異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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拒絶するスミナ・ディフォル

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 アルダリンたちが求めていた話へ到達したオースティン。
 何かを知っているかもしれない、とアルダリンが身を乗り出し問いかける。

「ご存知なんですか。それについて聞きたいことがあるのですが」
「ああ、なるほど。そのために二月前も乗船していた者に話を聞いているということですか。しかし、申し訳ない。そうした事件があったという話を聞いただけで詳しい話までは知らないんですよ。殺された方とも面識はありませんし」

 申し訳なさそうにオースティンはそう答えた。
 もちろん知らない可能性の方が高いことは分かっていたので、大きく落胆することはない。
 だが、これで六人のうち三人の聞き取り調査が終わってしまった。残り三人で真相に近づかなければならないと考えれば焦る気持ちが芽生えるのも無理はない。
 仕方がないとオースティンに別れを告げた三人は隣の部屋の向かうことにした。
 隣に宿泊しているのはスミナ・ディフォル。オランディの貴族の一人。正確にはディフォル準男爵の令嬢である。
 相手が女性ということで人当たりの良さそうなリオネが扉を叩き呼び掛けた。

「すみません、スミナさんはおられますか?」

 何度か呼びかけると、物音がして扉が開く。出てきたの一目で高価とわかるドレスを着た若い女性だ。
 女性は無言でリオネや背後のアルダリン、ノエルを観察した後に面倒そうに口を開く。

「・・・・・・何?」

 高圧的に問いかけるスミナに少し驚きながらもリオネは言葉を返した。

「あの、少しお話を聞かせていただけないかと」
「はぁ? いきなりなんなの?」

 スミナは不機嫌そうにそう答える。
 突然の来訪が気に入らなかったのだろうか。
 だが、話を聞かなければ真相に近づくことはできない。リオネは再び口を開く。

「すみません、私はリオネと申します。二月前の話を聞かせていただきたくて」
「知らないわよ。私と話したいのなら家の者に許可を取ってからにしてくれる?」
「では、この船にも従者の方を連れてきているのですか?」
「そんなわけないじゃない。私は一人で乗っているわ」
「じゃあ、どうすれば」

 ずっと不機嫌かつ高圧的に答えるスミナに困惑するリオネ。
 リオネの背後ではノエルが苛立ち腕を組んでいた。
 困惑にも苛立ちにも気付いていないスミナは更にこう言い放つ。

「もういい? 自分よりも下の者と話すことなんてないわよ。帰ってくれる?」
「いえ、そういうわけには」

 そうリオネが言いかけると即座にスミナは勢いよく扉を閉じた。
 バタンと音を立て、全てを拒絶するように部屋へと戻ったスミナ。部屋の前に取り残された三人は無言のまま立ち尽くしてしまう。
 しばしの無言の後、アルダリンが気まずそうに口を開いた。

「ほ、ほっほっほ、困ってしまいましたな」
「なんなのよ、あの女。我が儘貴族令嬢をまんま形にしたみたいな性格じゃない」

 苛立ちが治らないノエルがそう付け足す。
 その空気をフォローするようにリオネが口を開いた。

「ま、まぁ、話を聞かせてくれない人もいますよね。仕方ないですよ」
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