憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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最終決戦

過去の光景とヒント

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『琴平、君には力がある。人を守れるほどの力がね』
『本当に、俺にあるのでしょうか。人を守れる力が』
『あるよ、もちろん。けれど、今のままでは、力の持ち腐れ。君の持っている力をもっと強くするんだ。私は教えられる方法は一つ、法術だ』
『法術……、それは俺達を守ってくださった時に使用したものでしょうか』
『そうだよ。法術を扱う事が出来れば、自身が持っている式神を出す事が出来たり、手に想像した武器を纏う事が出来るんだ。このようにね』

 青空が広がる空間に立つ、子供の頃の琴平と、まだ元気に動いている闇命の父親、煌命の姿。

 煌命は、優しい笑みを浮かべながら一枚のお札を取り出し、法力を注ぐ。すると、お札は光出し、そこから火花が上がり、鴉くらいの大きさである雷火を出現した。

『雷の、鳥?』
『そう、この子は私が一番気に入っている、雷火。君の言う通り、雷の鳥だよ。速さ重視で、法力の量により大きさも自由自在。もう少し法力を注ぎ込んでみようか』

 言うと同時に、煌命はお札に法力を注ぎ込んだ。すると、雷火の身体が徐々に大きくなり、あっという間に成人男性くらいの大きさになった。

『す、すごい…………』
『これが、法術と呼ばれるものだよ。他にも沢山、法力を自由に操作する事が出来れば、扱える法術も増える。それで、法術を扱えるようになるには、必ずしなければならない修行があるんだ』
『必ずしなければならない修行?』
『そう。それは今、闇命が行っている修行だ』
『闇命君が行っているものという事は、煌命様が作り出したと言っていた、水の入ったコップの中にある水を浮かばせることの事でしょうか?』

 琴平は闇命が行っていた修行光景を思い出し、顔を青くした。
 そんな彼を見て、煌命はふふっと小さく微笑み異首を横に振る。

『確かに同じとは言ったけれど、修行内容は異なるよ。あのような厳しい教育は、自分の息子である闇命にしか行いません。それに、あの子は少々訳ありなので、あのくらいでなければ意味はないのですよ』

 煌命の言葉に、琴平は首を傾げる。

『今はあの子の事より、自分の事に集中してください。これから貴方が行うのは、法力を操作できるようになる事。そのためには、まず頭の中での想像が大事です』
『想像?』
『そうです。頭の中に思い浮かべてください。静かな海を』
『海?』
『そう、海です。静かな海、波一つない透きとおっている光景を。それを想像し、指先に集中するのです。体の中から湧き上がる熱い物を感じる事が出来れば、法力を操作出来た事になります。頑張ってください』

 簡単に、ニコッと笑いながら言う煌命に、琴平は再度顔を青くし、を向いた。
 助けを求めるような顔を浮かべている琴平に、今の光景を見ていた紅音が助けようと手を伸ばし近付いて行く。

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 目を閉じ、過去の光景を思い出していた紅音は、ゆっくりと目を開けた

 そうだ、と自身の指先に視線だけを向け、考える。

「静かな波を想像、体を巡る熱い何かを指先に集中」

 簡単に出来るなんて思っていない。だが、今はやるしか道は残されていない。
 やらなければ、紅音が法力を扱えるようにならなければ、夏楓は死んでしまう。そう考え、自分を奮い立たせた紅音は、緊張と不安で下唇を噛み、氷柱女房を横目で見た。

『――――――――大丈夫ですよ、紅音』

 頭の中に聞こえてくる優しくも凛々しい声。それはまるで、琴平に言われているかのようにも感じ、自然と力が入っていた体は、安心したように脱力。力が抜け、紅音の表情にも余裕が出てきた。

 動かない体でも、夏楓を助けなければならない。そう考え、息を大きく吸い、決意を表すように赤い瞳を吊り上げた。

「氷柱女房、お願いだ。ワタシに、力を貸してくれ」

 言いながら、紅音は目を閉じ集中した。

 頭の中では静かな海を想像し、体から湧き上がる熱い物に集中。指先に集める事を意識すると、紅音が握っていたお札が先ほどより強い光が放たれ始めた。
 集中力を切らさず、紅音がお札に集中していると、お札の光も徐々に増してくる。同時に、氷柱女房の身体にも変化が現れた。

 氷柱女房の白い肌には、雪の結晶が浮き上がり、水色の長い髪は藍色へと変化。前髪で隠されていた額には、今まで無かったはずの、藍色の瞳が開かれた。
 強い冷気が体中から放たれ、辺りを徐々に凍らせていく。

 氷柱女房の異変に気付いた静稀と絡新婦は、夏楓から一度目を離し紅音達を見た。
 夏楓も地面に転がりながらも二人に目を向け、目を大きく見開いた。

「あれって、紅音が法力を注ぎ込んだから…………?」

 見た目が変わった氷柱女房は、鋭い瞳を静稀に向け、口元を抑えている右手を前に向けた。

『私の主であるお二人に酷い事をした罪は重いです。覚悟しなさい』

 氷のように冷たい言葉と共に放たれたのは、無数の氷柱だった。
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