プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

graypersona

文字の大きさ
34 / 59

ただ守りたいだけなんですけど

しおりを挟む
さつきさんは桜子さんから
厳しい指導を受けている。
奥の広間からは時折
薙刀の打ち合う音も響いてくる。

 「うーん、あの調子だと夜になっても
  続いているかも。」

 「そんな感じがするのにゃ。
  カケル、
  今あるだけの薬草で調合が終わったら
  向こうに戻るかにゃ?」

 「そうだな、
  今夜は管理棟で泊まって明日の荷物を
  持って戻るつもりだったけど、
  さつきさんと桜子さんがいてくれたら、
  何とかなるかな。

  うん、なんだか気になるし、
  後2、3種類調合したら、戻ろうか。」

 「そうするにゃ。」

ココと話し合って、俺達は夕方には
向こうに戻ることにした。

 「あら、そうなのね。
  さつきには今のうちに
  もっと教え込んでおきたいわ。
  よければ、さつきと私はここで、
  もう少し長居させてもらっても
  いいかしら?」

 「ええ、いいですよ。
  出来ればお泊り頂いても。
  元々明日の荷物の受け取りをしてから
  向こうに戻る予定だったので。

  あっ、そうだ、お二人は
  指紋キーの登録しましょうか。
  この管理棟はネット通販会社の
  事務所も兼ねてる訳だし。」


一度玄関まで出て来てもらって、
二人の指紋を登録した。
こうしておくと、俺がいなくても
この管理棟の鍵が開閉出来るようになる。

マスターキーが俺の指紋なので、
まず俺が承認していないと
他の人には開けられない、
セカンドキーとして登録した。

ふと、外を見ると涼しげな風が
サラサラと音を立てて
少し伸びてきた草を揺らしている。

何となく、草刈りも兼ねて
外で薙刀を振ってみたくなった。
俺が中に戻らずに、
そのまま草原の中央付近へ向かって
薙刀を手に持って歩いて行くと、
二人も少し離れた場所まで
ついてきていた。

空を見上げると、大きな白い入道雲が
巨人の如く聳えていた。
俺は瞑目し、その巨人を討伐するような
イメージを浮かべてみた。

また、炎のゆらめきの向こうで
汗を流しながら激しく舞う
亡き父の姿が浮かんできた。

裂帛の気合いと共に、
直線的な突きを繰り返す動きを
連続して放ち続けている。
かなり攻撃的な型の舞だ。
薙刀を二本振っているように見える。

今の俺にあんな速さでこの薙刀を
振ることが出来るだろうか。
その背を追いかけてみたい。
そんな思いが胸に込み上げてきた。

俺は大きく深呼吸をして、
白い巨人に向かって一礼をしてから、
目を閉じて父の動きをトレースすることに
全身の神経を傾けた。

心の中には何の感情も無い。
無の境地とまではいかないけど、
ひたすらに父の型のトレースをするうちに
そんな精神状態になっていた。

一通り舞い終えたけど、今度は
最初から目を開けて、今の舞を
目の前にあのギガスライムがいると
想定して、舞ってみることにした。

心に怒りが込み上げてきていた。
あの魔物に向けたものだけではなく、
討伐の怖さに、後味の悪さに
躊躇っていた俺自身にも
怒りの矛先が向けられていた。

いつしか、斬りかかる相手のイメージは
俺自身になっていた。
こっちの平和な世界はオフだとしても、
向こうの魔物が闊歩する世界はオンだ。
常に死と隣り合わせの緊張感がある世界だ。

守るんだ、俺は俺のできる精一杯の力で
守りたい人達を守りきるんだ。
絶対に引かない、引くわけにはいかない。
守りきった先にみんなで笑い合える、
のんびり出来る明日があるんだ。

そうだ、俺は笑いながら生きて行きたいんだ。
絶対に守るんだ。
ココもシルバもロアンヌさんもザラさん達も
みんな誰一人として失いたくない。

もっと速く、もっと強く、一撃一撃に
願う思いを力に変えながら、
俺は舞い続けた。

気がつくと、俺の周りが
白い世界になっている気がしたほどだ。
これが無の境地なのかもしれないな。
舞い終えてそんな風に思った。
・・・いやいや、ほんとに
周りが全部真っ白な世界なんだけど。
いつの間にか気絶した感じかな、うんそうだ。
夢かぁ、やばいなぁ、薙刀持って気絶って。

 『見事な舞であった。』

頭越しに声がした。
ふり返ると、見上げるほど背が高くて、
ものすごく鼻が高い外国人ぽい人が立っていた。
・・・何か背中に光るものがついてる。
変わったコスプレの人だな。
このところ海外からもコスプレイヤーが
来日してるからこの人もかな。
なんのキャラのコスプレだろう?

 『其の方の願いのこもった舞に
  応えて進ぜよう。

  我の力の一部を与える。
  この力は其の方の精進次第で
  より強くなってゆく。

  その精進次第では、
  どのような相手であろうとも
  討ち滅ぼすことが出来よう。
  覇王となれ、我の力を与し者よ。』

いやいや、覇王とかなるつもり
全くないんですけど、
ただ守りたいだけなんですけど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...