異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

ネイサンとオルタールとキーン

　アルダリンの提案により朝食をとることにした三人は、事前にアルダリンが用意していたサンドウィッチを食べる。
　素早く食べ終えた三人は再び話を戻した。
　二月前と今回のどちらともグランマリア号の乗船している六名の話である。

「お腹も膨れましたし、話を戻しましょうか。まず六名に話を聞く前に、ある程度の情報を知っていた方がいいでしょう。一応私が知っていることもあるので共有したいのですが、よろしいですかな」

　食べ終えたアルダリンが口元を布で拭いながらそう話した。
　少しでも情報が欲しい今、知っていて損になることなど何もない。
　そう考えたリオネは頷く。

「もちろんです。なんでも聞かせてください」
「ほっほっほ、それでは一人一人説明していきましょう」

　言いながらアルダリンはリストの名前を指さした。

「一人目はネイサン・ヴァルヴァ。海の研究をしている女性ですな。職業は学者になっております。その研究成果を様々な商会や機関に報告することで収益を得ている方でノーベンバー商会とのつながりも多少あるようですな。私自身は面識がありませんが、確か若い女性だったと記憶しています。二月前も今回も海の調査のために乗船しているようですぞ」

　説明しながらアルダリンは書類にあるネイサンの名前の近くに情報を書き足していく。
　ネイサンの説明を終えたアルダリンは次の名前を指さした。

「二人目はオルタール・デレ。この者は個人的に他国から美術品を仕入れているオランディの美術商です。何度か会ったことはありますが正直いい印象はありません。粗悪品や大した価値のないものを高値で売りつけるという噂も聞いておりますし、本人も権力や金に擦り寄るような性格をしていました」

　オルタールの説明を終えると即座にアルダリンは三人目の名前を指差す。

「三人目はオルタールの部下であるキーン・コスマリア。いつもオルタールが連れて歩いている右腕というような男です。話したことはありませんが体が大きく護衛も兼ねているように見えました。一言で言うならば無口な男ですな」
「結構、顔見知りというか繋がりがあるのね」

　アルダリンの説明を聞いていたノエルが思わず言葉を挟んだ。
　するとアルダリンはいつも通り口髭に触れながら答える。

「そうですな。まぁ、二月という短い期間で二回もグランマリア号に乗船する者と考えればある程度職業や身分が絞られます。値段もそう安くはありませんし、エスエ帝国に向かうという目的がないと乗船しませんからな」

　その話を聞いたリオネとノエルはなるほどと納得した。
　短期間のうちに二回も豪華客船で他国に向かうとなればある程度の収入と理由を持っている者。そうなると、ノーベンバー商会との繋がりがあってもおかしくないだろう。
　そう説明した上でアルダリンは話を進めた。

「しかしながら、ここからの三人は面識どころか何も知らない者ばかりです」

　言いながら次の名前を指差す。