プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

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噂 千里を駆ける

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人族の王都に齎された情報は、
噂話として耳の良い者達にも届き、
大陸中に凄まじい速さで広まっていった。
まさに、噂が千里を駆ける如く。

その噂はこのようなものであった。

 北部の街に女神様が降臨された。
 いや、降臨されている。
 森の精霊様も顕現されている。
 聖域を形作られ、その中におられる。
 聖なる神殿が一瞬で創建された。
 女神様はそこにおられる。
 女神様からスキルを頂いたらしい。
 女神様から加護をかけて頂いたそうだ。
 神殿長が移り住むらしい。 
 聖なる城が一瞬で顕現した。
 いや、女神様の神城だ。
 精霊様に守られている神城だ。
 神狼様も守りにつかれている。
 国王陛下が住まわれるらしい。

中でも一番大きく騒がれているのは、

 英雄様のご子孫が現れた。
 ダンジョン討伐に向かうらしい。
 森の精霊様と共に戦われるそうだ。
 ただのダンジョンではないらしい。
 異なる世界からの侵攻だそうだ。

 世界の一大事に英雄様のご子孫が
 挑まれるらしい。

この最後の噂を耳にして、
強い光を瞳の奥に宿した者達がいた。
その者達は、その北部の街の名を確認し、
一団を形成しつつ、移動を始めたという。
あるものは森の奥から、
あるものは薄暗い地下都市から、
あるものは魔物が跋扈する荒野から、
あるものは険しい山奥から、
王都からも多くの戦士達が移動を始めていた。

誰もが、胸中に同じ想いを強く抱いていた。
特に森の奥から進み出る一団の長は、
深い皺の中から鋭い眼光を放っていた。

 (今度こそ共に戦わせて頂きます。
  英雄様。
  この千年、
  ずっとお待ちしておりました。)



でかいな。
モフるどころか、乗れそうなんだけど。
いや、絶対乗れる大きさだな。
すごく長い尻尾だな。
白い毛並みが揺らめいて綺麗だな。
・・・いや、
揺らめいているんじゃないよな、あれ。
本当に光で出来てるんだ!
すごいな!
マジで神狼様だな。
光の狼かぁ、カッケーー。

俺がそんな風に思いながら
見つめている目線を辿るように
二頭の神狼様が駆け寄ってくる。

大きな二頭の頭の上で
戯れている小天狗様は嬉しそうだ。
どうやら久しぶりに会うらしい。
はしゃぐ姿が可愛いな、失礼だけど。
ひとしきり小天狗様と戯れると俺の方に
親しみを感じる目つきで顔を寄せてきた。

うん、お馬さんに顔を舐められる感じだ。
いや、実際二頭に舐められた。
くすぐったいけど、なんだか嬉しかった。

周りでは国王陛下一同が
 おおっ! とか言って騒いでる。
顔を擦り寄せている二頭の首に抱きつくと
とても落ち着く感じがした。 

 『『また、共に戦わせてください。』』

そんな声が聞こえてきた。
うん、こちらこそお願いします。
心の中でそう返事をすると、二頭の尻尾が
ちぎれそうなくらい振られていた。

二頭が何かに気づいたようで、
顔をもたげた。
その拍子に俺も二頭の目線の先を追って、
振り返った。

後ろの方から、シロミズチ様と
エレノア神殿長、聖女様方が
歩いて来ていた。

また、二頭が嬉しそうな表情をしている。
シロミズチ様とも知り合いのようだ。



 「神狼達、久しぶりだな。
  元気そうで何よりだ。

  ん?
  そうか、
  カケル殿と共に戦ってくれるのか、
  うむ、
  我はこの聖域から
  出る事は出来ぬのでな。
  カケル殿のことを頼むのだ。
  
  カケル殿、
  この者達もカケル殿と同じく、
  女神様の使徒なのだ。
  仲良くしてやって欲しいのだ。」

 「はい、大丈夫ですよ。
  さっきも念話?みたいなのが
  聞こえたので、
  一緒にダンジョンに行ってきます。」

後ろの一団からさらに大きな声が上がった。
神狼様と共に戦えるなど、あの魔王討伐の
英雄譚と同じではないか!
なんたる僥倖、今ここにいることを
誇りに思う。

騒がしい兵士達を宥める隊長も近衛兵長も
目を閉じて何かを感じ入っているようだ。

聖女様方は花壇や噴水周りにいる精霊様にも
何かお祈りを捧げている。

 「もはや、迷うことはない。
  近衛兵長よ。
  余もあのダンジョン討伐に向かう。
  これは王命だ。
  全軍でもって討伐を敢行する。
  良いな。」

 「御意。
  共に戦えることを光栄に存じます。
  全員に告ぐ、城内で半刻の休息を取り、
  あのダンジョン討伐に向かう。
  準備を怠るな。」

国王陛下は、まず城内に入り、
ホールの向こうに大きなテーブルと
椅子のセットがあるのを見つけると、
そこで休息と食事をとると
ライアン近衛兵長に告げた。

ザラさん達が急足で厨房に走っていく。
俺も後に続いて、厨房に調理器具や食材、
食器を出して、調理の補助作業を始めた。
聖女様方も駆け寄って来て、
用意を手伝ってくれている。

ふと、思いついて、調理に使う水を
俺があのスキルで作り出して、
数十本の水瓶に注いでいった。
聖女様方はその水の正体にすぐに気付いて、
エレノア神殿長を呼びに行った。
水を見たエレノア神殿長が固まった。

 「カ、カケル様!
  こ、この水は!
  まさか、聖水なのでは!」

 「あ、俺のスキルで作り出しました。
  いくらでも作れるので
  気にしないでください。
  ちなみに、内緒ですけど、あの湖の水は
  全部聖水になってます。」

俺のその最後の一言で、
後ろで煌めく湖面を見つめて
皆さん硬直してしまった。
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