マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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一章 最強国王の悲劇

五話 少女との出会い

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「……本当にここに滞在するのですか? もし滞在するならどれほどの期間滞在するおつもりでしょうか」

「二、三日だ。そんなに長くは居ないよ。皆に迷惑はかけられないからな。村の皆に確認したいことがいくつかあるんだ」

「……分かりました。ではこの私、ソワンがお供します。確認したいことなら私が――」

「ソワン、それじゃあ駄目なんだ。俺が直接確認したいんだ。そうじゃないと意味ない」

 そう、意味がない。
 この村の人達に冷たく接するベラとソワンが村にいたら、村の皆は委縮して本当のことを話してくれないかもしれない。

「……危険すぎます。この村の者共に万が一不意打ちで手を出されたら、いくら最強魔術師のトウゴ様でも――」

「大丈夫だ。俺なら多分勝てると思う。不意打ちでもディエゴから受け継いだハイ・リーラなら大抵の傷は治せると思うしな。それとソワン、何で俺が村の皆から手を出されるなんて思うんだ? まるでこの村の人間から王が恨まれてるみたいじゃないか」

 そう、もし本当にディエゴがこの村を故意に放置していたなら、国王の俺は恨まれているかもしれない。
 でも俺はディエゴがそんな恐ろしいことをしていないと願いたい。
 きっと、何か理由があるはずだ。

「……トウゴ様、ディエゴ様は転移魔法を使えません。転移魔法はごく一部の人間にしか使えない魔法です。つまり、トウゴ様にも転移魔法は備わっていない。村からバン王国へはトウゴ様一人では転移できません。この村にイーナさんを呼んで一緒に――」

「ベラ、お前まで心配してくれてありがとうな。でも大丈夫だから。俺一人で良い。お前らはバン王国の皆を手伝ってやってくれ。俺を信じてくれ」

「……王の命令なら仕方ありません。不安ですが、承知しました。なるべく早く帰ってきてくださいね」

「おう、ありがとうな。じゃあまたバン王国で会おう」

 俺はベラとソワンを半ば強引に村から王国へ帰還させた。
 ベラとソワンが村の門を潜って去っていくのを確認すると、俺はすぐにやりたいことを行動に移すことにした。
 この村のこと、バン王国のことをもっと聞くことが俺のやりたいことだ。

「おい、トリスタン村長。いくつか質問していいか?」

「は、はい国王様。その……よろしかったので? バン王国の国王ともあろうお方がこんな村に滞在など」

「おう、いいんだいいんだ。こんな村なんて悲しいこと言うなって。飯美味かったしここはそんなに悪くない村だ」

 そういうとトリスタン村長はまた驚いた顔をする。
 ――だから何で驚くんだよ。俺のセンター分けの髪型はそんなに変だろうか。

「ベラとソワンはやけにお前らに冷たく接していたよな。あれはどういうことだ? お前ら何かしたのか?」

「それは……話すと長くなりますので、少し何処かに座って話しましょう」

 俺達が村の真ん中の噴水のあたりで話していると、村の皆が俺達を家からチラチラ覗いたり、屋台のような店で買い物をするふりをして見ていることに気が付いた。

「皆、そんなに怯えなくて大丈夫だ。俺は何もしないから。いきなり訪れて悪かったな」

「お兄ちゃんは……ぼくたちの味方なの? ひどいことしたりしない……?」

 突然、俺達のことを半開きのドアから覗いていた男の子がそう呟いた。
 後ろには母親らしき人もいる。

「す、すいません! 無礼なお言葉を……! ほら、ショウ! 謝りなさい! 早く!」

 母親は鬼気迫る勢いで男の子に謝るよう促す。

「お母さん。大丈夫です、俺はこの村の味方ですよ。酷いことなんて言いません。ショウ君、悪かった。少しビビらせちゃったな。俺は味方だよ」

 そう言うと、母親は目を丸くして俺を見た。

 さっきから、村の人達は俺に異様に怯えている。


 考えたくはない。
 出来るなら初めてこの世界に来た時みたいに、高揚感に包まれたまま順風満帆な生活を過ごしたい。
 でも俺は少しずつ気づき始めている。


 ――ディエゴは、皆は、俺に何か隠している。

「トリスタン村長、お願いだ、話してくれ。何故皆が俺に、バン王国に怯えているのか。全てを話してほしいんだ」

「……私は最初から気づいておりました。新たな王であるトウゴ様が、優しいお方であると。あなたになら全てをお話しましょう。バン王国のこと、この村のことを。……そ、その前に少しお聞きしたいことがあるのですが……」

「ん? 何だ、言ってくれ」

「あなたはどのようにして王に選ばれたのですか? ディエゴ様の息子はドゥルガー・フェイスに入信してしまい国を追われましたよね。となると戦闘能力や頭脳で選別するのが妥当でしょうが……トウゴ様は少々この世界のことについて認識不足な気がしまして……」

 成る程、それは気になるよな。
 つまり、何でお前みたいにこの世界に無知な馬鹿が王に選ばれたんだよ、って聞きたいんだろう。
 まぁまさか異世界から俺が来たなんて思ってないだろうし、そう思うのは仕方ない。

「俺は異世界からやって来たんだ。バン王国ではディエゴの魔法を継承出来る人が中々見つからなかったらしいんだ。それで俺がたまたま適合者とか何とかでこの世界にお呼ばれしたんだよ。それでディエゴの魔法能力を継いで国王になった」

「何と……! そうでしたか。異世界から人を呼ぶとは……やはりディエゴ様の力は衰えていましたか」

「だから内政とかもまだ把握しきれてないんだ。だから皆に聞きたいんだ」

「俺達は実質バン王国の奴隷ですよ」

 俺が外から来た人間と聞いて安心したのか、店の屈強な中年の男店主が突然口を開く。

「俺達は昔から食糧不足の問題と常に隣り合わせでした。だから村のリーフェン鉱石を献上してバン王国から食糧を得ていたんです。十年くらい前まではリーフェン鉱石で十分な物資を得れていました。――しかし、近年他の国でもリーフェン鉱石の取引を始めたバン王国はレザンス村をぞんざいに扱うようになった」

「ぞんざいに……具体的には?」

「俺達に長時間労働を強いたり、小さい子供や女でもお構いなしに働かせるようにしたんです。お前らの価値はリーフェン鉱石の採掘量だろ、だったらもっと働け――と。娯楽なんてありません。酒も無い、本も十分に無い」

 俺は絶句した。

 今までのバン王国の奴らの笑顔が、薄っぺらく、気味の悪いものへと変貌していく。

「何だよそれ……誰も声を上げないのか?」

「上げましたよ。約五年前、ディエゴ様の息子のドミニオン様が国から追放されたタイミングで。彼は天性の戦闘スキルを持っていたようですが、あまり支配や富に興味を持ちませんでした。それでディエゴ様は王位継承が上手くいくか不安がっていたようですが、案の定上手くいかなかったんです」

「ディエゴの息子はドミニオンっていうのか」

「はい。ドゥルガー・フェイスに入信することに激怒したディエゴ様とドミニオン様は国中を巻き込む大衝突を起こし、結果ディエゴ様が既の所で勝利しました。死者多数、国は壊滅的なダメージを負い、その復興に手を焼いているタイミングで反乱を起こしましたが敵いませんでした。それを口実に更に強くレザンス村を支配するようになって今に至ります」

 大体理解が追い付いてきた。
 まとめると、レザンス村はバン王国が他の国とリーフェン鉱石の取引をはじめたタイミングでぞんざいに扱われ始めた。 
 そして五年前、ディエゴとドミニオンが衝突して国が半壊。
 そのタイミングで反乱を起こしたが敗北。
 その反乱を口実にバン王国はレザンス村の支配を広げた。

「……バン王国の人間は誰一人声を上げないのか? 国民でも王に仕える人間でも、こんなことはおかしいって誰も言わなかったのか」

「同情する人間はいると思います。でも逆らえない。逆らえば王に対する反逆罪で生活が脅かされるかもしれない。それにバン王国は豊かな国ですからもちろん生活の質は高い。レザンス村の為に質の高い生活を手放す人間はあまりいないでしょう」

 俺に少し慣れてきたのか、ショウ君のお母さんがそう言った。

 ――バン王国は豊かだ。ご飯も美味しいし街並みも綺麗だ。
 でも、その豊かさがこの現状を作っているのなら。
 自分達だけが豊かな生活をして、他の地域の人間のことはどうでもいいと思っているのなら。
 バン王国は健全な国とはとてもじゃないが言えない。
 俺はこんな現状を目の当たりにして、王としてのほほんと生きていくことは出来ない。

「分かった。俺が何とかする。国に帰ったら部下と国民に話してみる。こんなことはあってはならない、直ちに対応すべきだと」

 俺がそう言うと、村の皆は驚いたような顔をした後ザワザワと何か話し始めた。

「おい、トウゴ様はこの村を支配する気はないようだぞ……もしかしたら、トウゴ様が王になられたことで何かが変わるかもしれない。この現状から抜け出せるかもしれない」

「あぁ、もしバン王国の支配が終わったら子供も妻も働かなくていい。思う存分遊んでやれる。今まで出来なかったことも沢山してあげられる」

「トウゴ様、本当にありがとうございます。何と感謝を申し上げたらいいのか……私達も精一杯トウゴ様のお役にたてるよう頑張ります」

 トリスタン村長は俺に深々と頭を下げた。

「いいんだよ村長。当たり前のことをするだけだ。支配なんて絶対に間違えてる」

「ありがとうございます。……トウゴ様、今日はここにお泊りになられるのですか? でしたらもうすぐ日が沈んできますので、宿に案内いたします」

「おう、ありがとう。……ん?」

 俺は前から視線を感じた。
 前を見ると、一人の少女が噴水の周りで話している俺達を建物に隠れてチラチラ見ていることに気がついた。
 明るいミントグリーンの長髪に綺麗な紅色の瞳をした少女。
 何処かあどけなさを感じるが、それでいて整った綺麗な顔立ちだ。
 服装は白色のラフな服で、そこまで良い服ではないことは確かだ。
 俺は暫くその不思議な少女に見とれてしまった。

 少女は俺にジッと見られていることに気が付いたのか、恥ずかしそうに隠れて何処かへ行ってしまった。

「村長……あの子は」

「あぁ、この村の住人のマノンです。働き者の良い子ですよ。この村ではあの子ぐらいの若い少女は彼女だけです。他の若い男女は仕事や良い生活を求めて出て行ってしまいましたから」

「マノン……いい名前だな。……確かに、この村は子供や老人、中年の人が多いな。そういうことだったのか」

「彼女の両親はこの村の為に良く働いてくれましたが、亡くなってしまいましてね。彼女は両親の代わりに働いて頑張ってくれているんですよ」

「……村長。俺、あの子と少し話がしたい。ちょっと行ってくる」

 まだ一度も喋ったことがないのに、俺はマノンのことが気になって仕方ない。
 マノンが隠れた建物に向かって俺は駆けていった。
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