異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

ディートとの面識

　聞き返したネイサンに答えたのはリオネではなくアルダリンだった。

「お久しぶりです、ヴァルヴァさん。お聞きしたいのは二月前にこのグランマリア号で起きた事件についてです」

　アルダリンがそう話しかけると、ようやくその存在に気づいたのかネイサンは慌てて扉を全開にする。

「ア、アルダリンさん。ど、どうしてここに」
「ほっほっほ、たまたま乗船していましてな。直接お会いするのは数年前に研究結果をお売りいただいた以来ですか」

　優しい表情で話すアルダリン。するとネイサンはようやく心を開いたのかアルダリンたちにこう話す。

「ろ、廊下で立ち話をしていると周囲の人に聞かれることもありますので、よろしければ中へどうぞ」

　ネイサンから提案された三人は感謝をし、部屋の中に入った。
　他の部屋と同じように机と椅子、ベッドがあるだけの部屋だったが机とその周辺に書類が散らばっている。どうやら研究に関わりのある書類らしい。
　床にも散らばっている書類を簡単に纏めながらネイサンは三人に声をかけた。

「すみません、汚くて。椅子も一つしかないしお茶みたいなものもないのでおもてなしはできませんが」

　ネイサンの言葉を聞いたアルダリンは優しく首を横に振った。

「いえいえ、お気になさらず。こちらこそ突然訪ねて申し訳ないですな」
「あの、それで、二月前の事件って？」

　そう問いかけるネイサンにアルダリンが答える。

「ご存知ないですかな。二月前、グランマリア号でとある男性が自殺した話です」
「それは知っています・・・・・・乗組員や一部の乗客が大騒ぎしていましたから。ですが、私とは関係のない事件ですし・・・・・・そもそも、どうして私が二月前も乗船していたと知っているんですか？」
「おお、これは失礼した。実は私たちはその自殺について調べておりましてな。二月前と今回の乗船リストを拝見したところ、ヴァルヴァさんの名前があったのでこうしてお話を聞かせてもらいに来た次第です」
「なるほど・・・・・・確かに二月前もエスエ帝国での実地調査のためこの船に乗っていましたが、亡くなった方とも面識はありませんし知っていることなんてありませんよ。お力になれずすみません」

　ネイサンは申し訳なさそうに答えた。
　もちろん、知らない可能性の方が高いと分かっていたアルダリンたち。
　これ以上粘っても仕方がないのでネイサンの協力に礼を言い、次の者に話を聞くことにする。

「いえいえ、こちらこそいきなり訪ねてきて申し訳ない。協力していただき感謝いたしますぞ。それでは私たちはこれで失礼しますが、何か思い出したことがあれば私まで託けて下さい。どの乗組員に話しても私のところまで届けてくれるでしょうから」

　ネイサンが何かを思い出した時のことも考え、アルダリンはそう言い残し部屋を出た。ノエルとリオネも彼の背後を追いかける。