12 / 16
3
しおりを挟む
トナカイ達の深視力は大したものだ。
これだけの速度で移動しながらモニターで捉えきれない障害物を的確に避けて走る。
精悍な顔付きで操縦するマシューとトナカイ達の勢いが見事に一体化している。
このトナカイ達なら激突するようなヘマはしないと信じられた。
「クインの彼氏、超セクシーじゃない」
サブのオペレーターのヴィッキーがモニターをうっとりと見詰め囁いた。
褒められてクインも悪い気はせず、映し出されるマシューのキリリとした横顔に目を遣る。
「そうね。普段はアレだけどやる時にはやる。セクシーかも。あーーマシューー」
「うわ!!何だよ」
クインの叫び声にマシューは跳び跳ねた。
「髭!!髭ーーーー取れ掛かってる」
マシューの白い付け髭が風で靡き、若々しい顔が丸出しになってしまっていた。
「ヤバイ!! 」
白い髭が無いサンタなんてサンタじゃない。
慌てて髭を付け直す。
「マシュー、今あなたのチームが一番よ! 」
「え?ホント?皆、俺達今一番だって! 」
「イエーイ!やっぱ俺達クルーは最強! 」
全くノリの良い連中だ。
彼等を仲間に選んで本当に良かった。
いや、選ばれたのは自分の方か。
「左にスノーマン発見!避けて! 」
突然ルディが叫んだ。
ソリの進行方向がグーンと右に逸れ、身体が傾く。
開けた場所と油断していたら、子供が作ったであろうスノーマンが一体立っていた。
危うく掠って壊してしまうところだった。
スノーマン程度の大きさでは流石に障害物として赤く点滅しない。
「ルディ、ナイス判断だ。クリスマスに子供が作ったスノーマンをサンタのソリが壊すなんて悪夢だからね」
「当然よ!あたしはレディだもの。良く気が付くの」
「そうだな!最高のレディだ」
スノーマンがウインクして手を振ったように見えた。
マシューは少し疲労を感じ始めていたが、トナカイ達は何処吹く風だ。
特にエイダンとダンカンのパワーは凄い。
石炭を放り込み過ぎて猛烈に走る蒸気機関車みたいだ。
所々でトイレに起きてくる子供と遭遇したりというハプニングはあったものの、順調にプレゼントを配り、ノルマは後10個となった。
夜明けまではまだ時間がある。
トムは大丈夫だろうか。
そんな事を思ったが、サンタとしては彼の方がベテランなのだ。
「ラスト一個よ! 」
そう告げるクインの声は弾んでいた。
マシューは最後のプレゼントを靴下に入れ、家を後にする時、少しだけ寂しさを覚えた。
「マシューちゃん、お疲れ様! 」
トナカイ達は実に誇らしげで屈託無い笑顔を向け、前肢を上げてハイタッチをせがんでくる。
無事、終わったんだ。
やり遂げたんだ。
その達成感がマシューの寂寥を押し退け、ハッピーな気分で帰路に着いた。
「お疲れ様! 」
カンパニーに戻ると社員達が拍手で出迎えてくれた。
クインと抱擁を交わす。
冷えた身体には、とびきり温かい。
「我が社の勇敢なサンタの諸君。大きな事故も無く、今年も見事にやり遂げてくれた事、誇りに思うよ」
続々と任務を終えたサンタ達が帰還し終えると、会長が皆の前に姿を現し、整列して話しに耳を傾ける。
トムの姿もあった。
「皆が素晴らしいサンタである事に変わりはないが、毎年恒例の、プレゼントを一番早く届け終えたサンタを表彰したいと思う。マシュー・クローバー、前へ」
皆の視線が一斉にマシューに集まる。
会長の前に立つと金色のトロフィーが授与された。
サンタの任務は結果が全てではないが、素直に嬉しく、皆に向かってトロフィーを掲げる。
トムが親指を突き立て「いいね」をしてくれるのが目に入った。
「これは俺一人の力ではありません。オペレーターのクインやヴィッキー、それに相棒のトナカイ達のお陰です」
「おお!素晴らしい仲間達だね!トロフィーを持ってトナカイ達と記念撮影も恒例だよ。君だけではなくて勿論他のサンタ達もね」
屋上で一息吐いているルディ達にトロフィーを見せると、予想通りの凄いはしゃぎようだった。
6頭全てと写真に納めて貰う。
皆笑顔で最高の写真が撮れた。
これだけの速度で移動しながらモニターで捉えきれない障害物を的確に避けて走る。
精悍な顔付きで操縦するマシューとトナカイ達の勢いが見事に一体化している。
このトナカイ達なら激突するようなヘマはしないと信じられた。
「クインの彼氏、超セクシーじゃない」
サブのオペレーターのヴィッキーがモニターをうっとりと見詰め囁いた。
褒められてクインも悪い気はせず、映し出されるマシューのキリリとした横顔に目を遣る。
「そうね。普段はアレだけどやる時にはやる。セクシーかも。あーーマシューー」
「うわ!!何だよ」
クインの叫び声にマシューは跳び跳ねた。
「髭!!髭ーーーー取れ掛かってる」
マシューの白い付け髭が風で靡き、若々しい顔が丸出しになってしまっていた。
「ヤバイ!! 」
白い髭が無いサンタなんてサンタじゃない。
慌てて髭を付け直す。
「マシュー、今あなたのチームが一番よ! 」
「え?ホント?皆、俺達今一番だって! 」
「イエーイ!やっぱ俺達クルーは最強! 」
全くノリの良い連中だ。
彼等を仲間に選んで本当に良かった。
いや、選ばれたのは自分の方か。
「左にスノーマン発見!避けて! 」
突然ルディが叫んだ。
ソリの進行方向がグーンと右に逸れ、身体が傾く。
開けた場所と油断していたら、子供が作ったであろうスノーマンが一体立っていた。
危うく掠って壊してしまうところだった。
スノーマン程度の大きさでは流石に障害物として赤く点滅しない。
「ルディ、ナイス判断だ。クリスマスに子供が作ったスノーマンをサンタのソリが壊すなんて悪夢だからね」
「当然よ!あたしはレディだもの。良く気が付くの」
「そうだな!最高のレディだ」
スノーマンがウインクして手を振ったように見えた。
マシューは少し疲労を感じ始めていたが、トナカイ達は何処吹く風だ。
特にエイダンとダンカンのパワーは凄い。
石炭を放り込み過ぎて猛烈に走る蒸気機関車みたいだ。
所々でトイレに起きてくる子供と遭遇したりというハプニングはあったものの、順調にプレゼントを配り、ノルマは後10個となった。
夜明けまではまだ時間がある。
トムは大丈夫だろうか。
そんな事を思ったが、サンタとしては彼の方がベテランなのだ。
「ラスト一個よ! 」
そう告げるクインの声は弾んでいた。
マシューは最後のプレゼントを靴下に入れ、家を後にする時、少しだけ寂しさを覚えた。
「マシューちゃん、お疲れ様! 」
トナカイ達は実に誇らしげで屈託無い笑顔を向け、前肢を上げてハイタッチをせがんでくる。
無事、終わったんだ。
やり遂げたんだ。
その達成感がマシューの寂寥を押し退け、ハッピーな気分で帰路に着いた。
「お疲れ様! 」
カンパニーに戻ると社員達が拍手で出迎えてくれた。
クインと抱擁を交わす。
冷えた身体には、とびきり温かい。
「我が社の勇敢なサンタの諸君。大きな事故も無く、今年も見事にやり遂げてくれた事、誇りに思うよ」
続々と任務を終えたサンタ達が帰還し終えると、会長が皆の前に姿を現し、整列して話しに耳を傾ける。
トムの姿もあった。
「皆が素晴らしいサンタである事に変わりはないが、毎年恒例の、プレゼントを一番早く届け終えたサンタを表彰したいと思う。マシュー・クローバー、前へ」
皆の視線が一斉にマシューに集まる。
会長の前に立つと金色のトロフィーが授与された。
サンタの任務は結果が全てではないが、素直に嬉しく、皆に向かってトロフィーを掲げる。
トムが親指を突き立て「いいね」をしてくれるのが目に入った。
「これは俺一人の力ではありません。オペレーターのクインやヴィッキー、それに相棒のトナカイ達のお陰です」
「おお!素晴らしい仲間達だね!トロフィーを持ってトナカイ達と記念撮影も恒例だよ。君だけではなくて勿論他のサンタ達もね」
屋上で一息吐いているルディ達にトロフィーを見せると、予想通りの凄いはしゃぎようだった。
6頭全てと写真に納めて貰う。
皆笑顔で最高の写真が撮れた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる