憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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最終決戦

今と昔

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「はぁ、はぁ。くっ、俺は、最強なんだ。あのお方が認めてくれた、俺を使ってくれている。俺は、あの人に見捨てられるわけには、いかないんだ!」

 興奮して感情のまま叫び声をあげる静稀。肩を支えながら、手から離された本へと伸ばす。

「俺は、必ずっ……!」

 血走らせた目を本に向け、必死に手を伸ばす静稀に、夏楓は慌てて近づき彼が掴む一歩手前で本を奪い取った。
 すぐさま距離を取り、取り乱している静稀を見る。

「俺は、俺の。許さない、俺は、許さない!!!」

 叫びながら、無防備に夏楓に近寄る静稀。狂ったような笑みを浮かべ、目を見開き、本へと手を伸ばし続ける。

 夏楓は、そんな彼の姿を見て小さな悲鳴を上げ後ずさった。

「早く、返してくれよ。それがないと、俺は、あの人のために、動けないじゃないか…………」

 見開いた瞳に、夏楓の困惑した顔が映り込む。「返して」と言いながら近づく彼は、もう正気を保っていない。ただ、ひたすらに”あのお方”から命じられた指示を考えなしに遂行しようとしている。

 その姿があまりに哀れで、夏楓も紅音も何も手を打つことが出来ない。
 眉を顰め、ただ純粋に心配している。どうにか助けられないかとも考えていた夏楓。

 そんな時、後ろから女性の声が響き振り向いた。

『主!! しっかりしてください! 主!!』

 いつの間にか、右半分のみ、女性の顔に戻っていた絡新婦が、必死の形相で静稀に呼びかけていた。

『主! 主!!』

 今にも泣き出しそうな顔を浮かべ、喉が裂けそうなほどの声量で呼び続ける。それでも静稀の耳には彼女の声は届かない。今も夏楓が持っている本に手を伸ばし続けていた。

「早く、早く返せ。俺の、俺の本だ、俺の力なんだよ。早く、返せ!!」

 叫んだのと同時に、夏楓に向けて静稀が走り出す。小さな悲鳴を上げ、後ろに逃げようとした時、氷の膜が静稀の周りに張られた。

 ”ゴンッ”という、痛々しい音が響くと、静稀がその場に膝をつき額を抑え蹲ってしまった。
 氷の膜が張られた瞬間に勢いを止める事が出来ず、そのままぶつかってしまったらしい。

「はぁ、はぁ。氷柱女房、ありがとうございます」
『主を守るのが、式神の使命です。あと、あのお方を一度解放してもいいかなと思うのですが、いかがでしょう』

 一礼をした氷柱女房の目線の先には、今だ静稀の事を呼んでいる絡新婦の姿。凍っている手を伸ば続けていた。

「……………………そう、ですね。なぜ、主に対してあんなにも怯えていたのに、今は必死に助けようとしているのか。普通でしたら、ここで見捨ててもいいはず。いや、離れて自身の自由を手に入れていいはずです。それを、私は知りたいです。なので、氷を解いていただいてもいいでしょうか、氷柱女房」
『主の仰せのままに』

 パチンと指を鳴らすと、絡新婦を拘束していた氷がとかれた。同時に、静稀に向けて走り出し手を伸ばす。

『主! しっかりしてください、主!!』

 静樹の周りに張られている氷の結界に触れ、何度も叩き中にいる静稀に呼びかける。だが、彼は顔を上げる事はせず、蹲ったまま。

 何も反応を見せない静稀に何度も何度も呼びかける絡新婦を外で見て、夏楓は胸を押さえ眉を顰めた。

「――――――――あの、絡新婦さん。なぜ、貴方はそこまで主を助けようとするのですか? 貴方は恐怖心を煽られ、無理やり従われていたのでしょう? 先ほど、勝手ながら心中を読ませていただきましたが、怖がっていました。なぜ、そこまで必死になるのでしょうか」

 距離を保ちつつ、夏楓が絡新婦に問いかけると、結界を叩いていた手が止まる。
 俯いている顔を少しだけ夏楓へと向け、ゆっくりと語り出した。

『主は、このような方ではありませんでした。私と土蜘蛛を式神にした時は、もっと優しく、私達を優しく扱ってくださっていました。心から信じ、私達に接してくださっておりました。ですが、ある方と出会って、主は変わってしまいました』
「ある方? それって、まさか…………」
『貴方達も知っている人物ですよ。蘆屋道満』

 名前を聞いた瞬間、夏楓の心臓が大きく跳ねあがった。

『主は、法力がそこまで多くありません。なので、式神を出す際は二体が限度。ですが、二体出してしまえば、片方が力を出し切る事が出来ず、意味はない。それに対し引け目を感じていた主は、蘆屋道満から、貴方が今持っている本を貰い力を扱うことにしたのです。ですが、そこから主は変わってしまった。性格が傲慢になり、式神を奴隷と認識しました。基本、式神に自我はありません。主との繋がりが強ければ意思を持つことが出来るのです、私は自我がある方だったため、変わってしまった主の指示には従いたくなく拒むと、私はお札から出る事が許されなくなってしまったのです。あの時までは毎日一回は出して下さり、私達とお話ししてくださっていたのに。そんな主が、優しかった主が、蘆屋道満のせいで、変わって、しまいました……」

 声が徐々に小さくなり、頬には涙が伝っていた。
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