憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
145 / 246
暴走と涙

最後の式神

しおりを挟む
 道満が、消えた。

 あと少し、あと少しだったのに。俺は、殺せなかった。
 こっちは危険な目にあった人物がいるというのに。それを引き起こした奴を逃がしてしまった。

 くそ、くそ!!!!! 体が痛む、息が出来ない。頭痛が、耳鳴りが。

「大丈夫か、安倍晴明の子孫よ」

 水分の声、俺の肩に手を置き心配してくれている。

「だいじょっ――……」


 ―――――バチッ!!!!


「っ、な」

 水分の驚いた声、弾けれたような音。顔を上げると、水分が自身の手を握り目を開いて俺を見る姿が目に入る。

「おまえ、力が溢れていないか?」


 力が、溢れている?


『主、送り過ぎ、です』
『キ、キュイ』

 二人の声、今にも消えそうな声。送り過ぎ、法力を? でも、俺は今送っていないぞ。送るほどの余裕はない、今はこの息苦しさや頭痛から早く解放されたい。

「っ、闇命…………く、これって…………っ」
『……………………多分、力の暴走。高ぶった感情で力が溢れ、抑える事が出来ていないんだろうね』

 体から何かが垂れ流しになっているような感覚、止めようにも止められない。これが頭痛と耳鳴りを引き起こしてるんだ。

『まず、百目達をこれ以上苦しめる訳にはいかない。戻っていいよ』

 百目達に闇命君が伝えてくれている。手に握られていた御札から力が失われた。自身で戻ってくれたんだろう。

『…………ここまで力が暴走していると、さすがに無理か。どうすればいいんだ…………』

 体が、熱い。周りの声が聞こえなくなってきた。耳鳴りの音が響く、視界がどんどん歪んで何も見えなくなる。


 道満は取り逃がし、式神に自滅をさせてしまい。俺は今回、何がしたかったんだ。俺は今回、何をしたんだ。

「もう、いやだ…………」

 ☆

 僕の身体なのに、どうすればいいのかわからない。こんな、どうすればいいんだ。

「闇命とやら、自身の身体だろう。早く落ち着かせなければ体が危ないと思うのだが」
『わかっているよ。でも、今の僕は自分の体をどうにか出来ない。中に入っている優夏にどうにかしてもらうしかないんだ』

 多分、もうこっちの会話は聞こえないだろう。何も反応見せないし、地面を掴み苦しみから逃れようと悶え苦しんでいる。どうすれば…………。

「琴平!! 無茶をするな!!」

 え、琴平?? 

『っ、琴平!! まだ止血出来ていないじゃん!! 動いたら駄目だよ!!』
「もう、俺は長くないです。場所が悪かった…………。な、ので。ここで役に立ちたの、です」

 お腹から血が、まだ間に合うかもしれない。今ここで動くより、休んで紅音に傷を塞いでもらえば……。

『駄目だよ琴平、休んだらまだ間に合うかもしれない。僕の身体はどうにかする、いいから休め。琴平!!!』

 琴平が僕の言葉を無視して優夏の横に座る。赤く染まった手をお腹から離し、一枚のお札を取り出した。

 なに、もしかして式神を出そうとしているの? そんな事、許さないよ!!

『琴平!! 本当にいい加減にして!! 僕のいう事を聞いてよ、本当に僕の体は大丈夫だから。今は休んで!!』

 手を伸ばしても、無理やり止めようとしても。僕の手は琴平に触れる事が出来ない、式神を掴んでいる手を離させることが出来ない。

 なんで、いつもは僕が言えばいう事を聞いてくれるのに。なんで、今は一つもいう事を聞いてくれないの、今こそ聞いてよ。何で…………。

「闇命様、俺は、貴方が全てと言いました。ですが、今回苦しんでいるのは、闇命様だけではなく、優夏です」

 優夏に送っていた目線を僕の方に向けてきた。その表情は、痛みで歪んでいるわけではない。

 口からは血が流れ、苦しいはずなのに。なぜか今の琴平は、笑っていた。勝ち誇った様に、僕を見てくる。

「俺は、闇命様と同じくらい、優夏が大事なのです。優夏のおかげで、我々は自由です。……ゴホッ。っ、何にも囚われることなく、自由に外へと出られています。まだ、……っ……、か、枷があるとはいえ、これは今まで俺達が諦めてきた、自由なのです」

 赤い琴平の手が伸びてくる、触れる事が出来ないはずなのに、僕の頬を撫でてきた。
 温かい、触れられるわけがないのに、体温が移ったかのように、温かい。

「俺は、ここまでになりますが、これからは優夏が居ます。安心して……っ。お願い、出来るほど優夏はこの世界に馴染んできました。それに、気づいていますか、闇命様。優夏と話している時の闇命様、すごく楽しそうでしたよ」

 え、僕が、楽しそう? そんなことないよ。こいつは本当に馬鹿な事しか言わないし、あほだし、何も考えない行き当たりばったりで。本当に困っていたんだ。だから、楽しいわけがない。

「闇命様、必ずお守りします。今までのように、これからも。だから、そんな顔を浮かべないでください」

 そんな顔って、今の僕は今、どんな顔を浮かべているんだよ。鏡があるわけじゃないんだからわからないよ。

 琴平の手が僕から離れる。

「これが最後の、式神です」

 琴平が一枚のお札を右手の人差し指と中指で挟め、法力を注ぎ込み始める。すると、淡い光が琴平の手元を照らす。

吸鬼きゅうき、闇命様からあふれ出る法力を吸い取ってくれ。急急如律令」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...