サンタに捧ぐ贈り物

春野わか

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 トナカイ達の深視力は大したものだ。
 これだけの速度で移動しながらモニターで捉えきれない障害物を的確に避けて走る。

 精悍な顔付きで操縦するマシューとトナカイ達の勢いが見事に一体化している。
 このトナカイ達なら激突するようなヘマはしないと信じられた。

「クインの彼氏、超セクシーじゃない」

 サブのオペレーターのヴィッキーがモニターをうっとりと見詰め囁いた。
 褒められてクインも悪い気はせず、映し出されるマシューのキリリとした横顔に目を遣る。

「そうね。普段はアレだけどやる時にはやる。セクシーかも。あーーマシューー」

「うわ!!何だよ」

 クインの叫び声にマシューは跳び跳ねた。

「髭!!髭ーーーー取れ掛かってる」

 マシューの白い付け髭が風で靡き、若々しい顔が丸出しになってしまっていた。

「ヤバイ!! 」

 白い髭が無いサンタなんてサンタじゃない。
 慌てて髭を付け直す。

「マシュー、今あなたのチームが一番よ! 」

「え?ホント?皆、俺達今一番だって! 」

「イエーイ!やっぱ俺達クルーは最強! 」

 全くノリの良い連中だ。
 彼等を仲間に選んで本当に良かった。
 いや、選ばれたのは自分の方か。

「左にスノーマン発見!避けて! 」

 突然ルディが叫んだ。
 ソリの進行方向がグーンと右に逸れ、身体が傾く。
 開けた場所と油断していたら、子供が作ったであろうスノーマンが一体立っていた。
 危うく掠って壊してしまうところだった。
 スノーマン程度の大きさでは流石に障害物として赤く点滅しない。

「ルディ、ナイス判断だ。クリスマスに子供が作ったスノーマンをサンタのソリが壊すなんて悪夢だからね」

「当然よ!あたしはレディだもの。良く気が付くの」

「そうだな!最高のレディだ」

 スノーマンがウインクして手を振ったように見えた。

 マシューは少し疲労を感じ始めていたが、トナカイ達は何処吹く風だ。
 特にエイダンとダンカンのパワーは凄い。
 石炭を放り込み過ぎて猛烈に走る蒸気機関車みたいだ。

 所々でトイレに起きてくる子供と遭遇したりというハプニングはあったものの、順調にプレゼントを配り、ノルマは後10個となった。
 夜明けまではまだ時間がある。
 トムは大丈夫だろうか。
 そんな事を思ったが、サンタとしては彼の方がベテランなのだ。

「ラスト一個よ! 」

 そう告げるクインの声は弾んでいた。
 マシューは最後のプレゼントを靴下に入れ、家を後にする時、少しだけ寂しさを覚えた。
 
「マシューちゃん、お疲れ様! 」

 トナカイ達は実に誇らしげで屈託無い笑顔を向け、前肢を上げてハイタッチをせがんでくる。
 無事、終わったんだ。
 やり遂げたんだ。
 その達成感がマシューの寂寥を押し退け、ハッピーな気分で帰路に着いた。

「お疲れ様! 」

 カンパニーに戻ると社員達が拍手で出迎えてくれた。
 クインと抱擁を交わす。
 冷えた身体には、とびきり温かい。

「我が社の勇敢なサンタの諸君。大きな事故も無く、今年も見事にやり遂げてくれた事、誇りに思うよ」

 続々と任務を終えたサンタ達が帰還し終えると、会長が皆の前に姿を現し、整列して話しに耳を傾ける。
 トムの姿もあった。
 
「皆が素晴らしいサンタである事に変わりはないが、毎年恒例の、プレゼントを一番早く届け終えたサンタを表彰したいと思う。マシュー・クローバー、前へ」

 皆の視線が一斉にマシューに集まる。
 会長の前に立つと金色のトロフィーが授与された。
 サンタの任務は結果が全てではないが、素直に嬉しく、皆に向かってトロフィーを掲げる。
 トムが親指を突き立て「いいね」をしてくれるのが目に入った。

「これは俺一人の力ではありません。オペレーターのクインやヴィッキー、それに相棒のトナカイ達のお陰です」

「おお!素晴らしい仲間達だね!トロフィーを持ってトナカイ達と記念撮影も恒例だよ。君だけではなくて勿論他のサンタ達もね」

 屋上で一息吐いているルディ達にトロフィーを見せると、予想通りの凄いはしゃぎようだった。

 6頭全てと写真に納めて貰う。
 皆笑顔で最高の写真が撮れた。

 
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