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一炊の夢
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いいのか?
ここでこんな事してていいのか?
もう国王陛下用の神殿(ほぼお城)の中は
グダグダの宴会場みたいにあちこちで
大声で語らう者達で溢れている。
女神様方も小天狗様も精霊様も
眠る必要がないそうなので、
今夜はオールで語ろうと聖女様方と
弾けている。
止めるべき人が泣きながら女神様に絡んでいる。
頭ポンポンされても泣いている。
神殿長は泣き上戸のようだ。
国王陛下は近衛兵長と肩を組んで
何か歌いながら飲み続けている。
これきっと後で大変なことになる人達だ。
袋とかうがい用のお水とか、
念のため、お掃除道具も用意しておこう。
本当に国王陛下だよな?
大丈夫なのか、この国。。
ノブマサ隊長が部下達の前で
何か熱く語っている。決起集会かなと思って
耳をそば立てて聞いてみると、
・・・説教じみた内容だ。
うん、近寄らないでおこう。
一番やばい人達がいる。
なんか出してはいけないものを
出して俺に抱きついてくる聖女様達。
ザラさんが上着をそっと被せて、
俺を奥に引っ張っていった。
酔うと脱ぐタイプの人なのかと思ったんだけど、
確信犯だそうだ。
少し酔って赤い顔をしているココと
眠り込んでいるシルバと一緒に
今のうちに屋敷に戻ることにした。
シフォンさんが一緒について来てくれた。
ココは何か鼻歌のようなものを歌って、
ご機嫌な感じだ。
屋敷の3階の部屋まで楽しそうに歌いながら
登っていった。
シフォンさんと一緒にシルバを1階の俺の部屋の
ベッドに寝かせた後、外に出てみた。
何となく、湖の波の音を聞きたくなったから。
ざっ、ざっ、と寄せては返す小さな波の音を
聞いていると何だか気分が落ち着いてきた。
同時に少し不安になった。
俺はちゃんと戦えるんだろうか。
記憶をトレースしながら、
体が自動的に動いてくれている。
そんな感じでこれまでは何とかなってきた。
これからもそうとはいかないから、
女神様は来てくれたのだと思う。
『あら、どうしたのかしら?
少し勇気が足りなくなったのかしら?
ふふふ、そうね、
ちょっと私からお節介してあげるわ。
そうそう、精霊の幻想のスキルだけれど、
眠る前にカケル自身に使ってみてね。
さぁ、2階の奥の部屋に戻りなさい。』
何だか楽しそうなヘスティア様の声が頭の中に
響いてきた。
うん、俺にできることを精一杯やるだけだ。
湖面を渡ってくるひんやりとした気持ちの良い風に
柔らかく背中を押されるように、
俺は屋敷の方に戻ることにした。
2階の奥の部屋に戻れって女神様は言っていた。
分厚い扉を押し開けて、そっと中に入ると、
ぼんやりとした魔石灯の光が妖しく揺らめいていた。
ベッドの前まで進んで横になろうかなと思った時、
柔らかいものが背中に抱きついてきた。
ご主人様、とシフォンさんのかすれるような小さな声が
背中越しに聞こえた。
その瞬間、俺の体の中に何か温かいものが
流れ込んできた感じがした。
とてもシフォンさんが愛おしく思えた。
前に回ってきたソフィさんが背伸びをして
俺の首に手を回して顔を寄せてきた。
とても柔らかい感触が俺の唇を覆ってきた。
優しい獣に襲われる感じだったけど、
俺とシフォンさんは肌を重ねた。
・・・シフォンさんの寝息も
時折ピョコピョコ動く立ち耳も可愛く感じた。
あ、お楽しみして終わりじゃないよな。
この状態でスキル使っても大丈夫なのかな。
そう思いつつ、俺は自分自身にスキルを使った。
精霊の幻想
そう願うと柔らかな光に包まれた。
ゆっくりと目を開けると、桜の花びらが舞い散る
川の土手に立っていた。
川の方を見ると、満開の花をつけた大きな桜の木が
綺麗に並んでどこまでも続いているかのようだった。
「ほぉ、桜の花を愛でることが出来るのか。
川面をただよう花びらもよし、
風に舞い散る花びらもよし、
この盃に舞い降りる花びらは尚の事よし。
平和な世とはいいものであるな。
そうは思わぬか?」
少し降りた先の草の上に胡座をかいて
小さな盃でお酒を嗜んでいるお侍さんがいた。
腰に刀をさしているけど、横に薙刀が置いてあった。
「はい、ずっと続くように、守りたいと思います。
そちらに行ってもいいでしょうか?」
「よい。
気兼ねするな。」
気さくな感じのする凛々しい顔立ちの壮年の男の人だ。
でも、この感じは・・・違和感がある。
そうか、これ、スキルが見せてる幻想なんだ。
そう思いながら、その人の元に寄って行った。
「ふむ、幻想であろうか?
眠っている時に見る夢と
起きている時に見る夢があるという。
さて、今はどちらであろうな?
夢とは何であろうな?
我は思うのだ。どちらでも良いと。
どちらであろうとも、思い残す事なく、
より良く生きて行ければ良いと。
そなたはどう思う?」
「確かにそうですね。
夢だから適当なことをしていいとは思えないし、
気分良くないですよね。
でも、今この時はとても大切な時なんだと
感じています。
何だか、他人といるように思えなくて。
とても落ち着いていて、それでいて
何だか懐かしく思えて。」
「・・・そうか。
薄々気付いておったか。
我は心残りがある。
我のためと、その身を盾に防いでくれた大切な
仲間に何も報いることが出来なかった。
この世では、それゆえに決まった仲間を持たず、
戦うことを選んだのだ。
我がこの世に渡って来たがために、
子孫である其方達にも影響が出ておるようだ。
何やら巻き込んでしまったようで
悪いことをしたな。」
「いいえ、そんなことはありません。
あなたは、貴方様はこの世に平和をもたらして、
皆の笑顔を守れたのです。
立派にお仲間の方々の思いを果たされたと、
俺はそう思います。
それに、俺も天涯孤独になったのかなと
思っていたのですが、この世界に来て
大切にしたい人がたくさん出来ました。
悪いことなんて全くないです。
そうだ、俺は貴方様のように強くないのですが、
それでもこの世界を守るために明日異界の邪神と
戦おうと思っています。
もし、もし、ご迷惑でなければ、
俺に稽古をつけていただけませんか?」
「うむ、邪神だと?
・・・つくづく我の子孫は戦いに明け暮れる性を
背負うのか。
良い、我に勝てるようになるまで
稽古に付き合おう。
ここの時間はどれだけ過ごしていたとしても
元の世界では一炊の夢の如くだ。
獲物は何を使うのだ?」
「この薙刀になります。」
俺は亜空間収納から白拍子の薙刀を出した。
・・・ここでも使える設定なんだ。幻想だからかな。
「・・・これは、我が静に与えたものだ。
うむ、静御前の願いか、良い加護を
つけてもらっておるな。」
「あ、はい。
女神様の計らいで静御前様にお会いしました。
その時にかけていただいたように思います。」
「そうか、静に会えたか。
我はこちらでは独り身を通したのでな。
子は残しておらぬ。
元の世では其方のような良い子孫が
続いてくれていることを嬉しく思う。
さて、其方は天狗様方の修行は受けたか?」
「いえ、まだ小天狗様にすら
及ばぬ体たらくです。」
「はっはっはっは。及ぶわけがなかろう。
それが当然なのだ。あの方々は神であろう。
人の身で勝てるはずはない。
・・・だが、其方が対する相手は
邪神であるな。
早速、始めるとしようか、我が子孫よ。」
「はい、よろしくお願いします。」
それからどのくらい長い間稽古をしたのだろう。
途中で食事をすることになって亜空間収納から
レトルトのカレーとご飯を出して、
食材加工のスキルで温めて一緒に食べたりした。
カレーをいたく気に入っていただけて、
何種類も食べていただいた。
コピースキルで増やしたから、在庫は全く減らない。
春が過ぎて夏になって、木枯らしが吹いて、
雪が積もっても稽古を続けた。
もう何十年と一緒に稽古するうちに
ほぼ対等に打ち合えるまでになったと思った。
だけど、まだ英雄様のお顔ははれない。
邪神にはまだ遠いであろうという判断だ。
桜の花が舞い散る中、お互いに花びらを踏んで
左右に飛び交いながら、空中で刃を交えていた。
「んっ!!
見事!」
ついに俺が一本取れた瞬間だった。
英雄様の笑顔がそこにあった。
「しかと見届けた。
其方であれば、邪神であろうと
討伐できよう。
我もゆけるのであれば共にゆきたいが、
すでにこの世に実体の無い身だ。
この世の空から見守っておるぞ。
ゆけ、翔よ。
我、九郎義経を負かしたのだ。
自信は持てども、過信はするでないぞ。
其方が天寿をまっとうし、
ここに至る時まで我はここで待っておる。
存分に生きよ、心残すことなく。」
そんな英雄様の声を聞きながら、
俺は柔らかな光に包まれた。
目を開けると、朝の温かな光に包まれていた。
うん、英雄様と長い時の中を稽古してきたんだ。
英雄様と一緒に戦う気持ちで行こうか。
気持ちを新たに俺はベッドを飛び起きた。
ここでこんな事してていいのか?
もう国王陛下用の神殿(ほぼお城)の中は
グダグダの宴会場みたいにあちこちで
大声で語らう者達で溢れている。
女神様方も小天狗様も精霊様も
眠る必要がないそうなので、
今夜はオールで語ろうと聖女様方と
弾けている。
止めるべき人が泣きながら女神様に絡んでいる。
頭ポンポンされても泣いている。
神殿長は泣き上戸のようだ。
国王陛下は近衛兵長と肩を組んで
何か歌いながら飲み続けている。
これきっと後で大変なことになる人達だ。
袋とかうがい用のお水とか、
念のため、お掃除道具も用意しておこう。
本当に国王陛下だよな?
大丈夫なのか、この国。。
ノブマサ隊長が部下達の前で
何か熱く語っている。決起集会かなと思って
耳をそば立てて聞いてみると、
・・・説教じみた内容だ。
うん、近寄らないでおこう。
一番やばい人達がいる。
なんか出してはいけないものを
出して俺に抱きついてくる聖女様達。
ザラさんが上着をそっと被せて、
俺を奥に引っ張っていった。
酔うと脱ぐタイプの人なのかと思ったんだけど、
確信犯だそうだ。
少し酔って赤い顔をしているココと
眠り込んでいるシルバと一緒に
今のうちに屋敷に戻ることにした。
シフォンさんが一緒について来てくれた。
ココは何か鼻歌のようなものを歌って、
ご機嫌な感じだ。
屋敷の3階の部屋まで楽しそうに歌いながら
登っていった。
シフォンさんと一緒にシルバを1階の俺の部屋の
ベッドに寝かせた後、外に出てみた。
何となく、湖の波の音を聞きたくなったから。
ざっ、ざっ、と寄せては返す小さな波の音を
聞いていると何だか気分が落ち着いてきた。
同時に少し不安になった。
俺はちゃんと戦えるんだろうか。
記憶をトレースしながら、
体が自動的に動いてくれている。
そんな感じでこれまでは何とかなってきた。
これからもそうとはいかないから、
女神様は来てくれたのだと思う。
『あら、どうしたのかしら?
少し勇気が足りなくなったのかしら?
ふふふ、そうね、
ちょっと私からお節介してあげるわ。
そうそう、精霊の幻想のスキルだけれど、
眠る前にカケル自身に使ってみてね。
さぁ、2階の奥の部屋に戻りなさい。』
何だか楽しそうなヘスティア様の声が頭の中に
響いてきた。
うん、俺にできることを精一杯やるだけだ。
湖面を渡ってくるひんやりとした気持ちの良い風に
柔らかく背中を押されるように、
俺は屋敷の方に戻ることにした。
2階の奥の部屋に戻れって女神様は言っていた。
分厚い扉を押し開けて、そっと中に入ると、
ぼんやりとした魔石灯の光が妖しく揺らめいていた。
ベッドの前まで進んで横になろうかなと思った時、
柔らかいものが背中に抱きついてきた。
ご主人様、とシフォンさんのかすれるような小さな声が
背中越しに聞こえた。
その瞬間、俺の体の中に何か温かいものが
流れ込んできた感じがした。
とてもシフォンさんが愛おしく思えた。
前に回ってきたソフィさんが背伸びをして
俺の首に手を回して顔を寄せてきた。
とても柔らかい感触が俺の唇を覆ってきた。
優しい獣に襲われる感じだったけど、
俺とシフォンさんは肌を重ねた。
・・・シフォンさんの寝息も
時折ピョコピョコ動く立ち耳も可愛く感じた。
あ、お楽しみして終わりじゃないよな。
この状態でスキル使っても大丈夫なのかな。
そう思いつつ、俺は自分自身にスキルを使った。
精霊の幻想
そう願うと柔らかな光に包まれた。
ゆっくりと目を開けると、桜の花びらが舞い散る
川の土手に立っていた。
川の方を見ると、満開の花をつけた大きな桜の木が
綺麗に並んでどこまでも続いているかのようだった。
「ほぉ、桜の花を愛でることが出来るのか。
川面をただよう花びらもよし、
風に舞い散る花びらもよし、
この盃に舞い降りる花びらは尚の事よし。
平和な世とはいいものであるな。
そうは思わぬか?」
少し降りた先の草の上に胡座をかいて
小さな盃でお酒を嗜んでいるお侍さんがいた。
腰に刀をさしているけど、横に薙刀が置いてあった。
「はい、ずっと続くように、守りたいと思います。
そちらに行ってもいいでしょうか?」
「よい。
気兼ねするな。」
気さくな感じのする凛々しい顔立ちの壮年の男の人だ。
でも、この感じは・・・違和感がある。
そうか、これ、スキルが見せてる幻想なんだ。
そう思いながら、その人の元に寄って行った。
「ふむ、幻想であろうか?
眠っている時に見る夢と
起きている時に見る夢があるという。
さて、今はどちらであろうな?
夢とは何であろうな?
我は思うのだ。どちらでも良いと。
どちらであろうとも、思い残す事なく、
より良く生きて行ければ良いと。
そなたはどう思う?」
「確かにそうですね。
夢だから適当なことをしていいとは思えないし、
気分良くないですよね。
でも、今この時はとても大切な時なんだと
感じています。
何だか、他人といるように思えなくて。
とても落ち着いていて、それでいて
何だか懐かしく思えて。」
「・・・そうか。
薄々気付いておったか。
我は心残りがある。
我のためと、その身を盾に防いでくれた大切な
仲間に何も報いることが出来なかった。
この世では、それゆえに決まった仲間を持たず、
戦うことを選んだのだ。
我がこの世に渡って来たがために、
子孫である其方達にも影響が出ておるようだ。
何やら巻き込んでしまったようで
悪いことをしたな。」
「いいえ、そんなことはありません。
あなたは、貴方様はこの世に平和をもたらして、
皆の笑顔を守れたのです。
立派にお仲間の方々の思いを果たされたと、
俺はそう思います。
それに、俺も天涯孤独になったのかなと
思っていたのですが、この世界に来て
大切にしたい人がたくさん出来ました。
悪いことなんて全くないです。
そうだ、俺は貴方様のように強くないのですが、
それでもこの世界を守るために明日異界の邪神と
戦おうと思っています。
もし、もし、ご迷惑でなければ、
俺に稽古をつけていただけませんか?」
「うむ、邪神だと?
・・・つくづく我の子孫は戦いに明け暮れる性を
背負うのか。
良い、我に勝てるようになるまで
稽古に付き合おう。
ここの時間はどれだけ過ごしていたとしても
元の世界では一炊の夢の如くだ。
獲物は何を使うのだ?」
「この薙刀になります。」
俺は亜空間収納から白拍子の薙刀を出した。
・・・ここでも使える設定なんだ。幻想だからかな。
「・・・これは、我が静に与えたものだ。
うむ、静御前の願いか、良い加護を
つけてもらっておるな。」
「あ、はい。
女神様の計らいで静御前様にお会いしました。
その時にかけていただいたように思います。」
「そうか、静に会えたか。
我はこちらでは独り身を通したのでな。
子は残しておらぬ。
元の世では其方のような良い子孫が
続いてくれていることを嬉しく思う。
さて、其方は天狗様方の修行は受けたか?」
「いえ、まだ小天狗様にすら
及ばぬ体たらくです。」
「はっはっはっは。及ぶわけがなかろう。
それが当然なのだ。あの方々は神であろう。
人の身で勝てるはずはない。
・・・だが、其方が対する相手は
邪神であるな。
早速、始めるとしようか、我が子孫よ。」
「はい、よろしくお願いします。」
それからどのくらい長い間稽古をしたのだろう。
途中で食事をすることになって亜空間収納から
レトルトのカレーとご飯を出して、
食材加工のスキルで温めて一緒に食べたりした。
カレーをいたく気に入っていただけて、
何種類も食べていただいた。
コピースキルで増やしたから、在庫は全く減らない。
春が過ぎて夏になって、木枯らしが吹いて、
雪が積もっても稽古を続けた。
もう何十年と一緒に稽古するうちに
ほぼ対等に打ち合えるまでになったと思った。
だけど、まだ英雄様のお顔ははれない。
邪神にはまだ遠いであろうという判断だ。
桜の花が舞い散る中、お互いに花びらを踏んで
左右に飛び交いながら、空中で刃を交えていた。
「んっ!!
見事!」
ついに俺が一本取れた瞬間だった。
英雄様の笑顔がそこにあった。
「しかと見届けた。
其方であれば、邪神であろうと
討伐できよう。
我もゆけるのであれば共にゆきたいが、
すでにこの世に実体の無い身だ。
この世の空から見守っておるぞ。
ゆけ、翔よ。
我、九郎義経を負かしたのだ。
自信は持てども、過信はするでないぞ。
其方が天寿をまっとうし、
ここに至る時まで我はここで待っておる。
存分に生きよ、心残すことなく。」
そんな英雄様の声を聞きながら、
俺は柔らかな光に包まれた。
目を開けると、朝の温かな光に包まれていた。
うん、英雄様と長い時の中を稽古してきたんだ。
英雄様と一緒に戦う気持ちで行こうか。
気持ちを新たに俺はベッドを飛び起きた。
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