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佐々木美鈴
第四話 幽霊
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約束の月曜日。放課後に二人は、噂を確認するために公園の前まで来ていた。
今は、夕方。もうご飯の支度などをしなければならない時間帯なため、公園には子供の姿が少ない。
二人は顔を見合わせ、公園へと入る。
公衆トイレに直行。裏に回ると、林が広がっている。
「足の踏み場、なくない?」
「いや、足跡はあるよ。ほら」
鈴が指さしたところを美鈴が確認すると、確かに足跡が残されていた。
でも、整備されているわけではなく、人の足で作られた道が奥へと続いているだけ。
苦い顔を浮かべながらも、二人に引き返す選択肢はなかった。
顔を見合わせ頷き合うと、鈴を先頭に林の奥へと進み始めた。
カサカサと、歯が重なり合う音が林の中に響く。
道になっていない道を歩いている為、スカートから覗く足が葉に当たって痛い。
虫とかも出て来そうと怯えながら美鈴は、鈴に置いていかれないように歩き続ける。
空を見上げると、木々に囲まれており夕暮れが隙間からしか覗けない。
オレンジ色の光が葉の隙間を縫って、道を照らすように降り注ぐ。
早く行かないとすぐに暗くなってしまうかもと不安に思いながら何も話さず歩き進めていると、急に鈴が足を止めた。
「あれ、どうしたの?」
「いや、もしかして、あそこ、かな?」
鈴の視線が前を向き続け、離れない。
美鈴は気になり、鈴の肩越しに奥を見た。
木が立ち並ぶ奥に、木製の小屋っぽい建物が建てられているのが見え、微かに目を見張る。
「確かに、あっ――いきなり走り出さないでよ!!」
美鈴が目を凝らし小屋を見ていると、鈴が急に道なき道を走り始める。
何度か転びそうになっている姿を見て、美鈴は呆れてしまった。
「転んでも知らないよ~……」
鈴とは違い、美鈴はゆっくりと歩き、小屋へとたどり着いた。
鈴は、ボロボロの小屋の前で立ち尽くしており、隣に並ぶ。
「わぁ、足が切り傷だらけ……」
やっと開けた場所にたどり着けたため、痛みの走る足を確認すると、血が出るほどではないが、切り傷が至る所に付いているのがわかった。
傷、残らないでほしいなぁと思いながら、何も話さない鈴を横目で見た。
「えぇっと、この小屋でいいんだよね? この、ボロボロの小屋で」
「た、多分、いいとは思うん、だけ、ど……」
小屋を改めて見てみると、本当に古くてボロボロなため、幽霊が出てくるんじゃないかと怖くなる。
屋根には蜘蛛の巣が張っており、壁は色が変色していた。
窓は付いていないらしく、中を外からでは確認できない。
「…………これが、噂の正体……? こんな、ボロボロの小屋が、願いを叶えてくれるの?」
「わ、わからない」
鈴に聞かれても、美鈴がわかるわけが無い。
カタカタと、手が震える。
「中に入るの、怖くない? やめておく?」
美鈴が聞くと、鈴が腕を組み悩みながら、小屋を隅々まで見て回り始めた。
奥へと回り始めたところで、美鈴も小屋のドア付近を再度見上げた。
「……絶対に、何も住んで──あれ?」
見上げていた視線を下げると、ドアの下には、人の足跡が残っていた。
大人っぽい跡から、子供のように小さな足跡まで。
しゃがんでよく観察すると、最近付けられたっぽく、ハッキリと残されていた。
「もしかして、人が、住んでいるの?」
再度立ち上がり、見上げる。
ドア付近以外には、人が住んでいそうな要素は一つもない。
どうしても、足跡が残されているのか疑問が残る。
そもそも、人が住んでいようといなかろうと、本当にこんな所でなんでも願いが叶うなんて、あるのだろうか。
小屋を見上げれば見上げるほどに、疑問が頭に浮かぶ。
「…………噂は、嘘に決まっているか」
諦めたように呟くと、ふと、風が後ろから優しく吹く。
咄嗟に振り向くと木に囲まれ、一人の男性が煙管をふかして立っていた。
銀色の髪に、顔には狐の面。
異質な姿をしており、美鈴は目を開いた。
目が離せないでいると、男性が急に美鈴へと歩き始めた。
驚きすぎて動けないでいると、目の前まで来てしまった。
近くまで来てわかる。
纏っている空気や、雰囲気が自分達とは違う。
怪しすぎる男性に、心臓がどくどくと音を鳴らした。
逃げなければと思うが、なんとなく、狐面の男に引き寄せられる。
目を離せない、その場から動けない。
心臓が、うるさい。
息が苦しくなってきた時、狐面の男の口元が動いた。
『中に、入れ』
脳に直接届く声。
言葉を理解した瞬間、後ろの扉がバンッ!! と、音を鳴らし開いた。
「──えっ?」
「どうしたの!? なに、今の音!!」
小屋の周りを見ていた鈴が、ドアの開く音で戻ってきた。
美鈴はすぐに男性を振り向くが、もう、そこには誰もいない。
痕跡すら残されておらず、頭が理解を拒む。
幽霊という言葉が頭をよぎった時、鈴が美鈴の肩に手を置いた。
「ねぇ、なんで勝手にドアを開いちゃったの?」
「いや、私が開いた訳じゃ……」
肩に手を置かれ、驚きつつも鈴の顔を見て冷静さを取り戻してきた。
言い訳しながら小屋の中を覗くと、外観からは考えられないほどの、綺麗な内装が広がっていた。
今は、夕方。もうご飯の支度などをしなければならない時間帯なため、公園には子供の姿が少ない。
二人は顔を見合わせ、公園へと入る。
公衆トイレに直行。裏に回ると、林が広がっている。
「足の踏み場、なくない?」
「いや、足跡はあるよ。ほら」
鈴が指さしたところを美鈴が確認すると、確かに足跡が残されていた。
でも、整備されているわけではなく、人の足で作られた道が奥へと続いているだけ。
苦い顔を浮かべながらも、二人に引き返す選択肢はなかった。
顔を見合わせ頷き合うと、鈴を先頭に林の奥へと進み始めた。
カサカサと、歯が重なり合う音が林の中に響く。
道になっていない道を歩いている為、スカートから覗く足が葉に当たって痛い。
虫とかも出て来そうと怯えながら美鈴は、鈴に置いていかれないように歩き続ける。
空を見上げると、木々に囲まれており夕暮れが隙間からしか覗けない。
オレンジ色の光が葉の隙間を縫って、道を照らすように降り注ぐ。
早く行かないとすぐに暗くなってしまうかもと不安に思いながら何も話さず歩き進めていると、急に鈴が足を止めた。
「あれ、どうしたの?」
「いや、もしかして、あそこ、かな?」
鈴の視線が前を向き続け、離れない。
美鈴は気になり、鈴の肩越しに奥を見た。
木が立ち並ぶ奥に、木製の小屋っぽい建物が建てられているのが見え、微かに目を見張る。
「確かに、あっ――いきなり走り出さないでよ!!」
美鈴が目を凝らし小屋を見ていると、鈴が急に道なき道を走り始める。
何度か転びそうになっている姿を見て、美鈴は呆れてしまった。
「転んでも知らないよ~……」
鈴とは違い、美鈴はゆっくりと歩き、小屋へとたどり着いた。
鈴は、ボロボロの小屋の前で立ち尽くしており、隣に並ぶ。
「わぁ、足が切り傷だらけ……」
やっと開けた場所にたどり着けたため、痛みの走る足を確認すると、血が出るほどではないが、切り傷が至る所に付いているのがわかった。
傷、残らないでほしいなぁと思いながら、何も話さない鈴を横目で見た。
「えぇっと、この小屋でいいんだよね? この、ボロボロの小屋で」
「た、多分、いいとは思うん、だけ、ど……」
小屋を改めて見てみると、本当に古くてボロボロなため、幽霊が出てくるんじゃないかと怖くなる。
屋根には蜘蛛の巣が張っており、壁は色が変色していた。
窓は付いていないらしく、中を外からでは確認できない。
「…………これが、噂の正体……? こんな、ボロボロの小屋が、願いを叶えてくれるの?」
「わ、わからない」
鈴に聞かれても、美鈴がわかるわけが無い。
カタカタと、手が震える。
「中に入るの、怖くない? やめておく?」
美鈴が聞くと、鈴が腕を組み悩みながら、小屋を隅々まで見て回り始めた。
奥へと回り始めたところで、美鈴も小屋のドア付近を再度見上げた。
「……絶対に、何も住んで──あれ?」
見上げていた視線を下げると、ドアの下には、人の足跡が残っていた。
大人っぽい跡から、子供のように小さな足跡まで。
しゃがんでよく観察すると、最近付けられたっぽく、ハッキリと残されていた。
「もしかして、人が、住んでいるの?」
再度立ち上がり、見上げる。
ドア付近以外には、人が住んでいそうな要素は一つもない。
どうしても、足跡が残されているのか疑問が残る。
そもそも、人が住んでいようといなかろうと、本当にこんな所でなんでも願いが叶うなんて、あるのだろうか。
小屋を見上げれば見上げるほどに、疑問が頭に浮かぶ。
「…………噂は、嘘に決まっているか」
諦めたように呟くと、ふと、風が後ろから優しく吹く。
咄嗟に振り向くと木に囲まれ、一人の男性が煙管をふかして立っていた。
銀色の髪に、顔には狐の面。
異質な姿をしており、美鈴は目を開いた。
目が離せないでいると、男性が急に美鈴へと歩き始めた。
驚きすぎて動けないでいると、目の前まで来てしまった。
近くまで来てわかる。
纏っている空気や、雰囲気が自分達とは違う。
怪しすぎる男性に、心臓がどくどくと音を鳴らした。
逃げなければと思うが、なんとなく、狐面の男に引き寄せられる。
目を離せない、その場から動けない。
心臓が、うるさい。
息が苦しくなってきた時、狐面の男の口元が動いた。
『中に、入れ』
脳に直接届く声。
言葉を理解した瞬間、後ろの扉がバンッ!! と、音を鳴らし開いた。
「──えっ?」
「どうしたの!? なに、今の音!!」
小屋の周りを見ていた鈴が、ドアの開く音で戻ってきた。
美鈴はすぐに男性を振り向くが、もう、そこには誰もいない。
痕跡すら残されておらず、頭が理解を拒む。
幽霊という言葉が頭をよぎった時、鈴が美鈴の肩に手を置いた。
「ねぇ、なんで勝手にドアを開いちゃったの?」
「いや、私が開いた訳じゃ……」
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言い訳しながら小屋の中を覗くと、外観からは考えられないほどの、綺麗な内装が広がっていた。
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