真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

文字の大きさ
9 / 204
第一章

αへの恨み ⑤

しおりを挟む
身体を綺麗にしてもらった後、お姉さん方とお話する時間が設けられた。

ちなみに如月というあの男はもうその場には居らず、私はお姉さん方と一緒に館の廊下を歩いている。




「…そう言えば、ルビーちゃんって本名なの?」




辺りをキョロキョロと見ているフリをして、脱出口を探している中、猫の獣人さんが私に話しかけた。

本名じゃない事がバレたのかもしれない。

そう感じながら、こちらに向けられたキラリと琥珀色に光る目を恐る恐る見てゴクリと喉を鳴らす。




「え?何?どうしたの?」

「ルビーちゃんの名前。本当の名前なのかなぁって」

「あ、確かに!もう新しい名前貰ったの?」




猫の獣人さんの言葉に前を歩いていたお姉さん方が全員振り向いてきて、余計に威圧が増す。

そういえば私、お姉さん方の名前知らないな、とか。

名前って与えられるものなのか、とか…。

関係ない事を考えても緊張感からは抜けられず、おずおずと頭を縦に動かすと、猫の獣人さんが動いた気配がした。





「…そうよね、ルビーちゃんごめんなさい。私から名乗るべきだったわ。」

「…あ、えと、」





猫の獣人さんは私に合わせて屈み、フフ、と笑みを浮かべてそう言った。

確かに、人に名前を聞く時は自分から名乗るのが当たり前だと聞いた事がある。

ただ、私はここで本名を言いたくなくて口を閉ざしていただけなのに…。




「私はルネ。宜しくね、」

「る、ルネ…さん、」

「そうよ、ルネ。ルビーちゃんには私が色んな事を教えてあげるから安心してね。」




名乗らなかった猫の獣人さんが悪い風になっていて慌てて弁解をしようとしたら、後から聞こえた甘ったるい声に遮られた。

どうやら、優しいこの人はルネさんと言うらしい。

これは本当の名前では無さそうだ、と頭の中で勝手に理解をする。




「ルネばっかり狡い~っ!
私もルビーちゃんに教えたい。」

「っ、」




すると、ルネさんに引き続き他の人達も声を上げた。




「ルビーちゃん、私はミント。宜しくね」

「ミントさん…、」




ルネさんを押し退け、私を抱き締めたのは兎の獣人さんで、ミントさんというらしい。

皆可愛らしい名前なんだなぁと関心していた時、一番年上に見える人間のお姉さんがこちらに歩み寄り、髪を片耳にかけてこう言った。




「ルビーちゃん、私はハル。
唯一の人間同士宜しくね。」

「ハルさん…。」



ハルさんは私と同じ人間で、Ωだという。

大人っぽい雰囲気から、周りの人とは少し違う空気を纏っていて。ルネさんとミントさんが道を開けた時、それが花道のように思えた。

他にも沢山自己紹介をされたけれど、三人しかしっかり覚える事は出来なかった。



「ルネさん…あの、」

「ん?どうしたの?」

「トイレって…、」

「トイレ?ああ、ちょっと下が気になる?」

「はい…、ちょっと痛くて…、」




脱出経路を確認する為、傍にいたルネさんに声をかけてこの場から離れるように仕向けてみた。

そう言えば、ここに居る人全員Ωなのだろうけれど、本当にあんな事を毎日しているのだろうか。

あんな注射を打たれなければならないのだろうか。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

わたしたちの庭

犬飼ハルノ
恋愛
『夜明けになるまで絶対に寝室の扉を開けないで』  未来の義母が告げたのは奇妙な夜の掟だった。  父に売られる形でブルーノ伯爵子息の婚約者になったフィリスの物語。  ヒロインのフィリスが自らの力と周囲の人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、しばらくは暗く重い展開です。  タグを途中から追加します。   他サイトでも公開中。

処理中です...