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二人で生活を始めまして。
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朝早くから仕事に行き、夜遅く帰ってくる俺のために綾人は毎朝起こしてくれた。
朝食を用意し、お弁当も作ってくれる。
夜は何時に帰るかわからない俺のためにご飯を用意し待っていた。
なんのために綾人がここまでしてくれるのか俺には理解できない。
この家に住むための家賃代わりなのかと思っていた。
同居して一週間が経った頃には俺は完全に綾人を信頼するようになっていたのである。
「今度の土曜日空いてるか?」
深夜、帰ってきた俺が綾人の作った麻婆豆腐を食べながら問いかけると、洗濯物を畳んでいる綾人が停止した。
鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべて、言葉を失っている。
「おい、聞いてるか、綾人」
「は、はい。聞いてます。それってデートってことですか?」
戸惑いながら聞き返す綾人。
俺は呆れながら答えた。
「ばぁか。いつも料理作ってくれてるからな。お礼ってことでご飯でもどうかと思ってな」
「行きたいです!」
「じゃあ、予定に入れといてくれ」
そう言いながら俺は少し照れてしまう。
何故、照れているのかは分からない。ただ、男同士で食事にいくだけの話だ。
もしかしたら顔が赤くなっているかもしれないと思い、俺は言い訳を言葉にする。
「あー、辛い」
「そうですかね?」
そう言いながら綾人は俺に笑顔を見せた。
そして土曜日。
俺はいつもよりも遅く起きて、綾人に挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、和馬さん」
いつも通り綾人は朝食を用意していた。
俺は綾人の隣に座り、朝食のパンを手に取る。
それを口に入れようとした瞬間、俺のスマホが鳴った。
画面には見たくない文字が表示されている。
「うわ、会社からだ。ちょっと出てくるわ」
そう言いながらスマホを手に取り、立ち上がってからスマホの画面に触れ応答した。
「はい、伊達です」
電話の向こうでは焦った上司が早口で内容を話している。
「休みのところすまないんだが、出社してくれないか。うちの保険に入っている会社が大きな事故を起こしてね。早急に対応しなければならないんだ。現場確認と損害額の計算、とにかくやることはいくらでもある」
そう言われた俺は振り返って綾人の顔を見た。
すると状況を察したのか、綾人は少し残念そうな表情で頷く。
仕方ないか。仕事だしな。
そう思いながら俺は電話の向こうにいる上司に返事をした。
「あ、はい。分かりました。準備したらすぐに出社します。後で内容確認したいので折り返します・・・・・・はい・・・・・・そうです・・・・・・はい・・・・・・はい、失礼します」
電話を切った俺は綾人に話しかける。
「約束してたのに申し訳ないんだが、仕事が入ってしまった。食事はまた今度でもいいか?」
「はい、仕事なら仕方ないです。休みなのに大変ですね。無理せず頑張ってください」
そう答える綾人は笑顔を見せてはいるが、どこか残念そうだった。
例えるならば、遊んでもらえなくてしょんぼりしている犬のようである。
そんな綾人に見送られて俺は仕事に向かった。
突然の仕事。
保険会社に勤めている以上、急な対応は仕方がないことだ。
過去にも同じような対応を何度かこなしてきたのだが、何故か今日は集中できない。
頭の中に綾人の残念そうな表情がちらつき、胸の奥に小さなトゲが刺さっているようだった。
心の中で薔薇が蕾をつけ、トゲトゲの茎が巻きついているような感覚。
そんな状況でもなんとか仕事をこなし、帰宅できるようになったのは深夜二時だった。
「疲れた。さすがに疲れた。酒でも飲んで寝よう」
いつもの道を歩いていた俺はそう思いつき、コンビニに向かう。
コンビニは帰り道にはなく、少し離れた場所にあった。
朝食を用意し、お弁当も作ってくれる。
夜は何時に帰るかわからない俺のためにご飯を用意し待っていた。
なんのために綾人がここまでしてくれるのか俺には理解できない。
この家に住むための家賃代わりなのかと思っていた。
同居して一週間が経った頃には俺は完全に綾人を信頼するようになっていたのである。
「今度の土曜日空いてるか?」
深夜、帰ってきた俺が綾人の作った麻婆豆腐を食べながら問いかけると、洗濯物を畳んでいる綾人が停止した。
鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべて、言葉を失っている。
「おい、聞いてるか、綾人」
「は、はい。聞いてます。それってデートってことですか?」
戸惑いながら聞き返す綾人。
俺は呆れながら答えた。
「ばぁか。いつも料理作ってくれてるからな。お礼ってことでご飯でもどうかと思ってな」
「行きたいです!」
「じゃあ、予定に入れといてくれ」
そう言いながら俺は少し照れてしまう。
何故、照れているのかは分からない。ただ、男同士で食事にいくだけの話だ。
もしかしたら顔が赤くなっているかもしれないと思い、俺は言い訳を言葉にする。
「あー、辛い」
「そうですかね?」
そう言いながら綾人は俺に笑顔を見せた。
そして土曜日。
俺はいつもよりも遅く起きて、綾人に挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、和馬さん」
いつも通り綾人は朝食を用意していた。
俺は綾人の隣に座り、朝食のパンを手に取る。
それを口に入れようとした瞬間、俺のスマホが鳴った。
画面には見たくない文字が表示されている。
「うわ、会社からだ。ちょっと出てくるわ」
そう言いながらスマホを手に取り、立ち上がってからスマホの画面に触れ応答した。
「はい、伊達です」
電話の向こうでは焦った上司が早口で内容を話している。
「休みのところすまないんだが、出社してくれないか。うちの保険に入っている会社が大きな事故を起こしてね。早急に対応しなければならないんだ。現場確認と損害額の計算、とにかくやることはいくらでもある」
そう言われた俺は振り返って綾人の顔を見た。
すると状況を察したのか、綾人は少し残念そうな表情で頷く。
仕方ないか。仕事だしな。
そう思いながら俺は電話の向こうにいる上司に返事をした。
「あ、はい。分かりました。準備したらすぐに出社します。後で内容確認したいので折り返します・・・・・・はい・・・・・・そうです・・・・・・はい・・・・・・はい、失礼します」
電話を切った俺は綾人に話しかける。
「約束してたのに申し訳ないんだが、仕事が入ってしまった。食事はまた今度でもいいか?」
「はい、仕事なら仕方ないです。休みなのに大変ですね。無理せず頑張ってください」
そう答える綾人は笑顔を見せてはいるが、どこか残念そうだった。
例えるならば、遊んでもらえなくてしょんぼりしている犬のようである。
そんな綾人に見送られて俺は仕事に向かった。
突然の仕事。
保険会社に勤めている以上、急な対応は仕方がないことだ。
過去にも同じような対応を何度かこなしてきたのだが、何故か今日は集中できない。
頭の中に綾人の残念そうな表情がちらつき、胸の奥に小さなトゲが刺さっているようだった。
心の中で薔薇が蕾をつけ、トゲトゲの茎が巻きついているような感覚。
そんな状況でもなんとか仕事をこなし、帰宅できるようになったのは深夜二時だった。
「疲れた。さすがに疲れた。酒でも飲んで寝よう」
いつもの道を歩いていた俺はそう思いつき、コンビニに向かう。
コンビニは帰り道にはなく、少し離れた場所にあった。
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