年下のイケメンを拾いまして。

澤檸檬

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自分の気持ちに気づきまして。

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 そこはいわゆる飲み屋街で居酒屋、バー、キャバクラやホストクラブなどが立ち並んでいる。普段は行かない場所だ。
 コンビニに立ち寄った俺は缶ビールを買って、外に出る。
 見慣れない飲み屋街の明かりをなんとなく眺めた。
 疲れた目に光が染みる。
 すると、視界の端に見慣れた顔が入ってきた。
 綾人だ。
 少し離れた場所で綾人が満面の笑みで女性と抱き合っている。

「綾人・・・・・・」

 思わず呟きながら俺は缶ビールの入ったレジ袋を落としてしまった。
 その瞬間に音に反応した綾人と目が合ってしまう。
 何故だろうか、心に巻きついた薔薇が強く締め付けてきた。
 胸を押さえながら俺は振り返り家に向かって走る。

「和馬さん!」

 背後から綾人の声が聞こえたが、俺は真っ直ぐ走った。
 なんで俺は逃げたんだろう。
 どうして胸が痛むのだろう。
 この気持ちは何なんだろう。
 頭の中に溢れかえる疑問を受け流しながら進み、気づけば綾人と出会った自動販売機の前に立っていた。

「何だよ、あの笑顔・・・・・・」

 自分が綾人にとって特別な存在なんだと思っていたのだと気づく。
 そしてそれを恥ずかしく思った。
 大きな勘違いだったのだ。
 綾人にとって俺はただの家主。
 住居を提供するだけの男だったのだ。

「ただの同居人か・・・・・・」

 思わず呟く。
 もちろん返事などあるはずがない。
 しかし、思わぬ返事が返ってきた。

「そんなわけないじゃないですか!」

 声に驚き振り返る。
 そこには息を荒げた綾人が立っていた。

「綾人・・・・・・」
「ただの同居人なわけないじゃないですか!」

 そう言いながら綾人は俺の肩を掴む。
 俺は綾人の手を振り切ろうと体を揺らした。

「離せっ!」
「離しませんよ」

 真剣な眼差しで綾人は俺の目を見る。
 その視線が俺の心を乱すんだ。
 そんな目で見るな。
 そう思いながら俺は問いかける。

「お前にとって俺は何なんだ。同居人じゃなきゃ何なんだよ」
「好きな人ですよ!」

 綾人は言い放った。
 好きな人。その言葉が頭の中でこだまし、心を波立たせる。
 好きって何だ。
 何を言っているんだ。
 動揺しながら俺は言い返す。

「お、男同士だろうが!」
「好きに性別なんて関係ないでしょう」
「いや、それは・・・・・・だ、だとしても、俺とお前は偶然出会って仕方ないから一緒に住んでるだけだろっ」

 俺がそう話すと、綾人はため息をついた。

「はぁ・・・・・・馬鹿なんですか?」
「何だと?」
「いいですか?男が男に拾ってくださいなんて言うわけないでしょう」

 お前がそれを言うのか。
 意味がわからない。
 混乱しながら俺は言葉を返す。

「言ったんだろうが」
「それに、毎日料理作ったりしますか?」
「してただろうが」
「それは好きだからですよ」

 恥ずかしげもなく綾人はそう言った。

「何言ってんだよ。偶然じゃなきゃ何なんだ」
 
 俺が問いかけると綾人は呼吸を整えてから答える。

「毎日、夜遅くにここを通る和馬さんを見ていました」
「は?」

 半ばパニックになりながら俺は何とかそう返した。
 綾人はそのまま話を続ける。

「多分、一目惚れだったんです。疲れた顔で必死に歩いている和馬さんを見ていると不思議な気持ちになったんです」
「何だよ、それ・・・・・・」
「わかりませんよ。心があったかくなって、この人を笑顔にしてみたいと思ったんです。だから僕はここで和馬さんを待ち伏せて声をかけました。無理やりにでも一緒に入れるように」

 驚愕の事実を突きつけられた。
 しかし、どうしてなのだろう。嫌な気持ちはしなかった。
 それどころか自分の顔は熱くなっているのを感じる。

「初めから俺に声をかけていた・・・・・・?」
「そうですよ。最初から告白するよりも僕のことを知ってもらおうと思って」

 確かにこの数日間で綾人のことを知った。
 子犬のような笑顔も、妖艶な笑顔も、心のこもった料理も、全て俺の心に残っている。
 そして俺の気持ちも確実に綾人に近づいていた。
 だからこそ、綾人が他の人に笑顔を向けていたのがショックだったのである。
 気づいてしまった、自分の気持ち。
 先ほどの感情に名前がついてしまったのだ。
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