【R18】高飛車王女様はガチムチ聖騎士に娶られたい!

レイラ

文字の大きさ
35 / 40
【挿絵あり】番外編 うれしはずかし夏休み

07 早くふたりで

しおりを挟む

「ベイル、あっちで魚が跳ねたわ!」
「おっ、いいっすね、潜って見てみます?」
「いえそういう意味じゃなくてっ……!」
「はい息吸ってー、大きくですよ!」

 唐突な指示に思わず従ってしまい、大きく息を吸う。そしてベイルにしがみついたまま、一緒に水中へ潜った。というよりも連れていかれた。もはやされるがままである。
 目を固く閉じたままでいたヒルデガルドの横腹を、ベイルが肘でつく。それが目を開けてみろということだと気づき、恐る恐る目を開き──

 ──っ、なんて美しいの……

 透明度の高いその湖の中には、どこまでも青い景色が広がっていた。水面から覗き込むのとは全く異なる世界に、まさに息をのむ。
 太陽の光が水中に差し込み、カーテンのように広がってはキラキラと瞬いている。それが右へ左へと泳ぐ魚の鱗に反射し、また、ゆったりと揺れる水草を映し出しもした。
 自然と、ベイルにしがみつき強張っていた身体の力も抜けていく。美しい。ただそれだけで、ヒルデガルドの胸は十二分に満たされてしまった。

「ぷはっ! どーっすか? 夏の楽しさ、わかってもらえました?」

 ニカっと豪快に笑い、ベイルは雑に髪をかき上げる。
 次に来るときはシュノーケリングの用意もしなくちゃな、なんて言って、そのベイルが描くいつかの未来にも、当たり前にヒルデガルドがいることが嬉しかった。

「ええ、すごく楽しかった。ねぇ、ベイル……」

 溺れないようにとベイルにくっついているヒルデガルド。そうすると陸地での体格差が嘘のようになくなって、今にもくちびるが触れてしまいそうなほど近い。
 ゆっくりと距離をなくし、重なったくちびるは柔らかい。冷えた身体とは裏腹に、溶け合う吐息は熱を帯びていた。

「ん……っ、四阿に、飲み物を用意させてあるわ。早く行きましょう……?」
「そうですね。でも……もうちょっとだけ……」

 ヒルデガルドのくちびるの形を確かめるように食み、ベイルの大きな掌がくびれをなぞる。彼の首裏に腕を回し、更に密着した。

「ふふ……、足はくすぐったいわ」
「え?」
「え?」

 ぴたり、止まって顔を見合わせる。
 ベイルはヒルデガルドが沈んでしまわないよう、腰を掴んでいるわけで。なら、この足首に纏わりつくぬるりとしたものは。

「えええええっ!!」
「でっか!!?? ちょ、離れろこの……!」
「んなっ……! 気持ち悪い!」
「待って姫さん大丈夫だから暴れるな! こいつぁ、インモンクラゲ!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

処理中です...