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一章 最強国王の悲劇
四話 実態
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「おぉ、すげぇ雄大な自然……緑が映えていい景色だな」
「はい。バン王国は建物が多いですから、自然を見るとなんだかホッとしますよね」
バン王国を出てから少し馬車で走ると、緑の地平線が俺の眼前に広がる。
凄い。俺の住んでいた田舎とはまた違う自然だ。
ゆったりとした緑の草原を爽やかな風に吹かれながら馬車で駆け抜ける。
「すげぇ気持ち良いや。ほんと良い場所なんだな、この世界は。ご飯は美味いし街並みも自然も良い。こんな良い世界に来れたんだから頑張らないとな」
「ふふ、この世界を気に入ってもらえて何よりです。辛いこともあるかもしれませんが一緒に力を合わせて頑張りましょうね」
「今のトウゴ様には敵いませんが、俺達は結構強いんですよ。俺は剣術では誰にも負けない自信がありますし、ベラも優秀な魔術師です」
「あはは、俺はまだ身体能力や戦術でベラとソワンに敵う気がしないなぁ。でもディエゴって相当強いんだなぁ。この魔法能力を鍛えれば本当に世界最強になれそうだ」
「はい、ディエゴ様の力によってたくさんの人が救われてきました。私もその一人です」
「ディエゴは現役でも十分強そうだけどなぁ。ムキムキでガタイもいいし」
「はい、ディエゴ様は今でも十分お強いです。……ですが、最近は前と比べて物騒な話もよく聞きます。一刻も早く継承者を探さなければ危ない状況でした」
「マジか……物騒な話って……なんか怖いな……」
「適合者のトウゴ様が国王として即位して下さり本当に良かった。ディエゴ様の衰えを利用しようとする輩がいつ出てきてもおかしくありませんから」
「そんな奴が出てきたら俺が何とかするよ。バン王国の綺麗な街並みは壊したくないから」
――そうやって暫く話していると、遥か前方にでかい村のようなものが見えてきた。
距離があるのではっきりとどんな場所かは見えない。
「おい、ベラ、ソワン。あの村を訪れてもいいか? この世界で初めての村だから行ってみたくて」
「トウゴ様、あそこがレザンス村ですよ。あそこではリーフェンという特殊鉱石がたくさん採れるんです」
「へぇ、はっきり見えないけどあそこかぁ。よし、行ってみよう。で、リーフェンって鉱石は何なんだ?」
「リーフェンは戦闘の武器なんかに利用されます。リーフェンを加工して作る物は魔法を纏わせやすく、更に加工した物の強度も高くなりますので防具にも使われます。俺の剣もリーフェンを加工してあります」
「成る程、それは重宝されそうな鉱石だな……ということはレザンス村は中々重要な村なんだな」
「トウゴ様、レザンス村が見えてきましたよ!」
「おう、どれどれ……え?」
――思わず俺はえ、と声を発してしまう。
その村は薄暗い色をしていた。
茶色の建物がゴチャゴチャと並んでいる。おそらくあまり上質ではない木で造られているのだろう。
レザンス村に近づくにつれ、自然の美味い空気を感じなくなっていく。
――先程まで居たバン王国とは明らかに違う。
俺が少し衝撃を受けていると、馬車がボロい木の門の前で止まった。
「おい、レザンス村の者! 門を開けろ! 新国王、トウゴ様がわざわざお見えだ!」
ソワンがそう叫んだ。
明らかに俺と接する時とは態度が違う。
まるで弱者を見下すような声色だ。
ギギギギギ……とゆっくり木の門が開く。
「おぉ、これはこれはソワン様。わざわざこんな所までありがとうございます。……そ、そちらが新国王のトウゴ様で?」
「そうだ。わざわざこの村を訪れたいとおっしゃられたので訪問する運びとなった」
「そうでございますか。よろしくお願い致ししますトウゴ様。私はこの村の村長のトリスタンでございます」
白髪にボロめの服を着たトリスタンという人物が村長らしい。
割と年を食っていそうな風貌だ。七十くらいだろうか。
「お、おう。よろしくな、トリスタン村長」
俺がそう言うと、トリスタン村長は驚いたように目を見開いた。
何に驚いているのだろうか。俺みたいなヒョロガリが国王だからか?
「おい、お前ら。わざわざ国王がこんな所にいらしたんだからトウゴ様をおもてなしする準備をしろ」
「は、はい。バン王国の国王をもてなすには粗末なものかもしれませんが、精一杯の準備はさせていただきます」
「別に気負う必要はねぇよ。俺割と何でも美味いって言うタチだし。今日は村がどんなものか見てみたかっただけだから大丈夫だ」
俺がそう言うと、トリスタン村長はまた驚いたように目を見開いた。
何に驚いているのだろうか。俺みたいな童貞が国王だからか?
「さぁ、入りましょうトウゴ様。この者共が出す料理が口に合わなければ、バン王国のレストランで食事を取りましょう。口に合わなければ遠慮なく言って良いんですよ」
ベラにそう促されて俺はレザンス村へと入っていく。
村の中に入った俺は、ここが裕福な村ではないのだとすぐに気が付いた。
村の規模は大きいが建物も空気も良くない。
そして何より気になるのは、村の人々があまり明るい顔をしていないことだ。
俺達を見るなりヒソヒソ喋って曇った顔をする。どこか俺達に怯えているみたいだ。
「何だか意外だな、ソワン。この村あまり発展してないよな? バン王国からそこまで遠いってわけでもないのに……」
「えぇ、この者達は私達とは別の世界に住む人間です。優しくする必要なんてありませんよ、トウゴ様」
「え……何でだよ? トリスタン村長も良い人そうじゃないか。それに発展が遅れているならバン王国からお金を出して発展に回せば――」
「いいえ、お金を出すメリットなんてありませんよ」
俺とソワンの会話を聞いていたベラが口を挟んできた。
「レザンス村は周りに海がありませんし、家畜の数も多くはない。村の規模は大きいですがその分人口も中途半端に多い。なので食糧事情は決して良くない。なので彼らの食糧の大部分はリーフェン鉱石をバン王国に献上することで得ている」
――淡々と冷酷に、ベラは話を続ける。
「そのリーフェン鉱石も他の国から輸入出来ます。強いてレザンス村からリーフェンを輸入するメリットを挙げるなら、距離が近いことと採掘量が多いことですね」
「え……つまり、レザンス村の食糧はバン王国に頼りっきりってことか?」
「はい、そういうことですね」
要約するとこうだ。
レザンス村は食糧に乏しい。なのでバン王国が武器や防具に使うリーフェン鉱石を献上してバン王国から食糧を得ている。
だがリーフェン鉱石は他の国からも輸入出来るからレザンス村は立場が危うい。
バン王国にとってはお金を出してまでここを整備するメリットは少ない、ということだ。
「で、でも……バン王国はあれだけ発展しているんだから、少しは回してもいいんじゃないか? そこは人情ってやつだろ。おい、トリスタン村長! ここで暮らす人は大丈夫なのか? 食べ物や生活品なんかに困っていないか――」
「ほらトウゴ様、もうすぐ着くようですよ」
トリスタン村長にこの村の生活事情を聞こうとした瞬間、ソワンに話を遮られてしまった。
「さぁ、どうぞどうぞ。こちらは村の中でも腕利きの料理人が集まるレストランです」
トリスタン村長が指差した建物は、レストランというより酒場という感じだ。
バン王国のレストランを見た後では決して綺麗な建物とは言えない。
「チッ……我らがバン王国の国王をもてなすんだぞ?全く……もっと良い店を用意できなかったのか」
ソワンがそう言うとトリスタン村長はすいませんと困ったように頭を下げる。
中に入ると食事をしていた人間が俺達を見るなりバタバタと慌てて席を立ち逃げていく。
「すぐに料理をお出ししますので少々お待ち下さい」
そういうとトリスタン村長はドアの前に背筋を伸ばして立ち、その場から動かなくなった。
暫くすると、料理がテーブルに運ばれてくる。
凄く美味しそうだ。
ボイルされたジャガイモに燻製ベーコン、チーズが練り込まれたパンにコーンスープ。
メインは白身魚をトマトと色とりどりの野菜で煮込んだもの。飲み物は上等そうなワインが出された。
昼飯なんてカップ麺か牛丼かハンバーガーのどれかであった俺が一人で昼飯の豪華さに感動している時、
「ちょっと、こんなものしか用意出来なかったの?」
とベラが言った。
――こんなものって、十分豪華じゃないか。もてなしってことはタダ飯ってことだろ?
この世界ではこれでも王に出すにはお粗末なのか?
「まぁ、いいじゃんベラ。食べよう。十分美味しそうだよ。いただきます! ……美味い!!」
白身魚はホクホクとした身で、トマトの酸味がアクセントに。
燻製ベーコンはスパイシーで肉厚だ。
ワインは――まだ舌が子供なので分からない。
だけど、ものすごく美味しい。
俺達の為にこんな豪華な食事を用意してくれた村の皆に感謝しなければ。
そう思った時――
「トウゴ様、別にお世辞なんて言わなくていいんですよ。この者共に気を遣ってもメリットはありませんから」
冷酷にソワンが言う。
トリスタン村長はまたすいませんすいませんと頭を下げている。
――何だ、何故ベラとソワンはこんなに冷酷にこの村にあたるんだ?
俺にはその疑問を解決出来ない。
――いや、解決出来ないじゃ駄目だろ。
俺は王なんだ。
バン王国だけじゃない、俺はこの世界を幸せにしなければいけないんだ。
ベラとソワンを疑いたくはない。
でも、俺が、王の俺が今やるべきことは――
「おい。ベラ、ソワン。俺、暫くこの村に泊まりたい。自分でこの村を見て回りたい。仕事は悪いけどよろしく頼む。スピーチも帰ってきたら行うとディエゴと皆に伝えてくれ」
「え……本気ですか? この村に泊まる? この村には何もありませんよ? 村の者も優秀じゃない、飯も美味くないし――」
「これは王の命令だ!! 背くことは許さない!!」
俺は初めて王の権利を行使した。
俺は確かめなくちゃいけない。
バン王国という国は本当に正しい国なのかどうかを。
俺は黙って見ていることは出来ない。
優しい人が不当な扱いを受けているのを。
「はい。バン王国は建物が多いですから、自然を見るとなんだかホッとしますよね」
バン王国を出てから少し馬車で走ると、緑の地平線が俺の眼前に広がる。
凄い。俺の住んでいた田舎とはまた違う自然だ。
ゆったりとした緑の草原を爽やかな風に吹かれながら馬車で駆け抜ける。
「すげぇ気持ち良いや。ほんと良い場所なんだな、この世界は。ご飯は美味いし街並みも自然も良い。こんな良い世界に来れたんだから頑張らないとな」
「ふふ、この世界を気に入ってもらえて何よりです。辛いこともあるかもしれませんが一緒に力を合わせて頑張りましょうね」
「今のトウゴ様には敵いませんが、俺達は結構強いんですよ。俺は剣術では誰にも負けない自信がありますし、ベラも優秀な魔術師です」
「あはは、俺はまだ身体能力や戦術でベラとソワンに敵う気がしないなぁ。でもディエゴって相当強いんだなぁ。この魔法能力を鍛えれば本当に世界最強になれそうだ」
「はい、ディエゴ様の力によってたくさんの人が救われてきました。私もその一人です」
「ディエゴは現役でも十分強そうだけどなぁ。ムキムキでガタイもいいし」
「はい、ディエゴ様は今でも十分お強いです。……ですが、最近は前と比べて物騒な話もよく聞きます。一刻も早く継承者を探さなければ危ない状況でした」
「マジか……物騒な話って……なんか怖いな……」
「適合者のトウゴ様が国王として即位して下さり本当に良かった。ディエゴ様の衰えを利用しようとする輩がいつ出てきてもおかしくありませんから」
「そんな奴が出てきたら俺が何とかするよ。バン王国の綺麗な街並みは壊したくないから」
――そうやって暫く話していると、遥か前方にでかい村のようなものが見えてきた。
距離があるのではっきりとどんな場所かは見えない。
「おい、ベラ、ソワン。あの村を訪れてもいいか? この世界で初めての村だから行ってみたくて」
「トウゴ様、あそこがレザンス村ですよ。あそこではリーフェンという特殊鉱石がたくさん採れるんです」
「へぇ、はっきり見えないけどあそこかぁ。よし、行ってみよう。で、リーフェンって鉱石は何なんだ?」
「リーフェンは戦闘の武器なんかに利用されます。リーフェンを加工して作る物は魔法を纏わせやすく、更に加工した物の強度も高くなりますので防具にも使われます。俺の剣もリーフェンを加工してあります」
「成る程、それは重宝されそうな鉱石だな……ということはレザンス村は中々重要な村なんだな」
「トウゴ様、レザンス村が見えてきましたよ!」
「おう、どれどれ……え?」
――思わず俺はえ、と声を発してしまう。
その村は薄暗い色をしていた。
茶色の建物がゴチャゴチャと並んでいる。おそらくあまり上質ではない木で造られているのだろう。
レザンス村に近づくにつれ、自然の美味い空気を感じなくなっていく。
――先程まで居たバン王国とは明らかに違う。
俺が少し衝撃を受けていると、馬車がボロい木の門の前で止まった。
「おい、レザンス村の者! 門を開けろ! 新国王、トウゴ様がわざわざお見えだ!」
ソワンがそう叫んだ。
明らかに俺と接する時とは態度が違う。
まるで弱者を見下すような声色だ。
ギギギギギ……とゆっくり木の門が開く。
「おぉ、これはこれはソワン様。わざわざこんな所までありがとうございます。……そ、そちらが新国王のトウゴ様で?」
「そうだ。わざわざこの村を訪れたいとおっしゃられたので訪問する運びとなった」
「そうでございますか。よろしくお願い致ししますトウゴ様。私はこの村の村長のトリスタンでございます」
白髪にボロめの服を着たトリスタンという人物が村長らしい。
割と年を食っていそうな風貌だ。七十くらいだろうか。
「お、おう。よろしくな、トリスタン村長」
俺がそう言うと、トリスタン村長は驚いたように目を見開いた。
何に驚いているのだろうか。俺みたいなヒョロガリが国王だからか?
「おい、お前ら。わざわざ国王がこんな所にいらしたんだからトウゴ様をおもてなしする準備をしろ」
「は、はい。バン王国の国王をもてなすには粗末なものかもしれませんが、精一杯の準備はさせていただきます」
「別に気負う必要はねぇよ。俺割と何でも美味いって言うタチだし。今日は村がどんなものか見てみたかっただけだから大丈夫だ」
俺がそう言うと、トリスタン村長はまた驚いたように目を見開いた。
何に驚いているのだろうか。俺みたいな童貞が国王だからか?
「さぁ、入りましょうトウゴ様。この者共が出す料理が口に合わなければ、バン王国のレストランで食事を取りましょう。口に合わなければ遠慮なく言って良いんですよ」
ベラにそう促されて俺はレザンス村へと入っていく。
村の中に入った俺は、ここが裕福な村ではないのだとすぐに気が付いた。
村の規模は大きいが建物も空気も良くない。
そして何より気になるのは、村の人々があまり明るい顔をしていないことだ。
俺達を見るなりヒソヒソ喋って曇った顔をする。どこか俺達に怯えているみたいだ。
「何だか意外だな、ソワン。この村あまり発展してないよな? バン王国からそこまで遠いってわけでもないのに……」
「えぇ、この者達は私達とは別の世界に住む人間です。優しくする必要なんてありませんよ、トウゴ様」
「え……何でだよ? トリスタン村長も良い人そうじゃないか。それに発展が遅れているならバン王国からお金を出して発展に回せば――」
「いいえ、お金を出すメリットなんてありませんよ」
俺とソワンの会話を聞いていたベラが口を挟んできた。
「レザンス村は周りに海がありませんし、家畜の数も多くはない。村の規模は大きいですがその分人口も中途半端に多い。なので食糧事情は決して良くない。なので彼らの食糧の大部分はリーフェン鉱石をバン王国に献上することで得ている」
――淡々と冷酷に、ベラは話を続ける。
「そのリーフェン鉱石も他の国から輸入出来ます。強いてレザンス村からリーフェンを輸入するメリットを挙げるなら、距離が近いことと採掘量が多いことですね」
「え……つまり、レザンス村の食糧はバン王国に頼りっきりってことか?」
「はい、そういうことですね」
要約するとこうだ。
レザンス村は食糧に乏しい。なのでバン王国が武器や防具に使うリーフェン鉱石を献上してバン王国から食糧を得ている。
だがリーフェン鉱石は他の国からも輸入出来るからレザンス村は立場が危うい。
バン王国にとってはお金を出してまでここを整備するメリットは少ない、ということだ。
「で、でも……バン王国はあれだけ発展しているんだから、少しは回してもいいんじゃないか? そこは人情ってやつだろ。おい、トリスタン村長! ここで暮らす人は大丈夫なのか? 食べ物や生活品なんかに困っていないか――」
「ほらトウゴ様、もうすぐ着くようですよ」
トリスタン村長にこの村の生活事情を聞こうとした瞬間、ソワンに話を遮られてしまった。
「さぁ、どうぞどうぞ。こちらは村の中でも腕利きの料理人が集まるレストランです」
トリスタン村長が指差した建物は、レストランというより酒場という感じだ。
バン王国のレストランを見た後では決して綺麗な建物とは言えない。
「チッ……我らがバン王国の国王をもてなすんだぞ?全く……もっと良い店を用意できなかったのか」
ソワンがそう言うとトリスタン村長はすいませんと困ったように頭を下げる。
中に入ると食事をしていた人間が俺達を見るなりバタバタと慌てて席を立ち逃げていく。
「すぐに料理をお出ししますので少々お待ち下さい」
そういうとトリスタン村長はドアの前に背筋を伸ばして立ち、その場から動かなくなった。
暫くすると、料理がテーブルに運ばれてくる。
凄く美味しそうだ。
ボイルされたジャガイモに燻製ベーコン、チーズが練り込まれたパンにコーンスープ。
メインは白身魚をトマトと色とりどりの野菜で煮込んだもの。飲み物は上等そうなワインが出された。
昼飯なんてカップ麺か牛丼かハンバーガーのどれかであった俺が一人で昼飯の豪華さに感動している時、
「ちょっと、こんなものしか用意出来なかったの?」
とベラが言った。
――こんなものって、十分豪華じゃないか。もてなしってことはタダ飯ってことだろ?
この世界ではこれでも王に出すにはお粗末なのか?
「まぁ、いいじゃんベラ。食べよう。十分美味しそうだよ。いただきます! ……美味い!!」
白身魚はホクホクとした身で、トマトの酸味がアクセントに。
燻製ベーコンはスパイシーで肉厚だ。
ワインは――まだ舌が子供なので分からない。
だけど、ものすごく美味しい。
俺達の為にこんな豪華な食事を用意してくれた村の皆に感謝しなければ。
そう思った時――
「トウゴ様、別にお世辞なんて言わなくていいんですよ。この者共に気を遣ってもメリットはありませんから」
冷酷にソワンが言う。
トリスタン村長はまたすいませんすいませんと頭を下げている。
――何だ、何故ベラとソワンはこんなに冷酷にこの村にあたるんだ?
俺にはその疑問を解決出来ない。
――いや、解決出来ないじゃ駄目だろ。
俺は王なんだ。
バン王国だけじゃない、俺はこの世界を幸せにしなければいけないんだ。
ベラとソワンを疑いたくはない。
でも、俺が、王の俺が今やるべきことは――
「おい。ベラ、ソワン。俺、暫くこの村に泊まりたい。自分でこの村を見て回りたい。仕事は悪いけどよろしく頼む。スピーチも帰ってきたら行うとディエゴと皆に伝えてくれ」
「え……本気ですか? この村に泊まる? この村には何もありませんよ? 村の者も優秀じゃない、飯も美味くないし――」
「これは王の命令だ!! 背くことは許さない!!」
俺は初めて王の権利を行使した。
俺は確かめなくちゃいけない。
バン王国という国は本当に正しい国なのかどうかを。
俺は黙って見ていることは出来ない。
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