無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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運命に抗うもの

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電脳兵のセブンは、これから先の戦闘について
多方向解析プログラムを起動させ、少しでも有利に戦闘を
進めていける方策を探っていた。

幸いなことにアイテムボックスには最初に干渉した世界で
手に入れたフライングユニットがある。
最後の一手は見えていた。
問題はそこへ辿り着けるかどうかが問題だ。

 (多分、間違った選択をした俺の陰陽術では
  どの神も力を貸してくれないだろうし、
  逆に俺に協力して降格されたりしたら
  申し訳なさ過ぎる。

  そうなると、孤独な戦いに専念するしかないか。

  ・・・そうか、俺はこの世界で異端者だ。
  なら、異端者らしくやってみますか。)

フライングユニットを装着し、ステルスモードを起動させたセブンは、
運命の女神達がいう間違った選択での介入ミッションを開始した。



 「守り抜くのだ!
  我らはこの世界樹と共にある種族なのだ。
  何としてもあの黒い巨人達を倒し、
  世界樹を守り抜くのだ!

  水魔法の魔石はもうないのか?
  少しでもいいから延焼を抑えるのだ!」

森人族の族長らしき男が全身煤だらけの姿で、
仲間を必死に鼓舞しながら、攻撃魔法を放ち続けていた。

 『しぶといものだ。
  スルトめ、もう一振りすれば、
  忌々しい神どもが作り上げたこの世界を
  焼き尽くせるものを。

  彼奴は何を考えているのか全くわからん。

  しかし、しつこい連中だ。
  どれ、この一撃で叩き潰してくれよう。』

黒い靄の塊のような古の巨人が、
しぶとく攻撃魔法を放ってくる森人族の方を見やると、
何かを掬い上げるような動きをしてみせた。

ごっそりと手前の大地が抉り取られており、
そのえぐられたと思われる大地が
古の巨人の頭上に浮かんでいたのだった。

ゆっくりとした動作で世界樹の方へ投げようとした瞬間、
巨人の真上から光の刃が浮かんだ大地毎切り裂いて突き抜けていった。

古の巨人の姿が形を無くすのと同時に浮かんでいた大地が2つに割れて
その黒い靄があった辺りを叩き潰すように落ちていった。

 「何があったのだ?
  一番手強いあの巨人が一撃で屠られたように見えたが。」

世界樹を取り囲んでいた他の巨人達の姿も次々と
直上から貫いてくる光の刃の前に形をなくしてゆくのだった。

 「や、やったのか。
  消火を急げ!何としても延焼を食い止めるのだ!」

その時、天空に黒い雲が突如として沸き立ち、
大粒の雨が落ちてきた。
世界樹の火は消え去り、焼けていた幹や枝、葉が
虹色の煌めきと共に元通りの姿になっていった。

 「奇跡だ!
  こんなことはありえない。
  魔法でできることではない。
  奇跡としか言いようがない。」

凛とした姿で聳え立つ世界樹の姿に
安心したのか、森人族の族長らしき男は
自然と涙を流していた。

 「やってしまったのね、武人。
  貴方は大きな間違いを犯してしまったのね。
  もう取り返しはつかないわ。
  運命の歯車を狂わせてしまったら、
  もう戻れなくなるかもしれないのに。」

世界樹の根元近くにある泉の前で、
二人の女神は沈痛な表情をしているのだった。
誰にも聞こえない声で一言
ありがとうと囁いたような気がした。



東の海辺では上陸してきた古の巨人達と
バルキュリヤ達が率いるエインヘリャルが
激闘を始めていた。
古の巨人が振るう黒い剣から放たれる黒い炎は
避けることができず、確実に神兵達を倒していった。

バルキュリヤの中でも運命の女神でもあるスクルドは
懸命に戦っていた。
左側から連続攻撃を受け右に回り込んだ時だった。
黒い炎が彼女に迫ってきていた。
目の前の巨人の剣を受け止めている状態では
避けることができない。
そこへ追い討ちをかけるように、もう一人の巨人が
大きな斧を振りかぶって迫ってきた。

 (お姉様、ごめんなさい。
  スクルドはここまでのようです。
  悔しいです。
  楽しく暮らせる世界を守りたかったです。)

 (諦めるのはまだ早いんじゃないかな、
  俺の女神様。)

覚悟をしていたスクルドに聞き覚えはないが、
何故か懐かしい思いがする念話の声が届いてきた。

光の刃が迫る黒い炎を切り裂いて霧散させ、
切り結んでいる巨人が縦に切り裂かれ、
迫り来る巨人も縦に切り裂かれて霧散していくのが見えた。

 「あり得ないわ!
  この私には滅ぶ未来しか視えていなかったのに。
  どうしてこんなことが?」

 「なに、簡単なことですよ、俺の女神様。
  運命は必ず切り拓けるものなんですよ。
  切り拓けるまで足掻けばね。」

懐かしい匂いのする声の方を向いたのだが、そこには何もなく、
真っ直ぐに揺らぐ陽炎があっただけだった。



 「ゆけ!冥界の亡者達よ。
  地上の全てを死で満たすのだ!」

大地にはぽっかりと暗い大穴が開いており、
そこから死臭漂う戦士達が地上に死を振りまかんと
湧き出てきている。
わずかに生き残った人々を滅ぼす勢いだ。

 「泣き言を言う暇などない、戦い続けよ!
  我ら魔族の誇りにかけて死力を尽くして
  撃退するのだ!」

魔族の女王、カミュールが真っ赤に燃える瞳で
魔族の戦士達を鼓舞し、迫り来る死の戦士達を
焼き続けていた。
もう数百人もいるかどうかの壊滅状態になっているが、
戦士達の士気は高く、皆纏まって攻撃を加え続けていた。

 (あの忌々しい穴さえどうにかできれば!)

 (了解、その任、賜った。)

その念話の声はカミュールの胸の奥に
何か刺さってきた感じがあった。
痛みではなく、誰かを思い焦がれている感情に似ていた。

突如として黒い雲が沸き立ち、
痛みを伴う雨が砲撃のように降り注ぎ始めた。
しかし、それも一瞬の痛みであった。
ふと見上げると、魔族の戦士達を取り囲むように
虹色の半球体がバリヤのように張られていたのだ。

 (なんだこれは?
  何故だ?
  何故わらわはこれに見覚えがあるように
  感じるのだ、この胸の痛みはなんなのだ。
  誰がこんな魔法を、いや魔法の域を超えておるな。
  何者か分からぬが感謝しかない。)

周り一面を湖に変えてしまうほど降り続けた雨の後には
黒い穴もなく、死の戦士達もいなかった。
カミュールはこの世界から消え去ったはずの精霊の光が
湖面上を飛び交っているのを見た。

 「セブン、やりおったか。
  ・・・セブンとは誰であったか。」



その頃、静止衛星軌道上に浮かぶゆらめきがあった。

 「ここからだと届く範囲が限られるけど、
  何回か繰り返す程度で元通りになりそうだな。

  世界よ、俺のわがままを受け入れてくれ。
  滅んでいい世界なんてない。
  切り開けない運命なんてない。
  やり切れば、きっと叶う!届くんだ!

   完全回復!」

高速で移動し、6箇所から行使した後、
北側でも6箇所、反対側の南側に移動して6箇所から
完全回復を行使すると、世界は元通りになっていた。

当然回復してほしくないものも回復している。

暴れ始めたヨルムンガンドを切り裂き、
炎を吐こうとしたフェンリルを水攻めにし、
暴れるロキも切り裂いたセブンは、
炎の剣を振ろうとするスルトの前に降り立った。

 『なんだ、貴様は!
  俺の邪魔をしようと言うのか?
  貴様らが使う魔法ごときで
  俺の炎が抑えられると思うなよ。

  そら、これで燃え尽きろ!!」

 「天空の瀑布!!」

炎の剣を振ろうとしたスルトに
撃ち殺す意思でもあるかのような
大粒の雨が叩きつけてきた。

とんでもない時間振り続け、
その大陸の一部は海と一体化するほどだった。

雨が止んだ時、黒い靄が霧散していくのが
見えたと言う。

神気が込められた雨は古の巨人には猛毒の効果もあり、
形を留めることができなくなったようだ。 



世界樹のもとに3人の女神が佇んでいた。
その3人に気楽な雰囲気を漂わせた物騒な装備をした
戦士が近寄っていった。

女神の一人が泣きながらその男に縋りついた。

 「バカじゃないの!
  どうしてこんな運命を選んだの!?
  武人だけが幸せになれない運命なんて
  紗良はどうするの?
  パイロもカイもカーラもカミュールもドゥルガーも
  みんな貴方のことをどれだけ・・・
  バカよ、大バカよ、あなた!」

泣き続けるスクルドの肩をセブンは
優しく抱きとめることしか出来なかった。
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