3 / 4
自分の気持ちに気づきまして。
しおりを挟む
そこはいわゆる飲み屋街で居酒屋、バー、キャバクラやホストクラブなどが立ち並んでいる。普段は行かない場所だ。
コンビニに立ち寄った俺は缶ビールを買って、外に出る。
見慣れない飲み屋街の明かりをなんとなく眺めた。
疲れた目に光が染みる。
すると、視界の端に見慣れた顔が入ってきた。
綾人だ。
少し離れた場所で綾人が満面の笑みで女性と抱き合っている。
「綾人・・・・・・」
思わず呟きながら俺は缶ビールの入ったレジ袋を落としてしまった。
その瞬間に音に反応した綾人と目が合ってしまう。
何故だろうか、心に巻きついた薔薇が強く締め付けてきた。
胸を押さえながら俺は振り返り家に向かって走る。
「和馬さん!」
背後から綾人の声が聞こえたが、俺は真っ直ぐ走った。
なんで俺は逃げたんだろう。
どうして胸が痛むのだろう。
この気持ちは何なんだろう。
頭の中に溢れかえる疑問を受け流しながら進み、気づけば綾人と出会った自動販売機の前に立っていた。
「何だよ、あの笑顔・・・・・・」
自分が綾人にとって特別な存在なんだと思っていたのだと気づく。
そしてそれを恥ずかしく思った。
大きな勘違いだったのだ。
綾人にとって俺はただの家主。
住居を提供するだけの男だったのだ。
「ただの同居人か・・・・・・」
思わず呟く。
もちろん返事などあるはずがない。
しかし、思わぬ返事が返ってきた。
「そんなわけないじゃないですか!」
声に驚き振り返る。
そこには息を荒げた綾人が立っていた。
「綾人・・・・・・」
「ただの同居人なわけないじゃないですか!」
そう言いながら綾人は俺の肩を掴む。
俺は綾人の手を振り切ろうと体を揺らした。
「離せっ!」
「離しませんよ」
真剣な眼差しで綾人は俺の目を見る。
その視線が俺の心を乱すんだ。
そんな目で見るな。
そう思いながら俺は問いかける。
「お前にとって俺は何なんだ。同居人じゃなきゃ何なんだよ」
「好きな人ですよ!」
綾人は言い放った。
好きな人。その言葉が頭の中でこだまし、心を波立たせる。
好きって何だ。
何を言っているんだ。
動揺しながら俺は言い返す。
「お、男同士だろうが!」
「好きに性別なんて関係ないでしょう」
「いや、それは・・・・・・だ、だとしても、俺とお前は偶然出会って仕方ないから一緒に住んでるだけだろっ」
俺がそう話すと、綾人はため息をついた。
「はぁ・・・・・・馬鹿なんですか?」
「何だと?」
「いいですか?男が男に拾ってくださいなんて言うわけないでしょう」
お前がそれを言うのか。
意味がわからない。
混乱しながら俺は言葉を返す。
「言ったんだろうが」
「それに、毎日料理作ったりしますか?」
「してただろうが」
「それは好きだからですよ」
恥ずかしげもなく綾人はそう言った。
「何言ってんだよ。偶然じゃなきゃ何なんだ」
俺が問いかけると綾人は呼吸を整えてから答える。
「毎日、夜遅くにここを通る和馬さんを見ていました」
「は?」
半ばパニックになりながら俺は何とかそう返した。
綾人はそのまま話を続ける。
「多分、一目惚れだったんです。疲れた顔で必死に歩いている和馬さんを見ていると不思議な気持ちになったんです」
「何だよ、それ・・・・・・」
「わかりませんよ。心があったかくなって、この人を笑顔にしてみたいと思ったんです。だから僕はここで和馬さんを待ち伏せて声をかけました。無理やりにでも一緒に入れるように」
驚愕の事実を突きつけられた。
しかし、どうしてなのだろう。嫌な気持ちはしなかった。
それどころか自分の顔は熱くなっているのを感じる。
「初めから俺に声をかけていた・・・・・・?」
「そうですよ。最初から告白するよりも僕のことを知ってもらおうと思って」
確かにこの数日間で綾人のことを知った。
子犬のような笑顔も、妖艶な笑顔も、心のこもった料理も、全て俺の心に残っている。
そして俺の気持ちも確実に綾人に近づいていた。
だからこそ、綾人が他の人に笑顔を向けていたのがショックだったのである。
気づいてしまった、自分の気持ち。
先ほどの感情に名前がついてしまったのだ。
コンビニに立ち寄った俺は缶ビールを買って、外に出る。
見慣れない飲み屋街の明かりをなんとなく眺めた。
疲れた目に光が染みる。
すると、視界の端に見慣れた顔が入ってきた。
綾人だ。
少し離れた場所で綾人が満面の笑みで女性と抱き合っている。
「綾人・・・・・・」
思わず呟きながら俺は缶ビールの入ったレジ袋を落としてしまった。
その瞬間に音に反応した綾人と目が合ってしまう。
何故だろうか、心に巻きついた薔薇が強く締め付けてきた。
胸を押さえながら俺は振り返り家に向かって走る。
「和馬さん!」
背後から綾人の声が聞こえたが、俺は真っ直ぐ走った。
なんで俺は逃げたんだろう。
どうして胸が痛むのだろう。
この気持ちは何なんだろう。
頭の中に溢れかえる疑問を受け流しながら進み、気づけば綾人と出会った自動販売機の前に立っていた。
「何だよ、あの笑顔・・・・・・」
自分が綾人にとって特別な存在なんだと思っていたのだと気づく。
そしてそれを恥ずかしく思った。
大きな勘違いだったのだ。
綾人にとって俺はただの家主。
住居を提供するだけの男だったのだ。
「ただの同居人か・・・・・・」
思わず呟く。
もちろん返事などあるはずがない。
しかし、思わぬ返事が返ってきた。
「そんなわけないじゃないですか!」
声に驚き振り返る。
そこには息を荒げた綾人が立っていた。
「綾人・・・・・・」
「ただの同居人なわけないじゃないですか!」
そう言いながら綾人は俺の肩を掴む。
俺は綾人の手を振り切ろうと体を揺らした。
「離せっ!」
「離しませんよ」
真剣な眼差しで綾人は俺の目を見る。
その視線が俺の心を乱すんだ。
そんな目で見るな。
そう思いながら俺は問いかける。
「お前にとって俺は何なんだ。同居人じゃなきゃ何なんだよ」
「好きな人ですよ!」
綾人は言い放った。
好きな人。その言葉が頭の中でこだまし、心を波立たせる。
好きって何だ。
何を言っているんだ。
動揺しながら俺は言い返す。
「お、男同士だろうが!」
「好きに性別なんて関係ないでしょう」
「いや、それは・・・・・・だ、だとしても、俺とお前は偶然出会って仕方ないから一緒に住んでるだけだろっ」
俺がそう話すと、綾人はため息をついた。
「はぁ・・・・・・馬鹿なんですか?」
「何だと?」
「いいですか?男が男に拾ってくださいなんて言うわけないでしょう」
お前がそれを言うのか。
意味がわからない。
混乱しながら俺は言葉を返す。
「言ったんだろうが」
「それに、毎日料理作ったりしますか?」
「してただろうが」
「それは好きだからですよ」
恥ずかしげもなく綾人はそう言った。
「何言ってんだよ。偶然じゃなきゃ何なんだ」
俺が問いかけると綾人は呼吸を整えてから答える。
「毎日、夜遅くにここを通る和馬さんを見ていました」
「は?」
半ばパニックになりながら俺は何とかそう返した。
綾人はそのまま話を続ける。
「多分、一目惚れだったんです。疲れた顔で必死に歩いている和馬さんを見ていると不思議な気持ちになったんです」
「何だよ、それ・・・・・・」
「わかりませんよ。心があったかくなって、この人を笑顔にしてみたいと思ったんです。だから僕はここで和馬さんを待ち伏せて声をかけました。無理やりにでも一緒に入れるように」
驚愕の事実を突きつけられた。
しかし、どうしてなのだろう。嫌な気持ちはしなかった。
それどころか自分の顔は熱くなっているのを感じる。
「初めから俺に声をかけていた・・・・・・?」
「そうですよ。最初から告白するよりも僕のことを知ってもらおうと思って」
確かにこの数日間で綾人のことを知った。
子犬のような笑顔も、妖艶な笑顔も、心のこもった料理も、全て俺の心に残っている。
そして俺の気持ちも確実に綾人に近づいていた。
だからこそ、綾人が他の人に笑顔を向けていたのがショックだったのである。
気づいてしまった、自分の気持ち。
先ほどの感情に名前がついてしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
大事な呼び名
夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。
※FANBOXからの転載です
※他サイトにも投稿しています
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる