3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

卒業

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 2人と別れて、学院の馬車に乗り込む。

「あのような輩など、相手にしなくてもよろしいのに」

「リトルトン様は、あのお2人がお気に召しませんでしたの?」

「フェルナー様に不正の言いがかりを付けるなど、許しがたい所業です。あのような輩は……」

わたくしは気にしておりませんでしてよ。誤解も解けましたし。とはいえ、わたくしの為に怒っていただき、ありがとうございます」

「フェルナー嬢は優しいねぇ」

わたくしは優しいわけではございませんでしてよ?」

「いいえ。フェルナー様はお優しい方です」

 アルベリク・リトルトンがまっすぐに私を見る。絶対に『光の聖女様』フィルターがかかっているよね。私がそんな人間じゃないって事は、知っているはずなのに。

 学院に戻ってくると、その日の授業内容と課題を受け取って解散となる。先輩達は卒業が近いから課題は無いそうで、私の課題を教えてくれた。

 そのおかげで課題が早く終わって助かった。アルベリク・リトルトンもつきまとう事はなくて、卒業式の日が近付いてきた。

 私は卒業式の後、ミリアディス様のご成婚式の打ち合わせがある。だから記念パーティーには出られない。春期休暇に入ってすぐにご成婚式だから、時間的余裕がない。打ち合わせの為の面会に来たご成婚式の役人が非常に恐縮していた。サミュエル先生にも嫌みを言われたらしくて、この人の所為せいじゃないのにと、気の毒になってしまった。

 サミュエル先生もこの件には関われない。私の婚約者ではあるけれど、直接の関わりは無いから。

 教会内では密接でなくても関わっているんだけど、公爵様本人でないというややこしい建前があるらしい。その辺りはよく分からないけれど、人数を絞る意味もあるんだと思う。

 式典参加後は花道の最後で待つローガン様の近くに控える事になるし、本当に忙しい。

「キャスリーン様、ご無理はなさらないでくださいませね?」

 ガブリエラ様とイザベラ様からは、何度も気遣ってもらった。リリス様は私のお世話係をするなんて言い出して、それは全力でやめてもらった。リリス様も忙しいのに、そんな迷惑はかけられない。

 卒業式が始まって、厳粛な時間が流れていく。この時間だけでも休めるようにと席を後ろの方にしてもらって、目を閉じた。私の周りは友人で占められているし、ダニエルさんとマリアさんも居てくれる。

 今年の薬草研究会の送別会は、私抜きでやってもらった。合否発表の日だったしね。その日しか集まれる日が無かったのよね。私が居ない事には特に意見が無かったらしく(寂しいとは言われた)、無事に終わったと出されたお菓子を持って部屋まできてくれた、ガブリエラ様とリリス様から聞いた。

「キャスリーン様、お疲れのようですわね」

「申し訳ございません」

「お休みになられた方がよろしいですわ。わたくし達もおりますし」

 イザベラ様のお言葉に甘える。式が終わったら花道の最後に居るローガン様の近くで待機で良いのよね?隣じゃなくても良いのよね?そんな事を考えていた。

 式が終わって、花道を作る為に外に出る。

「フェルナー様、こちらへ」

 生徒会執行役員の後に付いて、花道の最後から5番目に並んだ。ローガン様は例の聖女様風衣装を着て待機している。護衛役のフォスター様もフォーテスキュー様も、ローガン様の両隣に居る。3人が私を見付けて会釈したから、こちらも会釈を返しておいた。

 卒業生が花道を歩いてくる。最後に居るローガン様にそれぞれ礼をして、花道の外に出ていく。

「光の聖女様」

 目の前にアルベリク・リトルトンが立った。

「はい」

「貴女のおかげで学院生活が明るくなりました。貴女を想うだけで満たされた。ありがとうございました」

「想いにお応えは出来ませんでしたが、充実しておられたのならわたくしとしても喜ばしく存じます。本日はご卒業、おめでとうございます」

 不意にアルベリク・リトルトンが跪いた。

「私の心は貴女だけに」

 そう言って私のドレスの裾にキスを落とす。

「リトルトン様、お止めください」

 慌ててその場から下がる。ドレスの裾が、アルベリク・リトルトンの手から滑り落ちた。

 ドレスの裾にキスをするのは、古い服従の印だ。まだ奴隷制度が合法だった頃、奴隷に女主人のドレスの裾にキスをさせて、服従の印とした。今はもうすたれてしまった古い忌まわしい慣習だ。

「何のおつもりですか?」

「私なりの想いを示したまで。光の聖女様にご負担はおかけしません」

 おもいっきりかけられてますけど?

「アルベリク・リトルトン、立ちなさい」

 教師の声に、アルベリク・リトルトンはスッと立ち上がった。

「それでは失礼いたします」

 左胸に手を当てて45度の礼を取って、アルベリク・リトルトンは去っていった。ローガン様の前でのボウアンドスクレープも忘れずやっていく辺り、冷静だったんだとは思うけれど、急にあんな事はやめてほしい。急じゃなくてもやめてほしいけれど。

 最後まで卒業生を見送る。

「光の聖女様」

 ローガン様が駆け寄ってきた。フォスター様とフォーテスキュー様も一緒だ。

「お疲れさまでした、ローガン様」

わたくし、上手く出来ましたでしょうか?」

わたくしよりも『光の聖女様』をしていたと思いましたわよ?」

「そ、そんな」

 テレテレとしているローガン様が可愛い。

「この衣装の力もあると思います」

「お衣装の力もあると思いますけれど、ローガン様の実力ですわ」

 ローガン様と話していると、生徒会執行部の会長のハワード・コールマン様と、副会長のトレイシー・シアラー様がやって来た。後ろに7名の男女が居る。

「紹介しよう。次期会長となるルーク・シャロトラ、次期副会長のジョシュ・ポッター、エリナー・コーエン、書記官のロジャー・ユーバンク、シャーリー・リアクポー、会計のメアリー・ターナー、エレノア・クラウ、それからテレサ・ホール。彼女はフェルナー嬢の返答次第だね」

「お待ちくださいませ。わたくし次第って、ホール様はそれでおよろしいの?」

「フェルナー様と働けるなら、なんだってやりますわ」

「ニコニコと仰いますけれど、本当におよろしいの?」

「はいっ」

 テレサ・ホール伯爵令嬢様は同学年生。これまであまり話した事は無かったんだけれど。

「分かりました。ホール様は文字がお綺麗ですから、書記官が適任でしょう。わたくしは会計でしたら、お引き受けいたします」

「本当ですか?」

「フェルナー様と一緒になんて、信じられない」

 会計のメアリー・ターナー様とエレノア・クラウ様が、手を取り合って喜んでいる。書記官のロジャー・ユーバンク様とシャーリー・リアクポー様は、その様子を微笑ましそうに見ていた。

「シャロトラ様、ポッター様、コーエン様、ユーバンク様、リアクポー様、ターナー様、クラウ様、ホール様、よろしくお願いいたしますわね」

「「「「「「「「こちらこそ」」」」」」」」

 全員に笑顔で言われてしまった。

 卒業式が終わってみんなが記念パーティーに向かう中、私は学院の教職員棟に歩いていた。

「お嬢ちゃん、本当に無理はしてねぇか?」

「大丈夫ですわよ?」

「無理しているように見えるんだよな」

「ダニエルと意見が合うのは癪ですが、同感です。キャスリーン様、お引き受けになってよろしかったのですか?」

「えぇ。何かしていた方が気は紛れますから」

「キャスリーン様……」

 あの暗号も途中だ。≡というマークが何を指しているか分からない。合同かもしれないし、漢数字かもしれない。ラッセル様は合同だと思うからと、そちら方面から解こうとしてくれているらしい。


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