氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-

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カラス天狗

氷鬼先輩の宣言

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 刀を構えた司は、刃先をカラス天狗に向けた。

『あわれな人間だ。それか、我を舐めている行動か。どちらにせよ、ぬしは我を怒らせた。ただで死ねると思わないことだな』

「安心しろ、お前を舐めているわけではない。男のプライドというモノだ」

 司の言葉に、カラス天狗は片眉を上げた。
 シャランとしゃくじょうを鳴らし、黒い布で隠されているはずの目を向けた。

『そのプライドで死ぬということか。残念だったな』

「そっ――!?」

 ――――――――ヒュッ

 司が言い返そうとしたが、それより早くカラス天狗が動き出す。
 目にもとまらぬ速さで急降下きゅうこうか。司の目の前にはしゃくじょうの先が突き付けられた。

 ――――――――ガンッ!

 反射で刀を顔まで上げ、しゃくじょうをふせぐ。目の前には黒いマスクと黒い布、ギリギリとお互いの武器が押し合いになった。
 足に力を込め、両手で刀を掴み負けないように司はたえた。

『今でもまだおそくはない。後ろにおるおなごをよこせ』

「何度も言わせるな。僕はこいつをお前にあげないし、ここで死ぬ気もない!」

『そうか、残念だ』

 言うと、しゃくじょうの先端から急に、尖った刃が飛び出してきた。

「っ、ちっ!!」

「先輩!」

 司が顔を横にそらしたおかげで、頬をっただけで済む。
 少しでも反応が遅れていれば、確実に片目はつぶされていた攻撃だった。

 押し合いになれば不利なのは司。
 それを察し、距離を取るため片足をけり上げた。

 後ろへ跳び避けられたが、距離ははなれた。刀をにぎり直し、かまえる。
 カラス天狗は余裕な表情を変えずに、司を見下ろす。

「氷鬼先輩、頬のきず、深い…………」

「問題ないよ。こんな怪我、日常茶飯事にちじょうさはんじだし。それより、お前はもっと後ろに下がれ」

 ――――ぐいっ

 頬から流れる血を拭いながら、詩織を後ろへ下げさせた。

(っ、なんで、私は何も出来ないの。私も、役に立ちたいのに)

 詩織は周りを見回し、出来ることがないか探す。その間もカラス天狗は司にしゃくじょうを振りかざし続けた。
 ガキンッと、司も刀ではじいたりかわしたりと。お互い、一切引かない攻防を繰り広げていた。

『人間が、よくたえるな』

「うるせぇ」

 しゃくじょうを刀で強くはじいた時、一瞬カラス天狗がふらつく。
 そのすきを逃さないというように、振り上げた刀をカラス天狗めがけて下ろした。

 ――――――――タンッ

「ちょこまかと………」

 下ろした刀はなにも斬る事が出来ず、空振り。
 カラス天狗が後ろに跳び、シャランと音をたてて下がり、避けられた。

『ふむ、さすがに油断し過ぎたか。…………ん?』

「やぁぁぁああ!!!」

 カラス天狗の横から詩織が大きな石を振り上げ向ってきた。

「ばっ!?」

 司があせる中、カラス天狗は表情一つ変えずに簡単にひらりとかわす。
 詩織は「わわっ」とバランスをくずしてしまった。

「おい! 早くはなれろ!!」

 必死な顔で司は叫ぶ。だが、叫んだところで詩織の体勢たいせいが整う訳もなく、石をゴトンと落とし、膝をついてしまった。

「いてて……あ」

『飛んで火にいる夏の虫、こっちとしては助かった。これ以上、時間をかけなくてよさそうだ』

 上から伸びるカラス天狗の手、すぐに動くことが出来ず顔をつかまれそうになった。

 ――――――――シュッ

『っ、おっと』

「!? え、刀?」

 詩織の目の前を刀が横切る。
 司の方を向くと、刀を投げた体勢たいせいで詩織を見ていた。

「早く立て!! 逃げろ!!」

 司の言葉にすぐさま立ち上がり、詩織は走る。
 カラス天狗からはなれ、司の近くまで行くと腕をつかまれ、引き寄せられる。

「無茶をするな」

「ごめんなさい。少しでも役に立ちたくて……」

「お前は特に考えなくていい。このまま僕に守られていろ」

 司は詩織の頭をなで、真っすぐ見つめる。
 その目には決意が込められており、詩織は何も言えなくなった。

『そう言っていられるのも、今のうちだ』

「っ、けつ!!」

 向かって来ていたカラス天狗のしゃくじょうを結界でふせぐ。

 ――――ガンッ

「一回、なぐられただけなのに、結界にヒビが入った……」

 咄嗟とっさに張ったとはいえ、司の結界は決して弱くない。
 中級のあやかしなら触れただけではじかれる。
 そんな結界が、カラス天狗の一撃いちげきでひびが入ってしまった。

『ぬしは武器を失った。丸腰の奴に負けてやるほど、我は甘くはない』

「だろうな。だが、僕だって、負けるわけにはいかねぇんだよ!!」

 右手の中指と人差し指を立て、指先に集中する。すると、ヒビの入った結界が修復しゅうふくされた。

『ほう、まさかな』

「絶対に負けねぇ。絶対に、お前を倒してやるんだよ!!」

『―――――っ!? まさか』

 司が叫んだ瞬間、カラス天狗の上に突如、大きな氷の塊が降り注いだ。
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