嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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休日の遊び方

「ハッピーエンドが好きよ」

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 王都ジュレ、広場の英雄達の銅像前。
 王都のランドマークと名高いそこは、待ち合わせスポットとして有名であった。
 レイ、ブリリアント、マジョアンヌも例に漏れず、そこで待ち合わせをしていた。

「レイちゃーん! こっちよー!」

 ブリリアントは飛び跳ねながら手を振って、自分の場所を示した。
 それを見つけたレイは、彼女に駆け寄る。

「遅れてすみません! シャルル先生がなかなか起きなくてですね……」
「そんなことだろうと思った! リリ達もね、今来たところなの!」

 ブリリアントの隣にいたマジョアンヌは「ふふふ」と笑う。

「リリちゃん、メイクに時間がかかってましたのぉ」
「ごめんね! 外に出るんだもの、おめかししたくって!」
「いいえ。待ってる時間も楽しいですからぁ」

 「じゃ」とブリリアントはレイの手を掴んだ。

「劇場に行きましょうか!」
「え! 劇場!? パジャマパーティーするんですよね?」
「やあねえ。まだ日が高いじゃない! 今日はたっくさん遊ぶわよー!」

 ブリリアントはマジョアンヌの手も掴み、鼻歌を歌いながら歩き出した。

 □

 王都のとある劇場。
 レイは座り心地の良い椅子に座り、そわそわと膝を擦り合わせていた。

「レイちゃん、どうしたの? もじもじして」
「観劇なんて生まれて初めてで……」
「そうなの? じゃあ、存分に楽しんで貰わなくちゃね!」

 ブリリアントはニコニコと笑う。

「これは、どんな劇なんですか?」
「大魔法使いシャルルルカ様ととある町娘の恋物語!」
「大魔法使いシャルルルカ……」

 レイの師匠、シャルルルカと同じ名前の英雄。
 シャルルルカは「大魔法使いは私だ」と言い張っているが、実際のところはどうだかわからない。
 彼は息をするように嘘をつくのだ。

「実際の話がモデルになっているのよ。リリ、この話が大好きなの!」

 ブリリアントは物語のあらすじを語り出した。
 大魔法使いシャルルルカ率いる勇者パーティーは魔王討伐のための旅をしていた。
 その道中、彼らはとある町に立ち寄る。
 そこで、シャルルルカは町娘と出会い、恋に落ちる。
 彼女と逢瀬を重ね、ある日、シャルルルカは言った。

『魔王を討った暁には君に告白する』

 町娘はそれを承諾した。

『必ず生きて帰ってきて』

 そう約束を取り付けて。
 シャルルルカと仲間達は人類のため、魔王を討ちに魔王城へ向かうのだった……。

「この物語はね、脚本家によって結末が違うの」

 一つは、魔王を討った後、町娘の元にシャルルルカが戻ってくることはなく、彼女は今も彼を待ち続けている、という結末。
 もう一つは、魔王との戦いで大怪我を負ったシャルルルカだったが、町娘の献身的な愛で傷を癒し、結ばれてハッピーエンド、という結末。

「リリは勿論、後者のハッピーエンドが好きよ!」
「みんな幸せな結末が一番ですもんね。それで、どっちが事実なんですか?」
「それはご想像にお任せ……っていうのが良いのよ! 妄想が広がりまくるじゃない!」

 そのとき、フッと劇場の明かりが消えた。
 ブリリアントは舞台の方に目を向けた。

「……見て。そろそろ始まるわ」

 舞台の幕が上がる──。

 □

「いやあ、良い劇だったわね! リリの好きなハッピーエンドだったし!」

 ブリリアントは劇場を出て、興奮気味にそう言った。
 レイは初めての演劇を見て、高揚感から頬がポーッと赤くなっていた。
 役者の声の音圧。
 目まぐるしく変わる舞台装置。
 魔法を使った演出。
 全てに圧倒された。
 気付けば、幕が降りていた。

「レイちゃん、どうでしたかぁ? 初めての演劇はぁ」
「凄かったです……」

 それしか言えなかった。

「そうよね!?」

 ブリリアントは食い気味に言う。

「シャルルルカ様と町娘の掛け合いがもう最高! 大人の恋って感じで、キュンキュンしちゃった!」
「シャルルルカ様役の役者もとても良かったですなあ! シャルルルカ様の強さ、優しさ、美しさ。全てを兼ね備えていた!」

 同じ劇を鑑賞していたらしい男性が話に割って入ってくる。

「わかってるじゃない!」

 それに気付かず、ブリリアントは相槌を打った。
 その男性の顔を見たブリリアント達は驚いて飛び退いた。

「……って、ピエーロ先生!? 何故ここに!?」
「おや、D組のレディ達……君達も観劇に来ていたのですな」

 C組の担任教師、ピエーロ・ボンボン。
 彼の手には、シャルルルカの肖像画が彫られたメダルが縫い付けられたバッグ──所謂、『痛いバッグ』が提げられていた。

「我が輩は観劇が趣味でしてな。特にシャルルルカ様をモデルにしたものは何度も観に足を運ぶのですよ」
「へえ……。ピエーロ先生って、本当に大魔法使いシャルルルカのこと大好きなんですね」
「『大好き』などという言葉では片付けられない! 我が輩はシャルルルカ様を敬拝……否! 『崇拝』しておるのだ!」
「まあ、そのバッグを見たら大体わかりますけど……」

 レイはピエーロの手に提げられた痛いバッグを見て言う。

「いいや、わかっておらん!」

 ピエーロは唾を撒き散らしながら叫んだ。

「シャルルルカ様は鬼神のように勇ましく、天女のように心優しい……! 一目見たら誰もが心を奪われ、崇め奉ることとなるだろう!」
「ってことは、ピエーロ先生は大魔法使いシャルルルカを見たことが?」
「見ただけではないぞ? 会って話して、なんと! 手を握ったこともあるのだ!」
「手も!?」

 女子三人は驚愕する。

「あれは草木が芽吹く季節のことだった。絶望の底で、我が輩は後の英雄となるシャルルルカ様と出会ったのだ……」
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