく聴講生とでもいうのでしょうか?そういった方もいらっしゃいますけれど、年に1人か2人ですわね」

「全学年で何人位なの?」

「貴族の子女、8歳から18歳までが集いますからね。全部で、えっと?」

「今年は全学年で384人だよ」

 言いよどんだら、サミュエル先生が助け舟を出してくれた。

「あら、案外少ないのね」

「少し前は850人近く居たんだけどね。王族の出産に合わせる貴族は多いから」

「あぁ、そういう事なのね。ん?あら?それだったらもしかしてむちゃくちゃな結婚とか、有ったりしないんですか?」

「その辺りは法律で決められてるよ。私の親の代には、根絶されたね」

 貴族法ね。「貴族の婚姻の爵位差は2つまで」とかバカバカしい法も有るけれど、ほとんどは貴族個人の権利と責任に関する事だ。

    『権力を持って下位貴族から搾取してはならない』とか『平民は国の宝であり、虐げる事は王に弓引く行為謀叛の企みと同じである』とか、権力を持つなら責任が付いて回るものだという至極当たり前の事が、明文化されている。それでも下位貴族から搾取しようとする高位貴族は居るし、無くならない。その中に婚姻に関する法も、定められている。

「それなら良かったわ。掠奪婚りょうだつこんが良しとされる国もあるから、その類いなのかと思ったわ」

掠奪婚りょうだつこん?」

「誘拐婚と言った方が良いかしらね。男性が求婚する女性に対して誘拐する風習よ。誘拐された女性は、男性の親族全員に説得されるの。友人にひとり居たのよ。同じ製菓学校で学ぶ留学生でね。就職先も決まって後は卒業するだけって時に誘拐されてね。学校も退学しちゃうし、心配していたの。5年位経ってから、偶然再会したのよ。旦那さんがいる時は幸せそうに笑ってたけど、居なくなったら泣き出しちゃって。戻ってきた旦那さんを私達が責め立てたわ。彼女は「受け入れたのは自分だから」って旦那さんを庇ってたけど、2人の子供が女の子でね。その子を誘拐されたらどう思うの?って聞いたら「そこまでして望まれたんだと思って喜ぶと思う」って言ったのよ。信じられなかったわ」

「そんな……。犯罪じゃない」

「犯罪よ。でも彼女も言ったけど「受け入れたのは自分」なの。そう言われたら、こちらは何も言えないわ」

「オノシアエ大陸では普通に行われている習慣らしいね。アサールイ大陸でも内陸部は多いんだっけ?」

「多いですね。だから父は私達を内陸部には連れて行きませんでした。あちらの父の友人も、来るなって警告してくれていましたし」

「良い人なのね」

「良い人よ。それに全員が掠奪婚りょうだつこんを良しとしている訳じゃないの。誘拐だ、犯罪だって責める人もいる。そもそもあの場所はどこが支配しているかハッキリしないのよ。だからどこに訴えて良いのか分からない。どうしようもないわ」

「もし、ローレンス様がその被害にあっていたのなら、どうすれば……」

「考えられるね。その場合は国として動くよ。スタヴィリス国として、認められないしね」

 ここでどう話をしても、実際の所は分からない。ローレンス様が掠奪婚りょうだつこんをされたのかも分からないし、他の何かかもしれない。はっきり分かっているのは、ローレンス様は行方不明で、その居場所はプセロイン天主国であるという事だけ。

 そう。だけなのだ。確信がある訳じゃない。ローレンス様を連れ去った馬車にはプセロイン天主国で使われいた紋章が付いていた。ここまではなんとか信じて良いと思う。複数の根拠が示されているし、アヴァレーツィオからの情報提供もあった。アヴァレーツィオ自身に少しの嫌悪は覚えるけれど、だからといって全てを否定しようとは思わない。

 それに私の脳裏に浮かんだあの風景。そこに居た人物がローレンス様だというのは、私の感覚でしかない。そこも確信を持てていない部分だ。だいたいあの『脳裏に浮かぶ光景』もいったい何なのか分からない。フェアールカク領の熊さんミハエルの見た光景だとすれば、過去の物だ。その次のローレンス様に至っては、過去現在未来、どれかすら分かっていない。

「やってみようかな?」

「ん?キャシーちゃん?」

 手を組んでお祈りをする。願うはミリアディス様の健康とご多幸。ミリアディス様が幸せであられますように。ただそれだけを心を込めて祈る。

 すぐに脳裏にミリアディス様の執務室が浮かんだ。エドワード様と一緒にお茶を飲みながら、何かを話している。

「キャシーちゃん、ちょっと、しっかりっ」

 耳元で誰かが喚いている。フワッと身体が浮いた気がした。少し固めの何かに身体が降ろされて、額を拭われた。

 直後に温かいモノが全身を通過する。頭から足に向かって、CTスキャンのようだ。あれは温度は感じないけど。

 続いて冷たい物が額に乗せられた。そこで意識がはっきりと覚醒した。

「キャシーちゃん、良かった」

「先生?え?どうして移動を?」

 私が居たのはさっきまで座っていた椅子じゃなく、意思決定部屋ディスカスルームの隅に置かれていたカウチソファー。そこに寝かされていた。

「覚えてないのかい?急にキャシーちゃんが倒れてきて焦ったよ」

「倒れてきた?」

「顔色は真っ青だし、冷や汗かしら。汗だくだし、焦ったわ」

「リーサさん」

「ブランジット様がお姫様抱っこで運んだの。羨ましいぃ。私もされてみたぁい」

「ララさん?えっと、何を?」

「ブランジット様が何かしてたわね。あれは何を?」

「診断だよ。意識が混濁していたからね。あり得ないと思うけど、一応毒の有無を確認した。同時に健康診断もしたんだけど、まぁ、健康だね。少々貧血ぎみだけど」

 先生の手を借りて、カウチソファーから起き上がる。身体を起こすと掛けられていた毛布が、身体を滑り落ちていった。

「で?いったい何があったんだい?」

 滑り落ちた毛布をキャッチして、我が家フェルナー家のメイドにごく自然に手渡して、サミュエル先生が聞く。

「ちょっと仮説を検証してみようと思って」

 先生に、というか、その場にいる全員にさっきしていた事を話す。

「特定の光景が脳裏に浮かぶ現象の検証か。あれはなんとも不思議な感じだね。私はあの時の1回だけだけど」

「光魔法独特の現象なのかしら?」

「私はそんな経験は、1度も無いけど?」

 リーサさんの言葉に、ララさんが答える。

「キャスリーンちゃんとブランジット様だけって事?」

「何が違うのかしら?」

「私は1回だけだよ?」

「じゃあ、ブランジット様はたまたま、偶然、偶発的って事?」

「そこまで言葉を重ねられると、地味に傷付くね。それでキャシーちゃん。検証って何をしたんだい?」














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