異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

オランディの真実をエスエ帝国で知る

「どういうことだ。なぜフォルテが裏切る？」

　当然の疑問を口にするエヴァンシル王。
　しかし、レインはその疑問に答えるわけにはいかなかった。
　十中八九、首謀者はノワール家だとレインは考えている。だが、決定的な証拠はなくあくまで推測でしかない。
　王子たちの命を狙う理由があり、実際にジュウザを殺害させたのもノワール家だ。しかし、フォルテに指示を出したのもノワール家であることは証明できない。
　全ては倉野のスキル説明で得た情報とそこから導き出した推測でしかないのである。
　エヴァンシル王の問いかけに答えられずにいるレインにリヴィエールが声をかけた。

「どうしたのですか、騎士レイン。なぜフォルテ・リオメットが裏切ったのか、と王が問いかけております。それとも理由はわからないということですか？」
「いえ・・・・・・自分なりに調べ、そこから答えを導き出してはいます。ですが推測の域を出ません。私がそれを口にすることにより、間違った事実が結論になってしまうのは本意ではないのです」

　そうレインが答えるとエヴァンシル王は穏やかな表情を見せ、言葉を返す。

「いいか、レインよ。どのような情報や推測だろうと、最初から全てを信じることはない。どれだけ決定的な証拠が揃っていてもだ。私の発言にはこの国を変える力があることを嫌というほど知っている、良くも悪くもな。だからこそ、どのような小さな情報でも知りたい。推測の域でもよい、現場の空気を感じているお前の話を聞かせてくれんか？」

　語りかけるようなエヴァンシル王の言葉。彼の優しさと国を想う心が言葉から溢れていた。
　そんな言葉を聞いたレインは即座に頷き、状況を説明する。

「あくまで私が集めた情報から導き出した答えですが、どうしてそうなったのかを順番に話をさせていただきます。まず私はジュウザ様を殺害した暗殺者スネークを追うためにジュアム行きの飛行船に乗りました。しかし、その飛行船はある事件に巻き込まれ墜落・・・・・・スネークを追うどころではなくなってしまったのです」

　そこからレインはこれまでの出来事を簡潔にまとめて話した。
　飛行船の中で倉野とノエルに出会ったこと。
　墜落した無人島から脱出するためにエスエ帝国に向かったこと。
　そしてエスエ帝国でも事件に巻き込まれ、協力したこと。その事件の中でスキル無効化を持つバジル・インフェルノという存在。

「エスエ帝国での事件が解決した私は即座にオランディへ向かおうとしました。ですが、そこで私はジュウザ様暗殺についての真実を知ったのです」

　レインがそう話すとリヴィエールが身を乗り出し問いかけてきた。

「どういうことですか。なぜ、エスエ帝国でジュウザ様暗殺の・・・・・・いや、ひとまずその真実とやらを聞かせてもらえますか？」
「はい。ジュウザ様殺害を実行したのはスネークという暗殺者なのはご存知でしょう。彼の本名はイクルール・スナイダル・・・・・・そしてイクルールに指示を出したのはアヴァール・ノワールです」

　レインがそう答えるとエヴァンシル王とリヴィエールは黙って目を閉じる。
　事実を深く受け止めるように、飲み込むようにゆっくりと呼吸をし頷いた。

「そうか・・・・・・」

　エヴァンシル王はわかっていたことのようにそう呟く。