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恨呪
魅惑の吐息
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ここにはあまり人がいないみたいだな。だからか、俺が近付くと無いはずの目と合った気がした。
大きな図体を向かせ、俺の方にズルズルと近付いてくる。
「ラッキーと言うやつだな」
キシャァァァアアアアアアアア!!!!
っ、聞くに絶えないという訳じゃねぇが、耳障りでうるせぇ。さっさと終わらせるか。
刀でもいいが、今回は凍冷を使いてぇ。慣れてねぇ訳でもないが、これからのことを考えるともっと使いこなした方がいいだろう。
ホルスターから空の拳銃を取り出し、狙いを怨呪に定めるか。
「さすがに顔を狙うには距離があるな」
図体が大きい。地面に立っているだけじゃ顔は狙えねぇな。上に跳ぶか。
片手に拳銃を持ち直し、もう片方に刀を持つ。
準備は出来たな。体がでけぇやつは、感覚が鈍い。刺したところで問題は無いのは、今までの戦闘でわかってんだよ。
地面はぬかるんでいるわけでもなく、少し強く蹴ったところで滑って転びはしないな。雨降ったら終わりだが。
うしっ、行くぞ。
「っ?! かった!!!」
地面を思いっきり蹴り、怨呪の横腹辺りに跳び移り刀を刺したかっただけなのによ!! なんだこれ! めっちゃかってぇ!!!
少しも刺さらずそのまま地面に落ちちゃったじゃねぇかよ!!
「くっそ、まじかよ……」
くそっ。手が痺れるじゃねぇか殺す。いや、今絶賛殺してる最中なんだけどよ、まぁいいわ。
刀が刺さんねぇのなら、氷で踏み台を作ればいい。めんどくせぇことを……。
刀を鞘に戻し、足元に冷気を集めるか。まず怨呪の後ろに回って視界から外れねぇと。途中でなにかされたらたまったもんじゃねぇし。
……よしっ、俺のことは気づいてねぇらしいな。いや、元々目がないのか? どうでもいいか。
後ろに回って俺が乗れそうなくらいの氷の台を……うし、作れた。それをどんどん高くしていくか。獅子型の怨呪とやった時と同じように。
「っ! くそっ──うわっ?!?!」
都合よく後ろを見てんじゃねぇよ!! それに、怨呪が口から紫色のドロドロとした液体を吐き出してきやがった!?
おいおい?! その汚ぇヘドロが氷の台に当たると、どんどん溶け崩れ始めやがったぞ!!
くそっ、空中に投げ出された。まぁ、こんぐれぇなら体を捻り、体勢を整え地面に足から着地すればいいだけだが……。
「……………殺す」
さすがにムカついた。なんなんだよ。俺がやることなすこと全てに邪魔しやがって。ふざけんな。
俺のやりたいことを邪魔してんじゃねぇよ、大人しく殺されてろや。
「輪廻ちゃ~ん。もう一回ぃ~、ムカデに刀を刺していいよぉ~」
あぁ? 和音の声? 後ろから聞こえたはずだがどこに──あぁ。いたわ。長屋の家の中から顔だけ出してこっちを見てやがる。なんで隠れてんだよ意味がわからん。
「あいつ、妖裁級なんだよな?」
疑うレベルなんだが……。まぁいいわ。
言われた通り怨呪へと乗り移るか。無駄なことをあいつは言わねぇだろ。
キシャァァァァアアアアアアアア!!!
「っくそ!!」
耳が痛てぇ。それに、やっぱり刺さらな────
「────刺さった」
つーか、この甘い匂い。和音の近くに行くといつもする匂い。
いや、今はどうでもいい。さっさと上に登って切り刻むか。
怨呪の腹部辺りを蹴り、頭上へ。よし、上を取れた。ここまで来たらもう終わりだ。残念だったな、くそ怨呪。
凍冷を使いたかったが、切り刻んだ方が確実だしな。今回は刀で終わらせてやる。両手で刀の持ち手を握り、刃は下。思いっきり振り落とせるように、頭の上まで上げる。
重力を使って、ぶった切ってやるよ!!
ザシュ!!!
「怨みは浄化し、恨みは制圧せよ。我々妖殺隊により、安らかに眠るがいい」
胴体を一刀両断。地面にしっかりと着地し、癒白玉を怨呪に。
光り輝く癒白玉は、そのまま怨呪を包み込み、消える。地面には、百足が二等分にされている状態で転がっていた。
「お見事ぉ~」
ちっ、のんきな声を出しやがって。
ん? 和音の目の色が左右違くねぇか?
右目は変わらず薄紅色だが、左側が赤色になっている。そこまで大きな違いはねぇが、なんか違和感あんな。
「なんで左側色変わってんだよ」
「一時的に主様の恨力を解除したのぉ~。でも、安心してぇ。直ぐに元に戻るからぁ~」
手をヒラヒラさせながら説明する必要あるのかよ。その仕草、マジでキモイ。もっと普通にしろよ普通に。
「あっそ。つーか、お前の恨力ってなんだよ。一回目刺せなかったのに、二回目では刺せるようになったぞ」
「ふふっ。私の恨力はこれよぉ~」
あ? 何かを探し始めたな。何を探してる?
お、何かを見つけたらしいな。その場にしゃがみ何かを拾い上げやがった。
拾い上げた物は、拳くらい石ぃ???
「石?」
「見ててねぇ~。『魅惑の吐息』」
和音は、石を口元に持っていくと息をゆっくり吹きかけた。
「これが、私の恨力よぉ~」
………ん? 石を握りつぶした? はぁ?? え、バケモン??
「────馬鹿力」
「なわけないでしょぉ~」
余裕な笑みはそのまま、握った手を開いた? あ? 中には潰された石──ではねぇな。ゼリー状の柔らかい石もどきが乗っかっている。なんだこれ? ゼラチン??
「なんだよ、このぶよぶよとした気持ちわりぃの」
「私の魅惑の吐息はぁ~、私が息を吹きかけたものを~柔らかくすることが出来るのぉ~。どんなに固いものでもよぉ~」
あぁ、成程。だから、最初は刺さらなかったムカデの体に刀が刺さったのか。
「吐息……。さっきのは距離的に無理だろ。お前、ビビって後ろに居ただろうが」
「距離はあまり関係ないよぉ~。ための時間が長ければ長いほどぉ~、距離も伸びるってことおぉ~」
ほう。つーか、それって結構強くないか?
使い方によっては俺もぶよぶよになるってことだろ。怖いな。
「いつでも使える訳じゃないよぉ~。しっかりとぉ~条件があるからねぇ~」
「その条件って?」
「秘密ぅ~」
「あ、おい」
勝手に歩き出すんじゃねぇよ。教えろやこのクソメス女。
「はぁ……。なんなんだよ」
なんか最近、振り回されてばかりじゃねぇの俺。疲れる……。
大きな図体を向かせ、俺の方にズルズルと近付いてくる。
「ラッキーと言うやつだな」
キシャァァァアアアアアアアア!!!!
っ、聞くに絶えないという訳じゃねぇが、耳障りでうるせぇ。さっさと終わらせるか。
刀でもいいが、今回は凍冷を使いてぇ。慣れてねぇ訳でもないが、これからのことを考えるともっと使いこなした方がいいだろう。
ホルスターから空の拳銃を取り出し、狙いを怨呪に定めるか。
「さすがに顔を狙うには距離があるな」
図体が大きい。地面に立っているだけじゃ顔は狙えねぇな。上に跳ぶか。
片手に拳銃を持ち直し、もう片方に刀を持つ。
準備は出来たな。体がでけぇやつは、感覚が鈍い。刺したところで問題は無いのは、今までの戦闘でわかってんだよ。
地面はぬかるんでいるわけでもなく、少し強く蹴ったところで滑って転びはしないな。雨降ったら終わりだが。
うしっ、行くぞ。
「っ?! かった!!!」
地面を思いっきり蹴り、怨呪の横腹辺りに跳び移り刀を刺したかっただけなのによ!! なんだこれ! めっちゃかってぇ!!!
少しも刺さらずそのまま地面に落ちちゃったじゃねぇかよ!!
「くっそ、まじかよ……」
くそっ。手が痺れるじゃねぇか殺す。いや、今絶賛殺してる最中なんだけどよ、まぁいいわ。
刀が刺さんねぇのなら、氷で踏み台を作ればいい。めんどくせぇことを……。
刀を鞘に戻し、足元に冷気を集めるか。まず怨呪の後ろに回って視界から外れねぇと。途中でなにかされたらたまったもんじゃねぇし。
……よしっ、俺のことは気づいてねぇらしいな。いや、元々目がないのか? どうでもいいか。
後ろに回って俺が乗れそうなくらいの氷の台を……うし、作れた。それをどんどん高くしていくか。獅子型の怨呪とやった時と同じように。
「っ! くそっ──うわっ?!?!」
都合よく後ろを見てんじゃねぇよ!! それに、怨呪が口から紫色のドロドロとした液体を吐き出してきやがった!?
おいおい?! その汚ぇヘドロが氷の台に当たると、どんどん溶け崩れ始めやがったぞ!!
くそっ、空中に投げ出された。まぁ、こんぐれぇなら体を捻り、体勢を整え地面に足から着地すればいいだけだが……。
「……………殺す」
さすがにムカついた。なんなんだよ。俺がやることなすこと全てに邪魔しやがって。ふざけんな。
俺のやりたいことを邪魔してんじゃねぇよ、大人しく殺されてろや。
「輪廻ちゃ~ん。もう一回ぃ~、ムカデに刀を刺していいよぉ~」
あぁ? 和音の声? 後ろから聞こえたはずだがどこに──あぁ。いたわ。長屋の家の中から顔だけ出してこっちを見てやがる。なんで隠れてんだよ意味がわからん。
「あいつ、妖裁級なんだよな?」
疑うレベルなんだが……。まぁいいわ。
言われた通り怨呪へと乗り移るか。無駄なことをあいつは言わねぇだろ。
キシャァァァァアアアアアアアア!!!
「っくそ!!」
耳が痛てぇ。それに、やっぱり刺さらな────
「────刺さった」
つーか、この甘い匂い。和音の近くに行くといつもする匂い。
いや、今はどうでもいい。さっさと上に登って切り刻むか。
怨呪の腹部辺りを蹴り、頭上へ。よし、上を取れた。ここまで来たらもう終わりだ。残念だったな、くそ怨呪。
凍冷を使いたかったが、切り刻んだ方が確実だしな。今回は刀で終わらせてやる。両手で刀の持ち手を握り、刃は下。思いっきり振り落とせるように、頭の上まで上げる。
重力を使って、ぶった切ってやるよ!!
ザシュ!!!
「怨みは浄化し、恨みは制圧せよ。我々妖殺隊により、安らかに眠るがいい」
胴体を一刀両断。地面にしっかりと着地し、癒白玉を怨呪に。
光り輝く癒白玉は、そのまま怨呪を包み込み、消える。地面には、百足が二等分にされている状態で転がっていた。
「お見事ぉ~」
ちっ、のんきな声を出しやがって。
ん? 和音の目の色が左右違くねぇか?
右目は変わらず薄紅色だが、左側が赤色になっている。そこまで大きな違いはねぇが、なんか違和感あんな。
「なんで左側色変わってんだよ」
「一時的に主様の恨力を解除したのぉ~。でも、安心してぇ。直ぐに元に戻るからぁ~」
手をヒラヒラさせながら説明する必要あるのかよ。その仕草、マジでキモイ。もっと普通にしろよ普通に。
「あっそ。つーか、お前の恨力ってなんだよ。一回目刺せなかったのに、二回目では刺せるようになったぞ」
「ふふっ。私の恨力はこれよぉ~」
あ? 何かを探し始めたな。何を探してる?
お、何かを見つけたらしいな。その場にしゃがみ何かを拾い上げやがった。
拾い上げた物は、拳くらい石ぃ???
「石?」
「見ててねぇ~。『魅惑の吐息』」
和音は、石を口元に持っていくと息をゆっくり吹きかけた。
「これが、私の恨力よぉ~」
………ん? 石を握りつぶした? はぁ?? え、バケモン??
「────馬鹿力」
「なわけないでしょぉ~」
余裕な笑みはそのまま、握った手を開いた? あ? 中には潰された石──ではねぇな。ゼリー状の柔らかい石もどきが乗っかっている。なんだこれ? ゼラチン??
「なんだよ、このぶよぶよとした気持ちわりぃの」
「私の魅惑の吐息はぁ~、私が息を吹きかけたものを~柔らかくすることが出来るのぉ~。どんなに固いものでもよぉ~」
あぁ、成程。だから、最初は刺さらなかったムカデの体に刀が刺さったのか。
「吐息……。さっきのは距離的に無理だろ。お前、ビビって後ろに居ただろうが」
「距離はあまり関係ないよぉ~。ための時間が長ければ長いほどぉ~、距離も伸びるってことおぉ~」
ほう。つーか、それって結構強くないか?
使い方によっては俺もぶよぶよになるってことだろ。怖いな。
「いつでも使える訳じゃないよぉ~。しっかりとぉ~条件があるからねぇ~」
「その条件って?」
「秘密ぅ~」
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