異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

開戦！倉野VSフォルテ

　倉野も我流で拳を構え、フォルテの攻撃に備えた。
　心を読むことができる剣士と圧倒的な能力を持っている素人。
　お互いに様子を伺っている状態のまま時間が過ぎていく。
　倉野は頭の中でどう動くかを組み立てた。
　だが、相手はスキル読心を持ったオランディ最強の剣士である。
　どう動いても先読みされる、と考えてしまい一歩を踏み出せない。
　しかし、それはフォルテも同じである。
　倉野がスキル神速や剛腕を持っているために警戒をしていた。
　元来、心を読むというスキルは後手的な戦いに向いている能力。相手の動きを読むことで攻撃を無力化し自分の攻撃につなげる。
　自ら攻撃を仕掛ける際にも、どのように防御するかを読むことができる。だが、それに合わせて攻撃を繰り出しても、相手はその攻撃を対処しようと防御方法を変えるだろう。そうなれば考えるよりも先に体が動き出し、心を読んだとしても予測できないのだ。
　相手の攻撃を読み、反撃を喰らわせる方が効率的かつ不意をつける。
　フォルテはその戦い方でオランディ最強の名を手に入れていた。

「動かない・・・・・・いや、動けないのか」

　無表情のままフォルテは倉野にそう言い放つ。
　言われた倉野は緊張を保ったまま、言い返した。

「そう言いながらお前も動けないんだろ。僕のスキルを読むことができるからこそ、自分から仕掛けることができないはずだ。オランディ最強なら動いてみろ」
「最強とは最後に生き残っている者だ。勇敢に戦おうが死ねばそれまでだろう」

　さらにそう言い返しながらフォルテは剣の鋒を倉野に向ける。
　動き出す、と倉野は察知し、スキル神速を発動し背後に回った。
　フォルテの背後を取った倉野だったが先ほどの記憶が蘇り、攻撃を繰り出せずにスキル神速を解除する。

「ふっ、背後を取りながらも攻撃できないとはな」

　そう言いながらフォルテは右足を軸に回転し、その遠心力で倉野に剣を叩き込んだ。
　自分に向かってくる剣撃に気づいた倉野はすぐさま後退し、その鋒を回避する。
　鼻先ギリギリを通過する剣を見送った倉野は即座に拳を突き出し、フォルテの腹部を狙った。

「考えてから動いている限り、俺には通じない」

　そう言い放ってからフォルテは倉野の拳を左手で掴む。
　しかし、そこまでは倉野の想定内だった。

「まだだ！」

　倉野は叫びながら、掴まれている右手を軸に回転しながら蹴りを繰り出す。
　しかし、フォルテは動じずに掴んでいる拳を投げ捨てた。
　蹴りの途中で軸にしていた拳を投げられた倉野は体勢を崩し、少し離れた場所で倒れる。

「攻撃を複雑化しようが、読めていれば関係ない」

　そう吐き捨てながらフォルテは倒れている倉野に剣を振り下ろした。

「くっ。スキル神速発動！」

　このままでは剣を回避できないと察した倉野は即座にスキル神速を発動し、体勢を整える。
　少し距離をとりスキル神速を解除した倉野は自分が呼吸を忘れていたことに気付き、深呼吸する。

「どうすれば攻撃を当てられる・・・・・・スキル神速を使ったとしても炎の壁に阻まれる。だけど、普通に戦ったんじゃ動きを読まれて全て先読みされてしまう」
「無駄だ。焼き尽くせ、フレイムバレット」

　呼吸を整えている倉野に左手を向けるフォルテ。
　その左手から炎の塊が放たれ、猛スピードで倉野に飛んでいく。