俺べらないExtra edition〜異世界で俺だけレベルが上がらない 番外編〜

澤檸檬

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レオポルトの決起

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 この国は弱い。
 いつか周りの国に飲み込まれることが誰にでも予想できた。
 本来ならばこのビスタ国を解体し、他国に飲み込まれたほうが幸せなのかもしれない。だが、そうすることができない理由がある。
 種族が違うということだ。ビスタ国は獣人の国。この世界には獣人を差別する風潮がある。
 人間へなり損なった種族と呼ばれることも多い。
 つまりビスタ国を解体すれば、この国に住む獣人たちは他の国で奴隷のような扱いを受けることになるだろう。
 少年はそんな未来を憂いていた。
 少年の名前はレオポルト・バッセル。これはレオポルトがまだ十代の頃の話である。
 そう、異世界転移者である倉野と出会う三十年ほど前のまだビスタ国が不安定だった頃の話だ。
 砂と乾き、飢えと悲しみそんなものがレオポルトの周囲に舞っている。
 そして今、さらなる悲しみがこの国を襲おうとしていた。
 
「聞いたか、隣の国が戦争を仕掛けてくるらしいぜ」

 レオポルトが街中を歩いているとそんな声が聞こえてくる。屋台で安酒を立ち飲みしている客の会話だ。
 他の客が言葉を返す。

「隣の国ってイルシュナか?」
「いいや、反対側の国だ。軍事国家ゼレスだよ。人間たちよりも俺たち獣人は身体能力が高いだろ? 兵士として利用するためにこの国を植民地にしたいらしい」
「それが本当なら他国に家族を連れて逃げることを考えなきゃな」
「どこに逃げるって言うんだ。どこに行ったって俺たち獣人は差別される。奴隷にされるのがオチだろ」
「家族ごと殺されるよりもマシだろ。命あってこそだぞ」
「この世はどこにいたって地獄だな」
「ああ、救ってくれるのは酒だけだ」

 客たちはすべてを忘れるために安くて度数の高い酒を飲み干した。
 そんな会話を聞いていたレオポルトはとある決意をする。

「変えてやる。この国を・・・・・・いや、この国から世界を変えてやる。この力で」

 そう、この頃のレオポルトは喧嘩に明け暮れていた。
 その体の大きさと顔の厳つさから、街を歩いているだけで絡まれることが多い。しかし、生まれ持った身体能力で全ての敵を叩きのめしてきた。
 自分の戦闘能力が高いと気づいていたのである。
 その足でレオポルトは国軍への入隊を志願した。
 血煙の獅子の名前が誕生するのはここから数年後の話である。
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