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お見合いとお付き合い篇
7、兄の気持ちは複雑です
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「ヴィレム。震えているようだが、寒いのかい?」
向かいのソファーに座るラウレンスが尋ねてくる。この男は俺のように武骨ではなく、とても優美で女性にもてまくる。
俺の場合は、街を歩くと女性にぶつかられることが多く。しかも長年の経験から、女性がぶつかりに来るのを察知して避けるのだが。そういう女性は、くるりとターンしたり、行き過ぎたはずなのにまた戻って来て俺にぶつかる。
何故だ。俺は磁力でも発しているのか? そして女性のコルセットにでも金属が使われているのだろうか。うちのメイドが言うには、コルセットは流行っていないとのことだが。
女性には縁遠いので、その辺りはよく分からない。
さらに何故かは知らぬが、俺の足元にはよくレースのハンカチが落ちている。
どのハンカチにも名前の刺繍がしてあって(普通はイニシャル程度じゃないか?)持ち主は、俺の前を歩いていることが多い。
そのまま渡すと、これまた理由は分からぬがお茶に誘われるので面倒くさい。
「あ、そのハンカチはわたしの……」と口に出す女性に素早くハンカチを手渡し、俺は全力でその場を立ち去る。
普段から訓練しているので、俺はまっすぐに高速で歩くことができる。
だいたい、これで振り切れるのだが。
ハンカチを拾ったくらいでお茶を一緒にしないといけないなら、俺は一日に何杯飲まないといけないんだ。
「寒くはないが。何故、手が震えるのだろう」
ラウレンスに尋ねると、目の前の美男子は心底馬鹿にするように眉根を寄せた。
ああ、フランカが兄に性格が似なくて良かったなぁ。
というか、こいつこんなに性格悪かったっけ? 特別親しくもないが、仲が悪いわけでもないんだが。
「騎士というのは、脳も筋肉で出来ているのかな。それとも君が特別?」
「さぁ? 俺が死んだら解剖でもしてみるかい?」
「ごめんだよ」
そう、ラウレンスは医者なのだ。貴族ではあるが、昔から人の役に立ちたいとそちらの道に進んでいる。
ん? 俺は非番で休みだが、今日は平日だぞ。お前、仕事はどうした。
だが、俺が落ち着かないのと同様に、ラウレンスも扉の方に視線を向けては、小さく息をつく。
遅刻が気になるなら、早く出勤すればいいのに。
「お待たせしました、ヴィレムさま」
俺とラウレンスは揃って顔を上げた。
ノックをして扉を開いたフランカは、それはそれは愛らしかった。
蜂蜜色のふわふわした髪は、薔薇にすら愛されて拘束されるほどだ。瞳と同じすみれ色のリボンを上部に結び、髪は背中に垂らしている。
何を着ても可愛いが、白を基調として、とても細い水色のストライプの入ったアフタヌーンドレスもよく似合っている。襟元にはやはり蜂蜜を思わせる琥珀のブローチ。
存在自体が甘そうで、フランカを眺めているだけで笑みが浮かんでしまう。
どうやらラウレンスも同じようで、やはりフランカを見て微笑んでいる。
だが、すぐに俺をぎろりと睨みつけた。
お前、本当に目つきが悪くなったなぁ。何か悩みでもあるのか?
「不本意だが、妹を君に預ける。では、ぼくは仕事があるのでこれで」
「いってらっしゃいませ、お兄さま」
ラウレンスは立ち上がると、彼女のひたいにくちづけた。
さっきまでの険しい目つきは何処へやら、今はとろけるような眼差しでフランカを見つめている。
いいなぁ。兄妹だから気兼ねなくキスできて。って、俺は何を考えているんだ。
「お兄さま、こんなに遅くに出勤して大丈夫なのかしら?」
「うん、大丈夫じゃないと思うぞ。思いっきり遅刻だな」
向かいのソファーに座るラウレンスが尋ねてくる。この男は俺のように武骨ではなく、とても優美で女性にもてまくる。
俺の場合は、街を歩くと女性にぶつかられることが多く。しかも長年の経験から、女性がぶつかりに来るのを察知して避けるのだが。そういう女性は、くるりとターンしたり、行き過ぎたはずなのにまた戻って来て俺にぶつかる。
何故だ。俺は磁力でも発しているのか? そして女性のコルセットにでも金属が使われているのだろうか。うちのメイドが言うには、コルセットは流行っていないとのことだが。
女性には縁遠いので、その辺りはよく分からない。
さらに何故かは知らぬが、俺の足元にはよくレースのハンカチが落ちている。
どのハンカチにも名前の刺繍がしてあって(普通はイニシャル程度じゃないか?)持ち主は、俺の前を歩いていることが多い。
そのまま渡すと、これまた理由は分からぬがお茶に誘われるので面倒くさい。
「あ、そのハンカチはわたしの……」と口に出す女性に素早くハンカチを手渡し、俺は全力でその場を立ち去る。
普段から訓練しているので、俺はまっすぐに高速で歩くことができる。
だいたい、これで振り切れるのだが。
ハンカチを拾ったくらいでお茶を一緒にしないといけないなら、俺は一日に何杯飲まないといけないんだ。
「寒くはないが。何故、手が震えるのだろう」
ラウレンスに尋ねると、目の前の美男子は心底馬鹿にするように眉根を寄せた。
ああ、フランカが兄に性格が似なくて良かったなぁ。
というか、こいつこんなに性格悪かったっけ? 特別親しくもないが、仲が悪いわけでもないんだが。
「騎士というのは、脳も筋肉で出来ているのかな。それとも君が特別?」
「さぁ? 俺が死んだら解剖でもしてみるかい?」
「ごめんだよ」
そう、ラウレンスは医者なのだ。貴族ではあるが、昔から人の役に立ちたいとそちらの道に進んでいる。
ん? 俺は非番で休みだが、今日は平日だぞ。お前、仕事はどうした。
だが、俺が落ち着かないのと同様に、ラウレンスも扉の方に視線を向けては、小さく息をつく。
遅刻が気になるなら、早く出勤すればいいのに。
「お待たせしました、ヴィレムさま」
俺とラウレンスは揃って顔を上げた。
ノックをして扉を開いたフランカは、それはそれは愛らしかった。
蜂蜜色のふわふわした髪は、薔薇にすら愛されて拘束されるほどだ。瞳と同じすみれ色のリボンを上部に結び、髪は背中に垂らしている。
何を着ても可愛いが、白を基調として、とても細い水色のストライプの入ったアフタヌーンドレスもよく似合っている。襟元にはやはり蜂蜜を思わせる琥珀のブローチ。
存在自体が甘そうで、フランカを眺めているだけで笑みが浮かんでしまう。
どうやらラウレンスも同じようで、やはりフランカを見て微笑んでいる。
だが、すぐに俺をぎろりと睨みつけた。
お前、本当に目つきが悪くなったなぁ。何か悩みでもあるのか?
「不本意だが、妹を君に預ける。では、ぼくは仕事があるのでこれで」
「いってらっしゃいませ、お兄さま」
ラウレンスは立ち上がると、彼女のひたいにくちづけた。
さっきまでの険しい目つきは何処へやら、今はとろけるような眼差しでフランカを見つめている。
いいなぁ。兄妹だから気兼ねなくキスできて。って、俺は何を考えているんだ。
「お兄さま、こんなに遅くに出勤して大丈夫なのかしら?」
「うん、大丈夫じゃないと思うぞ。思いっきり遅刻だな」
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◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
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