マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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二章 望む来訪者、望まぬ来訪者

十一話 マノン先生

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「トウゴ様、起きたんですね。おはようございます……って、もうお昼ですね。フフッ」

 俺がリビングで昼食を待っていると、マノンが帰ってきた。
 手にはズッシリと本を抱えている。

「ハハ、おはようマノン。あれだけ意気込んどいて幸先悪いよな。疲れすぎてて起きれなかったわ。でもグッスリ寝られたよ」

「疲れますよね……あれだけ大変な思いをしたんですから……勉強はゆっくりでいいんですよ」

「おう、ありがとう。……ところで、その本は村から集めてきたのか。ありがとうな」

 何冊重ねてある?分厚い本が五、六冊くらいか?

「それで全部か?」

「いえ、他の本は玄関に置いてあります。重かったので、家に置きに帰ってまた村の家を回るを繰り返していました」

「あぁ、成る程な。で、全部で何冊くらい集まったんだ?」

「二十八冊くらいです」

「その中から何冊か勉強するわけか。了解だ」

 うん、何とかなりそうだな。

「いえ、全てやってしまいましょう。少し時間はかかりますが、きっとトウゴ様なら出来ます」

 何とかならなさそうだ。

「え……全部!? あのー、マノン先生……僕の為に頑張ってくれている人にこんなことを言うのはどうかと思うのですが、僕の頭ではそんなに覚えられないと思いますが……」

「大丈夫です! 魔術本は実戦形式が多いですし、教養の本もそこまで難しくはありません。定期的にテストして、間違えた箇所はやり直し、再テスト等で覚えていけば確実にトウゴ様は強くなります!」

 徹底的にやるつもりか。
 まぁ、バン王国に抗うのだからそのくらいはやらないと駄目だよな。

「やり直し、再テストか……なんだか現実世界に帰ってきたみたいだな……まぁ、知識や魔法の技術は多いに越したことはないよな。ディエゴ達と直接戦わないにしても、力や知識が必要になる瞬間は必ずある。よろしくな。マノン先生」

「せ、先生……何だか照れくさいです……でも、そうですよね。私が教えるんですから、私が先生ですよね。頑張ります!!」

 マノン先生は、フンス――と気合を入れて意気込んでいる。
 マノンが先生なら無限に頑張れる気がしてきた。

「よし、俺もマノン先生自慢の生徒になれるよう頑張るか。――と、その前に……」

 トリスタン村長が、台所から料理を乗せたトレイを持ってやって来た。

「さぁトウゴ様、お待たせしました。マノンも、今日はおじいちゃんが作ったから一緒に食べよう」

「ありがとう、おじいちゃん。凄く美味しそう!」

「おお……美味そう。村長は料理も出来るんだな」

「はい、家事は私とマノンで分担しております」

「俺も手伝うよ。つっても風呂の掃除か家の掃除くらいしか出来ないけど。掃除は俺が担当だな」

 料理は冷凍食品くらいしか作れない。
 洗濯とかも恥ずかしながら分からない。

「いえ、そこまで気を使っていただかなくても……」

「いや、俺は皆に助けられてるんだ。そのぐらいはさせてくれ」

「……分かりました。それでは掃除はよろしくお願いします」

「よし、決まりだな。それじゃあ、頂きます。……うん、美味いな。キッシュか」

 キッシュは確か、母親が何度か作ってくれたっけ。
 具材はキノコ、トマト、ほうれん草なんかが使われている。
 ――ただ、肉は入っていない。
 この村の事情が少し垣間見える料理だ。

「うん、美味しい! おじいちゃん、凄く美味しいよ」

「おぉ、そうか。良かった良かった。じいちゃんの分も少し分けてやろう」

「ううん、これで十分よ。ありがとう」

「おお……そうか? いつもは分けてやってるのに、今日はお腹空いてないのか?」

「え!? ちょっとおじいちゃん!! 言わないでよ!!」

 マノンは顔を赤らめてあたふたしている。
 まぁ、十八だもんな。食べ盛りの時期だ。

「ハハッ。全然恥ずかしいことじゃないさ。今まで採掘者として働いていて、家事もこなしてたんだろ? そりゃあお腹空くよな。マノン、俺の分も分けてやるよ。食べ盛りだろ?」

「トウゴ様まで……だ、大丈夫です! 私はそんなに食べませんから」

「いらないのか? 欲しくなったら言ってくれよ。つっても、俺も食べ盛りだから結構食うけどな」

「そういえば、トウゴ様は背が高いですよね。……成長期なのに、これだけで足りますか?」

「おう、全然足りるよ。ありがとな」

 百七十五センチ。背が少し高いことが俺の取り柄だ。
 だが、筋肉はほぼない。

 他愛のない会話をしている内に、三人とも食べ終わった。

「ごちそうさまでした。さぁ、それじゃあ始めるかマノン先生!」

「はい。それではトウゴ様の部屋に行きましょう。私は玄関に置いてある本を取りに行ってきますね」

 そう言うとマノンは駆け足で玄関に向かっていった。

「じゃあ村長、行ってくる。それと、村の皆にあれ、報告しといてくれるか? マノンには後で言うよ」

「あの、トウゴ様……本当にバン王国へのリーフェン鉱石の輸出を停めてもいいのでしょうか……?」

「おう。若干一か八かな所はある。でも、バン王国はおそらく後継探しで必死だ。ドミニオンが再び襲撃に来るのを恐れてんだよ。それに、リーフェン鉱石は他の国とも取引している。それが今回の作戦の決め手だ」

 そう、バン王国へのリーフェン鉱石の輸出を停める。俺が朝、トリスタン村長に持ち出した策だ。
 バン王国は俺が国王を辞めて、多少なりとも混乱が生じているはず。
 国が混乱していて、かつリーフェン鉱石は他の国と取引している。

 まとめると、国が混乱している時にわざわざ手に入るリーフェン鉱石を求めてこの村に来るのか、という考えだ。
 俺は来ないことに賭けた。危ない賭けかもしれない。
 でも、危ない賭けの一つや二つは許容範囲だ。

 そして、この作戦のメリットは主に二つ。
 一つは、村の皆がもう働かなくて済むという点だ。
 二つ目は、バン王国がレザンス村を支配するメリットが無いということに気づく可能性があるということだ。
 リーフェン鉱石を他の国と取引してるなら、もうこの村を無理に支配するメリットは少ない。
 もしそれでもこの村を支配しようとするなら、ただのサディストだ。

 そしてこの作戦の最大のデメリット。
 もし長い間俺達を支援してくれる国が見つからなければ、この村は食糧難に陥る。
 ――でも、俺達を支援してくれる国が無いならどの道この村は終わる。
 絶対に見つけなければならない。

「分かりました。私共はトウゴ様を信じております。村の皆も、もう働かなくて済むときっと喜びます」

「あぁ。猛勉強して、友好国を一刻も早く作れるよう努力するよ」

「トウゴ様、準備出来ましたか?」

 マノンが手に数冊の本を抱えて戻ってきた。

「おう! やる気満々だ。早速やろうぜ。まず何からする?」

「はい。まずこの世界の主要な国を覚えましょう。少し前の本もあるので、古い情報は私が補足して説明しますね」

「おう。よろしく頼む。でも、新しい情報はスマホとかで調べられないのか? 楽できるところは楽したほうが……」

「スマホ……? 何ですかそれ?」

「あ、そうか……この世界にはないよな。悪い、忘れてくれ」

 地球ではスマホを知らない人間の方が珍しいが、ここは異世界だもんな。
 スマホは転移した時にポケットに入れてあったから持っているが、充電がほぼない。
 ここでは何の役にも立たないだろう。

「さぁ、始めようか。二時間くらいぶっ通しで軽くこなしてやる!」

 今までこなしたこともないことを決心して俺とマノンは部屋に入った。

 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~

「……あの、マノン先生……そろそろ休憩を……」

「あと三つだけやってしまいましょう! この三つの国の地形、政治はセットで覚えたほうがいいです」

「あ、はい……分かりました。頑張ります」

 俺達が勉強を始めてから四時間くらい経過した。
 さっき二時間勉強して、俺に与えられた休憩は十分。
 現在絶賛スパルタ授業中である。
 マノンは熱心で、俺が理解出来るようにあの手この手を使って説明してくれる。
 ――ただ、熱が入りすぎてしまっているのか、俺が言い出さなければ休憩がこの授業に存在しない。
 可愛らしい少女という一面の他、スパルタ教師という一面も持っていたとは。

 ただ、マノンの授業はかなり面白い。
 国の豆知識や食べ物など興味を惹かれる事柄も取り扱ってくれるので、疲れても授業が嫌になることはない。

「この国は危険な海域があって……あ、もしかして疲れましたか? すいません……つい夢中になってしまって……」

「いや、大丈夫だ。むしろこれくらいで丁度いい。俺はこれくらいやらないと駄目だと思う。これが終わったら魔法についても教えてくれるか?」

「はい! きっとトウゴ様なら、最上位魔法をまた使いこなせるようになりますよ」

 ディエゴは、俺一人では最上位魔法を鍛えることなど出来ないと言っていた。
 でも、奴は致命的なミスを犯した。
 俺は一人じゃない。一人で鍛えるのが無理なら、二人で、三人で鍛えればいい。
 ディエゴのミスは存分に利用させてもらう。

 このまま黙って奴らの好きにさせるわけにはいかないんだ。

「よし、もうひと頑張りだ!! やるか、マノン先生!!」
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