マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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二章 望む来訪者、望まぬ来訪者

※二十話 リオマの望み(三人称視点)

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「マノン、今日は歴史のお話をしてあげるわね。とても大切な話」

「やったあ!! 歴史はだいすき。とってもひきこまれるから」

「今日のお話は、この世界に暮らす人間なら知っておかなければならないことよ」

「なぁに?」

「マノン、この世界の大戦はね、すごく悲惨なものだったのよ」

「ママ、たいせんってなに……?」

「この世界で起きた大戦っていうのはね、リオマという魔法使いと世界騎士団との戦いを指すの。まだマノンには難しいかしら」

「……きかせて」

「分かったわ。リオマっていうのはね――――」

 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~

「ひ、ひひ、ひひっひいひひい……」

「トウゴ、様……? どうしたんですか……?」

 ひひひひと不気味な声で笑う六宮冬悟に、マノンは当たり前の疑問をぶつける。

「リオマ、リオマ、リオマの望み……」

「リ、オマ……? 一体何を言って――」

「うるさい」

 先程まで己が抱きかかえていた少女に、無情な言葉を投げかける。

「トウゴ様、返事をしてください!! 私のことが誰か分かりますか? トウゴ様!!」

「マノン」

 放たれた三文字に、マノンは安堵の表情を浮かべる。
 トウゴの精神が壊れたことをマノンは危惧していたが、マノンという名前を言えることに安堵したようだ。

「一体どうしたんですか? 急に笑い出して。ビックリしました」

「リオマは良い子だ。だから、彼女の呪いを解いてやらないと。彼女の望みを俺が叶えるんだ」

「え……? トウゴ様に、まだリオマ大戦の話はしていない筈……どうして」

「おい、ベラ、お前らッ!!!! ここから逃げるぞ!!!! とんでもないことが起きたかもしれん……速く、逃げる準備を、馬をッ!!!!」

 青ざめた表情でソワンがベラと部下に叫ぶ。
 まるで触れてはならない禁忌にでも触れてしまったかのようだ。

「最上位魔法の使い手で、まだ完全にコントロールできない……そして俺に激しい怒りを抱いた。十分に可能性はある。こいつは、リオマの願いを承諾したのかもしれん」

「リオマ……嘘、でしょ? あんなの、都市伝説程度の噂話じゃないの……まさか本当にあるっていうの?」

「ディエゴ様はリオマのことを信じていたし、十分あり得るだろ。こいつらの作戦じゃなければ」

「……そうよ。こいつらの作戦よ!! そうに決まってる!! 危うく騙されるところだったわ……」

 ベラは自分に言い聞かせるようにリオマの存在を否定した。
 
「六宮冬悟!! リオマのことを作戦に使うなんて、更に罪が重くなるわよ? 今ならまだ許してあげる。さっさとその演技を止めなさ――」

「おいベラ、お前は今幸せか? もしそうなら、俺は私はお前を許さない。幸せなものは壊すんだ。そう、それが俺の私の願い」

 ほんの数分前まで六宮冬悟であったは、混濁した一人称を用いて支離滅裂な発言をベラに投げかけた。
 幸せなものを全て壊すという、嫉妬心か何か、六宮冬悟は危険な欲望を口に出した。

「いい加減にしなさいよ……あんたがその演技を続けるなら、そのマノンって女を――」

「ベラ。こいつは裕福なバン王国でディエゴの側近として暮らしている。いっぱい金がある。人望も優雅な生活も愛情も」

「……何言って」

「じゃあ壊さないと。その命尽きるまで、追いかけないと。どこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでももも」

 狂人と化した六宮冬悟に、ベラは顔をひきつらせた。
 本能的な部分で命の危機を感じたのか、後ずさりする。

「あんた、ほんとにリオマに――」

 ――ゴオオオオッ!!!
 突然、六宮冬悟の体を黒炎が覆う。
 全てを飲み込んでしまいそうな漆黒の黒を纏い、ベラにゆっくり近づいていく。
 後ろで傍観している数人の部下も言葉を失っているようだった。

「ひっ……く、来るな」

「この炎で全てを焼き尽くす。お前の過去も、未来も幸せも苦しみも、お前がいたという存在も何もかもすべて」

「わ、わかったわ……謝ればいいんでしょう? あんたにしてきたことは間違いだった。ごめんなさい。あんたを捕えるのも諦める……マノンって子も自由よ。だから――」

「違うんだベラ」

 自分の保身の為に謝罪したベラに対し、六宮冬悟は否、と回答した。
 
「そんなのどうだっていい。お前が幸せだから全部壊すんだ。もう決めたことだ。お前を地獄の果てまで追いかけて追いかけて追いかけて追いかけて。お前を壊したら次はソワン、バン王国、それから……ひひ」

「壊すって……まさか」

「おい!!」

 突然、後ろで見ていた部下の一人が口を挟んできた。

「あんまりベラさんを困らせるなよ……さっさとその演技をやめ――」

 ――ボウッ!!
 口を挟んだ部下の体が、唐突に黒炎に包まれた。

「ぐああああああっ!!!」

 断末魔は、一般的な断末魔よりも短かった。
 何故なら、黒炎に包まれた体は数秒で跡形もなく消えてしまったからだ。

「さぁ、ベラ。最後に言い残すことはあるか? お前には散々苦しめられたけど、もう許すよ。最期の言葉は聞き届けてやる」

 まるで部下を消したことは無かった出来事のように、六宮冬悟はベラに最期の言葉を言うよう促す。

「ひっ……やめて、やめてやめてやめて。許して。分かった、悪かった、私が悪かったから!!」

 部下が消し炭になったことに恐れおののいたのか、ベラはひたすら許しを懇願した。
 ソワンも、未知の何かに手を出せずにただ傍観している。

「許して許して許してごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいトウゴ様」

 だが、ベラの許しなど全く聞き入れようとしない六宮冬悟は、ただ無情にベラへ近づいていくのだった。
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