120 / 246
呪吸の義
確実なもの
しおりを挟む
体に浮遊感、体を動かしても意味はなく。何かを掴めるわけではなく、なにかにぶつかるわけでもない。
この感覚は知っている。これは、夢の中、安倍晴明と出会える唯一の空間だ。
閉じていた目を開けると、目の前には見覚えのある狩衣。柔和な微笑みを浮かべている安倍晴明が俺を見据え立っていた。
『お疲れ様です、牧野優夏』
「あ、いえ。こんにちは」
『はい、こんにちは』
クスクスと笑いながら、安倍晴明が俺を見てくる。何を考えているのかわからないのは変わらずだな…………。
『今後はどのように動く予定か考えていますか?』
「……………………行動すれば何かにぶち当たると思います。なので考えても無駄だという結論に至りました」
『つまり、何も考えていないという事ですね。貴方らしいです』
「うるさいです…………」
『ふふっ。ですが、貴方なら今の考えでも大丈夫なような気がしますね。これからもその調子で頑張ってください』
「待って? 何か助言とかは?」
『ほしいですか?』
えぇ、そう聞かれると逆らいたくなるんだけど。でも、ここで逆らってしまえば、今後助言を貰えない可能性がある。ここはお願いするしかない。
「お願いします」
『素直な方は嫌いではないですよ。特に、貴方のように潔い方はね』
「はぁ…………」
潔い? そんなことはないと思うんだけど………。
『今回は時間があるのでゆっくり話しましょうか』
あ、いつも時間がないのに、今日はあるんだ。その時間の感覚ってどのようになっているんだろうか。この世界での一分は、現実世界では一時間とか?
『今回の出来事、大きく関わっているのがどこの組織かはご存じですか?』
「氷鬼家から姿を消した陰陽師だとはわかっています。組織ではなく、単独行動だと思っているんですが、違うのでしょうか」
『そうですねぇ。単独ではないと思いますよ』
単独ではないのか、なら誰が協力しているのか。いや、もしかしたら協力している方の可能性もあるのか?
『考えるのはいい事です。諦めず、考え続けてください』
「…………はい」
助けてはくれないと。
『それにしても、道満は本当に変わってしまわれましたねぇ。昔はこんなことはしない真面目な方だったというのに』
「それは本当なのですか?」
『そうですよ。お互い高め合える間柄でしたので。本当に、あの頃は楽しかったです』
安倍晴明はな悲し気に目を伏せている。過去を思い出しているのだろうか。
『昔は本当に楽しかったです。道満の頭にカエルを降らしたり、式神で夜中驚かしたり、一緒に悪霊退治に行った時は道満の式神で少々遊んだり―――』
「恨まれた原因それでは!?!?」
何やってんの!? それは道満が怒っても仕方がないよ!!
『ふふ。冗談ですよ』
「冗談を言っている場合ではないと思うのですが…………」
『では、真面目な話をしましょうか。今回の件、主に動いているのはおそらくあなたの友人ですよ』
「え、靖弥? な、何故?」
『蘆屋道満の気配がない。あの、禍々しい気配は、近くにいれば微かにでも感じる事が出来るはずです。ですが、今回はまるっきり感じない。ですが、貴方の友人の気配は感じる。不思議な現象ですねぇ』
「いや、そんな楽し気に言わないでよ。なんか、狂気的殺人者を目の前にしているみたいで怖いんだけど…………」
『酷いですね、快楽を得るために私は殺生しませんよ』
「当たり前だよ!!!」
まったく、すごい人のはずなのに、なんでこんなにも気が抜けるんだろう。危機感とかないのだろうか。これが強者の余裕ってやつなのかな、俺にもほしいな。
『ひとまず、今回は蘆屋道満の事は忘れてください。ご友人について考えましょうか』
「本当に忘れてもいいの? あの二人は繋がっている。靖弥に汚い事を全て任せ、自分はまた違う事を考えている可能性があります。もしかしたら、裏で大きな事態を引き起こす準備をしているのかもしれないですよ」
『想像力が豊かなのは、子供の特権ですね』
「…………貴方からしたら、俺が生きている人間全員子供でしょ」
『ふふ、すいません。貴方の考えも一理あります。昔とはだいぶ変わってしまったので道満の考えを読むことは出来ませんので確実なものは言えませんが』
まぁ、そりゃそうか。確実な物なんて本来はない。仕方がない。
俺は、なんでこの世界に呼ばれたのだろうか。今まで役に立っていないし、迷惑をかけてばかり。式神たちにも危険な目に合わせてばかり。
『――――時間です』
「っ、あ」
安倍晴明が微笑み、手を振る。同時に暗い空間に光が蜘蛛の巣のように光が広がり、明るくなっていく。
「っ、そうだ……。安倍晴明!! 俺をここに呼んだのは貴方の差し金なんですか!? 貴方が闇命君に俺を選ばせたんですか!?」
『貴方を選んだのは、子孫の意志ですよ。頑張ってください、牧野優夏。自分を、仲間を最後まで信じるのです』
安倍晴明の言葉を最後に、俺はまばゆい光に耐えきれず、目を閉じてしまった。
この感覚は知っている。これは、夢の中、安倍晴明と出会える唯一の空間だ。
閉じていた目を開けると、目の前には見覚えのある狩衣。柔和な微笑みを浮かべている安倍晴明が俺を見据え立っていた。
『お疲れ様です、牧野優夏』
「あ、いえ。こんにちは」
『はい、こんにちは』
クスクスと笑いながら、安倍晴明が俺を見てくる。何を考えているのかわからないのは変わらずだな…………。
『今後はどのように動く予定か考えていますか?』
「……………………行動すれば何かにぶち当たると思います。なので考えても無駄だという結論に至りました」
『つまり、何も考えていないという事ですね。貴方らしいです』
「うるさいです…………」
『ふふっ。ですが、貴方なら今の考えでも大丈夫なような気がしますね。これからもその調子で頑張ってください』
「待って? 何か助言とかは?」
『ほしいですか?』
えぇ、そう聞かれると逆らいたくなるんだけど。でも、ここで逆らってしまえば、今後助言を貰えない可能性がある。ここはお願いするしかない。
「お願いします」
『素直な方は嫌いではないですよ。特に、貴方のように潔い方はね』
「はぁ…………」
潔い? そんなことはないと思うんだけど………。
『今回は時間があるのでゆっくり話しましょうか』
あ、いつも時間がないのに、今日はあるんだ。その時間の感覚ってどのようになっているんだろうか。この世界での一分は、現実世界では一時間とか?
『今回の出来事、大きく関わっているのがどこの組織かはご存じですか?』
「氷鬼家から姿を消した陰陽師だとはわかっています。組織ではなく、単独行動だと思っているんですが、違うのでしょうか」
『そうですねぇ。単独ではないと思いますよ』
単独ではないのか、なら誰が協力しているのか。いや、もしかしたら協力している方の可能性もあるのか?
『考えるのはいい事です。諦めず、考え続けてください』
「…………はい」
助けてはくれないと。
『それにしても、道満は本当に変わってしまわれましたねぇ。昔はこんなことはしない真面目な方だったというのに』
「それは本当なのですか?」
『そうですよ。お互い高め合える間柄でしたので。本当に、あの頃は楽しかったです』
安倍晴明はな悲し気に目を伏せている。過去を思い出しているのだろうか。
『昔は本当に楽しかったです。道満の頭にカエルを降らしたり、式神で夜中驚かしたり、一緒に悪霊退治に行った時は道満の式神で少々遊んだり―――』
「恨まれた原因それでは!?!?」
何やってんの!? それは道満が怒っても仕方がないよ!!
『ふふ。冗談ですよ』
「冗談を言っている場合ではないと思うのですが…………」
『では、真面目な話をしましょうか。今回の件、主に動いているのはおそらくあなたの友人ですよ』
「え、靖弥? な、何故?」
『蘆屋道満の気配がない。あの、禍々しい気配は、近くにいれば微かにでも感じる事が出来るはずです。ですが、今回はまるっきり感じない。ですが、貴方の友人の気配は感じる。不思議な現象ですねぇ』
「いや、そんな楽し気に言わないでよ。なんか、狂気的殺人者を目の前にしているみたいで怖いんだけど…………」
『酷いですね、快楽を得るために私は殺生しませんよ』
「当たり前だよ!!!」
まったく、すごい人のはずなのに、なんでこんなにも気が抜けるんだろう。危機感とかないのだろうか。これが強者の余裕ってやつなのかな、俺にもほしいな。
『ひとまず、今回は蘆屋道満の事は忘れてください。ご友人について考えましょうか』
「本当に忘れてもいいの? あの二人は繋がっている。靖弥に汚い事を全て任せ、自分はまた違う事を考えている可能性があります。もしかしたら、裏で大きな事態を引き起こす準備をしているのかもしれないですよ」
『想像力が豊かなのは、子供の特権ですね』
「…………貴方からしたら、俺が生きている人間全員子供でしょ」
『ふふ、すいません。貴方の考えも一理あります。昔とはだいぶ変わってしまったので道満の考えを読むことは出来ませんので確実なものは言えませんが』
まぁ、そりゃそうか。確実な物なんて本来はない。仕方がない。
俺は、なんでこの世界に呼ばれたのだろうか。今まで役に立っていないし、迷惑をかけてばかり。式神たちにも危険な目に合わせてばかり。
『――――時間です』
「っ、あ」
安倍晴明が微笑み、手を振る。同時に暗い空間に光が蜘蛛の巣のように光が広がり、明るくなっていく。
「っ、そうだ……。安倍晴明!! 俺をここに呼んだのは貴方の差し金なんですか!? 貴方が闇命君に俺を選ばせたんですか!?」
『貴方を選んだのは、子孫の意志ですよ。頑張ってください、牧野優夏。自分を、仲間を最後まで信じるのです』
安倍晴明の言葉を最後に、俺はまばゆい光に耐えきれず、目を閉じてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる