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イルミネーションの灯りが彼女の赤毛を艶めかせ、装いも然り気無くゴージャスだ。
信号が変わり、微笑みを浮かべながらマシューの元に駆け寄ってくる。
「クイン、ごめん、俺……」
「全てマシューらしい。一生懸命頑張ってたから、特に何も言わなかっただけ。良く休めたならそれでいい。寒いから中に入りましょ」
クインに促され、カフェの扉を開けて店内に入る。
暖気にムワっと包まれ、ぶるっと震えた。
「今更だけど、この店で良かった?もっと他の店探す? 」
何時もよりフォーマルな装いのクインにこの店は相応しくない。
最低限クリスマスらしく演出されているものの、店内に流れるBGMは何だか安っぽい。
コーヒーは美味しく値段は手頃で、常に客の数はそこそこで落ち着くから利用してるだけで料理は油っこいし味もイマイチだ。
「此処でいいって言ってるでしょ?寒いしお腹も空いたからいいわ」
「ごめん……」
席に座りコート類を脱ぐと、ウエイトレスが注文を取りに来たのでチキンソテーとハンバーグを頼んだ。
全くいつもと代わり映えしないのは、この店の良さなのか。
「もう、謝ってばかり。私も連絡しなかったし。サンタの事で頭が一杯なの分かってたから」
「ごめん……」
「謝り過ぎよ!余計な事言って集中を途切れさせたくなかったの。マシューは同時に二つの事考えるの苦手でしょ? 」
もう溜め息しか出ない。
チキンソテーとハンバーグが運ばれてきた。
勿論、出てくるスピードからして冷凍物だ。
無言でチキンソテーにナイフとフォークを入れる。
外は油っぽいのに、中はパサパサという最悪の仕上がりだ。
また、惨めになった。
「本当にカッコ良かった。マシューのサンタ、ヴィッキーもセクシーって褒めてたわよ。良く頑張った。きっと子供達も喜んでくれた筈よ」
「クイン……」
一番欲しい言葉をくれた。
胸にジンと響いた。
「ありがとう。君の言葉が何よりのプレゼントだ。こんな不味い店でディナーになってしまった上にプレゼントも用意していない。いつもいつも君に貰ってばかりだ」
「ふふ、言葉以外にも、これ!プレゼントよ。Merry Christmas! 」
クインは、マシューの繰り返される自虐的な言葉をさらりとかわして、ブルーのリボンで飾られた箱を差し出してきた。
「ありがとう……本当にありがとう」
「開けてみて」
笑顔で促されてリボンを解く。
不覚にも泣いてしまいそうだ。
こんな自分を受け入れてくれるクインの笑顔があれば、パサパサのチキンソテーも極上の味に変わるというものだ。
箱を開けてみた。
内側は全面ファーで、ムートン革の暖かそうな手袋だった。
「う……君の欲しい物は?今から走って買ってくるよ」
「もう、マシュー。本当にマシューって何処までもマシューなのね」
クインが両手を口に当てて可笑しそうに笑う。
「コーヒーで口直ししましょ。此処はコーヒーは美味しいから」
手を上げてウェイトレスを呼んだ。
「君は俺の何がいいんだ?サンタ役に合格出来たのも君のお陰だし、それに、あんな着膨れした俺がカッコいいって。それに……」
「それに? 」
コーヒーが運ばれてきた。
「それに……やがて大人になれば知ってしまう。サンタは白いお髭のお爺さんじゃないって事」
クインはコーヒーにミルクを滴し静かにかき混ぜた。
「マシューだって子供だったじゃない。今は大人だけど」
ミルクも砂糖も入れずにブラックの儘、コーヒーを口に含む。
甘党の彼には苦い筈だが、心に沸く苦さのせいで甘く感じた。
「子供達が喜んでくれるのは嬉しい。でも、却って失望させるんじゃないかな?配り終えた時に寂しく感じたのは、そんな風に思ったからかもしれない」
「マシューの感じた寂しさは子供の瞳から何れ輝きが失われてしまう事に対してじゃない? 」
「そうかもしれない」
信号が変わり、微笑みを浮かべながらマシューの元に駆け寄ってくる。
「クイン、ごめん、俺……」
「全てマシューらしい。一生懸命頑張ってたから、特に何も言わなかっただけ。良く休めたならそれでいい。寒いから中に入りましょ」
クインに促され、カフェの扉を開けて店内に入る。
暖気にムワっと包まれ、ぶるっと震えた。
「今更だけど、この店で良かった?もっと他の店探す? 」
何時もよりフォーマルな装いのクインにこの店は相応しくない。
最低限クリスマスらしく演出されているものの、店内に流れるBGMは何だか安っぽい。
コーヒーは美味しく値段は手頃で、常に客の数はそこそこで落ち着くから利用してるだけで料理は油っこいし味もイマイチだ。
「此処でいいって言ってるでしょ?寒いしお腹も空いたからいいわ」
「ごめん……」
席に座りコート類を脱ぐと、ウエイトレスが注文を取りに来たのでチキンソテーとハンバーグを頼んだ。
全くいつもと代わり映えしないのは、この店の良さなのか。
「もう、謝ってばかり。私も連絡しなかったし。サンタの事で頭が一杯なの分かってたから」
「ごめん……」
「謝り過ぎよ!余計な事言って集中を途切れさせたくなかったの。マシューは同時に二つの事考えるの苦手でしょ? 」
もう溜め息しか出ない。
チキンソテーとハンバーグが運ばれてきた。
勿論、出てくるスピードからして冷凍物だ。
無言でチキンソテーにナイフとフォークを入れる。
外は油っぽいのに、中はパサパサという最悪の仕上がりだ。
また、惨めになった。
「本当にカッコ良かった。マシューのサンタ、ヴィッキーもセクシーって褒めてたわよ。良く頑張った。きっと子供達も喜んでくれた筈よ」
「クイン……」
一番欲しい言葉をくれた。
胸にジンと響いた。
「ありがとう。君の言葉が何よりのプレゼントだ。こんな不味い店でディナーになってしまった上にプレゼントも用意していない。いつもいつも君に貰ってばかりだ」
「ふふ、言葉以外にも、これ!プレゼントよ。Merry Christmas! 」
クインは、マシューの繰り返される自虐的な言葉をさらりとかわして、ブルーのリボンで飾られた箱を差し出してきた。
「ありがとう……本当にありがとう」
「開けてみて」
笑顔で促されてリボンを解く。
不覚にも泣いてしまいそうだ。
こんな自分を受け入れてくれるクインの笑顔があれば、パサパサのチキンソテーも極上の味に変わるというものだ。
箱を開けてみた。
内側は全面ファーで、ムートン革の暖かそうな手袋だった。
「う……君の欲しい物は?今から走って買ってくるよ」
「もう、マシュー。本当にマシューって何処までもマシューなのね」
クインが両手を口に当てて可笑しそうに笑う。
「コーヒーで口直ししましょ。此処はコーヒーは美味しいから」
手を上げてウェイトレスを呼んだ。
「君は俺の何がいいんだ?サンタ役に合格出来たのも君のお陰だし、それに、あんな着膨れした俺がカッコいいって。それに……」
「それに? 」
コーヒーが運ばれてきた。
「それに……やがて大人になれば知ってしまう。サンタは白いお髭のお爺さんじゃないって事」
クインはコーヒーにミルクを滴し静かにかき混ぜた。
「マシューだって子供だったじゃない。今は大人だけど」
ミルクも砂糖も入れずにブラックの儘、コーヒーを口に含む。
甘党の彼には苦い筈だが、心に沸く苦さのせいで甘く感じた。
「子供達が喜んでくれるのは嬉しい。でも、却って失望させるんじゃないかな?配り終えた時に寂しく感じたのは、そんな風に思ったからかもしれない」
「マシューの感じた寂しさは子供の瞳から何れ輝きが失われてしまう事に対してじゃない? 」
「そうかもしれない」
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