マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

文字の大きさ
1 / 20
一章 最強国王の悲劇

一話 王子様

しおりを挟む
「最悪だ……」

 この俺、六宮冬悟ろくみやとうごは呆然として東京の地に立ち尽くしていた。
 関西の田舎住みである俺は初めて来た東京の人混みに圧倒されていた。
 東京は人が多いと散々聞かされていたが、これは予想以上だ。
 これがいわゆる帰宅ラッシュってやつかと感心させられる。

 ――いや、感心してる場合じゃない。
 俺は無計画でここに来たことを正直かなり後悔していた。
 何故こんな遠い所まで遙遙はるばるやって来たかというと、リアルでの生活が嫌になったからである。
 大学は面白くないし、上手く人と喋れないし、彼女はいないし、勉強は大変だし、真面目な割には成績も良くない。
 まだ無数に辛いことがあるが、挙げればキリがないので止めておく。
 自分の不器用さ、不憫さに嫌になり、何処にも逃げ場がないと思った俺は全てを投げ出したいと思ってここに来たわけだ。

 ただ、遠い所に逃げたところで自分の能力は変わらないらしく、俺はどうやってここから帰るのかが分からなくなり今に至る。
 スマホの充電は先程使い果たしたので経路検索は出来ない。

「現実逃避しようと思ってアニメショップが多い秋葉原に来たけど、歩いてたら今自分が何処にいるのか分からなくなっちまった……ここでも自分の無能っぷりに気づかされるのかよ……神様は俺に何か恨みでもあるのか? それともただ俺が無能で面白いから遊んでるだけなのか?」

 ――被害者面をするな、とあなた達は思うかもしれない。
 でもそんな言葉今の俺に聞き入れることの出来る余裕はない。
 俺が辛いと人に漏らすと、大抵の奴はお前は恵まれている、もっと辛い人もいるんだからそんなこと言ってないでもっと頑張れと言う。

 いや、分かるよ。分かるけどさぁ……他人と比べてもどうにもならんでしょーよ。
 と俺は常々思って生きてきた。

 そんなこんなで厭世的な思考回路の俺はフィクションの世界にのめり込んでいったのだ。
 アニメ、ゲーム、マンガ、小説。鬱陶しい現実世界から逃げるには最適である。
 ただ、長期休暇の期間は良いのだが、学校が始まると逃げることすら阻止される。
 長期休暇最後の日に絶望していた俺は、全部嫌になりこんな大胆な行動に出たわけである。

「ホテルで泊まっていくか……? 駅まで辿り着けてもスマホ無いとぜってー電車理解できないし……でもホテルもどうやって予約するのか分からないし……そもそも明日大学なのにどうしたら……」

 そんなことを思って歩いていると、魔法使いみたいな格好をした人がこちらに歩いてきた。
 とはいっても某女児向けアニメに出てくるような魔法使いではなく、魔女といったような感じだ。

「へぇ、流石東京……コスプレイヤーとかも普通に街歩いてんだな」

 そんな呑気なことを思っていると、何故か魔女は俺を見るなりスタスタとこちらに近づいてくる。

「あなたは、六宮冬悟さんでしょうか?」

 中年の女性といった感じの声の魔女は突然俺に話しかけてきた。

「え、……そうですけど……え?」

 ――なぜ俺の名を知っている?知り合いか?――まさか。こんな人混みの中で陰の薄いことに定評のある俺を見つけられるはずがない。

「やっぱりそうだ! あなたを探していました! やっと転移魔法が成功した……これであの方も満足なさるはず……良かった、良かった」

「あの、一体何を言ってるんですか? 探していたって……多分人違いだと思いますよ」

 ――俺がお尋ね者?ありえない、俺を探す奴なんてどんな物好きだよ。
 もしかして俺なんか悪いことでもしたっけ?
 そんなことを思っている時だった。

「さぁ、王子様! 転移魔法を使います! 私の手を取ってください!」

 そう言うと魔女の体が突然紫色に輝き始めた。

「は? 王子様? 一体何言って……って、ええ!?」

 魔女が俺の手を握ると――俺の体が魔女同様に紫に光輝き始めた。
 紫の光に包まれた俺は何故か意識を失ってしまった。




 この物語を読む全ての人に伝える。
 この世界は、楽して好きなことだけをして生きていけるほど甘くはない。
 ただ、その事実に圧倒されないでほしい。苦しくても辛くても、その中に光はある。


 俺のように、突然全てが自分の思い通りに上手くいくと思うのは危険だ――と、最後に警告をしておく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...