369 / 658
学院中等部 9学年生
貴族籍の写しの受け取り
しおりを挟む
ララさんが帰る日に、ついでに貴族籍の写しを受け取りに行く事にした。
サミュエル先生は昨日帰っちゃってるし、レオナルドさんとラッセル様とセシルさんは、別邸でのんびりすると言っていた。
「キャシーちゃん、本当に一緒に行かなくて大丈夫?」
「大丈夫ですわよ。ララさんも心配性ですわね」
「心配性だからじゃないのよ?」
「ダニエルさんもマリアさんもいらっしゃいますもの。心配はございませんわ」
「あぁ、うん。そこは信頼してるし、疑ってもいないのよ。でも、やっぱり心配なの」
「受け取りだけですもの。心配には及びませんわ」
なおも心配だと言い募るララさんを教会で降ろして、総官庁に向かう。もうギャスパー・リンドは居ないよね?ギャスパー・リンドは即日解雇だったと聞いている。あれから5日以上経っているし総官庁には居ないと思うんだけど、なんだか嫌な感じがするのよね。予感というか。
総官庁に着いた。ダニエルさんとマリアさんが周りを確認して、馬車から降ろしてくれる。
「「フェルナー嬢」」
「リトルトン様とバートリッジ様?どうなされたのですか?」
「ギャスパー・リンドが来るかもしれないと、あの方が仰いましたので」
「あのお方の懸念が的中してしまったようです」
「中にギャスパー・リンドが?」
「誰かが引き入れたらしいですね。我々の手の者が監視していますが」
「先程、警邏隊に通報を行いましたので、もう少しお待ちください」
守ってくれるのは嬉しいんだけど、アルベリク・リトルトンとミカエル・バートリッジが私の両隣に立って、お互いを牽制しているのが分かるのが、もうね、なんというか……。
2人が私に対して好意を持っている事は知っている。実際に言われてもいるし。でも、アルベリク・リトルトンには婚約者がいるし、ミカエル・バートリッジは……知らないけど。なんとなく信用しきれない感じがする。
遠くにウィリアム・トレイシーが居るのが見えた。ミカエル・バートリッジのお目付け役かしら?それともアルベリク・リトルトン?
荷台に黒く頑丈な箱が搭載された荷馬車が総官庁前に横付けされた。その前後に居た兵士達が総官庁に入っていく。
「私は、馬車に戻っていた方が良さそうですわね」
「そう、ですね」
「中に居られれば安全でしょうが」
「お2人もどこかに隠れられた方がよろしいのでは?特にリトルトン様は、ギャスパー・リンドに顔を見られております。直接的に狙われたのは私でしょうけれど、リトルトン様も逆恨みの対象になっているかもしれませんわ」
「心配していただけるのですか?」
「私の巻き添えになられては、申し訳ございませんもの」
喜色を隠さないアルベリク・リトルトンだけど、単に面倒な事になりそうだからです。こういう時、淑女の仮面って便利よね。
馬車に入ってしばらくすると、盛大に喚いている男性の声と、それを叱りつける兵士の声が聞こえた。馭者との会話用の小窓からソッと見ると、ギャスパー・リンドが拘束されつつも大暴れしながら、荷馬車に放り込まれていた。
あれって護送車よね?
喚き声を周囲に撒き散らしながら、ギャスパー・リンドが連れ去られると、静寂が戻ってきた。
「フェルナー嬢、もう良いようです」
「兵士も全員引き上げました」
「ありがとうございます。では受け取りに行ってきます」
「私も行きますよ」
「護衛の数は増やした方が良いですよね?」
ダニエルさんもマリアさんも居るんだけど。苦笑して答えあぐねていたら、ウィリアム・トレイシーが近寄ってきた。ウィリアム・トレイシーが近付いたら、アルベリク・リトルトンもミカエル・バートリッジも、少しだけ私から離れた。
ウィリアム・トレイシーの立場って何だろう?
ウィリアム・トレイシーに2人がお説教されている間に、総官庁入る。受け取り窓口に行って、名前と用件を告げると少し待たされて、エイベル・ファレルが現れた。
エイベル・ファレルって総官庁貴族籍管理課長よね?どうしてここに居るの?
「お待たせしました。こちらが貴族籍の写しとなります。お確かめください」
追い付いたらしいアルベリク・リトルトンと共に、貴族籍の写しを受け取る。総官庁の透かしの入った紙に、丁寧に書き写された私の貴族籍の写しには、
『キャスリーン・フェルナー
[改名前の姓名:キャプシーヌ・セジャン]
フェルナー家の養女となった際に改名』
と記載されていた。あとは生年月日とか生父母の名前とフェルナーの養父母の名前。戸籍抄本みたいだね。というか、戸籍抄本なんだけど。
「お間違いはありませんか?」
「はい。間違いございませんわ」
「間違い無いです」
「取り扱いには十分お気を付けください」
「ご忠告、ありがとうございます」
「失礼します」
貴族籍の写しを受け取って、馬車に戻ろうとすると、ミカエル・バートリッジとウィリアム・トレイシーがやって来た。途中で誰かと何か話をしているウィリアム・トレイシーを置いて、ミカエル・バートリッジが私を見た。
「ご用事は終わられましたか?」
「はい。お気遣いいただき、ありがとうございました」
「フェルナー嬢、あの方が直接会って話したい事があるそうなのですが」
「2人きりでは無理だとお伝えください。そうですね。サミュエル先生と共になら応じさせていただきます」
「ブランジット様ですか」
「仮とはいえ婚約者ですから。もっともここで決めてしまった事は叱られそうですけれど」
「そうですね。分かりました。あの方に伝えておきます」
私が馬車に乗るまでしっかりと見届けて、というか、出発するまで見届けて、アルベリク・リトルトンとミカエル・バートリッジは帰ったらしい。馬車の後ろに居たダニエルさんが教えてくれた。
「キャスリーン様、サミュエル様にはご報告しておきますね?」
「あ、ちょっと待って。手紙を書いてしまうから」
この時代の馬車にはサスペンションがしっかりと付いていて、揺れは少ない。道路も整備されているから、馬車内で手紙が書ける位には揺れない。地方に行くと差があるけれどね。酷い所は本当に酷い道になるから。
馬車の中でサミュエル先生に手紙を書く。インク付けペンもしくはファウンテンペンで書くのが正式だけれど、携帯出来るファウンテンペンも流通していて、携帯ペンセットと呼ばれている。今回はそれを使った。
携帯ペンセットは、インクがポスージャと呼ばれるスポンジ状の物に染み込ませてある、ファウンテンペンの携帯セットだ。ちゃんと小さなインクブロッターも付いている。ファウンテンペンの種類を選ばないから、最近のお気に入りだ。私はローレンス様にプレゼントされたファウンテンペンを入れている。
惜しむらくは、封蝋が無いのよね。糊はあるけれど、今は持っていないし。マリアさんに預けるから、しなくても良いか。
手紙を書き終え、マリアさんに渡す。
「サミュエル先生に渡してください」
「確かにお預かりしました」
「封蝋が無いのよねぇ」
「封蝋は携帯出来ませんしねぇ」
「簡単に持ち運べる封蝋とか、あったら良いのだけれど」
「庶民は封蝋は使いませんし、固形糊があれば十分ですからね」
「持ち歩く事は?」
「有りませんね。外で糊を使う事がないですし」
そりゃそうだ。マリアさんの言っている固形糊は木材をくっつけるような強力接着剤なんだもの。
サミュエル先生は昨日帰っちゃってるし、レオナルドさんとラッセル様とセシルさんは、別邸でのんびりすると言っていた。
「キャシーちゃん、本当に一緒に行かなくて大丈夫?」
「大丈夫ですわよ。ララさんも心配性ですわね」
「心配性だからじゃないのよ?」
「ダニエルさんもマリアさんもいらっしゃいますもの。心配はございませんわ」
「あぁ、うん。そこは信頼してるし、疑ってもいないのよ。でも、やっぱり心配なの」
「受け取りだけですもの。心配には及びませんわ」
なおも心配だと言い募るララさんを教会で降ろして、総官庁に向かう。もうギャスパー・リンドは居ないよね?ギャスパー・リンドは即日解雇だったと聞いている。あれから5日以上経っているし総官庁には居ないと思うんだけど、なんだか嫌な感じがするのよね。予感というか。
総官庁に着いた。ダニエルさんとマリアさんが周りを確認して、馬車から降ろしてくれる。
「「フェルナー嬢」」
「リトルトン様とバートリッジ様?どうなされたのですか?」
「ギャスパー・リンドが来るかもしれないと、あの方が仰いましたので」
「あのお方の懸念が的中してしまったようです」
「中にギャスパー・リンドが?」
「誰かが引き入れたらしいですね。我々の手の者が監視していますが」
「先程、警邏隊に通報を行いましたので、もう少しお待ちください」
守ってくれるのは嬉しいんだけど、アルベリク・リトルトンとミカエル・バートリッジが私の両隣に立って、お互いを牽制しているのが分かるのが、もうね、なんというか……。
2人が私に対して好意を持っている事は知っている。実際に言われてもいるし。でも、アルベリク・リトルトンには婚約者がいるし、ミカエル・バートリッジは……知らないけど。なんとなく信用しきれない感じがする。
遠くにウィリアム・トレイシーが居るのが見えた。ミカエル・バートリッジのお目付け役かしら?それともアルベリク・リトルトン?
荷台に黒く頑丈な箱が搭載された荷馬車が総官庁前に横付けされた。その前後に居た兵士達が総官庁に入っていく。
「私は、馬車に戻っていた方が良さそうですわね」
「そう、ですね」
「中に居られれば安全でしょうが」
「お2人もどこかに隠れられた方がよろしいのでは?特にリトルトン様は、ギャスパー・リンドに顔を見られております。直接的に狙われたのは私でしょうけれど、リトルトン様も逆恨みの対象になっているかもしれませんわ」
「心配していただけるのですか?」
「私の巻き添えになられては、申し訳ございませんもの」
喜色を隠さないアルベリク・リトルトンだけど、単に面倒な事になりそうだからです。こういう時、淑女の仮面って便利よね。
馬車に入ってしばらくすると、盛大に喚いている男性の声と、それを叱りつける兵士の声が聞こえた。馭者との会話用の小窓からソッと見ると、ギャスパー・リンドが拘束されつつも大暴れしながら、荷馬車に放り込まれていた。
あれって護送車よね?
喚き声を周囲に撒き散らしながら、ギャスパー・リンドが連れ去られると、静寂が戻ってきた。
「フェルナー嬢、もう良いようです」
「兵士も全員引き上げました」
「ありがとうございます。では受け取りに行ってきます」
「私も行きますよ」
「護衛の数は増やした方が良いですよね?」
ダニエルさんもマリアさんも居るんだけど。苦笑して答えあぐねていたら、ウィリアム・トレイシーが近寄ってきた。ウィリアム・トレイシーが近付いたら、アルベリク・リトルトンもミカエル・バートリッジも、少しだけ私から離れた。
ウィリアム・トレイシーの立場って何だろう?
ウィリアム・トレイシーに2人がお説教されている間に、総官庁入る。受け取り窓口に行って、名前と用件を告げると少し待たされて、エイベル・ファレルが現れた。
エイベル・ファレルって総官庁貴族籍管理課長よね?どうしてここに居るの?
「お待たせしました。こちらが貴族籍の写しとなります。お確かめください」
追い付いたらしいアルベリク・リトルトンと共に、貴族籍の写しを受け取る。総官庁の透かしの入った紙に、丁寧に書き写された私の貴族籍の写しには、
『キャスリーン・フェルナー
[改名前の姓名:キャプシーヌ・セジャン]
フェルナー家の養女となった際に改名』
と記載されていた。あとは生年月日とか生父母の名前とフェルナーの養父母の名前。戸籍抄本みたいだね。というか、戸籍抄本なんだけど。
「お間違いはありませんか?」
「はい。間違いございませんわ」
「間違い無いです」
「取り扱いには十分お気を付けください」
「ご忠告、ありがとうございます」
「失礼します」
貴族籍の写しを受け取って、馬車に戻ろうとすると、ミカエル・バートリッジとウィリアム・トレイシーがやって来た。途中で誰かと何か話をしているウィリアム・トレイシーを置いて、ミカエル・バートリッジが私を見た。
「ご用事は終わられましたか?」
「はい。お気遣いいただき、ありがとうございました」
「フェルナー嬢、あの方が直接会って話したい事があるそうなのですが」
「2人きりでは無理だとお伝えください。そうですね。サミュエル先生と共になら応じさせていただきます」
「ブランジット様ですか」
「仮とはいえ婚約者ですから。もっともここで決めてしまった事は叱られそうですけれど」
「そうですね。分かりました。あの方に伝えておきます」
私が馬車に乗るまでしっかりと見届けて、というか、出発するまで見届けて、アルベリク・リトルトンとミカエル・バートリッジは帰ったらしい。馬車の後ろに居たダニエルさんが教えてくれた。
「キャスリーン様、サミュエル様にはご報告しておきますね?」
「あ、ちょっと待って。手紙を書いてしまうから」
この時代の馬車にはサスペンションがしっかりと付いていて、揺れは少ない。道路も整備されているから、馬車内で手紙が書ける位には揺れない。地方に行くと差があるけれどね。酷い所は本当に酷い道になるから。
馬車の中でサミュエル先生に手紙を書く。インク付けペンもしくはファウンテンペンで書くのが正式だけれど、携帯出来るファウンテンペンも流通していて、携帯ペンセットと呼ばれている。今回はそれを使った。
携帯ペンセットは、インクがポスージャと呼ばれるスポンジ状の物に染み込ませてある、ファウンテンペンの携帯セットだ。ちゃんと小さなインクブロッターも付いている。ファウンテンペンの種類を選ばないから、最近のお気に入りだ。私はローレンス様にプレゼントされたファウンテンペンを入れている。
惜しむらくは、封蝋が無いのよね。糊はあるけれど、今は持っていないし。マリアさんに預けるから、しなくても良いか。
手紙を書き終え、マリアさんに渡す。
「サミュエル先生に渡してください」
「確かにお預かりしました」
「封蝋が無いのよねぇ」
「封蝋は携帯出来ませんしねぇ」
「簡単に持ち運べる封蝋とか、あったら良いのだけれど」
「庶民は封蝋は使いませんし、固形糊があれば十分ですからね」
「持ち歩く事は?」
「有りませんね。外で糊を使う事がないですし」
そりゃそうだ。マリアさんの言っている固形糊は木材をくっつけるような強力接着剤なんだもの。
159
あなたにおすすめの小説
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜
桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。
白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。
それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。
言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙桜可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました
山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。
生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる