プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

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祈雨の舞 破邪の舞

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実感が湧かない。
全く現実味がない。
貴船さんのお母さん、桜子さんから
聞かされた話はそんな内容だった。

桜子さん自身が本当かどうか分からないわと
言いつつ話してくれた内容を反芻した。



俺の先祖は、
あの義経公と静御前のお子と言われている。

このお子は、静御前が産み落としてすぐに、
静御前の母が泣き叫ぶ娘から引き離し、
浜に埋めたことになっている。
これは静御前の母磯禅師が見せた幻術で、
実際は鞍馬の隠れ里に匿った。


鞍馬の隠れ里には、古くから同じ白拍子で
親戚関係のものが多く住んでおり、
磯禅師は健脚の白拍子の青年にお子を託した。

鞍馬の隠れ里の民は、親戚関係の深い麓の
貴船の里の民と共に、このお子を旗印に
正統な源氏の復興を目論んだ。


だが、お子が元服して間もなく
頼朝公が没し、北条家が実権を握ると、
お子に対する捜索がより強くなった。

当時の鞍馬の隠れ里の長の白拍子の娘が
貴船の里長に嫁いでおり、
里同士の関係はより深かった。

その娘はお子を守るべく幻術を使い、
追っ手を撹乱し続け、
隠れ里への侵入を阻んでいた。


頼朝公の血筋が絶たれてからというもの、
隠れ里の民は、争いを避けるべきだという
穏健派の声が強まり、源氏の復興を願う気運は
徐々に下火となっていった。

それ以降、お子の血筋の長子が
鞍馬の隠れ里の長を歴任するようになり、
貴船の里の民で、幻術の心得がある娘は、
その長の身を守る役目となる習わしが
いつの間にか出来上がっていった。



その習わしは明治になるまで続いていたが、
明治以降になると白拍子の舞そのものも
伝承されず失伝した型もあるほど
衰退していった。


ただ、鞍馬の里は戦後は表舞台に出て、
集落の長として代々の継承は続いていた。
翔の父、渡は本来今代の長に就く長子だが、
習わしを終わらせることを望み、里を出た。

里のものは久方ぶりの破邪の舞の舞手である
渡が里を離れることを惜しんだが、
渡の長子、翔を、これからの時代を
都会の街中で育てたいという二人の願いに
理解を示し、いい意味で戻ることのないように
前に進めと言って、背を押すように
快く送り出してくれた。


だが、それは鞍馬の里の話で、
貴船の里の方では源氏の旗印の
正統な末裔の守護者としての誇りを持って
影から見守り続けていた。

渡と柊、翔の3人家族が里から出ると、
後を追って、桜子さん達夫婦も
この街に住み、影ながら見守っていた。


渡の妹である楓夫婦も来なくていいのに
付いてきたのだが、楓の夫の真が急死してから、
楓は山に引き篭もって人が来ない、
キャンプ場の管理人と称して、ここに住んでいた。

義理の妹でもある楓を気にかけて事あるごとに
訪問していたのだが、ある時から急に明るくなり、
奇妙な話をするようになった。

最初は精神面の問題を疑ったのだが、
持ってきて見せられたのは、
不思議な光を放つ剣と吸い込まれるような宝石が
散りばめられた不思議なくらい軽い盾、蠢く草や
汚物の分解をしてくれるというスライムだった。

流石に蠢く草や生きているとしか見えないスライムは
この世のものと思えず、楓のいう異世界が
実在することを認めざるを得なかった。
残念ながら、楓と共に異世界に向かおうとして、
森に分け入ったが、迷うだけで辿り着けなかった。

そうこうするうちに、楓からの連絡が途絶え、
行方知れずとなってしまった。


奇しくも、俺がここを見つけて住みたいと
連絡を受けた時は運命を感じたそうだ。


税金とか給料などのお金に関わる問題は、
今後も面倒を見ていただけるというので
有り難く甘えさせてもらう事にした。

でも、この間のネット通販の異常な売り上げは
事務所に大きな利益を生んでくれたので、
お互いにウィンウィンのいい関係だわと
涼しげな笑顔で笑みを浮かべてくれた。

優しそうなお母さんだなと、
ちょっと貴船さんが羨ましくなった。
その1秒後にそうじゃないと思い知ったのだけど。。

 「さつき、そこに直りなさい。」

白い和装に着替えた貴船さんに向けて
さっきまでの優しい笑顔から、
ツノの見えそうな冷たい表情で
冷たい声で静かに怒っている桜子さんがいた。

正座して涙目になっている貴船さんの横で
普通に座って聞いているだけだけど、
一緒に怒られている感じがするくらい、
厳しいオハナシが続けられていた。

 「あー、お母さん、その件ですが
  半分くらいは俺の責任もあるので
  そのくらいでお許しください。」

 「あら、鞍馬さんは気にされる必要は
  ありませんわ。」

いえいえ、一緒に怒られてる気分になって
全然落ち着かないんですけど。。

 「そうね、今日のところは
  これくらいで許してあげましょう。

  さつき、奥の広間で貴女に我が家に
  伝承されている型を伝授するわ。

  鞍馬さんもよろしければ
  ご見学してくださいね。

  貴方のお父さん、渡さんも
  受け継いだ型なの。」

俺まだアーミースーツのままなんだけど、
それでも動きやすければいいそうだ。



 「さつき、
  これは我が家に伝わる白拍子の
  祈雨の舞という雨乞いの舞の型なの。
  しっかりと見て覚えなさい。
  これはその舞で使う薙刀なの。
  貴女用にしつらえてあるわ。

  では始めるわ。」

桜子さんが薙刀を両手で真っ直ぐに持って
無表情で舞い始めた。
まるで何かのお面を被っているみたいだった。

見覚えがある。
俺の体が、いや、記憶で、
その型をトレースできる。

天に祈りを捧げるような舞だ、
身を逸らせ、片手でゆったりと振ったり、
諸手で突き上げたりと儀式らしさのある舞だ。


 「さ、一度舞って見なさい。
  鞍馬さんも如何かしら。」

 「あ、俺は違う型を舞ってみたいんですけど、
  一度見ていただけますか?」

 「あら、意外だわ。
  お父さんから伝授されていたのかしら?」

 「うーん、よくわからないんですけど、
  記憶と体が覚えているみたいなんです。」

 「それはすごいわね。
  是非舞って見せてもらえるかしら。」

俺は亜空間収納から出していた
白拍子の薙刀を手にしていた。

では、と俺はあの舞を目を閉じて舞い始めた。
この前より早く鋭く動けている気がする。
体の中がどんどん温かくなっていくのが
よくわかった。

腰を落として、静かに息を吐いて
舞い終えた。

 「・・・お見事だわ。
  奉納の舞として渡さんが舞っていた、
  破邪の舞だわ。完成された動きが見ていて
  惚れ惚れするわ。」

 『そうでしょう。
  カケルはこの私が見込んだのだから。
  何度見ても美しいわ。』

 「「「えっ!!」」」

いつの間にか桜子さんの横には、
金髪碧眼の女神ヘスティア様が降臨されていた。
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