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Ep5 All I Want for Christmas Is You
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「うーん。いて! 」
マシューが寝返りを打つと指の先が樫製ベッドのヘッドボードに当たった。
痛みで目覚める。
「今、何時だ? 」
景品で貰ったクローバー社製スノーマンの可愛らしい置き時計を手に取る。
アナログの針は7時を少し過ぎた辺りを指していた。
「まだ7時か」
クリスマスプレゼントを夜明け前まで配るというハードワークで疲労困憊のマシューは、家に帰るとすかさずシャワーを浴びベッドに倒れ込んだ。
帰ってきた時には陽が昇っていた。
勿論、爆睡した。
まだ朝の7時ならと、布団を被り直す。
温かい羽毛布団に身を埋めていたい。
何か大事な事を忘れている。
ふと思った。
「何だったっけ? 」
ギュっと枕を抱え込む。
ピローケースはクインと色違いで揃えた薄いブルーのドット柄だ。
彼女も疲れていたので、途中で別れて、それぞれの家に帰宅した。
「そうだ!クイン」
今日はクリスマス。
サンタ役をゲットした興奮で、自分の為のクリスマスをすっかり忘れていた。
何もプレゼントを用意していない。
彼女に何が欲しいかも聞いていない。
「俺はどこまで間抜けなんだ。サイテーだ。プレゼントを配る事ばかりでクインへのプレゼントを忘れるなんて。ああーー」
それに何も予定を立てていない。
ターキーやケーキ、シャンパンを買い込んで家で過ごすのか、レストランでディナーを楽しむのか。
どちらにしても遅過ぎる気がした。
ターキーやケーキも、レストランも予約していない。
手に入ったとしても売れ残り、お洒落なレストランは既に予約が一杯だろう。
そういえばクインは何も言っていなかった。
去年のクリスマスはまだ彼女と付き合う前だった。
オペレーターだった彼女はどう過ごしたのだろう。
疲れてクリスマスどころじゃなかったのだろうか。
だから何も言わなかった?
ベッドの上で起き上がって考えた。
アイフォンに目を遣る。
連絡するにはまだ早い。
「取り敢えずシャワーだ。寒い」
部屋のライトと暖房を入れてからネイビーのパジャマを脱ぎ捨て、ブリーフまで放り投げてバスルームに駆け込む。
熱めの湯を全身に浴び、歯を磨いて髭を剃る。
バスタオルで身体を拭きながら、鏡の前でポージングをして気合いを入れるも、今日という日をどう過ごすか良いアイディアは浮かばなかった。
部屋に戻り、服を身に付けてリビングテーブルに置いたアイフォンを手に取る。
スノーマンの時計ではやっと8時だ。
クインからの着信履歴はない。
「クインにとってはクリスマスは特別な日じゃないのかも」
自分はすっかり忘れていた癖に、寂しく感じた。
テーブルに顎を乗せ、クタッと脱力する姿は捨てられた猫のようだ。
メールでも送っておこうか。
いや、着信音で彼女を起こしてしまう可能性もある。
「こうしてても仕方が無い。カーテンを開けよう」
分厚いモスグリーンの遮光カーテンを左右に開く。
視界に飛び込んできた外の光景に唖然とした。
マシューの住むマンション下にある通りの街灯が灯り、雪道をオレンジ色に照らしていたからだ。
木々に飾られたイルミネーションも目映い。
どう見ても夜だ。
空には星も瞬いている。
「俺は何って間抜けなんだ! 」
今に始まった事ではないが改めて自覚するのは辛い。
冷静に考えてみれば目覚めたのが朝の7時の筈がないのに。
慌ててアイフォンを手に取りクインに電話を掛けた。
数回のコール音の後、彼女が電話に出た。
マシューが寝返りを打つと指の先が樫製ベッドのヘッドボードに当たった。
痛みで目覚める。
「今、何時だ? 」
景品で貰ったクローバー社製スノーマンの可愛らしい置き時計を手に取る。
アナログの針は7時を少し過ぎた辺りを指していた。
「まだ7時か」
クリスマスプレゼントを夜明け前まで配るというハードワークで疲労困憊のマシューは、家に帰るとすかさずシャワーを浴びベッドに倒れ込んだ。
帰ってきた時には陽が昇っていた。
勿論、爆睡した。
まだ朝の7時ならと、布団を被り直す。
温かい羽毛布団に身を埋めていたい。
何か大事な事を忘れている。
ふと思った。
「何だったっけ? 」
ギュっと枕を抱え込む。
ピローケースはクインと色違いで揃えた薄いブルーのドット柄だ。
彼女も疲れていたので、途中で別れて、それぞれの家に帰宅した。
「そうだ!クイン」
今日はクリスマス。
サンタ役をゲットした興奮で、自分の為のクリスマスをすっかり忘れていた。
何もプレゼントを用意していない。
彼女に何が欲しいかも聞いていない。
「俺はどこまで間抜けなんだ。サイテーだ。プレゼントを配る事ばかりでクインへのプレゼントを忘れるなんて。ああーー」
それに何も予定を立てていない。
ターキーやケーキ、シャンパンを買い込んで家で過ごすのか、レストランでディナーを楽しむのか。
どちらにしても遅過ぎる気がした。
ターキーやケーキも、レストランも予約していない。
手に入ったとしても売れ残り、お洒落なレストランは既に予約が一杯だろう。
そういえばクインは何も言っていなかった。
去年のクリスマスはまだ彼女と付き合う前だった。
オペレーターだった彼女はどう過ごしたのだろう。
疲れてクリスマスどころじゃなかったのだろうか。
だから何も言わなかった?
ベッドの上で起き上がって考えた。
アイフォンに目を遣る。
連絡するにはまだ早い。
「取り敢えずシャワーだ。寒い」
部屋のライトと暖房を入れてからネイビーのパジャマを脱ぎ捨て、ブリーフまで放り投げてバスルームに駆け込む。
熱めの湯を全身に浴び、歯を磨いて髭を剃る。
バスタオルで身体を拭きながら、鏡の前でポージングをして気合いを入れるも、今日という日をどう過ごすか良いアイディアは浮かばなかった。
部屋に戻り、服を身に付けてリビングテーブルに置いたアイフォンを手に取る。
スノーマンの時計ではやっと8時だ。
クインからの着信履歴はない。
「クインにとってはクリスマスは特別な日じゃないのかも」
自分はすっかり忘れていた癖に、寂しく感じた。
テーブルに顎を乗せ、クタッと脱力する姿は捨てられた猫のようだ。
メールでも送っておこうか。
いや、着信音で彼女を起こしてしまう可能性もある。
「こうしてても仕方が無い。カーテンを開けよう」
分厚いモスグリーンの遮光カーテンを左右に開く。
視界に飛び込んできた外の光景に唖然とした。
マシューの住むマンション下にある通りの街灯が灯り、雪道をオレンジ色に照らしていたからだ。
木々に飾られたイルミネーションも目映い。
どう見ても夜だ。
空には星も瞬いている。
「俺は何って間抜けなんだ! 」
今に始まった事ではないが改めて自覚するのは辛い。
冷静に考えてみれば目覚めたのが朝の7時の筈がないのに。
慌ててアイフォンを手に取りクインに電話を掛けた。
数回のコール音の後、彼女が電話に出た。
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