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犬宮探偵事務所の日常
「犬宮探偵事務所へようこそ」
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紅城神社の本堂はそのままに、鳥居に結界を張り怪異の住処として扱われていた。
基本は仕切りを魁に任せているが、時々黒田が様子を見に来ていた。
何か異変があれば呪異が黒田に伝えるという段取りもしっかりと伝えている。
そんな黒田は今、犬宮のいる探偵事務所のソファーで横になっていた。
顔に本を乗せ、お腹に手を置き寝息を立てている。
彼の近くに置かれているソファーには、薄い本を持って楽しんでいる心優とあやとりを楽しんでいる最古の姿。
窓側にある回転椅子に座っているのは、犬宮探偵事務所の創立社である犬宮賢。
黒田と同じく顔に本を乗せ、背もたれに寄りかかり眠っていた。
窓は微かに開いており、カーテンがユラユラと揺れている。
外からはクラクションの音や葉音など。
いつも耳にしていた音が聞こえ、心優は薄い本から顔を上げ窓側を見た。
窓からでも分かるほど今日は天気が良く、青空が広がっていた。
思わず笑みを浮かべ、心優は次に黒田の方へと視線を向けた。
黒田は紅城神社の件で深い傷を負っていたが、それはすぐに治った。
数日で治る怪我ではなかった為、心優は驚愕。
本当に治っているのか何度も確認したが、傷痕すら残っていない。
怪異という存在を今一度見せつけられたような気がした心優は、もう深く考えるようなことはせず、今まで通りの生活を送っていた。
――――あの事件から、もう一か月。
犬宮さんは最初、少し気持ちが落ち込んでいて、探偵社は一時的に閉めていた。
でも、一週間前からは開けて、依頼人を待っている。
御子柴さんと陰陽頭の老人は、おやじにすべてをぶん投げた。
なんか、船に乗せて来るとか、保険金とか、色々言っていたけど、深く聞かない。私には関係ないし。
巴ちゃんは今、一人暮らしをしている。
仕事が出来ないのは演技だったみたいで、普通――――いや、人一倍仕事が出来て、有名会社の社員としてバリバリ働いていた。
…………そう言えば、時々ここに来ては黒田さんがいるかどうか聞いてくるんだよなぁ。
黒田さんがいる時は、今まで変な勘違いをしてごめんとお菓子だの紅茶だのと。沢山の物を持ってきていた。
黒田さんは最初こそ素直に受け取っていたけど、それがさすがに二週間以上毎日となると疑問が浮上しているらしく、最近は黒田さん自身が巴ちゃんから逃げている。
そんな日々も、平和だなぁ~って思って、私は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど……はぁ……。
「犬宮さん、依頼人が来ないからと寝過ぎではないですか? 依頼人が来たらどうするんですか?」
窓側にいる犬宮に声をかけるが、返答はない。
ため息を吐き、立ち上がり窓側に移動。
犬宮の顔に耳を寄せ、本当に寝ているのか確認。
「…………はぁ、寝てやがる……」
寝息が聞こえたため、本当に寝ているのがわかった。
「まぁ、依頼人は来ないし、無理に起こさなくても――――」
そう思っていたら、廊下の方から足音が聞こえ始めた。
「っ、犬宮さん!! 依頼人です、起きてください!」
「ん~。あと五分……」
「子供のようなことを言わないでください! 貴方はもういい大人でしょう!!」
「俺はまだっ――――」
「はいはい、まだピチピチの二十九歳ですもんね!! おっさんとは言っていないので大丈夫です! それより、早く起きてください! 黒田さんも!!」
寝ている二人を叩き起こし、心優はドアまで来たであろう依頼人を出迎えた。
「こんにちは、犬宮探偵事務所へようこそ。では、あちらのソファーにどうぞ」
基本は仕切りを魁に任せているが、時々黒田が様子を見に来ていた。
何か異変があれば呪異が黒田に伝えるという段取りもしっかりと伝えている。
そんな黒田は今、犬宮のいる探偵事務所のソファーで横になっていた。
顔に本を乗せ、お腹に手を置き寝息を立てている。
彼の近くに置かれているソファーには、薄い本を持って楽しんでいる心優とあやとりを楽しんでいる最古の姿。
窓側にある回転椅子に座っているのは、犬宮探偵事務所の創立社である犬宮賢。
黒田と同じく顔に本を乗せ、背もたれに寄りかかり眠っていた。
窓は微かに開いており、カーテンがユラユラと揺れている。
外からはクラクションの音や葉音など。
いつも耳にしていた音が聞こえ、心優は薄い本から顔を上げ窓側を見た。
窓からでも分かるほど今日は天気が良く、青空が広がっていた。
思わず笑みを浮かべ、心優は次に黒田の方へと視線を向けた。
黒田は紅城神社の件で深い傷を負っていたが、それはすぐに治った。
数日で治る怪我ではなかった為、心優は驚愕。
本当に治っているのか何度も確認したが、傷痕すら残っていない。
怪異という存在を今一度見せつけられたような気がした心優は、もう深く考えるようなことはせず、今まで通りの生活を送っていた。
――――あの事件から、もう一か月。
犬宮さんは最初、少し気持ちが落ち込んでいて、探偵社は一時的に閉めていた。
でも、一週間前からは開けて、依頼人を待っている。
御子柴さんと陰陽頭の老人は、おやじにすべてをぶん投げた。
なんか、船に乗せて来るとか、保険金とか、色々言っていたけど、深く聞かない。私には関係ないし。
巴ちゃんは今、一人暮らしをしている。
仕事が出来ないのは演技だったみたいで、普通――――いや、人一倍仕事が出来て、有名会社の社員としてバリバリ働いていた。
…………そう言えば、時々ここに来ては黒田さんがいるかどうか聞いてくるんだよなぁ。
黒田さんがいる時は、今まで変な勘違いをしてごめんとお菓子だの紅茶だのと。沢山の物を持ってきていた。
黒田さんは最初こそ素直に受け取っていたけど、それがさすがに二週間以上毎日となると疑問が浮上しているらしく、最近は黒田さん自身が巴ちゃんから逃げている。
そんな日々も、平和だなぁ~って思って、私は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど……はぁ……。
「犬宮さん、依頼人が来ないからと寝過ぎではないですか? 依頼人が来たらどうするんですか?」
窓側にいる犬宮に声をかけるが、返答はない。
ため息を吐き、立ち上がり窓側に移動。
犬宮の顔に耳を寄せ、本当に寝ているのか確認。
「…………はぁ、寝てやがる……」
寝息が聞こえたため、本当に寝ているのがわかった。
「まぁ、依頼人は来ないし、無理に起こさなくても――――」
そう思っていたら、廊下の方から足音が聞こえ始めた。
「っ、犬宮さん!! 依頼人です、起きてください!」
「ん~。あと五分……」
「子供のようなことを言わないでください! 貴方はもういい大人でしょう!!」
「俺はまだっ――――」
「はいはい、まだピチピチの二十九歳ですもんね!! おっさんとは言っていないので大丈夫です! それより、早く起きてください! 黒田さんも!!」
寝ている二人を叩き起こし、心優はドアまで来たであろう依頼人を出迎えた。
「こんにちは、犬宮探偵事務所へようこそ。では、あちらのソファーにどうぞ」
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