マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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一章 最強国王の悲劇

二話 世界最強の国王

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「あれ……ここ、どこだ……?」

 俺は意識を失って寝ていたようだ。
 一瞬自分の部屋で寝ていたのかと思ったが、すぐにそれは違うと分かった。
 俺が住んでいる部屋より何倍も豪華絢爛な部屋に俺はいたからだ。
 高級そうな白色の壁、フローリング。
 それに何より驚いたのは、普段は布団派の俺が天蓋付きのプリンセスベッドで寝ていたことである。

「俺は確か変な魔女に手を握られて、それから意識が飛んだんだよな……」

 そんなことを思っていると、キィと音を立ててドアが開く。
 白を基調とした洋風の服を着たおじいさんが入ってくるなり俺に話しかけてきた。

「王子様! 目を覚まされましたか! 良かった、やはり転移は成功していた! 体調はいかがですか?」

「え……体調は優れていますが。あの、王子様って一体なんなんで――」
「良かった! 体調も万全ですか! さぁさ、国王様がお待ちです! 早速行きましょう!」

 俺の問いかけに答えずおじいさんはそう言った。
 ――国王……?一体何処なんだここは。転移って、まさか異世界転移か?そんな話本当に実在するのか。
 そう思っていると、おじいさんがベッドに近づいてきてやや乱暴に手を引いてきた。

「あの、全く意味が分からないんですが。ここは何処ですか? 俺は一体これから何処へ向かうんですか?」

「詳しい話は国王様がなさいます! とにかく王室に向かいましょう!」

 どこか焦ったような様子でおじいさんはそう言った。
 ――国王、王室、転移……このワードセレクトから推測するに、マジで異世界転移したっぽいな俺。
 王子って……まさか国王の息子として転移したとか?

 部屋から出て赤いカーペットの上を歩きながら進んでいると、数十秒で王室の扉に着いた。
 ――デカい。デカすぎる。
 何メートルもあろうかと思われる扉は、金と銀の色で構成されている。
 ドアノブの真ん中にはダイヤモンドらしきものが埋め込まれている。

「王子様の、ご入室です!!」

 突然おじいさんがそう叫んだ。
 すると途端に部屋の中からワァッと歓声と拍手が上がる。
 ギイィ、とゆっくりドアが開く。

「さぁさ、王子様! 中へお入りください! 皆王子様のご入場を心待ちにしておられます」

 おじいさんに促されて俺は王室の中へ入る。
 中に入ると、魔法使い、剣士、弓使い、鎧の騎士、獣人。
 老若男女様々な格好をした人達が俺を拍手と歓声で迎えた。
 両脇に立っているその人達を尻目に中央の赤いカーペットを真っ直ぐ進むと、王冠を被ったモジャ髭のデカイ男が大きな椅子に座っていた。
 そいつは俺を見るなり驚きと喜びの混じった声で言った。

「おぉ……君が我が義子むすこ、トウゴか。よくぞここまで辿り着いてくれた」

「あの、説明してくれますか……? 今自分に起きていることが全く分からないのですが」

「あぁ、説明するぞトウゴよ。君は私の魔法能力の適合者なんだ。私はここ、バン王国の国王ディエゴ・エベールだ。私は全世界で最強の魔法能力を持っている。ただ、私は今六十一歳だ。少しずつ能力が衰えてきてね。バン王国は私が守っているから、後継者を探さなければいけなかった」

「はぁ……でも何故わざわざ俺を後継に? 適合者はそんなにいないものなんですか?」

「ああ、見つけるのに苦労したよ。というのも、私には能力を継がせる予定の息子がいたんだ。息子は非常に戦闘能力が高く、魔法能力にも長けていた。――しかしある日、ドゥルガー・フェイスという、全世界が特別危険集団に認定している狂集団に入信すると言い出した。それで、やむを得ずバン王国から追い出すことになってしまったのだ」

「つまり、あなたの能力の適合者はただでさえ少ないのに、適合者だった息子はその狂集団に入信してしまい後継がいないという危機に瀕した、ということですか?」

「ああ、それで異世界から君を見つけてそこにいる魔法使い、イーナに転移魔法を使わせて君をここに呼んだわけだ。イーナは転移魔法のスペシャリストでね。これまで誰も成功しなかった異世界から人を呼ぶという偉業を成し遂げてくれたのだ」

 するとディエゴはある人物を指さした。――そう、例の魔女だ。
 成る程、大体分かった。
 つまり俺は何故か知らないがディエゴの魔法能力の適合者で、俺に能力を継がせるためにこの異世界に呼んだわけか。
 ――ただ、この話にはいくつか問題点があるように思う。

「あの、いくつか質問させてもらえますか? あまりに急な話なので」

「うむ、何でも聞いてくれ。理解出来るまで存分に」

「まず、俺はあなたの能力を継承して魔法で国を守るということですか? 言っておきますがこの俺、六宮冬悟は前の世界では運動音痴でしたよ。高校の時のソフトボール大会では三回連続三振をかまして皆をガッカリさせたし、ラジオ体操のテストでは俺だけ一人再テストで放課後居残りしてました。こんな身体能力で魔法を上手く使えるんですか?」

「お、おう……それは大変だったな。だが心配は無用だ。この国には魔法のスペシャリストがたくさんいるから、思う存分魔法を教えてもらうことが出来る。それに、魔法はそこまで身体能力は大事ではないのだ。いざとなれば強化魔法で身体能力を底上げ出来る」

「成る程、身体能力は底上げ出来るのか……じゃあもう一つ質問させてもらいます。俺は元の世界に帰れるんですか?」

「そ、それは……この国の国王になるのだから、難しいだろう。……だがこの国の国王になれば何でも手に入るぞ」

「何でも?」

「あぁ、何でもだ! お金が欲しいならいくらでもやるし、女の子はいくらでも君に寄ってくるだろう。そして毎日美味しい料理が出てくる。ここの料理人は一流の料理人ばかりだからね。優秀な部下が君を補佐し君に忠誠を誓うだろう。どうだい、こんな生活望んで出来るものじゃあないぞ」


 ――元の世界に帰れないという事実を考慮しても悪くない提案だ、というのが俺の感想だ。
 もしここで俺が国王になれば、今まで嫌々やらされていたことを全て放棄出来る。

 自分の能力に絶望する日々だった。
 そんな自分が国王になり異世界で金持ちハーレム生活をするチャンスが与えられている。

 息が詰まるようなあの生活を全て投げ出せるのなら、俺は――――


「分かりました。俺はあなたの魔法能力を継承しここで国王として暮らします。この国をより良く出来るように、皆が幸せに暮らせるように」

 すると、王室にいる人間ほぼ全員が歓声と拍手で俺に返事をする。

「よくぞ言ってくれました!! あぁ良かった、これで私たちの生活は守られる……」
「やっぱ見込み通りの良い男だぜ。俺達はトウゴ国王に忠誠を誓います」
「皆が幸せに暮らせるように、なんて素敵なお方……もうトウゴ様に惚れてしまいそう……」

 ――……おぉ……すげぇ……マジで皆俺のことを認めてくれてるッ……!

 生まれてこの方十九年、俺はこんなに人から崇められたことはない。
 俺は初めての経験に、形容しがたい高揚が胸の中を駆け巡る。

「本当にありがとう、我が義子トウゴよ。能力を継承すれば私は能力が衰えてしまう。いよいよ君が王になるんだ」

「はい、王にふさわしい行動をするよう努めると誓います」

「うむ。この国をより良く出来るようにと言ってくれる君に任せるなら安心だろう。ロッシュ、ベラ、タナー! 早速継承を行う! 前へ出ろ!」

 すると、魔法使いの格好をした三人の人間が前へ出てきた。
 成る程、継承はどうやら一人の力では出来ないらしい。

「よろしくお願いいたします、トウゴ様。では継承のご準備はいいですか?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」

「それではいきますよ」

「「「――継承大魔法、ハイ・レゴーア!」」」

 三人がそう唱えると、ディエゴと俺の足の下に金色に輝く魔法陣が浮かび上がり、俺は突然電流が全身に流れるような感覚に襲われた。

「ぐあああああッッッ!!!」

「もう少しですトウゴ様!気をしっかり持って下さいませ!」

 ――暫くすると、電流の勢いが少しずつ収まっていく。
 身体が少しずつ楽になっていく感覚を感じる。
 それと同時に、身体にとてつもないパワーが流れ始めたのを感じた。
 もう元の自分には二度と戻れない、そう直感してしまうくらいのパワーが。

「あれ……一体どうなったんだ……? 成功したのか……?」

「ゴホッ……うむ、どうやら成功したようだ……私の魔法能力が完全に衰えている。火のヒーラ、水のアクオーラ、雷のヴェーラ、その他の魔法全て継承出来たようだな。ロッシュ、ベラ、タナー、感謝する」

「いえ、私共は何も……それより本当に良かった……これでバン王国は更に栄えることでしょう」

「あぁ、これでエベール家の魔法能力を失わずに済んだ……」

 そう言うとディエゴは声を張り上げ言った。

「皆のもの、聞け! 今ここに、私の魔法能力を超える世界最強の国王が誕生した! これよりこの国の王はトウゴ国王とする!」


 ――こうして俺は今日、世界最強の国王になった。



 これから起こる悲劇なんて、この時の俺は知る由もない。
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