輪廻を周り、恨みを払う刃となれ

桜桃-サクランボ-

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恨呪

転生者

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 中には妖裁級と思われる人達が七人。それと、真ん中に一人の──少年? が座っていた。
 妖裁級の人達は、その少年の後ろで正座。なんか、違和感が凄いんだけど。

「君が楽羅輪廻だね。待っていたよ」

 …………少年の姿なのに、めっちゃ無表情。なんか、大人の無表情よりめちゃくそ怖い。言葉だけなら微笑みながら言ってそうなんだけど。
 
 声は子供特有の少し高めの声で、この広い空間に響く。

「あ、えっと。楽羅輪廻です。あの、ここは──ガハッ」

 ちょっ、いや、なんで。一歩室内に入り自己紹介をしようとしただけなのに……。なんで幡羅さんに横腹を殴られたんですか私?!

「まずは座れ、このアホ」
「すみません……」

 いや、言葉で言ってくださいよ。なぜ最初に暴力から入るのですか。酷いです。
 
 まぁ、座りますけどね?! 逆らったら横腹だけでは済まない。もしかしたら、殺られる。
 幡羅さんと同じ感じに座ればいいのかな。片膝を立てて、頭を下げる。なれないな……。

 えっと。多分、この人が妖殺隊最高責任者何だろうな。あんな自由奔放な妖裁級の人達が素直に正座しているし。でも、なんで私みたいな中級が呼ばれたのか。謎だ。

「そこまでかしこまらなくても大丈夫だよ。君に話したいことがあって、京夜にお願いして呼びに行ってもらったんだ。前回は大変だったみたいだね」

 そう口にする少年。いや、あの私話して良いのですか? また横腹「ぐはっ」にはなりませんか?

 か、確認しないと。よしっ、少しだけ。ちらっと幡羅さんの方を向てみると、首をクイッと動かしてくれた。あ、話してもいいんですね。

「いえ、私は何もしておりません。幡羅きょうだ──幡羅さん達が居なければ、私はここに立っていませんでした」

 いや、座っていないでしょう──かな? まぁ、どちらでもいいか。というか、危なく幡羅兄弟って言うところだった。
 絶対殺される。だって、そう口にした時、幡羅さんから殺気を感じたもん。
 次は「グハッ」じゃなくて「クバッァァアア」ってなってたわ。

「報告は聞いているよ。それで、君を呼んだ理由だけどね。単刀直入に聞かせてもらおうかな。君、妖裁級に入ってみないかい?」
「────へっ?」

 え、ちょ……。いや、え?
 私が妖裁級? 実力とかまだまだ遠く及ばないのですが? 幡羅さんにボコボコにされたんですが。
 しかも、周りの人。妖裁級の人達にも伝えていなかったのかな。主様の言葉に、私だけでなくこの場にいる妖裁級の人達全員目を見開き驚いてる。

 いや、幡羅さんはわかんないけど……。前髪で見えてないし……。

「どどどどどうして私なのでででしょうか? 私はまだ中級……。幡羅さんに一瞬にしてやられるくらい弱いのですが……」

 あ、し、しまった! 思わず質問してしまった──けど、隣からの圧力はない。良かった。

「確かに妖裁級には強さが必要だ。この妖殺隊の最後の砦と呼ばれているからね。でも、強さは今後どうにでもなると思うよ」

 いやいや、何を言っているのですか。私はクソザコナメクジですよ。地面を這いずっている一人の人間なのですが。

「これからは、ここにいる妖裁級の人達と任務を共にしてもらい、戦闘に慣れて欲しい。あと、君が持っている恨力も上手く扱えるようになって欲しいかな」

 恨力。

 私の恨力は【凍冷とうれい】。
 空の拳銃に氷の弾を入れ撃ったり、私じゃ出来ないけど、冷気を噴射して相手を凍らせたりする──やつだよね。

「恨力は、この場にいる全員持っている。いや、この場にいる人達しか持っていない力だよ」
「えっ。それは何故ですか? 私自身、なぜこの力を持っているのか分からないのですが……」

 いや、でも考えてみると確かに。彰一とか他の隊士は、刀や拳銃でしか戦ってないな。私はもう一人の私が居るからとばかり思ってたんだけど。

「ここからは少し難しい話になるけれど。そうだね……。君は”転生”と言う言葉を聞いたことあるかい?」
「転生ですか。それって、よくアニメとかで見る異世界てんせ──いえ、なんでもありません……」

 そういえば、ここにはアニメとか異世界とか存在しないんだった。江戸時代の話をしようとした時、なぜか江戸時代すら知らなかったし。それなのに、アニメとかドラマとか知っていたらおかしいしね。なぜか私は知ってるけど……。どこからの情報なのかは分からない。なんか、記憶に残ってたみたいな……。

「そう、それだよ。君は異世界転生と言うものをしてしまったんだ。そして、ここにいる人達全員、転生者だよ」
「────へっ? ぐふ!!」

 咄嗟に出てしまった声すら許してくれないのですか幡羅さん。横腹に指が刺さってます。ものすごく痛いです……。一瞬、呼吸が出来なくなってしまったのですが……。

「でも、恐らく今の君は転生者では無い」
「………えっと。それって、もう一人の私が──と言うことでしょうか?」

 あ、手を離してくれた。良かった……。

「おそらくね。今の君には、転生前の記憶はあるかな?」

 優しく、さっきの私の苦しみをなかったかのように話を続ける主様。少しは気にして欲しいです。

「記憶はないです。ですが、知らない言葉──という訳では無いのですが、今みたいに『アニメ』や『江戸時代』など。周りの人に言っても通じなかったことはあります。私自身、どこでこの言葉を知ったのかは……」

 彰一にも通じなかった言葉もあるし。もしかして、これが転生前の私の記憶と関係しているのかな。

「おそらくそれは、記憶の欠片を感じ取っているんだろうね。今ここに、もう一人の君を呼び起こすことは可能かい?」

 ────えっ。

 この、妖裁級の人達が見ている中で私にもう一人の私を呼び起こせと? この主様、こわっ!!?
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