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あやかし家族と祓い屋長女
第8話 熱意
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目を合わせてはくれない。
それでも、おどおどしながらも、まず昨日の羅刹さんについて、羅刹さん自身が教えてくれた。
「もうわかっておると思うが、我は夜と朝ではまるっきり人格が異なるのだ」
「はい」
「その理由が、あやかしの力の増減だ」
あやかしの力の増減、か。
予想通りだな。
「夜だとあやかしの血が熱くなり、力が増幅する。それに伴い、見た目や性格がガラッと変わるのだ」
「な、なるほど。そのようなことは聞いたことがないので、少々驚きました」
「…………その割には、あまり顔に出ていないな」
「これはまた別の意味がございますので、お気になさらず」
「はぁ……」
口で言ったことに嘘はない。
あやかしの特殊体質というものだろうか。
けれど、今はそれより他のことが気になって仕方がないのだ。
気になるというか、気を引き締めないと口元が緩む。
だから、出来る限り表情筋を動かさないようにしている。
何とかごまかし、話を進め、早く筋トレで精神統一する。
私の表情筋、頑張れ。
「……その、裏の羅刹さんと表の羅刹さんは、別人と考えた方がよろしいのでしょうか?」
「まぁ、そうだな。別人と考えてかまわん」
なるほど。羅刹さんについてはなんとなく理解できたかも。
まだまだ、完全に理解するのは難しいけど、そこは仕方がない。
私は今、羅刹さんに会ったばかりだしね。
「他に何か質問はあるか?」
「は、はい。質問と言えば質問なんですが……」
一応、これからの私の人生がかかっているわけだし、これだけは確認しておかないと。
視線を正し、羅刹さんを見る。
「あの、私が縁談相手の祓い屋、高浜水喜です。あの、婚約、して頂けますか?」
聞くけれど、羅刹さんは何も言わない。
目線を下げ、気まずそうにゆっくりと口を開いた。
「その話だが、やはり……」
…………やっぱりか、まぁ、そうだろうね。
でも、それならなんで縁談の話を持ち掛けてきたのだろうか。
しかも、私に。
んー、どうしよう。
ここですぐに、身を引けばなんとなく怪しまれてしまうかもしれない。
侵入することが目的と思われても仕方がない。
演技でも、一度だけお願いしてみよう。
なんか、必死な感じを出せば、許してくれるかな。
それでも本当に駄目だったら、野宿しよう。
「あ、あの!」
「っ、な、なんだ?」
「無理を承知でお願いします。掃除でもなんでも行いますので、ここに住まわせていただけませんか。お願いします!」
頭を下げ、畳に額を付け、お願いする。
いわゆる土下座だ。
まさか、高浜家の人間が祓うべき相手であるあやかしに頭を下げる時が来るなんて、誰が思うのだろうか。
正直、ここまでしなくてもいいとは、思う。
けれど、途中で思ったのだ。
野宿も出来るけれど、ここで住むことが出来れば、私は毎日イケメンと美人に囲まれながら生きていけると。
ものすごく贅沢なのだけれど、一度思いついては諦めきれない。
だって、こんなイケメンで美しい羅刹さんが旦那やぞ? 願ってもいいだろう。
ものすごい迷惑をかける気はないから、この一回で駄目なら諦めるけど。
「ま、待たれよ。何か勘違いしていないか?」
「か、勘違い、ですか?」
少しだけ頭を上げると、困ったように羅刹さんが頭を抱えていた。
隣に座っている百々目鬼さんも頭を抱え咳払いをし、私の頭を上げさせた。
「ひとまず、話を最後まで聞いてはいただけませんか?」
「わ、わかりました」
百々目鬼さん、なにか困ってる?
な、何だろう、羅刹さんは、何を言いたかったんだろう?
頭を抱えている羅刹さんを見て、次の言葉を待っていると、やっと目が合った。
「あ、す、すまない」
「え、い、いえ…………」
目が合っただけで、謝られた?
可愛すぎるからやめてください。頭を撫でたくなります。
「はぁぁぁぁぁあ……。羅刹様、早く話の続きを」
「す、すまない……」
あ、怒られてしまった。
本当に、仲がいいんだ。素敵な関係性だなぁ~。
「さっき、言いたかったことは縁談の断りだったのだが」
そう、だよね? だから私は、イケメンを毎日拝められるように頭を下げたのだから。
勘違いはしていないはず?
「その理由が、我にはもったいないほど美しい女性だからだ」
「……へ?」
な、何を言っているの?
美しい女性? 私が? 我にはもったいない? 日本三大妖怪である鬼が?
ど、どういうこと?
り、理解が出来ない。頭が状況に追いつかない。
私が困惑していると、百々目鬼さんがもう我慢できないというように頭を抱え、顔を上げた。
「少々、羅刹様本人について説明を追加させていただいてもよろしいでしょうか」
「は、はい」
百々目鬼さんと目が合う。
自然に背筋が伸びてしまう、視線が鋭くて。
「羅刹様は、夜になれば誰にも負けない最強の力を手にします。ですが、今は人間より弱いのです」
「……はぃ?」
お、鬼が?
い、いや、まさか。人間より弱いことはあり得ない。
確かに、メンタルは弱いみたいだけれど……。
「言葉が足りませんでしたね。力だけなら、人間よりは強いですよ。名前が知れ渡っているあやかしよりは弱いですが」
「は、はぁ」
「それなのに!!!!」
っ、い、一気に声が大きくなった!?
「この弱気!! 自分に自信がなさすぎるのです!!」
ギロッと隣にいる羅刹さんを睨み、百々目鬼さんが言う。
あ、あの。ビクッと怯えていますよ、羅刹さんが。大丈夫かな。
「本当に、困ったものです。羅刹様は、本当に、本当に…………」
「あ、あの、百々目鬼さん?」
膝の上に置いている拳が震えていますが、これ、大丈夫?
どうしたんでしょうか、百々目鬼さん。
「羅刹様は、見た目はもちろん、綺麗でかっこよくて麗しい方。それだけでなく努力家で、危険なことは自分が背負ってしまう責任感の強さも持っています。仕事も誰よりも早く、鍛練までしており、優しく我々を支えてくれる!! 我々側近は何もやることがない位にすごいお方なのです!!!」
・・・・・・・・ほぉ。
「それなのに!! なぜ貴方はそんなに自信が持てないのですか!! 我らは貴方をここまで好いているというのに!」
「い、いや、それは本当にありがたいと思っているぞ。それに、頼りにしている。だが、弱いのは事実だからなぁ……」
「もぉぉぉおおおおおお!!!」
…………今も言い合っている羅刹さんと百々目鬼さん。
百々目鬼さんの熱意、恐ろしい。
それでも、おどおどしながらも、まず昨日の羅刹さんについて、羅刹さん自身が教えてくれた。
「もうわかっておると思うが、我は夜と朝ではまるっきり人格が異なるのだ」
「はい」
「その理由が、あやかしの力の増減だ」
あやかしの力の増減、か。
予想通りだな。
「夜だとあやかしの血が熱くなり、力が増幅する。それに伴い、見た目や性格がガラッと変わるのだ」
「な、なるほど。そのようなことは聞いたことがないので、少々驚きました」
「…………その割には、あまり顔に出ていないな」
「これはまた別の意味がございますので、お気になさらず」
「はぁ……」
口で言ったことに嘘はない。
あやかしの特殊体質というものだろうか。
けれど、今はそれより他のことが気になって仕方がないのだ。
気になるというか、気を引き締めないと口元が緩む。
だから、出来る限り表情筋を動かさないようにしている。
何とかごまかし、話を進め、早く筋トレで精神統一する。
私の表情筋、頑張れ。
「……その、裏の羅刹さんと表の羅刹さんは、別人と考えた方がよろしいのでしょうか?」
「まぁ、そうだな。別人と考えてかまわん」
なるほど。羅刹さんについてはなんとなく理解できたかも。
まだまだ、完全に理解するのは難しいけど、そこは仕方がない。
私は今、羅刹さんに会ったばかりだしね。
「他に何か質問はあるか?」
「は、はい。質問と言えば質問なんですが……」
一応、これからの私の人生がかかっているわけだし、これだけは確認しておかないと。
視線を正し、羅刹さんを見る。
「あの、私が縁談相手の祓い屋、高浜水喜です。あの、婚約、して頂けますか?」
聞くけれど、羅刹さんは何も言わない。
目線を下げ、気まずそうにゆっくりと口を開いた。
「その話だが、やはり……」
…………やっぱりか、まぁ、そうだろうね。
でも、それならなんで縁談の話を持ち掛けてきたのだろうか。
しかも、私に。
んー、どうしよう。
ここですぐに、身を引けばなんとなく怪しまれてしまうかもしれない。
侵入することが目的と思われても仕方がない。
演技でも、一度だけお願いしてみよう。
なんか、必死な感じを出せば、許してくれるかな。
それでも本当に駄目だったら、野宿しよう。
「あ、あの!」
「っ、な、なんだ?」
「無理を承知でお願いします。掃除でもなんでも行いますので、ここに住まわせていただけませんか。お願いします!」
頭を下げ、畳に額を付け、お願いする。
いわゆる土下座だ。
まさか、高浜家の人間が祓うべき相手であるあやかしに頭を下げる時が来るなんて、誰が思うのだろうか。
正直、ここまでしなくてもいいとは、思う。
けれど、途中で思ったのだ。
野宿も出来るけれど、ここで住むことが出来れば、私は毎日イケメンと美人に囲まれながら生きていけると。
ものすごく贅沢なのだけれど、一度思いついては諦めきれない。
だって、こんなイケメンで美しい羅刹さんが旦那やぞ? 願ってもいいだろう。
ものすごい迷惑をかける気はないから、この一回で駄目なら諦めるけど。
「ま、待たれよ。何か勘違いしていないか?」
「か、勘違い、ですか?」
少しだけ頭を上げると、困ったように羅刹さんが頭を抱えていた。
隣に座っている百々目鬼さんも頭を抱え咳払いをし、私の頭を上げさせた。
「ひとまず、話を最後まで聞いてはいただけませんか?」
「わ、わかりました」
百々目鬼さん、なにか困ってる?
な、何だろう、羅刹さんは、何を言いたかったんだろう?
頭を抱えている羅刹さんを見て、次の言葉を待っていると、やっと目が合った。
「あ、す、すまない」
「え、い、いえ…………」
目が合っただけで、謝られた?
可愛すぎるからやめてください。頭を撫でたくなります。
「はぁぁぁぁぁあ……。羅刹様、早く話の続きを」
「す、すまない……」
あ、怒られてしまった。
本当に、仲がいいんだ。素敵な関係性だなぁ~。
「さっき、言いたかったことは縁談の断りだったのだが」
そう、だよね? だから私は、イケメンを毎日拝められるように頭を下げたのだから。
勘違いはしていないはず?
「その理由が、我にはもったいないほど美しい女性だからだ」
「……へ?」
な、何を言っているの?
美しい女性? 私が? 我にはもったいない? 日本三大妖怪である鬼が?
ど、どういうこと?
り、理解が出来ない。頭が状況に追いつかない。
私が困惑していると、百々目鬼さんがもう我慢できないというように頭を抱え、顔を上げた。
「少々、羅刹様本人について説明を追加させていただいてもよろしいでしょうか」
「は、はい」
百々目鬼さんと目が合う。
自然に背筋が伸びてしまう、視線が鋭くて。
「羅刹様は、夜になれば誰にも負けない最強の力を手にします。ですが、今は人間より弱いのです」
「……はぃ?」
お、鬼が?
い、いや、まさか。人間より弱いことはあり得ない。
確かに、メンタルは弱いみたいだけれど……。
「言葉が足りませんでしたね。力だけなら、人間よりは強いですよ。名前が知れ渡っているあやかしよりは弱いですが」
「は、はぁ」
「それなのに!!!!」
っ、い、一気に声が大きくなった!?
「この弱気!! 自分に自信がなさすぎるのです!!」
ギロッと隣にいる羅刹さんを睨み、百々目鬼さんが言う。
あ、あの。ビクッと怯えていますよ、羅刹さんが。大丈夫かな。
「本当に、困ったものです。羅刹様は、本当に、本当に…………」
「あ、あの、百々目鬼さん?」
膝の上に置いている拳が震えていますが、これ、大丈夫?
どうしたんでしょうか、百々目鬼さん。
「羅刹様は、見た目はもちろん、綺麗でかっこよくて麗しい方。それだけでなく努力家で、危険なことは自分が背負ってしまう責任感の強さも持っています。仕事も誰よりも早く、鍛練までしており、優しく我々を支えてくれる!! 我々側近は何もやることがない位にすごいお方なのです!!!」
・・・・・・・・ほぉ。
「それなのに!! なぜ貴方はそんなに自信が持てないのですか!! 我らは貴方をここまで好いているというのに!」
「い、いや、それは本当にありがたいと思っているぞ。それに、頼りにしている。だが、弱いのは事実だからなぁ……」
「もぉぉぉおおおおおお!!!」
…………今も言い合っている羅刹さんと百々目鬼さん。
百々目鬼さんの熱意、恐ろしい。
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