111 / 130
ベルゼ
「必ずまた三人で遊ぶの」
しおりを挟む
真陽留が地面を蹴り、走り出す。一歩でベルゼの目の前まで移動し、拳を振り上げる。瞬きした一瞬で目の前に現れた真陽留に驚き、ベルゼは目を開くがすぐさま受け止めるべく両手を胸元辺りに持って行く。だが、直感的に駄目だとわかり住んでのところで横に避けた。
人間ではありえないほどの威力が真陽留から放たれ、風が起き、土埃が舞う。近くにいたベルゼも風で飛ばされ、壁に背中をぶつける。勢いが強く、壁が崩れへこんでしまった。
「貴様、まさか──」
「そのまさかだ。僕は、ファルシーと仮契約をした」
真陽留は言いながらも殴り続け、ベルゼに攻撃を仕掛ける。拳が当たる直前、ベルゼは翼を広げ苦衷に回避。それでも風圧で体が流れ、次の行動に移れない。
「ぐっ!! …………ほう、なかなかやるな。なら、我も少々本気を出そう」
ベルゼは空中を飛び回り風圧を溶け、大鎌を作り出し握った。
「下克上など、させんぞ魔蛭!!」
今度はベルゼが大鎌を構え真陽留へと突っ込み攻撃を仕掛けた。
真陽留も来るのがわかっていたため、それを避けカウンターを仕掛けようとする。お互い譲らない攻防を繰り広げた。
☆
明人はカクリを受け取り、顔色を確認していた。
傷口にも手を当て状態を見ているが、険しい顔を浮かべるのみ。悲し気に眉を下げ、口を閉ざし続ける。
血は止まっているため出血多量にはなっていないが、それでも服に付着している血の量などを見ても、どれだけ酷い事をされたかは想像出来る。
いつも白いはずのシャツが赤く染まり、胸元には大きく穴があいている。人間なら死んでいる状態だ。
明人は下唇を噛み締め、震えるほど拳を握っている。その手を音禰が優しく包み込み、カクリを見下ろした。
「可哀想。こんなに小さいのに……」
カクリの様子に、彼女は涙を浮かべる。
「おい、残り一回、こいつに使えねぇのか」
「分からない。ここまで酷い傷を治せるかどうか……。相想のでも精一杯だったの。約束は出来ないわ」
音禰は渋い顔を浮かべ彼の質問に答えた。その返答に、明人は少し考える素振りを見せたが、直ぐに口を開く。
「それでも構わない。こいつを治せ」
「なら、貴方の右腕を治した方が確実なんじゃ──」
「いいからさっさと治せ──頼む音禰」
相変わらずの命令口調だが、その中には不安や心配、怒りなどの感情が込められており、音禰はこれ以上口を開く事が出来ず、小さく頷いた。
「時間がかかるわ」
「時間稼ぎならあいつがやる。俺もな──」
「──えっ。ちょっと!!」
カクリを音禰に無理やり渡し、明人はその場から立ち上がりベルゼと真陽留の所に行こうとする。
「ま、待って!! 貴方も怪我をしているのよ!? 骨が折れているの。今は少しでも休んだ方がいいわ。体力だって限界だったじゃない!!!」
明人を必死に呼び止め、音禰は彼の怪我をしていない方の手を掴む。
「それじゃお前は、真陽留に全てを任せるつもりか? 俺達三人でも危なかった相手だぞ。それをあいつ一人にさせる気か?」
「そ、それは……。でも、相想は怪我を──」
「うるせぇよ」
彼は振り向かず、低く重たい声で言った。怒っているのか分からないその声に、音禰は息を飲み言葉を途中で止めてしまう。
「これは俺達がやらなきゃならねぇ。怪我をしているからという甘えは通用しない。そんなの、お前だってわかるだろ。甘えんな。お前も、次は助からねぇかもしれねぇんだぞ」
肩越しに明人は、彼女を見下ろす。
「わかったなら、さっさと離せ」
また前を向き、彼は歩き出そうとした。だが、音禰が手を離さなかったためそれは叶わない。
手を離さない彼女にイラつき始め、明人は舌打ちをし勢いよく振り向いた。
「いい加減にしろ。どうしても嫌なのなら、ここから出て行け。弱い奴はただ死を待つだけだ。甘えるぐらいなら、とっとと消えろ」
怒鳴りつけたのだが、それでも音禰は手を離さず、逆にギュッと握る力を強めた。
「おい──」
「約束して」
「あ?」
また離すように口にしようとした時、それを遮り音禰が訴えるように彼を見上げた。
「約束して。必ず、また三人で会うの。三人で遊ぶの。失った時間に戻る事は出来ないし、取り戻す事も出来ない。でも、補う事は出来ると思うの。だから、必ずまた三人で遊ぶの。それを、約束して──」
音禰は真っ直ぐと彼を見る。その目に迷いはなく、ただ明人を信じている──そのような目をしていた。
目を合わせた彼は舌打ちをした後、ゆっくりと。目線を逸らしながら小さく頷いた。
それを確認した音禰はするりと手を離した。目に涙を浮かべながらも笑みを作り、一言だけ伝える。
「お願いします」
「お願いされました」
面倒くさそうな表情を浮かべる明人だったが、その耳はほんのり赤くなっていた──
人間ではありえないほどの威力が真陽留から放たれ、風が起き、土埃が舞う。近くにいたベルゼも風で飛ばされ、壁に背中をぶつける。勢いが強く、壁が崩れへこんでしまった。
「貴様、まさか──」
「そのまさかだ。僕は、ファルシーと仮契約をした」
真陽留は言いながらも殴り続け、ベルゼに攻撃を仕掛ける。拳が当たる直前、ベルゼは翼を広げ苦衷に回避。それでも風圧で体が流れ、次の行動に移れない。
「ぐっ!! …………ほう、なかなかやるな。なら、我も少々本気を出そう」
ベルゼは空中を飛び回り風圧を溶け、大鎌を作り出し握った。
「下克上など、させんぞ魔蛭!!」
今度はベルゼが大鎌を構え真陽留へと突っ込み攻撃を仕掛けた。
真陽留も来るのがわかっていたため、それを避けカウンターを仕掛けようとする。お互い譲らない攻防を繰り広げた。
☆
明人はカクリを受け取り、顔色を確認していた。
傷口にも手を当て状態を見ているが、険しい顔を浮かべるのみ。悲し気に眉を下げ、口を閉ざし続ける。
血は止まっているため出血多量にはなっていないが、それでも服に付着している血の量などを見ても、どれだけ酷い事をされたかは想像出来る。
いつも白いはずのシャツが赤く染まり、胸元には大きく穴があいている。人間なら死んでいる状態だ。
明人は下唇を噛み締め、震えるほど拳を握っている。その手を音禰が優しく包み込み、カクリを見下ろした。
「可哀想。こんなに小さいのに……」
カクリの様子に、彼女は涙を浮かべる。
「おい、残り一回、こいつに使えねぇのか」
「分からない。ここまで酷い傷を治せるかどうか……。相想のでも精一杯だったの。約束は出来ないわ」
音禰は渋い顔を浮かべ彼の質問に答えた。その返答に、明人は少し考える素振りを見せたが、直ぐに口を開く。
「それでも構わない。こいつを治せ」
「なら、貴方の右腕を治した方が確実なんじゃ──」
「いいからさっさと治せ──頼む音禰」
相変わらずの命令口調だが、その中には不安や心配、怒りなどの感情が込められており、音禰はこれ以上口を開く事が出来ず、小さく頷いた。
「時間がかかるわ」
「時間稼ぎならあいつがやる。俺もな──」
「──えっ。ちょっと!!」
カクリを音禰に無理やり渡し、明人はその場から立ち上がりベルゼと真陽留の所に行こうとする。
「ま、待って!! 貴方も怪我をしているのよ!? 骨が折れているの。今は少しでも休んだ方がいいわ。体力だって限界だったじゃない!!!」
明人を必死に呼び止め、音禰は彼の怪我をしていない方の手を掴む。
「それじゃお前は、真陽留に全てを任せるつもりか? 俺達三人でも危なかった相手だぞ。それをあいつ一人にさせる気か?」
「そ、それは……。でも、相想は怪我を──」
「うるせぇよ」
彼は振り向かず、低く重たい声で言った。怒っているのか分からないその声に、音禰は息を飲み言葉を途中で止めてしまう。
「これは俺達がやらなきゃならねぇ。怪我をしているからという甘えは通用しない。そんなの、お前だってわかるだろ。甘えんな。お前も、次は助からねぇかもしれねぇんだぞ」
肩越しに明人は、彼女を見下ろす。
「わかったなら、さっさと離せ」
また前を向き、彼は歩き出そうとした。だが、音禰が手を離さなかったためそれは叶わない。
手を離さない彼女にイラつき始め、明人は舌打ちをし勢いよく振り向いた。
「いい加減にしろ。どうしても嫌なのなら、ここから出て行け。弱い奴はただ死を待つだけだ。甘えるぐらいなら、とっとと消えろ」
怒鳴りつけたのだが、それでも音禰は手を離さず、逆にギュッと握る力を強めた。
「おい──」
「約束して」
「あ?」
また離すように口にしようとした時、それを遮り音禰が訴えるように彼を見上げた。
「約束して。必ず、また三人で会うの。三人で遊ぶの。失った時間に戻る事は出来ないし、取り戻す事も出来ない。でも、補う事は出来ると思うの。だから、必ずまた三人で遊ぶの。それを、約束して──」
音禰は真っ直ぐと彼を見る。その目に迷いはなく、ただ明人を信じている──そのような目をしていた。
目を合わせた彼は舌打ちをした後、ゆっくりと。目線を逸らしながら小さく頷いた。
それを確認した音禰はするりと手を離した。目に涙を浮かべながらも笑みを作り、一言だけ伝える。
「お願いします」
「お願いされました」
面倒くさそうな表情を浮かべる明人だったが、その耳はほんのり赤くなっていた──
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~
秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。
五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。
都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。
見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――!
久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――?
謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。
※カクヨムにも先行で投稿しています
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる