マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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二章 望む来訪者、望まぬ来訪者

十三話 罪人

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「ヴェーラ!! はぁ、はぁッ……マノン、ちょっと休憩してもいいか?」

「はい。お水、どうぞ」

「ありがとう。今日は相当練習したなぁ。かなり目に見えて上達してるよな」

「トウゴ様の努力あっての成果ですね。凄いと思います。もう主要な攻撃魔法は実戦で使えるレベルになりましたね」

 俺がここに来て十日目になった。
 魔法はかなり上達して、実践レベルの威力になった。
 最上位魔法、それも世界最強の魔法を扱うディエゴから継承したということが、上達が早い理由かもしれない。
 ただ、俺の猛練習も上達の理由に含まれるだろう。
 今までの俺の人生の中で一番努力していると断言出来るくらい、俺は今魔法を練習している。

「マノン、この練習が終わったらまた授業よろしく頼む。友好国をマジャラガン王国に絞るのは危険だから、候補を少しでも増やしておきたいんだ」

「そうですね……マジャラガン王国の国王は、殺しや残酷なことはしないけど、自由奔放な人とよく聞きます。一つに絞るのは確かに危険かもしれませんね」

 マジャラガン王国の国王は、女性らしい。
 自由奔放で気まぐれという話をよく聞くとマノンから聞いた。
 自由奔放で気まぐれ。どう考えても不安しかない。
 自分の気分で人を嫌ったり、もしくは気分で協力するかしないか決めたり。
 そんな恐ろしい女帝だったらどうしようか。

「マジャラガン王国一つに希望を見出すのは危険だよな。他の候補を一刻も早く探そう」

「はい。必ず見つかります。諦めなければ、必ず」

「おう。友好国と、友好国に与えられる交渉材料。まずはそれを探っていこう……と、もう日が暮れそうだな」

 少しずつ辺りが暗くなり始めていた。
 充実した日々を送ると一日が過ぎるのが早く感じるとはよく聞くが、その通りだなとここ最近実感している。

「トウゴ様、今日もおじいちゃんがご飯を用意してくれていますから、家に戻りましょう」

「おう。今日の晩飯は何かなー。いつも美味いもの食わしてもらってありがたいけど、不安にもなるよな」

 トリスタン村長が作るご飯はめちゃくちゃ美味い。
 でも、永遠にそれが続くわけではないと俺達は知っている。
 バン王国との取引を断絶したわけだから、当然バン王国から食糧をもらうことは出来ない。
 焦りが日に日に増えていく。

「……まぁ、腹が減っては戦はできぬ。先人の教えに従って、今は休むことに集中するか」

 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~

「トウゴ様、上達の具合はどうですか? かなり練習しておられるようですが……」

「おう。割と上手くいってるよ。マノンの教え方が上手いからな」

「いえ、そんな……私はただトウゴ様を補佐することしか……」

「補佐するのも立派な仕事さ。マノンが癒しになって俺は頑張れてるとこもあるしな」

「それはそれは、良かったです。お望みとあらばトウゴ様の花嫁にでもなりますよ。なぁ、マノン?」

「花嫁!? ちょっと、何言ってるのおじいちゃん!!」

「ハッハッハ。ごめんごめん、冗談だよ」

 晩飯を食べながら和気藹々と話していると、トリスタン村長がぶっ飛んだ冗談をかましてきた。
 花嫁か。悪くないな。
 嫁ってことは、合法的にマノンとあれやこれや出来るってことか?
 ……純粋な少女を脳内で汚すのはやめよう。
 
「是非娘さんを下さい」

「ちょっと、トウゴ様!! からかわないでください!! ……別に、嫌ってわけじゃない……ですけど……むしろ、私は全然……」

 マノンは照れてゴニョニョ独り言のように喋っている。
 承諾を頂いたってことでいいのか?

「ハハハ!! トウゴ様、喜んで。トウゴ様なら安心です」

「ハハッ。悪い悪い、マノン。ちょっとからかいすぎたな。マノンならきっといい男が沢山寄ってくるよ」

「だ、誰でもいいわけじゃありません! トウゴ様も、きっといっぱい素敵な女の人が寄ってきます。……で、でも、慎重に選んでくださいね!? そ、その……もし万が一私なら、喜んで……あぅ」

 マノンはまたゴニョニョモードに入ってしまった。
 だからそのゴニョニョ何だよ。可愛すぎだろ。

「でも、俺のモテ期は異世界にやってきて間もなく、バン王国にいた時だったんだろうなぁ。もう過ぎちまったよ。まぁ、あいつらにモテたところでしょうがないか。あいつらは俺じゃなくて俺の力を見てただろうしな」

 今改めて思い出すと、あいつらの笑顔は軽くホラーだ。
 あの嘘で塗り固められた笑顔が俺に向けられていたと思うと恐ろしい。

「トウゴ様が異世界から来たと聞いた時はびっくりしましたよ。バン王国も必死なんでしょうなぁ。ドミニオンという者がそれほどまでに恐ろしかったのでしょうか」

「あいつらが何を見たのかは分からないが、場合によっては同情の余地が一パーセントくらいはあるかもな。五年前の出来事がトラウマになってるのかもしれない」

 あいつらにも壮絶な過去があるのかもしれない。
 壮絶な過去を経て性格がひん曲がったのなら、納得できないこともない。
 でも、俺はあいつらに悪いことをしたなんてことは全く思わない。
 マノンや村長、村の皆に出会えたという点には感謝してるけど、勝手に異世界に人を呼んでおいてあの態度はないだろ。

「思い出したら腹立ってきたな……よし、食べ終わったらまた勉強、修行だな」

「そうしましょう。でも、疲れていませんか? 日中あれだけ練習したんですから、少しは休んでも……」

「大丈夫。疲れてないって言ったら嘘になるけど、不思議と大丈夫なんだ。多分、皆のおかげで精神が安定してるのが大きいと思う。心配しなくて大丈夫だぞ、マノン」

「……分かりました。でも、疲れたら言ってくださいね? 健康第一ですから」

「おう。健康第一ってのは俺も心得てるよ。本当にしんどかったら言うからさ。しんどくなったらマノンに癒してもらって――」

 ――ガンガンガン!!ガンガンガン!!

 俺達が話していると、突然、家のドアが乱暴に叩かれた。
 村の皆が俺達の家を訪れる時、今までは軽くノックして俺達を呼んでいた。
 今までとは違う荒いノックの仕方から、明らかに何かおかしいのは推測できる。
 三人で顔を見合わせたが、やはり三人とも異常を感じ取っていたようだ。

「……何だ……? 一体誰が……」

「トウゴ様、ここで待っていて下さい。マノンも、じいちゃんが外の様子を見てくるからここで待っていなさい」

「おじいちゃん、待って!! 私が行くから、おじいちゃんはトウゴ様と一緒にいて。大丈夫、きっと大したことないわよ」

 大したことない。
 そう思いたい。だけど、嫌な予感がする。
 ドアの向こうに、一体何がいる?
 冷たい汗がスゥッと首を伝う。

 ――ガンガン!!ガンガン!!

 先程より少し勢いは収まったが、依然としてドアが乱暴に叩かれている。
 駄目だ。マノンを行かせてはならない。俺が行かなければ。
 もしマノンに何かあったら、なんて想像したくもない。
 今まで俺は何のために鍛えてきたんだ。

「俺が行く」

「ダメです、トウゴ様!! もしトウゴ様に何かあったら、私……」

「大丈夫、マノン。大丈夫だから。俺を信じろ。頼む」

「……なら、私も行きます。二人でなら、安心です」

「なら、俺の後ろについていてくれ。俺がドアを開ける。いいな?」

「……分かりました。危険と判断したら、構わず魔法を使ってください」

「おう。魔物か何かなら、ヒーラで焼き尽くしてやる。でもきっと大丈夫さ。何もないよ。さあ、行こう」

 マノンを後ろに連れ、廊下へと出た。
 木の床をギシ……ギシ……と音を立ててゆっくり歩く。
 あっという間にドアの前に着いた。
 ドンドンという音はもう聞こえない。
 頼む、何も起こらないでくれ。
 お願いだ。

「開けるぞ、マノン。後ろにいてくれよ」

 ドクン、ドクン、ドクン。
 心臓の音がいやに聞こえる。

 ギイィ――と音を立ててゆっくりドアが開く。
 そこに居たものは――

「……あ」

 ドアの前にいたのは、中年の男店主だった。
 レザンス村の村人だ。
 外部の人間ではない。

「……はあぁーっ……。良かった、焦ったよほんと。魔物だったらどうしようかと」

 心が次第に軽くなる。
 魔法は実戦レベルに到達したとはいえ、まだ誰かに向けて使ったことなんてなかった。
 魔物とやりあうのはまだ正直怖い。

「乱暴にドア叩いて、どうしたんだよ? 何か連絡か? もうまあまあ夜だけど――」

「トウゴ様!!! 大変です!!! まずいことになりました……!!」

 ――ドクン。
 再び心臓が忙しなく動き出す。 
 不安を煽る、鬼気迫るような声色。
 何かが起こったことは明らかだ。

「何だ……何があった? そんなに焦ってどうした? 教えてくれ」

「バン王国のベラ様とソワン様が、レザンス村にいらっしゃいました!!! 罪人のトウゴ様を差し出せと……今、門の前で数人の部下達と待っています……!! 罪人六宮冬悟を差し出さないなら、この村の安全は保障しないと……」

「…………え?」
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